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二色眼の転生者《オッドアイズ・リ:ライフ》  作者: でってりゅー
第三章 ライゼヌスを覆う影
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第三十六話 新しい年

今回からドッキドキのスクールライフ『初等部入学編』はっじまるよ〜


 フロウがニケロース家の長男であると判明してから数週間が経った。

 まぁ平和な事平和な事。

 人攫いも起きないし、フロウを虐めてた三馬鹿は村からいなくなったし、禁断の森に続く抜け穴も塞がれたし、何の問題もなく冬を過ごしていた。

 蜘蛛の巣で見た溶解した肉を見たせいで、しばらく肉が食べられなくなったぐらいだ。

 別にフロウが男の子だと分かっても、俺とレイリスは態度を変える事なく接していた。

 今日は外が雪なのでニケロース家で三人一緒に遊んでいる。

 内容はお人形遊びなんだけど……


「すごいね、この人形フロウが作ったの!?」

「うん。母様や姉様たちに教わって」

「いいなぁ。ボクもこーゆー可愛い人形作りたいなぁ」

「じゃあ、一緒に作らない?」

「いいの?やったー!」

「……いや、普通教える側逆じゃね?」


 二人のやり取りにボソリと呟く。

 フロウが男の子だと告白してから、何だかフロウの女子力の高さに驚されてばかりいる。

 彼が持っているほとんどが自身の手作りだと言う。

 着ている服も自分がデザインして、それをメイドに手伝ってもらいながら自分で作ってもらってるらしいのだ。

 元々上の姉たちがデザイナーを目指していたらしく、彼の着てるフリル付きの服とかも姉たちが自分で作ったのを彼にプレゼントした物なのだそうだ。

 そりゃ着る服も余るわ。

 しかも料理も出来るらしく、お菓子とかたまに持ってきてくれたりするのだ。

 加えて美味しいのがまた何とも言えない。

 おそらく家事スキルだけで言えば、俺とレイリスの遥か上に立っているのはフロウだろう。

 前の事件をきっかけにフロウの中で何かが変わったらしく、以前よりも生き生きとして見える。

 と言うか、前よりも可愛くなってきてる気がする。

 大丈夫かな〜これ……フロウが同性愛者になるは別に止めはしないけど、もしまかり間違って迫られたりしたら、俺は守備範囲外だから困るんだよなぁ……


「ねぇ、クロも一緒にやろうよ!人形作り!」

「えぇ……まぁ、やるか」

「やった!じゃあ、ワタシの部屋から裁縫道具持ってくるね!」


 フロウは変わった子だけど根はいい奴だから、これからも仲良くしていくつもりだ。

 同性の友達は貴重だからな。




 雪が積もった後は、以前約束していた通り雪合戦を二人に教えて遊んだ。

 水合戦の時同様、雪で壁を作って、雪玉を投げ合う遊びはとても白熱したものだ。

 白熱し過ぎて俺とレイリスは全身雪にまみれになるまでぶつけあったけど。

 その後は雪だるま作ったり、雪で城を作ったりしてみせた。

 二人も不器用ながら動物の雪彫刻を作っているのは何とも見てて微笑ましかったものだ。

 俺は雪遊びする時は作ったのを眺めるより、作って壊す方が好きなのでちょっと変わった物を作ることにする。

 まず縦長に雪を積んで、四角くしてっと……


「クロくん、何作ってるの?」

「これはビルだ」

「ビル?」


 フロウとレイリスに自慢げに四角い長方形の雪彫刻を見せる。

 それは俺が前世で飽きる程見上げてきた建築物のビルだ。

 ちゃんとビルの横には社名が入れられる様に看板の形をした彫刻も作っておいた。


「ねぇクロ、ビルって何?」

「いい質問だレイリス。まずは横の看板に名前を入れる」


 雪で作った看板に指で『指定暴力団 ギルニウス教』と日本語で書く。

 日本語とか書くの久々でちょっと文字が歪んでしまった。


「えーと……これなんて書いてあるの?」

「ワタシも知らない文字。どこの種族の言語?」

「日本語」

「ニホンゴ……?」

「まぁ覚えなくていいよ」

「で、これでどうするの?」

「まずはビルの前に立ちます」

「うん」

「そして壊す」

「えっ……」


 ビルの正面に立ち一呼吸入れる。

 そして右腕を振り上げ、


「クソ神ァ"ァ"ァ"ア"!!!」


 魂の叫びと共に拳を持ってして雪のビルを殴り壊した。

 殴られたビルは元々脆く作ったおかげか簡単に折れて崩れ去る。

 あースッキリした!

