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第二百二十六話 東街モルトローレ

もうすぐ9月ですね!

今日でジオウ終わっちゃったけど、次のゼロワンも楽しみです!


王都を訪れてから二週間後、サンクチュアリ学園の入寮日となり、ライゼヌスから学園のあるモルトローレへと馬車で移動する。

モルトローレは王都ライゼヌスから馬車を使って三時間ほどで着く都市だ。

都市と言っても規模はライゼヌス程の大きさはない。

王都ライゼヌスが商業や観光の役割に特化した街だとすれば、モルトローレは学生の為の都市と言ってもいい。

俺が通う貴族の為の『サンクチュアリ学園』、一般家庭の子供が通う『フィカテ学園』、人族だけが通うことのできる『ノユゥ学園』の三つがある。

それぞれが南区、北区、西区に別れて建設されており、中央には民家や学生でも利用できる料理店なんかがあるらしい。

もっとも、俺の通う『サンクチュアリ学園』は学食があり、規律は厳しくらしく外食とかは一切許されてないらしいので利用することはないだろう。

東区は王都から来る荷物の受け取り区画なので大通りとなり、露店や日用雑貨がメインの店だそうだ。

あまり学生が利用することはないとのことだ。

学生が多い街の為警邏している兵士の数も多く、ライゼヌス並みに警備が厚いのだとか。

できることなら兵士にご厄介になるのだけは何とか遠慮したいな。

さて、そんなこんなで南区のサンクチュアリ学園の学生寮に着く。

学園内の敷地に寮はあるのだが……四階建でやたらと規模がデカイ。

これが校舎って言われても誰もが信じるだろうってレベルなんだけど……


「うわぁー……寮なのに大きいわね……」

「これ本当に寮なのか?校舎と間違えてないか?」

「こちらで間違いありません、ジェイク様。受付の番兵の案内通り、ここが学生寮に間違いはありません」


四階建の学生寮を前に俺もジェイクもユリーネも唖然とする。

家具を運ぶ為に同伴してくれているサティーラが淡々と答えた。


「さ、我々以外にも荷物を運び入れる方々が多いようですし手早く済ませましょう。クロノス御坊ちゃま、お部屋はどちらでしょうか?」

「あ、すぐに確認してきます!」


サティーラに急かされ学生寮へ。

一階ロビーは談話室になっているようで、ソファーやテーブルが多く配置されている。

既に入寮し終えた人たちなのか、大勢が集まって談笑しているのが伺えた。

だけど、一階は談話室だけではなくまだ部屋があるようで、奥に出入り口の扉が二箇所見える。

今は使えないようで扉は閉まっていた。

とりあえずまずは自室の確認、玄関横の窓口に寮母の姿があるので名前を告げると部屋番号と鍵を渡される。

家具は使用人に運ぶを任せ階段を上がり三階へ。

途中同じように入寮の為に使用人に家具を運び入れてもらう子を何人かとすれ違う。

みんなクローゼットやらテーブルやらと色んな家具を部屋に持ち込もうとしており、出入り口の狭さに四苦八苦のご様子。

なかには廊下にズラッとバラバラになっている家具を持ち込み、部屋の中で職人に組み立てさせている者までいる。

かと思えばアンティーク品を運ばせ、落とすな傷つけるな揺らすなと怒号を上げる子供まで。

みんな何をそんなに持ち込むんだ?

俺なんか、ベッドと机等は寮で用意されてますって言わたから、クローゼット一つと着替えを詰めた木箱二つぐらいしかないぞ?

そんな賑やかな引っ越し風景を横目で見ながら三階まで上がりきる。

俺の部屋は三階南東側の一番奥の部屋、一番陽当たりと風通しがいい場所だ。

予め掃除もされており、大変綺麗な部屋なのだが……


「いや広ッ!なにこれ!?本当に個人部屋なのこれ!?」


とにかく部屋が広い!

リビングとかじゃないの……10畳ぐらい広さない?

学生寮だからせいぜいベッドとテーブル、クローゼットを置いたらスペースがほぼ残らない狭い部屋を想定してたんだけど……どう見ても学生一人が寝泊まりする広さの部屋じゃねーよこれ……

だって、元々備え付けられているベッドとテーブルに来客用の二人がけソファーが二つあるよ?

それでもまだスペースかなり余ってるよ?

そこにクローゼット置いてもまだ後三つぐらい置けるよ?

ベッドに至ってはシングルサイズじゃなくてダブルサイズだし。

ここに来るまでに必死に部屋に持ち込もうとしていた子たちは、部屋が広いって事前に知っていたのかもしれないな。

部屋の広さに唖然とする俺に続き部屋に入ったジェイクとユリーネも、


「うわぁ、広いお部屋ねー!」

「ドアの間隔からして広いだろうとは思ってはいたが……一人で暮らすには広すぎないか?本家の談話室並みの広さだぞ?」


やはり二人も同じ感想を抱いたようで部屋を見回しては驚いている。

が、サティーラは部屋の広さには何も言及せずに「クローゼットはここに」と運んできた使用人たちに指示し、着替えなどが入った木箱を床に入れると淡々と仕事を始めていた。


「しかしこうも広いと、逆に部屋が寂しいな。本棚ぐらいはあっても良かったかもしれん」

「そうねぇ。あまりにも殺風景だし、観葉植物でも置きましょうか?一年中花を咲かせている花とかがいいわね!」

「ならば買い足しが必要だな……サティーラ。街に買い出しに行く。馬車を呼び戻してくれ」

「かしこまりました。準備が出来次第戻ってまいります」


一礼をし急いで、しかし穏やかな立ち振る舞いでサティーラは部屋を出て行く。

すると何か思いついたかのようにユリーネが手を合わせ、


「そうだわ!せっかくだし、街でクロちゃんの入学祝いに何か買いましょうよ!ライゼヌスにいる間、クロちゃんもお父さんも時間が合わなくて一緒にお出かけできなかったし」

「そう、だな……そうするか。クロノス、今欲しい物はないのか?本棚とか以外でだ」


入学祝いで好きなものを買ってくれるらいしが、欲しいもの……かぁ。

咄嗟に聞かれてると返答に困る。

そう言われても特に欲しいと思うものなんて……いや、あるわ!

