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第二百三十九話 VSルーヴ

新シリーズアニメ始まりましたが、最近スクールデイズとコードギアスを見始めました


クラス0でホームルームに出席してない最後の女子生徒、ルーヴ・ヴィヴァントを説得する為に彼女と戦うこととなった。

この勝負は彼女からの提案なので勝てば素直に従ってはくれるだろうけど、負けたら二度と命令はするなという条件付きだ。

昼飯を食べ終えてから俺たちは職員室のパジーノの元を訪れ、訓練場の鍵を借りて開放しておいた。

今日はどこのクラスも午後から訓練場を使う予定がないので放課後まで使っても問題ないそうだ。

昼食を終えたら、もう運動したくない生徒が多いから午後の授業では体を動かすことはないんだとか。

まぁその方が間違っても他の生徒が巻き添えになることはないので、安心といえば安心だ。


「って思ってたのに……なんでお前らはいるかなァ!?」


訓練場を開放するなりクラス0の生徒たちがぞろぞろと集まってきた!!

全員俺とルーヴの一戦を観戦する為に集まっている。

呼んでもいないのに面白半分で見に来やがって!!


「へっへっへっ、兄貴がおいらたちの敵討ちをしてくれるっていうから、みんなで応援に来ました!」

「兄貴!ルーヴの奴をガツンとやっちゃってくだせえ!!」

「いや……俺は別に、お前らの敵討つ為にルーヴと戦う訳ではないんだが?」


どうやら彼らの中では、自分たちが敵わなかったルーヴ相手に俺が敵を討つみたいに伝わっているらしい。

そんな羨望の眼差しで見られても困るんだけどなぁ……


「おーいクロノスー!武器持ってきたぞー!」


クラスメイトたちにあらぬ期待を抱かれていると両手に剣と|バックラー(盾)を抱えながらアズルを駆け寄ってきた。

抱えているのは俺が学園に預けていた剣と盾だ。

というか、持って来てくれなんて頼んでないはず……


「いやー、子供の身体で剣と盾持ってくるのは辛かったよ。はいこれ」

「え……俺、お前に武器持ってこいって頼んだ覚えないけど?」

「だろうね。僕が勝手に持ってきただけだもん。やっぱ喧嘩となればさぁ、武器はいるでしょ!!異世界なんだし!銃刀法違反も存在しないしさ!!」

「いや、確かにないけど……傷害罪みたいなのは普通にあるからこの世界。使わないから」


そもそも生徒同士の喧嘩に武器を持ち出す奴があるかよ……殺し合いする訳じゃないんだぞ。

アズルが差し出した剣を押し返し、受取拒否すると「えぇ〜」と抗議の声が上がる。


「なんだよ、せっかく持ってきたのに……」

「てかそれ、また倉庫番の人に賄賂渡したな?俺そんな金持ってないから払ってやれんぞ」

「ん?あぁ、いいよ金は。お前の武器を持ってきたのはついでだから」


ついで、という言葉にアズルの腰に注目する。

彼の腰の左右にそれぞれ、黒と白の剣が携えられていた。

愛剣の“ショットオブダーク”と“フラッシュオブライト”だっけ?

それをぶら下げているのが見えた。


「なんでお前、自分の剣まで持ってきてるんだ?」

「フッ、僕も戦うからに決まってるじゃないか!」

「えぇ!?ルーヴからは一対一(サシ)の勝負って言われてるんだぞ!?なのに、お前が参加したら……」

「大丈夫だって!別に二人でやっちまおうって訳じゃなくて、クロノスとの一戦前に僕が先に挑むだけ」

「ルーヴに挑む?お前がぁ?」


バーバリですら負けて怯えさせる程の相手にアズルが挑むのは、さすがに無謀もいいところだ。

つい先日バーバリに襲われた際に全然抵抗できてなかったことを忘れたわけでもないだろうに。

何か勝算でもあるのだろうか?


「へへっ、今はクラス内の“格付け”最下位の僕が、バーバリを倒したルーヴを倒したとあれば、さすがにみんな僕への評価を改めざるおえない!きっとバーバリのやつ、相手が女の子だから油断してたんだぜ?だが僕は違う!男女平等!手加減なんかしないもんね!クラス0ナンバー2も夢じゃない!」


あ、こいつ何も考えてないわ……

その場の雰囲気とノリで行動しようとしてる。


「僕の汚名も返上できて、勝てばルーヴはクロノスの言うことを聞く……これぞまさに!“二兎を追う者は二鳥を得る”!!」

「全然違くね?」


アズルのポジティブすぎる発想にもはや感心してしまう。

でもそれだと、得るのは二羽の兎じゃなくて鳥に変わってるし……狙っていた獲物は別物だということに本人は気づいているのだろうか?

