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第二百三十七話 三十人目のクラスメイト

ついに10月になってしまいましたね……夏アニメはシンフォギア見てロード・エルメロイⅡ世見てと意外と追い続けられていたので、今季もアズールレーン追ったりとしたいと考えてます


クロノス視点


俺の一日は鍛錬から始まる。

早朝、日が昇り始める頃に起きて学園の敷地内をランニング。

その後筋トレと坐禅を組んでイメージトレーニング。

本当は剣を持って素振りをしたいのだけど、学園にいる間は非常時や授業の時以外は剣も盾も、学園の武器倉庫に保管されてしまい、クラス担任の先生に申請書を出して許可を貰わないと持ち出すことができない。

もっとも、倉庫の管理をしている人物に賄賂を渡せば無許可でも持ち出すことはできるが、俺にはそんな金はないし、見つかった時のデメリットの方が大きいからやらないけど。

早朝鍛錬を終わらせ、制服に着替え、自室のパキラの世話をしてから遅めの朝食を取りに一階の食堂へと降りて行く。

食堂は談話室を抜けた先にあるので、朝食を既に終えて談笑する生徒たちの群れを掻き分け、俺は食堂へと……


「クロノスの兄貴!!」

『おはようございまーす!!』


食堂に入る為の扉の横で、破れていない下ろしたての制服を着たバーバリたちに挨拶された……無駄にでかい声で……

談話室にいた生徒たちも大声量の挨拶が一階に響き渡るものだから驚いて振り返ってくる。

俺たちを見てひそひそと小声で何かを話し合っており、俺としてはあまりいい気分ではないのだが、バーバリはそんなこと一切気にしておらず、今日も自慢の鬣を靡かせながら、


「兄貴!朝食をお供させていただきます!」

『お供させていただきます!!』

「もしかして……お前らずっと俺を待ってたのか?」

『うす!!』

「食堂が開いてからずっと全員ここで?」

『うす!!』


忠実というかなんと言うか……

別にバーバリたちと朝食を一緒に食べる約束をしていた訳ではない。

それに朝食をいつとるかを教えてもいなかてはずた。

でもだからって、食堂が開いてから俺がずっと来るまで談話室で二十七人も生徒が群がって待機してるってのは、他の生徒たちからしたらかなり異様な光景だったのではないだろうか?

かと言って、無下にするのもいかないわせで……


「わかったよ。今日は全員で一緒に食べよう」

『うす!!』

「あと次からは、わざわざ俺に合わせなくても各々好きな時に飯食べてもいいからな。待ち伏せはしないように」

『うす!!』

「それと、声デカいと周りに迷惑だから静かに返事して」

『うす』


案外素直に言うことを聞いてくれる。

そんな訳で、今日はクラスメイト二十七人と一緒に朝ご飯を食べることになった。

テーブル席に着くと使用人たちが次々と料理を運んでくる。

二十七人もいるのだ、食事が始まれば騒がしくもなる──と、思っていたのだが……


「それじゃ、いただきます」

『いただきます』


俺が食べ始めてからバーバリたちも食事を開始した。

全員一言も喋らず、ナイフとフォークが食器に触れる音だけが食堂に響く。

正しい礼儀作法で食事する姿を見ると、厄介者が集められたクラス0の生徒と言えど、さすがに貴族の子なのだと再認識させられる。

しっかりと教育指導がされている証拠だ。

俺なんてまだ礼儀作法はおぼつかなくて間違えそうになる時あるし、アズルのヤツなんて、作法なんて知ったこっちゃないと言わんばかりに音を立てまくるもんだから、昨日の夜は少し注意を