 なんか頭に「何してくれてんの!?」って神様の声が聞こえた気がしたけど、多分気のせいだろ。

 俺はスカッとした気分で二人に振り返る。


「てな感じだ」

「えーと……楽しいのそれ?」

「気分がスッキリして俺は楽しい」

「ふーん?」


 どうやら二人には意味がわからないらしい。

 まぁ今の二人にはストレスとかほぼ無縁な話だし仕方ないか。

 そうして二人に雪を使った遊びを教えて日が暮れるまで遊びまわった。




 他に変わった事と言えば、レイリスが一つ大人になった。

 春に入る前にレイリスの誕生日があったのだ。

 その時はバルメルド家にニール、レイリス、フロウを呼んで盛大にパーティをした。

 誕生日ケーキはフロウとメイドさんたちと一緒に作り、プレゼントには別々に用意する。

 フロウは手作りのレイリス人形をプレゼントしていた。

 いい感じにデフォルメが効いた可愛らしい人形だ。


「お誕生日おめでとうレイリスちゃん。これワタシからのプレゼント」

「うわー!ボクそっくりのお人形だ!ありがとうフロウ!大事にするよ!」

「ふふ、どういたしまして。クロくんからもプレゼントあるんだよ」

「え、ほんとに?」

「おうともよ」


 俺からは赤いマフラーをプレゼントしておいた。

 作り方はフロウとユリーネに教わり、木の実のマークが入っている。

 編み物なんて初めてやるもんだから、すごいしっくはっくして完成したのは丁度今朝だった。

 いやー優秀な先生がいるとは言え慣れないことすると大変だな!


「ありがとう、クロ」


 てっきり大はしゃぎで喜ぶもんかと思ってたけど、笑顔で大事そうにマフラーを抱きしめてくれていた。

 何だろう、人形とマフラーで喜び時のテンション違うんだけど……?

 でも喜んでくれてるっぽいし、サプライズは成功みたいだ。


「ねぇクロ」

「ん?何だ?礼ならもういいぞ?」

「ボク、クロのことはクロノスじゃなくて、クロって呼んでるよね」

「うん?そうだな」


 クロノスは長いならクロって呼んでいいって最初に会った時に言ったの俺だからな。

 クロって呼んでくれてるのはレイリスとフロウだけだけど。


「それがどうかしたか?」

「ボクのこともさ……レイ、って呼んでほしいんだ」


 マフラーを抱きしめて口元を隠す様に上目遣いでお願いされる。

 照れながらお願いしてくるレイリスなんてかなりレアな仕草なんだけども……つまりどういうことだってばよ?

 俺のことを愛称で呼んでるから、自分も愛称で呼んでほしいってことなんだろうか?

 フロウと二人して顔を見合わせて首を傾げる。

 俺とフロウにお願いするなら理解できるんだが、何故か俺だけに対するお願いなんだよなぁ。

 イマイチ意図がわからないけど、まぁいいか! 

 レイリスの頼みだし断る理由なんかないな!


「わかったよ。じゃあこれからはレイって呼ぶな」

「うん。えへへ」


 快く承諾するとすごく嬉しそうにパタパタと走り去り兄のニールに自慢げにプレゼントを見せていた。

 ジェイクやユリーネにもプレゼントの話をしていると、ニールが俺たちの元まで来る。


「ありがとうクロノス君、フロウちゃん。あの子のあんなに嬉しそうな顔、初めて見たよ」

「いえ、俺たちもレイの嬉しそうな顔見てれ嬉しいです」


 な?とフロウに同意を求めると笑顔が返ってくる。

 レイはこの世界で初めてできた友達だけど、転生したばかりの時の事件を一緒に過ごしたからか不思議と親近感を覚える。

 一緒に過ごした時間も彼女が一番長いからな。

 なんてことを考えていると、ニールの体がガタガタと震えているのに気づく。

 彼は震えながら目を丸くして俺を凝視していた。


「ニール兄さん?どうしたんですか!?」

「レ、レイ?ど、どどどどうしてその名前を?」

「いや、今レイにお願いされたんですよ。これからはレイって呼んでほしいって」

「ふ、ふ〜ん?ふ〜ん!?」

「ちょ、ちょっとニール兄さん!?身体の揺れが激しくて怖いんですけど!?どうしたんですかお兄さん!?」


 俺がお兄さんと呼んだ瞬間、ニールはビクッと直立するとそのまま倒れてしまった!


「兄さァァァァん!?」


 突然倒れたニールに驚きその場は騒然とする。

 ジェイクに状況を説明すると、


「エルフは出産時に真名とは別に仮の名前が与えられる。それは家族しか知らないものなんだ」

「なんで別の名前を?」

「真名は魂の名と考えられていて、それを他人に知られると操られ悪い様にされてしまう。だから産まれた時に二つの名前を名付けるんだよ」

「じゃあ、その真名を家族以外に教えるのって……」

「恋人か夫となる人にだけなんだよ。だからそれはプロポーズと同じって意味があるからしてね?」

「おふぅ……」


 ナンチューコッタイ。

 つまり彼女の真名はレイで、俺が普段呼んでいた仮の名前がレイリスだったのだ。

 そして真名を教えられた俺は、レイからプロポーズされたってことになる。

 五歳でプロポーズされるとか俺のモテ期来るの早すぎじゃない?

