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二色眼の転生者《オッドアイズ・リ:ライフ》  作者: でってりゅー
第三章 ライゼヌスを覆う影
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第四十四話 桃白い花

もうすぐ遊戯王のマスタールール4が始まりますね!

二十五日に発売するストラク買って友達とやる予定てす。


 城下町の工房に連れてこられた俺は、工房の店主に大量の武器が飾られた部屋へと案内された。


「どんな武器が好みだ?剣か?槍か?」

「えっと……」


 どう答えたものかと迷い、振り向いてジェイクに助けを求める。


「剣で頼む。子供用ではなく、大人用だ」

「あいよ」


 店主は短く答えると六本の剣を取り出しテーブルの上に置いた。

 剣にはそれぞれ赤い宝石、水色の宝石、緑の宝石、黄の宝石、碧い宝石、紫の宝石がグリップの部分に埋め込まれている。


「……ほれ、剣をどれか握ってみな」


 突然剣を出されて見つめていると急かされる。

 碧い宝石が埋め込まれた剣を手に取った。

 握りしめた瞬間、体内のマナが手から剣へと流れ、剣先にまで届き渡る。

 それと同時に刀身の周りから冷んやりとした空気を感じる。


「なんですかこれ?握ってから剣の周りが冷えましたけど」

「そのまま振ってみなさい」

「振るんですか?それ」


 ジェイクの言葉通りに剣を振ると、剣に吸われた分のマナが剣先から放出され斬撃となる。

 斬撃はそのまま壁に向かって直進し、衝突した瞬間に氷となって壁一面を覆った。

 それを見た店主が悲鳴を上げ、ジェイクは大笑いしている。


「ぎゃああああ!俺の店に何してんだァァァァ!!」

「すいませんすいません!ちょっとお義父さん!?何なんですかこれ!?」

「いやいや、それは所有者のマナを吸って、魔法効果を持つ斬撃として飛ばす代物なんだが……ハッハッハッ!見事に凍ったな!」

「笑い事じゃないですよ!?どうして先に教えてくれないんですか!?」

「ジェイク、テメェふざけんなよ!こうなるのわかってて止めなかったんだろ!」

「水と氷以外を選んだら止めるつもりだった」

「テンメェェェェ!」


 二人の口論に挟まれながら、俺は手にしていた剣をテーブルに手放す。

 すると壁一面を覆っていた氷は砕け散った。


「あービックリしたぁ……」

「ダメよあなた。ちゃんとクロちゃんに説明してあげなきゃ」

「いや、すまん。前にトランプで負けた仕返しな」

「小学生かお前は!で、どうだ坊主。それでいいか?」

「いや、まずこの行為に何の意味があるのかさえわかってないんですけど」


 困惑している俺を見て、何の説明もしてないのかと店主がジェイクに対し怪訝な顔をする。

 先程から笑続けているジェイクの様子からして、店主である彼を困らせる為にあえて説明しなかったのだろう。

 ウチの父親はこの店の店主に何か恨みでもあるのか?


「すまない。ちゃんと説明するよ。今朝見た斬撃を覚えているかい?」

「覚えてますよ。あんなおっかない思いしたんですから」


 誰が俺に剣の指導をするかと口論になった叔父たちが、真剣を抜いて仕合いをしてた時だ。

 あの時に誰が放った斬撃が、俺のところまで飛んできて危うく死にかけた。


「あれはマナを刀身に溜めて、魔法効果を付与した斬撃を飛ばす剣技なんだ。剣術を学ぶ者なら大体は使える」


 刀身に込めたマナを斬撃として飛ばせるのか……月牙天衝みたいでカッコいいな!


「でもマナ溜めて斬撃飛ばすだけなら、わざわざ剣を注文しなくても」

「普通の剣ではなく、その宝石が埋め込まれた剣でする方がいいんだよ。その剣握って、なにか感じなかったか?」

「……マナが少し吸われました!」


剣を握った瞬間から、俺のマナはずっと少量だが吸い上げられてた。

 剣を振った時、俺はマナをコントロールしてなかったが勝手に剣から斬撃が放たれていたはずだ。


「その剣の宝石は接触した者のマナを吸い取るんだ。そして自動で魔法を発動させる。魔石と言う鉱石だ」


 魔石は読んで字の如く、魔法を発動させる石のことだ。

 俺も実物を見るのは初めてだが、鉱石の色毎に属性があると本で読んだ。

 じゃあ今俺が手にした碧い宝石が装着された剣は、氷属性の魔法効果が付与された剣だったのか。


「剣を使う者なら必ず一本は持ち合わせている。戦闘中はマナをコントロールするのに意識を割くと遅れをとることもあるからな。こうした魔石を含んだ者は必需品なんだ。私の剣も魔石を含んだ造りになっている」

