第二百三十五話 王者の風格(笑)編
そろそろ持続力が切れてきたんで、簡素でもいいんで感想くださいオナガシャス!!
アズル視点
訓練場にいた僕もクロノスを探し、同じクラス0の生徒二十七人が現れ僕らは取り囲まれていた。
そのトップはバーバリと名乗るライオンみたいな顔した獣人族の男。
擦り切れたのか穴が空いた制服の上着を羽織り、自身の肉体を見せつけ、堂々と仁王立ちしている。
バーバリは僕とクロノスがクラス内での序列を決める“格付け”とやらを強要してきた。
クラスで誰が一番強いかを決めるそうだが、要は僕とクロノスを負かして下っ端として自分の勢力に取り込むつもりに違いない。
ふっふっふっ、さっきは転んでダサい姿を見せたが、これはクロノスやバーバリたちに僕の真の実力を見せるチャンスだ。
相手は二十七人……これぐらい、僕の二刀流でけちるら、蹴散らしてやばばばばばばばばばば──
「おいアズル……俺の服の袖掴んだまま震えないでくれ。制服が伸びる」
「ふ、震えてなんかねねぇよ!?これはむ、むちゃ震いだ!」
「なんだアズル・ライトリー?お前ビビってんのか?」
「バ、バカヤロゥ!!だ、誰が、ビビビってんだよぅ!!」
「いやどう見てもビビってんだろ」
僕がビビってないことを訴えクロノスの背から身を乗り出すがバーバリに見抜かれてしまう!
く、くそぅ!
やっぱり獣人族は観察眼が優れているから虚勢はすぐ見抜かれちまうのか!?
ぜ、全身の武者震いが止まらねぇぜ!
なんてったって相手は二十七人、エロ同人なら間違いなく乱暴される展開だ!
こちらの劣勢に震えいるとクロノスが僕の肩を軽く叩き、
「落ち着けアズル。一回深呼吸しろ」
「そ、そそそ、そうだな!!よしっ、ヒッヒッフー、ヒッヒッフー……」
ひとまず言われた通り深呼吸して気持ちを落ち着ける。
繰り返して行くうちに頭も冷静になったし、正常な判断ができそうだ。
それをクロノスに伝えるべくサムズアップしてみせて、
「オーケー!みんなの跡取りは僕が産むよ!」
「お前は一体何を言っているんだ?」
おかしいな、気分が落ち着いたのをアピールしたはずなのに逆に心配されている。
「……まぁいい。クロノス・バルメルドにアズル・ライトリー、お前ら二人にはまずクラスで最下位の奴と戦ってもらう。拒否権はない。最下位からここにいる二十六名と戦って最後まで勝ち残ることができたらオレと戦わせてやる。まぁ、オレと戦うなんて無理な話かもしれんがな」
「そうっすよバーバリさん!そりゃ無理な話だ!」
「こいつら見るからにヒョロッちぃからなぁ!」
その言葉を皮切りに取り巻きたちが一斉に僕たちを嘲笑い始める。
くそぉ、なんで異世界に来てまで馬鹿にされなきゃならないんだ!
ギルニウスとかいう駄神がチート能力くれないから!!
「だが安心しな。いきなり戦えとは言わない。お前らにも準備がいるだろう?“格付け”を始めるのは給食が終わって午後になってからで……?おい、何ジロジロ見てんだテメェ」
“格付け”の説明をしていたバーバリが突然不愉快な表情を浮かべて僕らを睨む。
いや、正確にはクロノスだけを睨んでいた。
当のクロノスは何を考えているのか真顔でじっとバーバリを見つめている。
「おいクロノス、何してんのお前!?」
「聞いてんのかテメェ?何人のことさっきからじっと見てんだ。喧嘩売ってんのか?あぁ!?」
僕らの言葉に微動だにせず、ずっとバーバリを見るクロノス。
それが気に入らずバーバリはクロノスに詰め寄る!
おいぃぃぃぃ!
何考えてんだよクロノス!?
あっちは僕らの十倍近くいるんだぞ!?
下手に刺激してここで殴り合いになったらどうするんだ!?
僕絶対最初の一発でノックダウンだぞ!?
僕が必死に身体を揺らし、バーバリの脅迫めいた言葉でようやくクロノスは反応を示す。
「ん、あぁすまん。気に障ったのなら謝る。ちょっと気になることがあって……」
ホッ、良かった。
ちゃんと気づいて謝ってくれた。
そうそう、ここは穏便に済ませて一度逃してもらって……
「バーバリさん、上着のボタン全部外れてますよ」
「………………」
「………………」
ファッショオオオオォォォォン!!!
それファッション!!!
制服の上着を羽織って獣人としての鍛えた肉体を見せつけつつ、クラス0の王者っぽくみせる為のファッショオオオオォォォォン!!!