色々とツッコミどころが多くてもうどこから言及したらいいのかわからずにいると、バーバリと他二人に連れられてルーヴが訓練場に足を踏み入れたところだった。


「あ、兄貴……ルーヴを連れてきました」

「よォ、待ちかねたぞ!さっさと始めようぜ、クロノス!!」


やる気十分といった感じで両手の拳を打ち合わせるルーヴだが……先に断っておかなければならない。


「すまんルーヴ、そのことなんだけど……」

「やいやいやい、待ちやがれい!!」


説明しようとした矢先アズルが間に割って入ってきた。

余計なことを……


「やいやいやいやい!おうおうおうおうおう!!」

「あ゛?おい……なんだコイツ」

「いや、そいつはな……?」

「僕の名前はアズル・ライトリー!クロノス・バルメルドの右腕的存在さ!」


お前みたいな姑息な右腕を持った覚えはない。


「はぁ!?ふざけんなよアズル!?クロノスの兄貴の右腕は、このおれ、バーバリに決まってんだろうが!!」

「わ、わかったよ……じゃあ、クロノスの左腕的存在の」

「左腕は“格付け”三位のオレだ!」「なら右足はぼくだ!」「左足はオラだぁ!」「じゃあ私は爪を!」「ならワイは耳!」「それなら自分はぁ──えぇと、えぇとぉ……」


アズルの名乗りを聞いてバーバリたちから非難の声が上がり、我先にと俺の部位代わりだと言い張っている。


「あぁもうわかったよ!!じゃあ僕は、クロノスの天パ頭の毛の枝毛的存在のアズル・ライトリーだ!!」

「右腕から一気に存在感薄い箇所になったけど!?」


いや、それよりも俺の髪の毛に枝毛あるの!?

毎日手入れはしてるから枝毛ないと思うんだが……てか、なんでアズルは俺に枝毛があるって知ってるんだよ!?


「つかお前ら!勝手に人の身体の部位を自称するんじゃねぇ!!まるで俺が合成魔獣みたいじゃん!!全身顔まみれの人面じゃん!!」


全身にバーバリたちの顔が生えた|バケモノ(俺)の姿を想像してしまい、あまりの悍ましさに吐き気を覚える。

ルーヴはアズルたちが何を必死に言い争いしているのかと、退屈そうに欠伸をしていた。


「よくわかんねぇけどよォ、要するに全員、クロノスの金魚のフンってことだろ?」

「はあぁん!?金魚のフンじゃありませンンンン!!天パの枝毛ですぅ!!」

「そこを訂正するな!意味合い的にはおんなじだよ!!」

「ともかくだ!クロノスに挑みたかったら、この天パの枝毛である僕を倒してからにしてもらおうか!!」


二刀流を構え、すごくカッコつけてルーヴの前に立ちはだかるアズルなのだが、セリフがすごくカッコ悪い。

当然、俺と一対一(サシ)の勝負をするつもりで来たルーヴは怪訝な表情を見せ、アズルと俺を交互に見てくる。


「いや、ホント悪い。なんかこいつ、すごいやる気になっちゃって、お前と戦うって言い張るんだ」

「チッ、自分の手下ぐらいちゃんと躾けておけよ」

「いや、本当にごめん」

「ちなみに、アタシとコイツの勝負した場合、オマエとの約束はどうなるんだ?」

「それに関しては一切考慮しなくていい。これは俺とルーヴの取り決めの範疇ではないから、勝敗でどうこうってことはない。と言うか、最悪無視してくれても構わない。むしろしてくれ」

「おい!」


話をややこしくしようとするアズルを退かそうと首根っこを掴む。

当然抵抗されるが、そのまま野次馬たちへ放り投げようと、


「いや、いいぜ。アズル・ライトリーとも戦ってやるよ」

「「え、マジで?」」


アズルと戦うことを承諾することに驚き、思わず声が重なる。

戦っても何のメリットもないはずなのに。


「食後の軽い準備運動にはいいだろ。ほら、来いよ」

「なに〜?バカにしやがってー!」


襟首を掴んでいた俺の手を振り払い、アズルが挑発に乗り二刀を構えて走り出した!


「峰打ちで倒してやらぁ!!」

「いやお前それ両刃!!」

「養生せぇやぁー!!」


丸腰の相手にいきなり斬りかかろうとするアズル!