「じゃあ、剣を六本並べたのは?」

「お母さんに教えられているだろう?魔法は人によって得手不得手がある。だからそれぞれの属性付与がされた剣を実物に手して、どの属性の魔石を含んだ剣を造るか参考にするんだ」

「なら最初にそう説明してくださいよ。店全体が凍りついたらどうするつもりだったんですか」

「実際に目で見た方が分かりやすいだろうから敢えて黙っていた。まぁこいつの店だ。気にするな」


 ジェイクの説明に「気にしろよ!」と店主が突っ込む。

 つまりこれは俺専用の魔導具を造る為の検査なのだ。

 しかし、俺が得意な魔法かぁ……。

 六属性の魔法全部使えるけど、得意な魔法って言われると特に無いような。

 その後も他の属性魔石が装着された剣を手にし、マナを流し込んだりして試すがしっくりするのが無い。

 そもそも、この剣を手にすると常に魔石にマナを吸い取られてしまい、そっちに意識が集中して他の魔法を発動し辛くなってしまうのだ。

 右手で殴ると同時に左足で蹴るみたいな、片方に力が入らない感覚だ。

 両眼にマナを込める時とはまた違って少し気持ち悪い。


「どうクロちゃん?気に入ったのはあった?」

「うーん……どれも悪くはないんですけど、一つの属性の魔法にしか意識を集中できないってのが不便ですね」

「なんだ坊主、もしかして六属性の魔法操れるのか?」

「初級レベルなら」

「クロちゃん器用だものね」


 試しに両手で雷と風の魔法を発動させる。

 最近、発動させた状態で手の上に維持させる方法を会得した。

 他にも足裏からマナを地面に流して、好きなタイミングで発動させる遅延魔法もできるようになった。

 禁断の森で蜘蛛の魔物に襲われた時に閃いたのがきっかけだ。

 その気になれば、六属性を一度に発動するのもできるが、精度が低いし疲れるので基本使わない。

 このやり方はレイとフロウにはまだできないので、俺だけしかできない技術だ。

 熟練者のユリーネはあっさりとできるてしまうけども。

 俺が両手で別々の魔法を発動させるのを店主が物珍しげに眺めている。


「ほぉ、そんな器用な事ができるなら、剣士より魔術師を目指した方がいいんじゃないか?」

「いえ、それでも俺は騎士を目指したいんです」

「そうかい。ならちょっと待ってな」


 店主は魔石の付いた剣を全て片付けると、無造作に木箱の中に詰められていた武器の中から一本の剣を取り出す。

 その剣にも魔石が装着されていたのだが色がなかった。

 白に近い透明な魔石だったのだ。


「多分こいつがいい。ほれ、持ってみろ」


 白い魔石の剣を受け取り、マナを流し込んでみる。

 今までと同じように刀身がマナを帯びるが何の属性魔法も発動していない。

  もしかしてと思い、左手で水の魔法を発動させながら右手の剣で火の魔法を試みる。

 予想通り左手に水弾、右手の剣に炎を纏わせることができた。

 先程までと違い、剣で魔法を発動させてももう片方の魔法の発動を阻害されることもない。


「これいいですね!片方で魔法を使ってても、もう片方の魔法の発動の邪魔にならない。これは何の属性の魔石なんですか?」

「いや、そいつに属性付与はされていない。無属性の魔石だ。他の魔石と違って、マナを吸い上げて蓄積するだけの能力がない。魔術師が好んで使う魔石だ」


 説明を聞きながら、氷と風、土と雷と色々の種類の魔法を左右同時に発動させてみる。

 どちらも同じマナの量で、同じ効力を感じる。

 うん、気に入った!

 これが一番使い扱いやすい!


「お義父さん、これにしましょう!むしろこれ以外の魔石を使ったのでなければ俺は使う気しません!」

「そんなにか。まぁ、君がそれだけ目を輝かせるのも珍しいし……わかった、それで作ろう」

「しゃっ!」

 

 要求が通って思わずガッツポーズ。

 六属性を操りながら剣術で戦うとか、これは魔法剣士を名乗れるのでは?

 ハッ……すごいことに気づいたぞ!

 無属性の魔石を装着した剣を二本揃えれば、二つの属性の斬撃を操る二刀流魔法剣士になれるのでは!?

 やっばいめっちゃカッコ良さそう!

 ここは剣を二本発注して!


