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第二百二十八話 ドキドキの学園生活?

連続投稿二日目です!

最近雨がずっと降ってたせいか、めっちゃ蒸し暑い!


春──俺はついに中等部、モルトローレのサンクチュアリ学園に入学した。

幸いなことに入学する前からティンカーベルという女の子とも知り合いで、しかも彼女はライゼヌス王国の王女である。

当然、入学式の日には父親であるグレイズ国王が訪れ多少の混乱はあったものの、入学式は問題が起こることもなく行われた。

もちろんジェイクとユリーネも俺の晴れの舞台(と言ってもただ立って校長の話を聞くだけ)を見る為に出席。

式が終わるとすぐにニケロース領に帰る。

いつまでも自分の仕事を仲間に任せ留守にする訳にもいかないそうだ。

二人とは別れ際に、


「じゃあお父さんとお母さんは帰るけど、一人で暮らすからってあまり羽目を外しちゃダメだからね?」

「わかってますよ。ちゃんとやりますって」

「もし何かあったら、本家のお祖父様宛にでも手紙を出しなさい。早馬ですぐにお父さんたちにも知らせてくれるはずだから」

「はい。あ、ところで父さん。多分ニケロース領に戻ったら、レイリスが剣を教えて欲しいとお願いしてくると思います。できれば何も言わず、受け入れてやってください」

「……わかった。考えとく」


そのやり取りを最後に二人は帰って行った。

一応ジェイクにはレイリスに稽古を付けることをお願いしておいた。

彼が「わかった」と言ってくれる場合は大体話を聞いてくれる時なので、これでレイリスが勇者になるまでの間に剣の扱いは上手くなるだろう。

後は未来で聞かされた、俺が死ぬ未来を回避できれば同じ顛末にはならないはず。

確か馬車で村と王都を行き来する際に魔物の群れに襲われるんだったよな……肝に銘じておこう。

で、ついに始まったサンクチュアリ学園での生活なのだが──


「みんな、おはよう」

「やぁバルメル君。おはよう」「おはようございます、クロノスさん」「ご機嫌よう」


教室に入ってクラスメイトと挨拶を交わすと、みんな顔を合わせて返事をしてくれる。

学園が始まって今日で十日程経つが今のところ人間関係は良好だった。

特にトラブルも無く、平穏な学生生活を送れている。

しかしここは貴族の通う金持ち学校、自らの家の偉業や功績、国への貢献度なんかを鼻にかけ、親の七光りで威張り散らしている者も当然いる。

そういうのがいれば当然取り巻きとかが居る訳で、学期が始まって二日目の段階で、既に学年では学年トップ(キング)とか学年一美人(クイーン)だとか、取り巻き(サイドキックス)だとかが存在し、日々その話題が飛び交っている。

どこのクラスの誰それがキングの座を賭けて争っただの、ナントカ派閥が分解されただの、キングがパーティやるから人を集めているだのと毎日話題に事欠かない。

俺はなるべくそういうのに関わりたくないので、どこの派閥にも今のところ属していない。

え?なんで属したりキングを目指したりしないのかって?

だって、推薦組の俺はキング狙える程実家が金持ちな訳ではないだろうし……何より、そんな毎日トップ争いするような面倒ごとに取り巻きとして参加したくない。

俺のような考えを持つ生徒は他にもおり、どこの派閥にも属さずに学園生活を過ごしている者は結構いる。

中立の立場……というのではなくて、単に面倒だからとか下らないと一蹴する者や、勉学に励みたい、と様々な理由で属さずにいるのだ。

本来ならそんな俺たちはキングにもクイーンには相手にされないのが普通なのだが、まだ学園が始まったばかりのこの時期は、どこの派閥も人を増やそうと必死になっており、誰も彼も派閥に関係なく親しく接してはくれていた。

まぁ、派閥関連にひと段落が着いたら相手にされなくなる可能性はあるんだけどな。


「クロ君、おはようございます」

「やぁベル。おはよう」


自分の席に着くとベルが朝の挨拶にわざわざ席まで来てくれる。

若干の取り巻き(サイドキックス)を引き連れて。

一応言っとくが、ベルはクイーンでもないし、どこかの派閥に属している訳でもない。

ただ彼女自身がライゼヌスの王女だから(・・・・・)という理由だけでサイドキックスがいつの間にか出来ていたのだとか。

つまり、ベルの後ろで待機している彼らは勝手にやっているだけで、ベルが自ら望んで引き連れているのではないのだ。


「……みんなもおはよう」

「ええ、クロノス様。おはようございます」

「おはようクロノス・バルメルド君」


自称ティンカーベルのサイドキックスである彼らに挨拶すると、嫌な顔一つせず挨拶を返してくれる。

しかしこのサイドキックスたち、顔には出てないが「ティンカーベル様を気安く愛称で呼ぶんじゃないよ、推薦組の癖に」と言わんばかりの雰囲気が態度に出ている。

どうして必要とされた訳ではないのに彼らがベルのサイドキックスをしているか?