未来から帰ってきてずっといつか欲しいな、と思ってた物!


「じゃあ、盾を買ってください!盾!」

「盾?」


俺の返答が意外だったのか、今までの訓練で盾なんて持たせたことなかったはずなのに、と明らかに顔に出ていた。

とはいえ、本人が欲しがっているならと馬車で再びモルトローレの商売区間に戻って来る。

本棚は割とあっさり買え、次は観葉植物をと花屋に向かったのだが……何故か花屋の店先には馬車一台に対して全身鎧に身を包み槍を手にした騎士が十人ぐらいで店の前を守っている異様な光景が広がっていた。


「そこの馬車!待て、止まれい!」


まぁ近づけば当然騎士に止められる。

十人中五人に馬車を囲まれ、警戒しているのか槍を握る手に力がこもっている。


「何の用があってこの店に来た!?」

「え、いや……花を買いに来たのですが……」


操縦していた使用人が高圧的な声色で騎士に詰め寄られて少し怯えている。

「荷台を確認するぞ!」と声が聞こえ、騎士三人が俺たちの乗る荷台を確認してくるとジェイクが対応する。


「ジェイク・バルメルドだ。お疲れ様」

「あっ、バルメルド家の……!失礼致しました!」


おー、高圧的だった騎士から攻撃的な態度が消えて幾分穏やかな雰囲気になる。

ずっとニケロース領に居たからあんまり実感ないけど、やっぱりバルメルド家って騎士の名家なんだな。

御者に詰め寄っていた騎士もバルメルド家の馬車だと知ると一歩引き、全員手にしていた槍を握る力を緩めていた。


「要人の警護にしては随分と大袈裟だな。誰が店にいるんだ?」

「申し訳ありませんが、それには答えできません。もし店に入るとなると、非常に申し訳ないのですがご家族の皆様で入ることはできません。身体検査をし、御二方まででしたら入店いただけます。他の方はこちらでお待ちいただく形となるのですが……どうか、ご理解下さい」


申し訳ないと頭を下げながら騎士の一人は告げる。

身体チェックしてもなお二人しか入れないって、誰が来てんだよ花屋に……

どうするかと俺が困り顔でジェイクを見ると、


「ならば私とクロノスの二人で入ろう。花に拘りがないのなら、店主に手頃な花を教えてもらえばいいだろう」

「それもそうですね。じゃあ父さんとで」


ジェイクの提案に賛成し、二人で馬車を降りて騎士たちに入念な身体チェックをされる。

ポケットの中から服の内側、ズボンのベルトまで念入りに調べられ、検査が終わると「御協力ありがとうございます」と礼を言われ、ようやく店内に入ることができた。

ドアを開けて入店すると店内の隅々にまで花や植物が埋め尽くされている。

だからと言って、決して見栄えが悪い訳ではない。

訪れた人が目を引くように棚には色鮮やかに異なる色を付けた花が飾られ、店内の奥に行く程美しく大きな花が揃えられていた。

入り口付近は比較的小さな花が植木鉢に植えられて置かれている。

店内には既に客がおり、おそらくあの騎士の護衛を引き連れていた人物だとわかる。

騎士以外にも執事とメイド二人を連れており、どんな金持ちかと顔を見ておこうかと思ったら、


「え?クロ君?」

「ベル?ベルじゃないか!」


店内にいたのはティンカーベルだった!

親しげにベルに歩み寄ろうとする俺にメイド二人が警戒するが、執事が「お嬢様のご友人です」と一言制すと一歩下がってくれる。


「ベルの方が早く来てたのか。もう入寮手続きは済ませたのか?」

「はい。でも思ったよりお部屋が広くて……殺風景で寂しいのでお部屋に飾る花を買いに来ていたんです。クロ君はどうして?」

「俺も同じだよ。予想の倍以上部屋が広いもんだから、もう少し何か飾ろうって話になって家具とかを買い足しにな。それで観葉植物でも飾ろうか、って話になって父さんたちと一緒に」


そう言って後ろで待機していた父さんに肩越しに示すと、二人は同時に会釈する。


「ご無沙汰しております。ティンカーベル様」

「お久しぶりです、ジェイク様。その節は大変お世話になりました。それでお二人は、どのようなのをお探しに?」

「うーん、俺そんなに植物詳しくないんだけど……ベル、良かったら何を育てるか相談に乗ってくれるか?」

「……はい!喜んで!」


俺の提案にベルは快く頷いてくれる。

そして、ベルの解説と共に部屋に飾る植物選びが始まるのだった

連続投稿しようと思ったんですけど、タイミング掴みづらいんで水曜日から9月1日までってことにします!


次回投稿は水曜28日22時から!

よろしくオナシャス!

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