流石にマズイと止めようとするが、もはや俺の手を逃れてしまい止めること叶わない。

だが斬りかかろうとするアズルを前にしても、ルーヴは口元に笑みを浮かべ──姿が消えた。

そこで俺は、かつてジェイクや地元の騎士団の話を思い出していた。

獣人族は産まれながらに強靭な筋肉を持っており、成長と共によりいっそう肉体は“狩”をする為に仕上がっていく。

だが男性と女性で成長と共に違いが現れるそうだ。

男性はより筋肉がつき体型が大きくパワー重視に、女性は逆に筋肉が落ちるがしなやかな身体となりスピード重視に変化する。

故に成長期に入りたての獣人族の女性は、筋力がありながらもしなやかな身体故に動きが速く、馬すらも余裕で追い抜いてしまうのだと言う。

なので、もし好戦的な獣人族の女性を見つけたら注意が必要である。

少女だと甘く思って食事に誘おうものなら、気がついた時には病院のベッドで横たわっており、仲間が君を笑っているだろう。


「って話を聞いたことがある」

「それ……僕が蹴り飛ばされる前に、思い出してくれませんかねぇ……」


ルーヴの蹴りを喰らって吹き飛び、床に倒れ伏したアズルに中腰になって教えてやるが、ちょっと遅かったようだ。

でも丸腰相手に刃物で戦おうとしてたし、一撃で倒されてくれたのでお互いに全く怪我はない。

結果的には万々歳だ。


「おいおいなんだよ!?もう終わりかよ!?“枝毛の先”名乗ってた癖に大したことねぇなぁ!?」


もっとも、ルーヴの方は全然物足りなかったらしいが。


「く、くそぅ……!すまない、クロノス。お前の“枝毛の先”を名乗っておきながら、無駄死にしちまった……!」

「いや、そこはどうでもいいんだけど……何、気に入ったのそれ?まぁでも、お前が挑んだのは無駄じゃなかったぞ」

「……え?マジ?」

「ああ。ルーヴの蹴りを見れた。あれを見てなかったら、多分俺もお前と同じように蹴り飛ばされて一撃で終わってた」


正直、あの蹴りは俺も目で追うことができてなかった。

気がついた時には既にアズルは宙を舞っており、説明の半分を過ぎた辺りで『アズルが蹴られた』という事実に気づいたのだ。

もし蹴られたのがアズルではなく俺であったのなら、頭の中で話を思い出した最後の部分くらいの時に地面に倒れていただろう。

ルーヴの動きは獣人族だけあって速いし、一撃も重そうだ。

フェリュム=ゲーデとどっちが速いかと聞かれれば、そりゃフリェンだと答えるが、避けられるかと聞かれればこう答える──絶対に無理!!

ぶっちゃけフェリンの斬り合いだって俺には速すぎて見えなかったんだ。

それでもその速度に追いつき捌けたのは、影山から貰った魔道具のおかげ……おかげってか九割性能に頼ったからこそ勝てたんだ。

でも今の俺には魔道具はない。

文字通り小細工なしで戦うしかないのだ。

なのに普通の眼で追えない速度の相手とか無茶なのもいいところだっての……“普通の眼”だったらな。


「アズル、武器持ってきたの余計だって言ったけど訂正するわ。超ナイスだ。俺のバックラーをくれ!」


立ち上がって俺の|バックラー(盾)を寄越せと手で促す。

「へい!」とバーバリが答えるのが聞こえると円形の小型の盾が投げられ、それを受け取ると左腕に装着した。


「あ、兄貴、剣はいいんですかい……?」

「必要ない!てか、たぶんあっても役に立たん!元々使う気もなかったしな」


そう、元々剣も盾もどちらも(・・・・)使う気はなかった。

だがルーヴの蹴りを見て考えが変わった。

相手が丸腰だから俺も丸腰で挑むのがフェアかと思ったのだが、どうやら俺も例え話の中の男と同じように、女の子だからとルーヴのことを甘く見ていたようだ。

地面に伏していたアズルを立たせるとバーバリへと押し飛ばす。

そして、ゆっくりとルーヴへと歩み寄り対峙した。


「じゃあ、そろそろ始めようか」

「おう、ずっと楽しみにしてたんだ。でもいいのか?アズル・ライトリーみたいに剣使ってもいいんだぜ?」

「今の俺じゃ、たぶんお前には一太刀も浴びせられないよ。俺より何倍も動きがはぇ。たぶん捉えられずに負けるのがオチだ」

「ふーん?その割に、随分余裕そうじゃねぇかよ。アタシの動きを捉えられる自信がねぇんだろ?」

「あぁ、それは大丈夫だ。だって──」


そこまで口にした瞬間、何の前触れもなくルーヴのハイキックが炸裂する。

鋭い足蹴りは確実に俺の側頭部めがけ繰り出されたのだ。

いきなりのことに周囲がどよめき、声が漏れる。

不意打ちのハイキックが決まり、ほくそ笑むルーヴは……


「だって──もう一度、お前の動きは見たからな!!」


俺が左腕に付けていたバックラーにハイキックが防がれており、初めて笑み以外の表情を、驚きの顔を見せたのだった。

いや、不意打ちの蹴りが防がれたことより、俺の左眼が青く光っていることに驚いているのかもしれない。

対峙した時に左眼にマナを流し込んでいたおかげで、ルーヴが油断している俺に不意打ちを仕掛けようとしていたのは“視えて”いた。

アズルを倒した時の最初の一発は蹴りだったので、おそらく次も蹴りで来るだろうと警戒しておいたおかげで、見逃すことなく防げたのだ。

蹴りを防がれたことに動揺しているのか、俺の光る眼を見て驚いているのか、ルーヴはまだ少し困惑した表情で俺を見ており動きが止まっている。

その隙に俺は右手で、バックラーで防いだルーヴの右足首を掴む!


「さぁ、今度は……俺の番だ!!」

次回投稿はいつも通りとなります!

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