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第二百四十一話 嫌な勝ち方

11月になりましたね!FGOとアズレンとシャニマスと、イベント一斉に始まったから全部終わらせるのに必死でここ1週間ぐらいまともに執筆してないです!(血涙)

まぁ、2ヶ月分ぐらいストックはあるんで多少サボっても問題はないんですけどね

今週もよろしくお願いします!


「オラァッ!!」


半獣化により手足が狼のように変貌したルーヴの姿が消えたかと思うと、突然目の前に現れ、下から抉るようにして腹部に拳を叩き込まれた!

目の前に来ていることは目では見えていた(・・・・・・・・)のに、身体が反応することができない。

胃を押し潰されそうな程の衝撃と痛みに襲われ、腹から身体が折れるんじゃないかと思わせるぐらいに肉体が悲鳴を上げる。

そのまま俺の身体は打ち上げられ宙を舞う。

ルーヴもまた跳躍し、打ち上げられた俺と同じ高さまで跳び上ると、追い打ちをかけるようにして俺は背に踵落としを喰らい、勢いよく床に全身を叩きつけられた!


「クロノス!」「兄貴!」


宙に舞ってから地面に叩きつけられた俺を見てアズルたちの声が上がる。


「さすがにこれ喰らったら、しばらくソイツは起きねぇよ。勝負はアタシの勝ちってことでいいよな?」

「…………」

「何も言わないってことは、それでいいってことだよな?なら、この勝負はアタシの勝ちってことで。じゃあ、約束通りこれからもアタシはアタシの好きにやらせてもらうぜ。クロノス・バルメルドにもよろしくな」

「…………痛ッてええええええええええ!!」


ルーヴが立ち去る足音が聞こえ、呼び止めなければ!と声を出した結果の第一声がソレだった。

いや、違うんだ!

声を出そう出そうとしてたんだけど、腰に踵落としを喰らった上に叩きつけられた痛みでまともに声が出せなかったんだ!

本当は「待て、まだ勝負は終わってないぞ!」とかカッコよく言ってみたかったんだけど、そんな余裕全然なかった!

割とマジで痛い!!

腰折れてないよなこれ?

まだ俺の意識が途切れていないことに周囲から歓声が沸き起こる。


「うおおおお兄貴ー!!」「立ってくれ兄貴ー!」

「立ち上がれクロノスー!ここで立ち上がれたらカッコいいゾー!」

「ッあァ!いや、これ……おっふ、つおッ、こおおぉぉ……!」


アズルに囃し立てられすごく腹が立つのですぐ立ち上がろうとするが、冗談抜きで意味不明な言葉しか口からは出てこず、起き上がるのにも腰が痛くてその場で腰を抑えながら悶え暴れる。

それでも何とか立ち上がり、勝負は決まったと思い込んでいたルーヴに強がってみせる。


「いっつッ……!ざ、残念だったな、ルーヴ。これぐらい、何てことない、ぜ……ッ!!まだ勝負は、終わって、な──ああああァァァァッ!!待って!タンマタンマタンマ!!やっぱ結構痛い!!」

「クロノス負けんなよ〜!カッコいいゾ!頑張れ〜!!」

「おいアズル!テメェさっきから他人事だからって、適当なこと言って煽るじゃねぇ!!俺、腰の骨折れてないかな!?病院行っていい?ねぇ俺病院行ってもいい?」

「ダメっスよ兄貴!ここには医者の家系のやつが何人かいるから、終わったらそいつらが診てくれますから!!」

「ええぇぇ……せめて本職にお願いさせて」


強がりを見せたかったが、やっぱり無理だった!

それでもアズルやバーバリと問答している間に痛みも和らいだ気がするし、まだルーヴと戦えそうで


「シャァッ!」

「うおぉ!?」


待っていてくれたはずのルーヴがいきなり爪を立てて襲いかかってくるので、咄嗟に盾で受け止める!

いや、実際には俺が勝手に中断しただけで同意を得た訳ではないのだから、いきなり攻撃されても文句は言えないんだけども!

