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二色眼の転生者《オッドアイズ・リ:ライフ》  作者: でってりゅー
第三章 ライゼヌスを覆う影
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第四十六話 遊び相手

最近ニンテンドースイッチを買いました。

ゼル伝とメタスラ3を買ったんですけど、家の中どこでも持ち歩けて遊べるのに感動しています。


 城下町散策にベルを加え、俺たちは買い物を続ける。

 まずは外套姿のベルを自然な服装にする為にユリーネお勧めの服屋に立ち寄っていた。

 当然の如く女性物しか取り扱っていない店なので、男性である俺とジェイクには居場所がない。


「……居心地悪いですね」

「……そうだな。別の店で待っていればよかったかもな」


店内の隅に置かれた長椅子に縮こまる男二人。

 他の女性客がいないことが唯一の救いだ。

 早く終わんないかな〜と遠い目で天井を見つめていると店の奥からユリーネに呼ばれる。

 試着室の前でユリーネが満面の笑みを浮かべている。


「お待たせ二人とも、ベルちゃんのお着替えが終わったわよ〜?」


 いいから早くしてくれ……俺もうこの店内の空気に耐えられねぇよ。

 死んだ目でユリーネに訴えかけていると「じゃ〜ん!」と試着室のカーテンが開かれる。

 そこには先程まで外套を纏い身を隠していたベルが、フリルの付いた白いドレスを着て立っていた。

 ユリーネにしてもらったのか、ストレートだった髪も結ってポニーテールになっている。

 元々頭に咲いていた桃白い花も相まって美しく仕上がっていた。

 俺もジェイクも数十分前の怪しさ満点の姿から令嬢へと変わったベルの姿に感嘆の声を上げる。


「どう?可愛くなったでしょ?」

「さすがはお母さんだ。これなら堂々と歩けるな」


 ジェイクに褒められてユリーネが得意げな顔をしている。

 俺は見違えたベルの姿に見惚れ、ただ黙って彼女を見つめている。


「普段こういった格好はしないのですが、似合っているでしょうか?」

「似合ってる……てか、すっごく可愛いよ!ビックリだわ」

「ありがとうございます。そう言っていただけると自信が持てます」

「服もいいけど、やっぱり頭の花もいいね。服と一緒の色だから目立つし綺麗だよ」

「綺麗、ですか?あ、ありがとうございます」


 見違えた彼女の姿を褒めると照れくさそうにしている。

 アラウネだから自身の一部である花を褒められると嬉しいのだろうか?


「それじゃあその服にしましょう!すいません店員さん、会計を」

「あ、お金は私が払います!お小遣いがありますので」


 代金を払おうとするユリーネを制しベルが自分の荷物からぎっしりと中身が詰まった袋が出してくる。

 ベルは店員から金額を聞くとその分の金貨を袋から取り出して渡した。

 代金の金貨二枚だそ……たかっ!

 金貨二枚ってたかっ!

 フリル付きのドレス一着だけだぞ!?

 それなのに金貨二枚取るのも驚きだけど、さらっとその代金がベルの財布袋から出るのも驚きだわ!

 お小遣いって言ってたけど、やっぱりベルはいい所のお嬢様なのだろうか。

 でなきゃ家を抜け出したぐらいで追いかけられたりしないもんな。

 今更ながら恐ろしい娘を連れてきてしまったのではないかと不安になる。

 会計を終わらせ店を出る。

 甘ったるい匂いが漂っていた店内と違い、外の空気がなんとおいしいことか。


「じゃあ、まずはベルの用事から済ませますか?」

「そうね。ベルちゃん、どこに用事があるの?」

「実は……複数あるのですが」

「私たちに気を遣わなくても大丈夫よ。今日はクロちゃんに街を案内する為に来てたから、ベルちゃんの用事を済ませながらでもできるわ」

「で、では……あちらの通りに行きましょう!」


 ベルが指差すは家族連れが多い通りの方だ。

 向こうには何があるのだろうか?

 彼女に急かされるように通りに入ると、カラフルな看板やヘンテコなキャラクターが描かれた店が多い場所だった。


「ここです!」


 ベルが一軒の店の前で立ち止まる。

 店の看板には『的当て屋』と書かれていた。

 え……用事ってここ?

 とりあえず店内に入るとベルは受付からパチンコとパチンコ玉三ダースを受け取る。

 そして記念すべき第一発目。

 ベル選手、的である台座に乗せられた木の丸太に向かってパチンコ玉を……打ったぁぁぁぁ!

 パチンコ玉は見事木の丸太に当たり、台座から落っこちた。

 それを見てベルとユリーネが大喜びしている。


「やった!当たりました!」

「すごいわベルちゃん!やったわね!」

「じゃなァァァァい!!用事って遊びかよ!」


 大喜びする二人を見て俺は大声を上げる。

 今日は帰りたくないって言ってたのはこれの為か!

 もしかしてこの子、遊ぶ為に家から抜け出してきたのか!?

