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第二百四十話 爪と拳

コードギアスとか見終わって、今はアズレンとかビースターズとか追いかけてます


「今度は……俺の番だ!!」


ルーヴの不意打ちのハイキックをバックラーで防ぎ、彼女の右足首を右手で掴む。

それを思い切り引き寄せ、俺は反時計回りに身体を捻らせながら、バックラーを付けた腕で裏拳を繰り出す。

しかしルーヴは左足で床を蹴り、俺に掴まれた右足と同じ高さに上げると上半身をシーソーのように床まで下げ、攻撃を躱してみせる。

頭が床に激突するよりも早くルーヴは床に両手を着く。

そして上げていた自由な左足で、今度は俺の後頭部を蹴ってきた!

さすがにそれを防ぐことはできず、軽く小突かれた程度の痛みだったが、俺は前のめりに倒れそうになり掴んでいた足も放してしまう。

振り返ると既にルーヴは跳ね起きており、俺を見て楽しそうに笑っている。


「ハハッ!いいなオマエ!アタシの一発目を防いだ奴は、この学園じゃオマエが初めてだ!」

「俺の一発目避けたあんたに言われても嬉しくねーッよ!!」


今度はこっちからだ!と拳を繰り出すが軽いステップで避けられてしまう。

相変わらず余裕そうな笑みを浮かべながら。

クソッ、やっぱり動きが速くて掠りもしない!

こっちが捉えようとしても軽々と躱される!

完全にこちらの動きを見切られてる。

その上──


「おらァッ!!」

「うおっ!?」


ステップで避けられたと思ったら、いつのまにか背後に回られ、回し蹴りが飛んできた!

慌てて左腕のバックラーで受け止めようとするが、盾部分ではなく肘に受けてしまい、吹き飛ばされて床を転がりながらもすぐに立ち上がった。

回し蹴りを受けた左腕の肘からじんわりと痛みが広がる。

未来で使ってた盾と違ってバックラーは小型で守れる範囲が狭い。

つい以前の癖で盾で受けれる!と思って防ごうとしたが、バックラーの面積が小さいのを忘れててまともに受けてしまった。

やっぱり以前のと今のとでは使い勝手が違いすぎる……おのれ子供の体め……!

いや、自分の身体に文句言っても仕方ないか。


「いやしかし、参ったなこりゃ……全ッ然攻撃が当たらねぇ」

「兄貴、しっかり!」「負けないでくれ!!」


弱気な呟いているとバーバリたちの声援が飛んでくる。

でもこれ、本当に勝てるかどうか怪しいぞ。

なにせ相手は身軽で一撃も大の男並みに重い。

対してこっちは、動きは目で追えてるけど身体は全く追いつけていない。

それにルーヴは格闘戦には慣れてるみたいだが、俺は剣を落とした時の防衛に役立つ程度にしか格闘術は習ってない。

明らかに殴り合いに関しては向こうの方が慣れているみたいだ。

こっちが拳を振るうとギリギリ届かない範囲に身を躱して反撃してくるのは、相当戦ってきてる証拠だ。

普通に殴り合いしても勝てる見込みはないだろう。

かといって、攻撃に魔法を使えば大惨事になること間違いなし。

お咎めは絶対に避けられない。


「なら、絡め手だ」

「ブツブツ言ってねぇで来いよ!!」


一向に俺から攻めて来ないからか、痺れを切らしてルーヴが飛び込んできた!

そっちから来てくれるなら好都合!

ルーヴの拳と蹴りを防ぎ、いなす──動きは目で追えているんだ、なら防ぐくらいはしてみせる。

問題はここからだ!


「オラオラ!守ってばっかいないで、オマエも攻撃してこいよ!!」

「お望みとあらば……!」


前に体重をかけながら拳を繰り出すルーヴを左に避け、俺も拳で殴り返そうとする。

それに合わせ、ルーヴはすぐさま床を蹴りステップで避けて……ここだ!!


「水よ!」

「えっ!?うぉっ!?」


水魔法でルーヴが着地する場所に水溜りを生成した。

着地地点に水溜りがあるとは知らず、訓練場の床と学園指定の革靴なのも相まってルーヴはバランスを崩し盛大に転んだ!

魔法にはこういう使い方もある。

立ち上がる前に一発入れれば……!


「テメッ……魔法で!?」

「使うは無しと、言われてはいないんでね!!」


立ち上がろうとするよりも先に右足で蹴り上げようとするが、両腕でガードされてルーヴが後方に転び倒れるだけに留まる。

今ので腹か鳩尾に入ってれば勝てていたが、やっぱりそう上手くはいかせてくれないらしい。


「アッハッハッ!オマエ、女相手でも容赦ないな!?」

「なんだ?女の子だし、気を使って取り押さえるぐらいの手加減した方がよかったか?」

「いやぁ、喧嘩に男だ女だなんてのを持ち出して手加減する奴の方が一番ムカつく!!」


獣とも見間違える程の笑みを浮かべながらルーヴが突撃して迫ってきた!

