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二色眼の転生者《オッドアイズ・リ:ライフ》  作者: でってりゅー
第三章 ライゼヌスを覆う影
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第四十五話 アラウネの少女

もうすぐ春アニメ開始ですね〜

私は4作ぐらい見るの楽しみにしてるアニメがあります


 目の前の少女に俺は目を奪われていた。

 その顔立ちは美しく、白い肌に亜麻色の瞳、翠色の長い髪の左側頭部には桃白い花が咲いていた。

 この子は亜人種だ。

 おそらく人間とアラウネのハーフだろう。

 アラウネは森林を棲家にする上半身が人で下半身が大きな花弁に覆われている妖精種だ。

 アラウネのハーフは下半身ではなく体の一部に花が咲いていると図鑑では見たけど、実物を見るのは初めてだった。


「え、と……立てる?」


 もう一度声をかけるとアラウネの少女が手を取ろうと伸ばす。

 が、人混みから多数の金属音が聞こえると慌ててフードを被り直し立ち上がると、


「匿って下さい!」

「え、ちょ、えぇっ!?」


 と言って、鍛冶屋の店前に置かれていた看板の裏に隠れた。

 突然匿ってと言われ困惑していると、人混みをかき分け、全身を鎧で武装した者たちが駆け寄ってきた。

 な、なんだなんだ!?

 なにこの鎧の集団!?

 突如目の前に現れた鎧の集団に驚きたじろぐ。

 後ろで控えていたメイドさんが、俺を守ろうと背に回し前に出た。


「当家の坊っちゃまに何か御用でしょうか?」


 毅然とした態度で鎧の集団と向かい合うメイドさん。

 何か危なげな雰囲気を感じ、未だ鍛冶屋にいるジェイクたちを呼ぼうとすると、集団が割れ道を作る。

 そこから短足で鎧を着た巨躯の男がのしのしと歩いてきた。

 頭も顔も毛むくじゃらだが、身嗜みには気を使っているのか髪の毛にも髭にもツヤがある。

 短足巨躯の男はメイドさんを見上げると頭を下げた。


「申し訳ない。ウチの者がそちらのお子さんを怖がらせてしまったようだ」

「急に詰め寄られたので坊っちゃまが怖がっています。一体何の御用でしょうか?」

「いやなに、一つ聞きたいことがあったのだ」


 短足巨躯の男がメイドさんの背後に回っていた俺に目線を合わせてくる。


「少年、ここら辺で君ぐらいの背丈の女の子を見なかったか?左の頭、ここら辺に花を咲かせた高貴な少女だ」

「……っ!」


 頭に花を咲かせた高貴な少女──おそらくさっきのアラウネの女の子だ。

 少女はこの集団から匿って言っていたのか。

 相手は厳つい鎧を身に纏った集団……そりゃ逃げもするわ。

 ならば質問の答えは決まっている。


「その女の子なら、人混みの中を走って向こうに行きましたよ」


 迷う余地なし。

 俺は人混みの遥か向こうを指差し嘘をつく。

 短足男は「感謝する」と短く礼を言うと行くぞぉ!と意気込み、集団を率いて走り出した。

 短足なせいで彼だけ走るのが遅くて集団の最後尾を走っているけど。

 鎧の集団が走り去るのを見届けていると木箱の裏に隠れていた少女が出てきた。

 