 俺の叫びにベルは恥ずかしそうにしている。


「じ、実は、前々から家族でこの通りには訪れたことがあるのです。ですが、お父様は『ここはお前が遊ぶべき場所ではない』と仰って、いつも遠くから眺めているだけだったんです」

「それで、我慢できなくなって家を抜け出して遊びに来たと……」

「つまり、そういうことになります。えへへ」

「可愛く言っても騙されないよ!」


 てっきり誰かに会いたいとか、何かの催し物を見る為じゃなくて、ただ遊びに来たかっただけかよ!

 やっぱりベルを探してた人たちにあの時引き渡すべきだったわ!


「まぁまぁ、いいじゃないクロちゃん。私も貴族の家の生まれだからわかるわ。街で遊びたくても、父親はなかなか許してくれないのよ。危ないからとかいろいろ理由をつけてね」


 だろうねぇ、父親であるイルミニオは娘のユリーネに対してはすごく態度が緩いからな。


「だから私も、昔はよくお小遣いを握りしめてこっそり屋敷から抜け出したわ。少ないお小遣いで得物を選んで、どうしてもお友達と一緒に森で狩りをしたくてぇ」

「お義母さんの子供の頃の行動理由はいつもアグレッシブすぎて一般的な貴族の子と比較にならないんですよ!」


 狩りがしたいからって小遣い握りしめて、家を抜け出して武器買いに行くご令嬢があちこちにいてたまるか!

 でもユリーネがベルを家に屋敷に返さないのに反対しなかった理由がわかった。

 昔の自分と似た境遇の子だったから連れ出したあげたかったのだろう。

 興奮する俺の頭をジェイクが撫でて落ちつかせようとする。


「まぁそう怒るな。ベルさんを連れて行くのを決めたのは君なんだ。だったら理由がどうあれ、気にしてはいけないよ」

「……それそうですね」


  どのみち連れて来てしまったのはもうどうしようもない。

 むしろその責任を取って、彼女が満足するまで遊ばせてあげるのがいいだろう。

 俺はカウンターからパチンコと玉を受け取るとベルの隣に立つ。


「ベル、俺と勝負しよう」

「勝負?ですか?いいですよ、ぜひお願いします!ルールは倒した的の数でいいですか?」

「あぁ、いいよ。そん代わり──」


 パチンコを構えて的である丸太を狙う。

 玉は吸い込まれるように的の上部に命中し、三発連続で的を倒して見せた。


「俺、相手が女の子でも手加減とかしないから」

「……望むところです!」


 俺の挑発にベルが闘志を燃やす。

 そこから後は激闘が続いた。

 パチンコ勝負が終われば、今度は別の店で宝探しゲームでどちらが先にお宝を見つけられるか競い、次にダーツ、ボール隠し、迷路など様々な種類のゲームで勝負した。

 白熱し過ぎて時を忘れるほどに。

 勝負を終えて店を出る頃には既に夕陽が昇り始めていて、人通りもまばらになっていた。


「うわっ、もう夕方か!」

「時間が経つの早いわね。二人もそれだけ遊べば疲れたでしょう」


 暗くなり始めた空を見上げながら歩いているとベルがふと立ち止まる。

 先程まで笑顔に満ちていたその顔は、寂しそうに目を伏せていた。


「もうすぐ……一日も終わりですね。皆さん、ありがとうございました。今日は本当に楽しかったです」


 頭を下げてお礼をするベルに俺は歩み寄ると手を差し出す。

 それを見てベルは顔を上げ、どうすればいいのかと困惑していた。


「今日は楽しかったよ。また遊ぼうぜ。っても、俺は今週の終わりには村に帰っちゃうけど」

「クロノス君は、この街の人ではないんですか?」

「ああ。俺はニケロース領の村から遊びに来たんだ。だから週末には村には戻らないといけないけど、滞在中ならいつでも遊び相手になるからさ!」


 そう言って笑ってみせると、ベルは少しだけ笑顔を浮かべ俺の手を握る。

 王都で始めて、親戚以外の友達ができた瞬間だった。

 お互いに手を離すと、ベルの表情から寂しそうな表情が消え、一つの提案をしてくる。


「今日の最後にどうしても行きたい場所があるのですが、もう少しだけお付き合いしていただいてよろしいでしょうか?そこでの用事が済めば、私は家に帰ります」

「あぁ、いいよ。お義父さん、お義母さん、いいですよね?」


 ジェイクとユリーネに振り返ると二人とも承諾してくれる。

 さてさて、花の少女は最後にどこに連れてってくれるのだろうか。


「それで目的地はどこ?この近く?」

「はい。あちらに見える、ギルニウス教会本部です」


 彼女が目線の先、大きな十字架が建てつけられた立派な教会が見える。

 ギルニウス教会本部──あの人を煽るのが上手い神様の総本山だ。

 やべぇ、めっちゃ屋敷に帰りたくなってきた。

次回も週末21時公開予定です。

そして遊戯王の新ストラク買ってきます。

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