「……そういやアズルは?」


ふと、今日一度も姿を見かけていないアズルのことを思い出し呟く。

バーバリたちは食事しながらでも俺の呟きを聞き逃しておらず、隣の席に座るクラスメイトたちの顔を見回し、


「アズルって誰だ?」「いや、おれ知らない」「そんなやついたっけ?」


アズル……お前クラスメイトに名前すらまだ覚えられてないのか……


「ほら、あの金髪で慈愛の神ギルニウスとおんなじ顔した奴。昨日お前らが集団で襲ったアイツ」

「あ、いや兄貴、オレら別に襲ってたワケじゃなくて……」

「しゃーない、起こしに行くか」

「待った兄貴。それなら、おれらが行きますぜ」


立ち上がろうとする俺を制し、バーバリが代わりにアズルを起こしに行くと申し出てくれる。

そう?と俺は席を立つのをやめ、バーバリに任せることにした。

バーバリは他に二人、ついてくるように指名すると連れ立って食堂を後にした。

正直助かる。食堂から階段上がってアズルの部屋まで行くの大変だからな。

バーバリたちが食堂を出るのを見送ってから、再び朝食を食べ進めた。

また食堂内にナイフとフォークによる不揃いな演奏会が響き渡る。

すると──


「ああああああぁぁぁぁァァァァ!!!」


突然中庭から絶叫が聞こえ、何事かと中庭を一望できる窓に全員が目を向けた。

刹那、空から人が落ちてきて中庭の噴水に飛び込んだ!

ドボン!、と良い音が聴こえて噴水の水が大きく水柱を立てて水飛沫が飛び散る。

もしやと思い食堂の窓を開けて顔を出すと、噴水から金髪頭の男子生徒がパジャマ姿で飛び出してきた。


「ぶぅえぶぁ!!た、助けてくれクロノスぅ!」

「おはようアズル。……水浴びか?」

「うん、おはよう!!でも水浴びじゃないよ!!へ、部屋に……!!目が覚めたら僕の部屋にバーバリたちがいて、恐ろしい形相してベッドを取り囲んでたんだ!!」


噴水から這い出ると窓まで近づいてきてアズルが部屋の状況を説明してくる。

その場を見てなくても容易に想像できてしまう。

特にバーバリなんて獣人族で見た目がほぼライオンの姿だから、寝起き一番にそんなのがベッドの近くにいたら恐ろしいわな。


「それで僕、慌てて部屋を飛び出して窓から飛び降りたんだよ!ダイビング選手も真っ青になる程綺麗な飛び込みで命からがら逃げてきたんだ!」

「いや、顔真っ青にしながら悲鳴上げて、水面に叩きつけられてた様に俺には見えたけど?」

「助けてくれぇクロノス!バーバリの奴ら、きっと僕を食べるつもりなんだ!骨の髄までしゃぶり尽くす気なんだよ!!きっとパン粉をまぶした後、百七十度まで熱した油に僕をぶち込んで、きつね色になるまでこんがり揚げて、フライドアズルにして食べる気なんだよぉ!!」