 それを聞いたからニールは卒倒したのだろう。

 そりゃ可愛い妹がいきなり大切な真名を教え、しかも婚約相手まで作ってたら俺だって卒倒するよ。

 しかもレイ自身がその事を分かってないのがまた何とも厄介なのだ。

 とりあえずその件はニールと話し合い保留とされた。

 俺たちが成人した時にお互いの意思を尊重するようにと、俺だけが厳重注意されることとなる。

 真名の事も考え、お互いの家や二人の時のみだけレイと呼ぶ事を許可された。

 だってレイって呼ばないと拗ねるんだもの。

 それ以外の場所ではこれまで通りレイリスと呼ぶようにとのこと。

 一応彼女にも「もう自分の真名を絶対に信頼できる人以外に教えるんじゃないよ」と各々で注意したら、


「え?だってクロは、ボクにとって家族みたいなものだから教えても大丈夫でしょ?」


 みたいなことを真顔で言い切ったのだ。

 もしかしてこれ、俺のことを異性としてではなく兄弟か何かと思ってるんじゃね?

 逆に脈無しなんじゃないかなこれ……。

 誕生日会をしてもらったお礼にとレイから、俺の誕生日を聞かれたんだけど、この体がいつこの世界に生を受けたのか俺は知らない。

 なので、俺がバルメルド家に迎え入れられた日を誕生日としておいた。

 俺がバルメルド家に養子として入ったのは春なので、意外と近かったりする。

 これから俺の誕生日会も楽しみだ。

 そんな些細な事件がありつつも、新年は穏やかな日常と共に流れていった。


                     ✳︎


 冬が終わり、春が近づいてくる。

 俺にとってはこの世界で初めての春だ。

 散っていた葉や花も蕾を咲かせ始めている。

 本当は若葉を見て春の訪れを喜ぶのだが、どうも禁断の森での出来事を思い出してしまい素直に楽しめない。

 最近では朝の剣の鍛錬にレイとフロウが一緒にいる。

 見学してる訳ではなく、俺と一緒に鍛錬をしているのだ。

 俺と同じ訓練内容をね。

 どうして一緒に訓練するのかと聞いたら「強くなりたいから!」と言われた。

 フロウはまだ強くなりたいと言う意味と目的は分かるんだけど、レイだけはどうして強くなりたいのか教えてくれなかった。

 ジェイクも特に追い返す事はしないので、ほとんど毎朝から三人で訓練している。

 だが半年以上も前から鍛錬していた俺には全然追いつけないので、これからの成長に期待と言った感じだ。

 そんな感じで日々鍛錬を積みながら力を付けていた頃。


「クロノス、後で私の部屋に来なさい」


 ジェイクに仕事部屋まで来るように言われる。

 また何かやらかしたかな〜?とちょっとビクビクしながらジェイクの仕事部屋に向かうと、待っていたのはジェイクとユリーネの二人だった。

 仕事部屋に両名がいることは初めてなので緊張が高まる。

 やっべ〜マジで何かやらかしたかな俺!?

 心当たりが多すぎてどれを叱られるかわからねぇ!

 あれかな、また隠れて雷属性の魔法の練習してたことかな!?

 それとも水辺の近くなら大丈夫だろうって、川辺で火属性の魔法使って大爆発起こしたことか!?

 それとも、右眼の『夜目が利く能力』を使って暗い部屋で本読んで夜更かししてたことかもしれない!

 ど、どうしよう……。

 全身から汗が溢れ出る。

 お、落ち着け、落ち着くんだ。

 クールになるんだクロノス・バルメルド!


「……まぁ、そう堅くなるな。説教ではないから」


 え、説教じゃないの?

 あーなんだビビって損した!

 ジェイクに「座りなさい」と促され、両親の向かい側のソファーに座る。

 しかし、説教ではないのなら一体何の話なのだろうか?

 焦らされるのも嫌なので自分から切り出すことにする。


「それで、話とは?」

「君が来てもうすぐ一年経つし、そろそろ頃合いだと思ってね」

「はぁ?」


 頃合いとは?

 跡取り問題とかか?

 と思い至ったのだが、ジェイクの話の内容はそれとはだいぶ違った。


「クロノス、学校に通ってみないか?」


 予想してたのとは違う言葉が出てくる。

 それは学校入学の話だった。

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