「無属性の魔石かぁ……ありゃ魔術師たちがほとんど買い占めてるから、一つ取り寄せるだけでもたけーぞ。予算どのくらいよ」

「……このぐらいは出せるんだが」

「ギリギリだな。まぁ昔馴染みのよしみだ。多少予算オーバーしてもなんとかしてやるよ」

「悪いな。ん、どうしたクロノス?」

「……ナンデモナイデス」


 やっぱり止めておこう。

 我が家の資産事情は知らないが、あまり我が儘を言うものじゃない。


「お義母さん。無属性の魔石って希少なんですか?」

「そうねぇ。大体魔石はマナの純度が高い場所でしか採れないのだけれど、属性付与がされてない魔石は研究の材料になったりするから、研究者と魔術師以外が手にするってことはないわね。だから希少と言えば希少ね。市場やお店に出てることはほとんどないわ」

「お義母さんは持ってないんですか?魔法が得意ですし」

「魔法が得意だからって、魔石を持ってるとは限らないのよ。それに魔石や魔術師専用の杖なんかは、素人が使うと危ないからって、国から発行された許可証がないと買えないのよ?」

「免許証か何かですか?」


 魔導具は扱いを間違えると大惨事になると聞いてはいるが、それを手に入れるのに許可証が必要なのか。

 学校といい魔導具の購入許可証といい、この世界って変なところで元いた世界に似てるよなぁ。

 でも魔石を含んだ剣は普通に買え……そもそも魔石自体が高いから一般人には手が届かないのか。


「じゃあ確かに請け負ったぜ。だが用意する魔石がアレだからな。そんなにすぐには造れねぇぞ」

「わかってる。この子が大人になるまでに出来上がってれば十分だ」

「ナッハッハッ!そいつは納期が遅くて助かるな!いい仕事ができそうだ!」


店主は大笑いすると俺の頭を乱暴に撫でまくる。

 職人気質なごわついた手だった。


「坊主、お前の剣は俺が丹精込めて最高の剣にしてやる。出来上がるまで死ぬんじゃねぇぞぉ?」

「大丈夫です。美人な女の子と結婚するまで死ぬつもりはありません」

「ぶひゃっひゃっひゃっ!こいつ昔のお前そっくりだな!同じこと言ってらぁ!」


 店主の言葉にジェイクがわざとらしく大きく咳払いする。

 俺の注文が終わると、今度はジェイクの剣のメンテナンスをすることとなる。

 話が長くなりそうなので、俺は一度店から出て外の空気を吸うことにした。

 店から出るとメイドさんが外扉の近くで待機していた。


「どうかされましたか坊っちゃま?」

「いえ、外の空気吸いに来ただけなんですけど……もしかしてずっと外で待ってたんですか?」

「はい。不審者が店に近づいたりしないか警戒するのもメイドの役目ですので」


 たぶん家族水入らずの時間を邪魔しない為なのもあるだろうけど、ずっと外で待っていて暇ではないのだろうか。


「だったら中で待ってればいいのに……ずっと外にいるの暇じゃありません?」

「いえ、これはこれで楽しいのでございます。少し視線を移すだけでも、見える物が違いますから」


 そういってメイドさんは目の前の人混みを見る。

 どういう意味かと俺も人混みに視線を向けた。


「警戒の為に人混みを見ますが、人々が何をしているか観察するのも面白いですから」

「人間観察ですか。そんなに面白いんですか?」

「そうですね……不審者を探す為に神経を研ぎ澄ませ続けるよりかは」

「それ、警戒するの途中で止めてません?」

「そんなことはございません。観察はあくまで、不審者早期発見の為ですので」


 無表情を浮かべながらメイドさんはあちこちに視線を移す。

 彼女にとって、人間観察は仕事をしながらする趣味みたいなもんなのだろう。

 たまに子連れの家族を見て小さく笑ったりしてる。

 本当は外の空気を吸ったらまた店内に戻るつもりだったのだが、俺も人間観察をしてみることにする。

 常に動き続ける人混みは、まばたきする度に色々な人が目の前を通り過ぎていく。

 背中に翼を生やした人、巨大な剣を背負った人、外套を纏った子供、見てるだけでも気になる人ばかりだ。


「……あ?」


 ちょい待て待て、なんで外套纏った子供がいるんだ?

 人混みに紛れてるとはいえ怪しさ満点だろ。


「キャッ!」


 外套の子供が誰かとぶつかり、人混みから押し出され転んだ。

 それを見て俺は外套の子供に歩み寄り手を差し伸べる。


「大丈夫?立てるか?」


 しかし変わった子供だ。

 夏が近づいて暖かくなってきたのに外套なんか着て暑くないのだろうか?

 あれ?

 もしかしてこの子、今朝方見た街路樹から屋敷を見ていた子じゃ……?

 声をかけると外套を纏った子供がこちらを見上げる。

 顔を上げた勢いで顔を隠していたフードが脱げ、お互いの視線が交わる。

 色白い肌、亜麻色のひと、長い翠色の髪──側頭部に桃白い花を咲かせた少女だった。

次回は土曜日か日曜日に上げます

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