振るってくる拳を手で払い落とし、足技は盾で受け止める。

さっきと同じように、ルーヴが大振りの攻撃を仕掛けるまで攻撃を受け続けて隙を待つ。

足払いを跳躍して躱し、突き出される拳を右に左にと避け、胸ぐらを掴まれ投げ飛ばされても受け身を取りながら着地する。

そこに追い打ちをするようにルーヴが飛び蹴りを繰り出してきた瞬間、風魔法を発動させた!


「風よ!」

「うわっぷ!」


強風に晒され飛び上がっていたルーヴはまたバランスを崩して床に転げ落ちる。

ルーヴたちの背後で観戦していた生徒たちも強風を受け悲鳴が上がるが、せいぜい突風に吹かれて尻餅つく程度の威力しかないので気にしない。

転げ落ちたルーヴが跳び起き、体勢を直す前に俺は詰め寄ろうと駆け寄り、


「二度も同じ手が通じるものかよ!!」


また足元に水溜りを作られたら堪らないと、今度は大きく跳び退いて俺から距離を取ろうとしている。

でもそれでいい、俺だって同じ手を通用するとは思ってない!


「とは限らないのよね!風よ!!」


跳び退くルーヴを追いかけるようにして床を蹴り、風魔法で足元に突風を巻き起こして飛距離を伸ばす。

自らの目の前まで俺が接近してルーヴが三度驚き、俺は飛び上がった勢いのまま飛び蹴りを喰らわした!

腹部に蹴りを受けた襲撃でルーヴは更に後方へと吹き飛び、観戦していた生徒たちが飛んできたルーヴを避け、彼女は床を転がり壁際まで吹き飛び、起き上がる気配は──


「クッ、ククッ……!アハハ、アッハッハッ!!」

「あいつ……笑ってやがる……」

「ええぇぇ、怖」


起き上がらず、倒れたまま突然笑い出すルーヴにアズルたちが気味悪がっている。

正直俺もちょっと怖い……

誰もが不気味?に笑うルーヴを怖がり距離を離すと、俺に蹴られたのも何とも無さそうな表情でルーヴは起き上がった。


「いやぁ、本当に久々だ!この学園に来てからまともに戦える奴がいなくて面白味がなかったんだけどよ。アタシの蹴り防いで、逆に蹴り入れて来たのはオマエが始めてだ!アタシの故郷だと、みんな当然のように蹴り入れてくるのにな!」


「そりゃそうだろうさ……」とルーヴの話を聞きながら呟く。

ルーヴ・ヴィヴァントの故郷となれば獣人族だけが住む里ってことになる。

いるのは当然ルーヴよりも戦闘に慣れた樹人族の戦士たち、まだ子供のルーヴじゃ相手にもならないだろう。

たぶんだけど、ルーヴがバーバリたち同世代を相手でも圧倒するのもそれが理由だろう。

自分より格上相手に戦い続けていたから物足りない。

特にこの学校は貴族の通う学校だから、ルーヴみたいにゴリゴリな戦闘好きに付き合おうとする子供はいるのかと問われれば、いないだろうなぁ。

俺がルーヴの相手をできているのだって、左眼と未来での経験があるからで、ルディヴァの件がなかったらバーバリたちと同じように一発目を貰って負けていたはずだ。


「じゃあ、蹴り入れたから俺の勝ちってことでいいのか?」

「あ?んなワケねぇだろ!せっかく楽しくなってきたんだ……もっと、楽しもうぜ!!」


立ち上がったルーヴが靴を脱ぎ捨て、靴下をも脱ぎ去った。

何をするつもりなのかと様子を見ていると、ルーヴの手足に変化が起き始める。

普通の女の子らしい細い手足に体毛が伸び始めたのだ。

体毛に覆われながら、短かった爪も鋭く伸び始め、まるで獣の手足のように変貌を遂げる。

初めて見る獣人族の肉体変化を前に俺は困惑してしまう。


「え、何それ……え、何それ!?」

「兄貴!ありゃ半獣化だ!ルーヴみたいに、別種族の血が混ざってる獣人族が使える能力みたいなもんで、体の一部分を獣としての姿に戻せるんだ!」

「それって、戻るとどうなるの?」

「さっきより力も速さも上がるってことだ!」


バーバリが俺とアズルの疑問に答えてくれている間にも、ルーヴの半獣化は進み、手と足がほぼ獣としての姿に戻っていた。

全体を見ていると、どことなく狼を彷彿とさせる。


「よっしゃ、本番行くぞー!!」


目を爛々と輝かせ、ルーヴが地面を蹴って跳び上る。

その姿を脳が認識した時にはもう、俺の身体は宙を舞っていた。

次回投稿は来週日曜日22時からです!

評価と感想欲しいんでお待ちしてます!!オナシャス!!

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