答えは単純。

彼らは皆、ベルのおこぼれに期待しているのだ。

王族の娘とあらば、政界に知り合いま大勢いるだろうし貴族を集めてのパーティも王城で行われる。

サイドキックスたちはその時、自分たちの親がグレイズ国王に「王女様とは学園で仲良くさせていただいております」とごますりし易くする為に取り巻きをやっている。

ベルに上手く取り入れば王城での勤務や貴族として高い地位を確立できるかもと。

はたまたベルと政略結婚をし、次期王を狙う者も中にはいるのかもしれない。

そういった下心で集まる者たちなのだ。

だから入学当初からベルと親しい俺に対し、あちらさんはいい印象を持っていない。

どうせお前も王女の護衛騎士としての立場が目当てなんだろ?

とでも言いたげな目で俺を目の敵にしているのだ。

別に俺はそんな期待これっぽっちもしてないのだけど。


「クロ君、以前買ったパキラの様子はどうですか?」

「ん?あ、あぁ、ベルに教えてもらった通りに育ててるから元気だよ。まだ花が咲く気配はないけど」

「そうですか。もし何か気になることや分からないことがあれば、遠慮せずに聞いてくださいね」

「ああ、ありがとう」


俺がベルの優しさに感謝していると取り巻きの一人が「ベル様、そろそろ先生がいらしますわ」と会話を遮る。

ベルは頷くと、


「ではクロ君。また」


と笑顔で手を小さく振って自分の席に戻っていくベルと取り巻きたち。

その時サイドキックスの男が一人振り返り「チッ」と舌打ちして睨まれる。

う〜ん、この露骨なまでの敵意剥き出し感!!

進学する学園間違えたかもしれねぇ!!

とまぁ、多少今後に問題が起きそうなことはありつつも、今のところ平和にやれてはいた。

授業も問題なく理解できているし、ベルの取り巻き以外からは敵視もされていない。

まぁそちらは追い追いなんとかするとして、まだ派閥に属していない者とも親しくなり始めているので概ね良好だと言えるだろう。

授業を受け、隣の席の者と授業内容について話し合い、次の授業の準備をする。

毎時間そのサイクルを繰り返し、昼休みになれば食堂まで行き昼飯を食べて午後の授業を受け、学校が終われば寮に戻ってパキラの世話して一日の授業の復習と剣の鍛錬をして就寝。

入学してからは十日間毎日そんな感じだ。

このまま変化無く穏やかに過ごせればと思っていたのだが……


「相棒……相棒……!」


席に着いて先生が来るのを待っていると机の引き出しから声が聞こえる。

嫌な予感がし机の中を覗いてみると雀が丸まって入っており、


「や!久しぶり!学園生活エンジョイしてる?」

「バッ……オマ……!?」


右翼を上げて喋りやがった!

慌てて両手を枕にして突っ伏し、周囲に気づかれないように声を抑えて机の中にいる雀ギルニウスに話しかける。


「あんた、なんで俺の机の中にいるんだよ!?」

「いやね、思ったりよりヒンヤリしてて居心地良くてさぁ。つい」

「理由になってねぇよ!」


机の中に雀がいるなんて知られたら何言われるかわからないので周囲を警戒する。

しかし、みんな俺が寝ているのかと思っているし、お喋りに夢中で気にしている者はいない。


「んで、何しに来たんだよ?会いに来ただけーとか抜かしたらお前、窓から外に飛ばすぞ」

「いやいや、そんなことでわざわざ机の中で待ったりしないよ」


いつも通りのへらへらした話し方。

これでくだらない理由で会いに来たのなら本当に窓から投げとばそうかと思ったのだが、


「お願い!人助けだと思って、僕に協力してください!!」


懇願する声が聞こえ、再び机の中を覗いてみる。

すると、あのギルニウスが何と頭を下げていたのだ。

姿は雀のままだけど。

しかしそこにいつもの余裕そうな態度はない。

必死に、心から俺に助けを求めているのだった。

次回投稿は明日なんですが、明日も18時からの投稿にしようかと思いますので、よろしくどうぞ!

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