「ありがとうございます。匿ってもらって」

「ま、いいってことよ。で、なんで追われてたの?」

「その、屋敷を抜け出してきちゃいまして、あの人たちは私を連れ戻す為に探しているのだと思います」

「抜け出してきた!?やるねぇ……」


 おそらくどこかのお嬢様なのだろうけど、屋敷を抜け出すとは大胆なことをするお嬢様だこと。

 でもそうなると、さっきの人たちに嘘をついたのは失敗だったな。

 人相だけでどっちに味方するべきか決めてしまった。


「坊っちゃま。今からでも戻り、先ほどの方々にこのお嬢様を引き渡した方がよろしいのではないでしょうか?」

「やっぱりそう思います?」


 耳打ちで提案するメイドさんに答える。

 嘘でもいいから「私を追ってる悪い人たちなんです!」とか言われた方が保護する気にはなるんだけど。

 さて、どうしたものか……。


「クロちゃんお待たせ〜……あら、あらあらあら?」


 少女の対応に困っていると、店からユリーネとジェイクが出てくる。

 ユリーネは俺の前に立つ見知らぬ少女を見て首を傾げた。


「だぁれその子?迷子?」

「まぁ似たようなもんです。ちょっと事情がありまして」


 簡単に事情を説明すると見る見るジェイクの眉間に皺が寄っていく。

 話し終えアラウネの少女と俺を交互に見て溜め息を吐いた。


「前々から思ってはいたが、君は事件や厄介ごとを引き寄せる体質なのかい?」


 違うとは言い切れないが、もしも本当にそんな体質だとしたら、それは俺せいじゃなくてこの体に転生させた神様のせいだからそっちに言ってほしい。

 そんなジェイクにユリーネが腕をポンポンと叩く。

 それだけで意思疎通が取れたらしく、ユリーネはアラウネの少女と同じ目線になるよう屈むと微笑んだ。


「あなた、お名前は?」

「私はベル・ローザと申します。お見知りおきを」

「あらあらご丁寧にどうも。私はユリーネ・バルメルドです」


 お互いにかしこまって挨拶すると、ふふっと笑い合う。

 なんかよくわかんないけど、二人の間で何か伝わったみたいだ。

 そんな光景にまたジェイクが盛大な溜め息を吐いた。


「すみませんお義父さん。せっかくの休暇なのに面倒の種を拾ってしまって」

「あぁ、まぁいいさ。非番であろうと勤務中であろうと、一人で街を歩く彼女は絶対に保護しないといけないからね」


 さすがジェイクパパ、勤務所でもないのに普段の仕事をする姿勢は騎士の鑑ですわ。


「でも、さっき俺が騙してしまった人たちがこの子を探してますし、彼女が無事なのだけでも知らせた方がいいのでは?」

「それはダメです。もし彼らに見つかったら、家に戻されてしまいます。今日は、今日だけはどうしても戻りたくないのです!」


 ベルは戻りたくないと必死に訴えてくる。

 きっと彼女にとって、今日は何か大事な用事があるのだろう。


「クロノス、君が決めなさい。彼女を引き渡すか、このまま私たちと一緒に行動するか」

「えぇ!?俺が決めるんですか!?」

「君が助けたんだ。だったら責任を持って、君が彼女の行動をどうするか決めなさい」


 どうするかって……うーん。

 彼女を先程の鎧の集団に引き渡した方が本当は何事もなく収まるだろう。

 でもベルは今日だけは屋敷に戻りたくないと言う。

 果たしてどちらが彼女の為なのだろうか。


「……わかりました。ベル、一緒に行動しよう。ただしはぐれないようにね」

「はい!ありがとうございます!」


 悩んだけど、屋敷に連れ戻してもらって、また抜け出して一人で街をうろつかれたりするよりかはマシだろう。

 ジェイクは騎士だし、俺ももジェイクから指導を受けている。

 多少の問題があっても対処しきれるだろう。


「それでいいんだなクロノス?」

「はい。でも一応はさっきの人たちには探し人がこちらにいることを説明しておいた方がいいかと」

「それはこっちで何とかしよう」


 ジェイクは任せろと俺の肩を叩き、メイドさんに目配せする。

 それを受けメイドさんは頭を下げると先程の鎧の集団が駆けて行った方角へと走り去ったいった。

 おそらく彼らとの連絡役になるのだろう。


「それじゃあベル。今日一日よろしく」

「よろしくお願いします。クロノス君」


 フードの奥でベルがにっこりと笑う。

 あぁ、可愛い顔で笑うなぁ。

 レイの無邪気な笑顔はまた違う笑い方で本人の優しさが滲み出てる。


「じゃあ、そろそろ行きたいですけど…どこかその前にベルの格好をどうにかしましょう」

「私服装、どこか変でしょうか?」

「変っつーより怪しい」


 ベルは顔を隠す為にフード付きの外套を着ている。

 子供の背丈だから人混みに入れば気にはならないだろうがさすがに目立ってしまう。

 もう少し自然な服装に変えた方がいい。


「それじゃあ、まずは服屋に行きましょう!お母さんいいお店知ってるわ!」

「えらく楽しそうですねお義母さん」


 ユリーネの案内で服屋へと向かう。

 隣を歩いていたベルが、俺にじっと見ているのに気づく。


「……俺の顔、何かついてる?」

「いえ、今日は一日よろしくお願いします。クロノス君」

「ああ、よろしく」


 それが言いたかっただけなのか、ベルは微笑むと前を向き直す。

 一度だけでいいのに二回も挨拶するとは律儀な子だ。

 あれ、俺いつベルに名前を名乗ったっけ?

  ジェイクが俺の名前を一度だけ呼んだけど、その時に覚えたのか?

  ……まぁ、いいか。

 気にするほどのことじゃないだろう。

次回投稿は来週の予定です

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