爪を受け止められ、そのまま力任せにおしこもうとするルーヴと力比べに発展する。


「オマエ、さっきのでも倒れないとか本当に人族かよ……ッ!?背の高いドワーフ族の間違いじゃないのかッ!?」

「変なもん混じっちゃってるけど、生物上は人族だよ……!昔?というよりかは、学園に来る前か。死ぬ程痛い目に遭ってねぇ!あれぐらいの痛みだったら、悶え喚けば耐えられるんだよ!」

「なんだ、魔物にでも半殺しにされたのか?」

「ああ、魔王ベルゼネウスに右腕と左脚切り落とされて、剣で心臓を貫かれそうになった」

「ハ、ハァ!?」


言っている意味がわからないと、ルーヴは素っ頓狂な声で眉を顰める。

そうだよな、魔王に殺されかけたとか訳わかんないよな……


「俺だってわかんねぇよ!」


未来での出来事を思い出してちょっとセンチメンタルになりかけたが、それを振り払うようにルーヴの腹を蹴り飛ばす。

蹴られた衝撃でルーヴは数歩後退りするものの、彼女の目がこちらを捉えた瞬間、右肩に衝撃を受けて俺は床に転がり倒れる。

ルーヴは先程まで俺がいた場所の後方に立っていた。

突然立ち位置が変わったルーヴを見て、バーバリたちがどよめく。


「な、なんだ、何が起きたんだ?」

「気がついたら、兄貴が倒れてルーヴが移動してやがる……」

「あれは……ルーヴが僕らの目には追えないほどのスピードでクロノスに攻撃したんだ。恐ろしく速い攻撃、僕でなきゃ見逃しちゃうね」

「ア、アズル、おまえルーヴの攻撃が見えてるのか!?」

「いや、今のは言ってみたかっただけ」


ドヤ顔で解説した癖に見えないと答えるもんだから、「てめぇふざけてんのか!?」とバーバリたちに怒られるアズル。

何やってんだよ、と思いながらも実際、ルーヴの動きは獣の手足となったからか先程よりも速い。

左眼のおかげで姿は見えていても、身体の方がルーヴの動きについていけてないのだ。

何度か攻撃に合わせ反撃しようとするが、俺が反撃する間も無く、すれ違いざまにルーヴの一撃を防ぐだけくらいしかできない!

やっぱり魔道具のグローブとブーツっていい代物だったんだな……あれがあれば対処できるのに……いや、今ここにないものをねだっても仕方ないか。

それに未来でベルゼネウスと道具頼りの戦い方をしても全く歯が立たなかったんだ。

これから先も同じようなことは何度もあるだろう。

その度に魔道具がない……『だから仕方ない』を言い訳にして、いちいち勝負を諦めたり心折れてたらキリがない。

慣れておくんだ、将来魔王と戦う時になっても心折れないように。

だからこの戦いも、絶対に勝つんだ!


「氷よ!」

「ッ!」


ルーヴの高速攻撃を受けて地面を転がりながら、魔法でルーヴの足元を凍らせようとする。

しかし、魔法を察知したのかルーヴは立ち止まって凍らせた床を避けて移動した。

何度も高速で移動するルーヴの動きを左眼でじっと追いかけ続け、だんだん攻撃する瞬間の移動パターンがわかってきた。

でもやっぱり、水で足を滑らせた時と同じ方法には引っかかってくれないようだ。

だけど、何度も攻撃を受けて転びまくったおかげで、ルーヴの動きはだいたいわかった。

目も身体も慣れてきた。

あとは、頭の中で描いた戦法で戦ってみるだけだ!


