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間話 フロウ・ニケロース

フロウに関するちょっとした話です



 フロウ・ニケロースと言う少年の話をしよう。

 彼は小さな村の領主でニケロース家の長男である。

 母親と三人の姉、そしてメイドたちに玉の子のように大事に大事に育てられた。

 長男と言うのもあるが、ニケロース家にとって待望の初めての男の子だったのだ。

 彼の両親は初めての男の子と言う事で大層喜んだが、その頃から父親が他の家の娘と密会していたのが判明し、大喧嘩の末に離婚することとなる。

 それがフロウ・ニケロース当時三歳の出来事である。

 それからは女だけしかいない屋敷で彼は育つ事になる。

 遊び相手は常に姉たちで、遊ぶ内容もおままごとやお人形遊びなど女の子っぽい物が多かった。

 フロウが元々中性的な面持ちをした少年だったと言うのもあり、姉たちは自分たちの昔着ていたお下がりをフロウに着せて着せ替え人形のようにしていた時期があった。

 メイドと母親は当然それを止めようとしたのだが、その余りの可愛さに止めるのではなく助長する側となってしまったのだ。

 結果、フロウ・ニケロースは自分が女の子であると思い込み成長することとなる。

 日々成長する中で、フロウは姉や母やメイドたちの動きをよく観察し、彼女たちを模範としていくようになる。


 まずは言葉遣いを真似し、一人称がぼくからワタシに変化した。

 それを聞いた姉たちは大はしゃぎ、母親とメイドはすぐにそれを止めさせようとしたが……可愛いから止めた。


 次に服装が男物から姉たちのお古のスカートやフリルが付いた物に変わった。

 それを見た姉たちは大はしゃぎ、母親とメイドはすぐにそれを止めさせようとしたが……可愛いから止めた。


 そして姉たちに化粧の仕方を教わり、誰が見ても完璧な女の子に変わった。

 それを見た姉たちは大はしゃぎ、母親とメイドはすぐにそれを止めようとしたのだが……可愛すぎて悶え死んだ。


 そしてフロウ・ニケロースは男の子ではなく完全なる女の子として生活していくことになったのだった。

 彼が五歳の誕生日を迎える頃になると、姉たちは他の家へと嫁いで行き、ニケロース家にはミカラとフロウ、そしてメイドたちのみとなってしまう。

 遊び相手がいなくなったフロウは、その日初めて外に遊びに行きたいと言った。

 ミカラやメイドたちはしばし悩んだが、ずっと家で遊んできたフロウに屋敷の外を学ばせるいい機会だと了承することにする。

 最初はミカラとメイドが付きっきりで外出していたのだが、外に出る回数が増えてくると一人で外に遊びに行きたいと言い出す。

 そこで問題が発生した。

 同じ村に住むモーチィ家の長男であるカーネ・モーチィに虐められることになったのだ。

 彼らは最初、ニケロース家の長男であるフロウを迎え入れようとしたのだが、フロウが女の格好をした男の子だとわかると態度を一変させる。

 三人でフロウに罵倒や暴力を振ったのた。

 しかし、そこを偶然通りかがった同じ村のクロノス・バルメルドとエルフの集落に住むレイリスによって助けられる。

 助けられたのをきっかけに、クロノス・バルメルドとレイリスと友人関係となる。

 彼ら三人が共に行動しているのは村でも有名だった。

 と言いのも、毎日のようにカーネ・モーチィとその友人たちがフロウに罵倒を浴びせようとし、それを魔術を使用し撃退するクロノス・バルメルドが懲らしめるのが村人たちには日常的な光景となっていたのだ。

 しかしフロウは友人二人には自分が本当は男の子であることを隠していた。

 打ち明ければ、二人は自分から離れてしまうのではないかと思ってのことだった。

 だがある日、フロウは大人たちの言い付けを破り、禁断の森と言う魔物のみが生息する立ち入り禁止の場所へと入り込んでしまう。

 彼は男でありながら女の格好をして、友人二人に守られる自分を変える為、子供たちの間で流行っていた『禁断の森に入り一人で奥まで行き戻った者は一人前として認められる』と言ういわゆる度胸試しに挑戦したのだ。

 ところが、森の中で冬眠を前に餌を探し周っていた蜘蛛の姿をした魔物に襲われることとなる。

 彼が行方不明の後、村では捜索隊が結成されるが発見には至らなかった。

 だがフロウを助けたのは当時五歳のクロノス・バルメルドだった。

 騎士団の報告書ではフロウを助けた少年の名前は伏せられ、一般冒険者が救出した事になっている。

 これはクロノス・バルメルドの父、ジェイク・バルメルド騎士団長の指示である。

 齢五歳の少年が八十以上の魔物を撃破したと本部が知れば、必ず引き抜こうとするだろう。

 だがジェイク・バルメルドは、息子にはまだ子供として安全な生活を送って欲しいと願っての行動 だったと騎士団本部の上層部に説明している。

 行方不明事件の後、フロウは友人二人に自分が男であると告白した。

 クロノス・バルメルドは大層驚いたそうだが、レイリスはそこまで驚かなかった。

 その後も彼らは良き友として、永く付き合って行く。


「彼らに出逢えた事は、ワタシの人生でもっとも素晴らしい出来事であった」


 彼は後に、そう言い残したと言う。



次回から三章となります

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