「あと、上着もズボンもあちこち破けて穴空いてるよ?早く着替えた方がいいと思うぜ?みっともないから」
それもファッショオオオオォォォォン!!!
見た目ライオンだから歴戦の王者っぽく見せる為のファッションだからァァァァ!!!
さっきからずっと無言でバーバリ見てたのってそれが気になってたからかよ!!
僕もずっと気にはなっていたけど、多分それダメージジーンズみたいな感覚のファッションなんだよ!!
触れちゃダメなんだよ!!
「て、てめぇバーバリさんおちょくってんのか!?バーバリさんは獣人族のライオン族だから体毛が他のやつより多くて着れないんだよ!!」
「ファッションだよ!それはバーバリさんが考えた、一年生クラス0のトップであることを象徴する王者のファッションなの!!」
クロノスの失礼極まりない発言に固まってしまったバーバリに代わり下っ端たちが答える。
そのおかげでクロノスもさすがに納得してくれ
「え、これファッションなの!?ボタン取って、体毛のせいで着れないのにわざわざ羽織ってるの!?だったらワンサイズ上の着ればいいんじゃないかな!?ひょっとして、ズボンとかの傷も?これ、自分でやったのか?こんな綺麗に穴開くわけないもんな?どうして?なんでわざわざ制服に穴なんか開けるの?」
「そういうファッションなんだよ!!制服羽織って上半身見せながら歩いたらカッコいいだろうが!!」
「そうだよ!!制服に穴開いてる方が使い込まれた歴戦服みたいでいいだろうが!!ねぇ、 バーバリさん!!」
やめたげてぇ!!
指摘すればする程気まずくなるし、周りがフォローすればする程恥ずかしくなるから!!
余計に恥を晒す結果になるからぁ!!
周囲の言葉にバーバリは全身を震わせながら右手を顔の位置まで上げる。
やばい、あれ絶対怒ってるよ!
指から生えてる鋭い爪めっちゃ立ててるよ!
顔まで上げた手を震わせて、バーバリはその鋭い爪で……
「べ……別になんか……ちゃんと前ボタン留めてた時に、ボタン弾け飛んじゃっただけだし……」
バーバリィィィィ!!
照れちゃってるよバーバリ!!
ボタンのこと指摘されて言い訳始めちゃったよ!!
顔赤くして爪で頰掻いて恥ずかしがっちゃってるよ!!
「オレ、別に羽織ってるのがカッコイイとか思ってないし?制服が破けてるのだって、痒かったのを爪で掻いてたら破けちゃっただけし!!」
「大丈夫だよバーバリさん!カッコワルくなんてないよ!!」
「カッコイイ!カッコイイよ!?心配しなくても全然カッコイイ!!」
「カッコイイとかワルいとかそんなんどうでもいいかんね!!てゆーかもうこんなボロボロの制服着ねーしー!!」
制服破いちゃったよバーバリ!
ヤケクソになって両手で制服ビリビリに引き裂いて下着一丁になっちゃったよバーバリ!
王者の風格ズタボロになっちゃったよ!!
もうこいつメンドクサ!
その時、遠くからチャイムが鳴り響くのが聞こえる。
授業終了の合図だ。
訓練場の鍵を借りる時、次の授業は別のクラスが使うからすぐ返す用にとパジーノのジジイに言われたのを思い出す。
鍵閉めて職員室に戻しに行かないとだけど、この状況から抜け出さないとさすがに無理すぎる……
「バ、バーバリさん。チャイム鳴ったし、ここは一旦……」
「チッ、全員帰るぞ!テメェら、後で覚えとけよ……ッ!」
去り際にバーバリが低い声で唸りながら僕たちを威嚇して下着一丁で去っていく。
ていうか、テメェら!?
今『ら』って言った!?
なんで僕までロックオンされてんの!?
半裸のバーバリを筆頭に次々生徒たちは訓練場を出て行く。
脅威が去り、僕はへなへなとその場に座り込んでしまう。
「クラス内の“格付け”かぁ。ま、頑張れよアズル!」
「お前も頑張るんだよ!てか、あの状況でなんでお前はそんなに飄々としていられる訳!?」
「いやぁ、魔王と対峙した時以上に恐怖することなんて日常生活ではないだろうし、魔王より強そうな奴いなかったからな。学生数十人に囲まれてもそんなに心動じないみたいだわ」
「魔王並みの強さの学生がゴロゴロいてたまるかァ!!」
まるで緊張感のないクロノスに叫ぶ。
駄目だ、未来で酷い目に遭ってきたせいで感覚が麻痺しているんだこいつ。
いくら未来で魔王と戦った経験があると言っても、実際の実力がどれほどのものか僕は知らない。
バーバリたちに絶対にクロノスが勝つ保証もないし、こうなったら……寝返るしかない。
バーバリ側に……ッ!
次回投稿は来週日曜日22時です!