「もう似た手にはかからねぇぞ!」

「だよな。氷よ!」


また高速攻撃を仕掛けようとするルーヴに対して氷魔法を発動させる。

ただし今度は足元を凍らせるのではなく、俺とルーヴの間に進路妨害の役割を持たせた人一人を覆える程の氷の壁一枚を生成した。

が、目の前に壁一枚ができた程度ではルーヴが止まるはずもなく、普通に氷の壁を大きく迂回し接近してくるので、


「氷よ!突き出せ!」


今度は氷柱を俺とルーヴの目の前に生み出し自衛する。

当然ルーヴはそれすらも危機察知し、飛び退いて避けてみせた。

もちろん、俺が着地地点に水か氷の魔法を使うんじゃないかと警戒しながら。

自分で作った氷柱の防壁を消滅させ、俺の背後に回ろうと走り出すルーヴの進路上にもう一度氷の壁を生み出す。

今度は前よりも背の低い、丁度俺らの腰半分ぐらいの高さで。

僅かな舌打ちが聞こえたのち、ルーヴをそれを避けずに飛び越えてみせた。

腰ぐらいの高さなら、走りながらでも飛び越えられるのか……

ルーヴの動きを見て感心しながら、あとは同じことを繰り返す。

氷魔法で高さの異なる壁をルーヴの進路上に作り続ける。

飛び越えられるのか壁は飛び越え、無理そうな壁は避けるのを繰り返すルーヴ。

たまに壁の高さが低すぎて飛び越えた拍子に攻撃をもらったりするが、直撃だけは避けようと身体を逸らして最小限の痛みになるよう努める。

ただひたすらその繰り返しを行い、十回目ぐらいで俺から攻めてこないことに憤りを感じたのか、ルーヴの苛立ちが表情に出てくるようになった。


「おいテメェ!さっきから氷で邪魔するばっかで、全然アタシに攻撃してこねぇじゃねぇか!!やる気あんのか!?」

「あるからこうして魔法使ってるんだろ。お前だって、俺が足元から氷柱出すのが怖くて近づいてこないじゃないか」

「あぁん!?」


聞き捨てならないとルーヴの足が止まり、怒りを込めた声音が聞こえた。

いいぞ……そのまま乗ってこい。


「足元がそんなに怖いか?そうだよな。さっき俺の魔法で足滑らせて蹴られたもんな!氷柱が怖くて近づけないのも無理ないよな!」

「上等だよ……そんなに近づいて欲しいなら、近づいてやるよ!!」


挑発に乗ってきた!

回り込むのをやめて正面から俺に接近しようと試みるルーヴ。

この状態ならきっと……!


「氷よ!突きだせ!」


正面から突っ込んでくるルーヴに対し、扇状に広がるようにして氷柱を生成する。

丁度、お互いの腰ぐらいの高さで。


「そんな高さ(・・)で、アタシが止まると思ったのか!!」


扇状に展開した氷柱を前に、ルーヴは止まることも迂回することもせず、跳び越すことで俺に接近しようとする。

いや、跳び越すことを──選ばせることができた(・・・・・・・・・・)

跳躍したルーヴはもうどこにも逃げることはできない。

こちらに向かってまっすぐに跳んだ以上、俺からの攻撃を避けることはできない!


「跳んでくれてありがとう!!それを待ってたんだ!!」

「はぁ!?」


今度は俺がルーヴに笑ってみせた。

右足を一歩下げ、足全体にマナを溜める。

ブーツの魔道具を使ってた時の感覚を思い返しながら真似し、頭の中で右足が岩石と同じ強度だとイメージし、ぐっと力を込め、


「さっきのお返しだ!喰らいやがれェェェェ!!」


その場で跳び上がり回し蹴りを繰り出す!

俺を捉え損ねたルーヴの腰に、土魔法で強化された回し蹴りが叩き込まれ、彼女は吹き飛び床を転がり腰を悶え苦しむ。


「があーッ!つぁッ、痛ッてぇぇぇぇ!!」

「だろうな。俺もめちゃくちゃ痛かった」


もんどりうつルーヴに頷きながら歩み寄る。

俺の声と足音を聞いて、耳がピクッと動いて立ち上がろうとする彼女の目と鼻の先に拳を近づけた。

それを見て全身を強張らせ、ルーヴの動きが完全に止まるのだった。


「俺の勝ちか?それとも、まだ続ける?」

「……チッ。分かってて聞くんじゃねぇよ……あー負けだ負け!アタシの負けだ!!チクショウが!だああああ!嫌な負け方だ!!」


舌打ちしながらルーヴは負けを認めてその場に寝転び手足を放り投げる。

それを聞いて俺も拳を下ろし、ルーヴに手を差し伸べた。

クラスメイトの最後の一人に嫌な勝ち方で勝った。

これで俺は、クラス0の全員をホームルームに出席させる条件を満たすことができそうだ。

次回投稿は来週日曜日22時からです!

執筆欲に繋がるので評価、感想、レビューをどうかよろしくお願いします!

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