第三十七話 入学
入学試験日、俺とレイはフロウにニケロース家の馬車に乗せてもらい、三人で隣村へと向かっていた。
「い、いよいよ、入学試験だね!」
「お前緊張しすぎだろ。レイを見ろ、いつも通りだぞ」
「お〜……綺麗な川だね。でも滑って落ちそう」
「滑るとか落ちるとか言ったらダメだよレイリスちゃん!」
フロウはやたらと緊張しているが、俺とレイはいつも通りである。
そもそも初等部の入学試験なんて、そんな大した物でもないだろう。
どうせ「将来の夢は?」とか聞かれて終わりだよ。
「ク、クロくん落ち着いてるね?き、緊張しないの?」
「初等部の試験だぞ?余裕余裕、ヘソで茶を沸かせるレベルだぜ」
「クロ、おへそで紅茶が沸かせるの?すごーい」
「さ、さすがだねクロくん。火傷が怖くて、おへそで紅茶なんて沸かせないよワタシ」
「説明が面倒だからそれでいい」
馬車の中でどうでもいい話をしながら学校へと向かう。
試験会場のCランクの初等部は木造の学校だった。
壁のあちこちに蔦が絡まってて、時代を感じる外観だった。
三階建で一階ごとに教室が三つある。
教室の中には木で出来た教壇と机が置いてあり、あぁ小学校っぽいな〜なんて事をしみじみ思いながら教職員の誘導に従う。
着いてからは割とスムーズだった。
三人とも別室に案内され、そこで数人の子供たちに簡単な質問をされた程度で終わった。
その後学校指定の制服を渡され解散となる。
もう一度三人で集まり、馬車に乗って帰ることにする。
「よっ、お疲れさん」
「クロくん、どうだった?」
「いくつか質問されただけだった。そっちもそうだろ」
「そ、そうなんだけど、ワタシ途中で噛んだりして上手く答えられなかったよ」
「ボクもいっぱい聴かれたけど、そんなに緊張しなかったよ?」
そんな会話をしながら自宅に戻る。
✳︎
入学試験から一週間後、制服の袖に手を通す時が来る。
いつも通りのボサボサの白髪頭を多少整え、紺の制服を着る。
姿見でおかしな所がないかチェックしたら、俺は気合いを入れる為に頬を叩いた。
「よし!行くか!」
晴れて今日から俺は初等部一年生、小学生となる。
入学式には親同伴だった。
長ったらしい校長の話を聞き、クラス分けが発表される。
フロウとレイとは別のクラスだった。
一学年は三組まで分かれており、俺は一組、フロウとレイは三組だ。
入学式初日から、各々の基礎学力を知る為と小テストを受けされられた。
問題は一桁の足し算の算術……
「舐めてんのか!」
思わずテスト中に声を上げてしまう。
周りの視線が痛い。
「どうかしましたか?クロノス君?」
「いえ、何でもないです。すいません」
先生に謝りながら席に着くと周りから失笑が漏れる。
いや、だって足し算なんだもの。
小学校だから分かっちゃいたけどさ……。
その後も受けるテストの内容は歴史だったり、絵本の文章問題だったりと正直受けてて退屈な物ばかりだった。
後日そのテストが手元に帰って来る。
結果は当然ながら、全て満点だった