フライドアズルって……仮にテーブルにそんなもんが出されたとしても絶対食いたくねぇ。

どうやら寝起きに恐怖体験をしたせいで完全にパニック状態になってるな。

見ていて面白いけど、そろそろ出ないと遅刻するかもしれないし一旦落ち着かせよう。


「落ち着けアズル。別にバーバリたちはお前を食べたりしねぇって」

「え……?ほ、ほんとか?」

「ほんとほんと。お前の部屋にバーバリたちがいたのは……」

「兄貴、さっきからどうしたんすか?」「さっきの悲鳴誰なんですか?」「あ、アズル・ライトリーだ」

「いいいいやああああ!!あいつの仲間がいるうううううう!!助けてええええええええええ!!」


後ろからクラス0の生徒たちが姿を見せたせいか、逃げ場がないことに絶望しまたアズルの絶叫が響き渡る。

そこで意識の糸が切れたのか、白目を剥いたまま倒れてしまった。


「あん?クロノスの兄貴、コイツ気絶してますよ?どうします?」

「……バーバリたちに制服持ってきてもらおう。誰か教室まで運んでやってくれ。んじゃ、そろそろ学校行くぞー」


俺の号令に全員返事をし、一人が気絶したアズルを担ぎ上げて食堂からぞろぞろと出て行て、仲良く学校へと向かうのだった。




✴︎




「あーあー……今日は朝から酷い目にあった……」


朝のホームルームが終わりパジーノ先生が教室から出て行くと同時に、後ろの席のアズルが机に突っ伏しながら愚痴をこぼした。

バーバリたちによって旧校舎の教室まで担ぎ込まれ、ホームルームが始まる時間になってから叩き起こされたのだ……いい朝とは言えないのもわかる。

ちなみにアズルはまだパジャマのままだ。


「せっかくいい夢見て寝てたのになぁ!」

「いいじゃないか。寝坊しそうになったところをクラスメイトが起こしに来てくれたんだぞ?学園青春物っぽくて」

「どうせだったら可愛い女の子に起こしてもらいたかったですぅ!!なんでむさい男どもに起こされなきゃならないんだ!!」

「あぁん!?なんか言ったかアズル!?」

「ひぃ!すいません!!なんでもないッス!!」


起こしに行ったバーバリに凄まれ、恐怖に震えながらアズルは謝り続ける。

まぁアズルの気持ちもわからなくはない。

せっかく男女共学の学校に入学したのに、このクラスには男子しかいないのだ。

しかも本校舎の女子は、問題児が集められたクラス0の生徒には決して関わろうとしてこない。

ベルでさえ、クラス0になってからは一度も俺と会話を交わせていない。

もっともそれはベル自身が俺を避けてるのではなく、周りの取り巻きがベルの視界に俺が映らないよう邪魔しているからなのだが。

せっかく二十九人も生徒が教室にいるのに、女子が一人もいないってのは花が無さすぎるよなぁ。


「ところでクロノスの兄貴。昨日の“格付け”で兄貴がクラスのトップになったことを先輩にたちに伝えたんだけど……」

「先輩って、上の階の二年と三年生?」

「ッス。だから今度、挨拶に来いって先輩たちに言われました。そういう習わしらしいなんですよ。おれもクラスのトップになった時は挨拶に行きましたし」

「えー?挨拶ー?」


バーバリに説明を聞いたのだが……なんか、すごい面倒くさそう。

でも日時が指定されているわけでもないなら後回しでもいいかな。

まだやることあるし。


「あー……うん。また今度な。今日はやることあるし」

「なんか、用事あるんスか?」

「まだ教室に来てない奴が一人いるだろ?そいつと会う」


現在クラス0の生徒は二十九人。

だが実際このクラスには三十名の生徒が在籍している。

そう、あと一人足りないのだ。

俺が本校舎に戻る為に職員会議で推薦してもらう条件に、クラス0の生徒全員をホームルームに出席させる必要がある。

一人でも欠けていてはパジーノ先生から出された条件を満たすことができないので、最後の一人も説得しないといけない。


「と言う訳で、俺は今からサボってる奴のとこに行ってくるから、みんなは好きにしてくれ」

「え、兄貴……あいつに会いに行くのか?」

「そっか。バーバリは知ってる奴なのか。どんな生徒なんだ?」

「いや、あいつとは会わない方がいいですよ……絶対ロクな目に遭わない……」


バーバリに尋ねると彼は顔を青ざめて下を向いてしまう。

どうやらあまり、いい印象ではないらしい。


「おれ、そいつと同郷なんすけど……昔っからあいつには酷い目に遭わされ続けてたんだ……!悪いことは言わねぇ!あいつには会いに行かない方がいい!!」

「ライオン顔のバーバリがそこまで怯えるなんて、そいつどんな男なの?」

「いや、男じゃねえ。そいつは女子なんだ……!」


アズルの質問にバーバリが首を振って答える。

女子生徒、という単語に俺とアズルは顔を見合わせた。

俺は女子生徒がクラス0にいることに疑問を抱き、アズルは女子生徒とということにちょっとそわそわした様子。

すると、他の生徒たちもその女子生徒のことを思い出しているのか、頭を抱えて震えたり、口元を両手で抑えて吐くのを堪えていて……いや、どんだけ恐怖心抱かれてるんだ!?

貴族学校のお嬢様だぞ!?

そんなに恐ろしい女なのか!?


「そいつは、おれと同じで獣人族の中じゃ、ちょいとした名家の娘なんだ。名前は……ルーヴ(・・・)

次回投稿も来週日曜日22時からとなるのでよろしくお願いします!


追記

今はSchool Daysを見てます。\カナシミノームコーヘトー/

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