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第二百十四話 慈愛の神と八人の巫女

投稿してる部分はまだ戦闘中なんですが、ストックとして書いてる話は完全にギャグ部分だからギャップで「これは同じ話なのかな?」と首傾げてます


「泣けるぜ──ッ!!」


 引き絞った弓の弦を、誰に対して言う訳でもない愚痴と共に指を放し矢を放つ。

 弓矢を持ってから、今まで一度たりとも真っ直ぐ飛んだ試しのない矢が、この時だけは真っ直ぐ(・・・・)に魔王ベルゼネウスへ心臓へと向かう。

ティアーヌの氷魔法で左半身を結晶に閉じ込められた魔王では、その矢を止めることは……


「見縊るなよ!人間が!」


 大剣を打ち付け亀裂の入っていた結晶を怪力で砕き抜け出す。

 そして俺の放った矢を弾き飛ばそうと大剣を振るい……矢が爆発した。

 あらかじめグローブに装填しておいた火の魔石のマナを全部矢に込めておいたのだ。

 触れたら爆発する。

 そうなるように仕込んでおいて正解だった!

 これで魔王は倒せないが視界を塞ぐことで、破魔の剣を認識されない!


「ティアーヌさん、お願いします!」


 電流を流されないようグローブに土の魔石を装填し、背後に突き立て身体で隠しておいた破魔の剣を手に持つ。

 逆手に持ち直し、右半身を後ろに引き、魔王に向けて全力で剣を投げた。

 直後にティアーヌが杖を振るうと、破魔の剣の輪郭が歪み、その姿が()に変化した。

 それと同時に黒煙を腕振り払い、魔王の瞳が矢に変化した破魔の剣を捉える。


「何度繰り返しても無駄だ!貴様の攻撃は、オレには届かんわァ!!」


 今までと同じように、魔王は大剣を振るい矢を上へと弾き飛ばした。

 ただ今までと違うのは、その矢を弾いた瞬間に響き渡る甲高い金属音──耳に響く音は矢を弾いた時とは異なる衝撃。

 ベルゼネウスも自らが弾き飛ばした矢が、今までと違う音を響かせていることに気づき目を見開く。

 弾き飛ばされた破魔の剣は、幻惑によって化かされていた矢の姿から、本来の剣の姿へと戻る。

 宙に吹き飛ばしたのが矢ではなく破魔の剣だと再認識した頃には既に、レイリスが落ちてくる破魔の剣を受け止め迫っていた。


「うわああああッ!!」


 本来の主人の手元に収まった破魔の剣の刀身が光を放つ。

 ベルゼネウスに迫りレイリスが剣を振るい、大剣で防ごうとする魔王だが、その一振りを防ぐことはできずに大剣は呆気なく打ち砕かれた。

 防御する手段を無くし無防備となった魔王に、レイリスの破魔の剣による連撃がくりだされる。

 今まで、どんな攻撃を受けても傷つかなかった肉体が、どれだけ攻撃を与えても血を流すことなかった魔王が、斬り付けられた箇所から血を流し大きく仰け反った。

 それでもまだ倒れない。

 ベルゼネウスはレイリスを止めようと足を踏ん張らせ腕を伸ばし、


「勇者ァァァァ──ァッ!?」


 背後から俺の刺突をまともに喰らった。

 魔道具に装填した雷の魔石による刺突で、ようやく俺の攻撃もベルゼネウスに届いた。

 もっとも、俺の剣では身体を貫通させることは出来ず、剣先がわずかに腰を突き刺した程度だが……


「ようやく届いたぞ……俺の一撃!!」

「こ、小僧ォォォォ!!」

「やれ、レイリス!俺に構わずぶっ放せ!!」


 暴れて俺を振り払おうとする魔王の体内に電流を流し込む。

 刀身を伝って全身に電流を流され身体が痙攣を起こし、ベルゼネウスは身動きが取れなくない。

 今を逃したらもう間違いなく二度と訪れないであろう、魔王を討つ絶好のチャンス!!

 一瞬だけレイリスの表情に戸惑いの色が見えたが俺の言葉で振り切ったのか、破魔の剣が纏う光がより一層強く輝きを増し、魔王と俺に向かって振り下ろす!


「いっけぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」


 振り下ろした破魔の剣から光の斬撃が放たれた。

 それはフェリンが俺に使った『デ・ラナ・ルミネ』と呼んでいた技によく似ている。

 しかし、あの技よりも範囲も威力も段違いなのは間違いなくわかる。

 この光の斬撃に飲まれれば、魔王ベルゼネウスとて無事で済むはずがない。


「と言うか、僕たちも飲まれるんですけど!?逃げて!クロノス逃げてー!!」

「黙ってろ!!気が散る!!」


 光の斬撃が放たれるのと同時に剣から手を放し、大きく後ろに跳躍する。

 しかし斬撃の範囲は広く、今からではとてもではないが走っても逃げられはしない。

 だから、ここで防ぐしかない!


「ギルニウス、死にたくなかったらそこから動くなよ!展開しろ、盾!!」


 盾に自分のマナを流し込むと、フェリンの必殺技を防いだ時と同じように左腕に装着した盾が展開された!

 俺のマナを吸い上げる代わりにレイリスの放つ光の斬撃を無力化してくれる……してくれてるけど、やっぱりキツイ!!

 吸い上げられる量が多くて頭がクラクラして死にそうになるけど、解いてもやっぱり死ぬから気が抜けない!

 何度も深く呼吸を繰り返し、意識を保ち続ける。

 必死に耐える中、光の奔流に飲まれた魔王の悲鳴が聞こえた気がした。

  すると、左肩にいたギルニウスが俺の頭の上に乗り上げ、

 

「ベル!ティンカーベル!」

「は、はい……!」

「君の巫女の力で魔王を封印するんだ!他の巫女と協力すればできるはすだ!」

「で、ですが、他の巫女さんたちは魔王に生贄に……」

「大丈夫、この時の為に余力は残しておいたんだ……僕がここに呼び出す!」

「わかりました!!」

「よし!相棒、魔石いくつか借りるよ!」


 頭の上から今度は腰のポーチまで移動すると、フェレットの身体で魔石を持ち出し、俺の頭の上を何往復かされる。

 どうやら俺の頭の上に魔石を置いているらしく、熱かったり冷たかったりビリビリしたり、髪が濡れたりフワフワしたり凍えたりと急がしい。


「おいギルニウス!?あんた人の頭の上で何するつもりだ!?」

「魔石を媒介にして、巫女たちをここに呼ぶんだ!少しの間だけしか意識を呼び出すことはできないだろうけど、巫女が全員揃えば封印できるはずだ!光と闇がないけど、足りない分は自分で補う!」


 「ふんぬうおおおお!!」と気合の入った声でギルニウスが足を踏ん張らせる。

 すると頭の上の魔石が熱を帯び、俺たちを取り囲むように飛び交い始めた!

 最上階の周りに円状に広がる魔石はそれぞれ、赤、青、紫、緑、白の色を放つ球体となり拡大していく。

 更にそこに眩い光を放つ球体と、深く淡い輝きを持つ黒い球体がどこからともなく現れる。

 合計七つの球体は一定の大きさになると拡大するのをやめ、それぞれの球体の内部に人の姿が浮かび上がる。

 それがどんな姿なのか、どんな顔立ちをしているのか、その顔色すら伺うことはできない。

 ただぼんやりと浮かぶ七つ人影、しかし敵意はない。

 ぽつんとそこに誰かがいる。

 それだけは理解できる。

 すると、球体が徐々に同じ色の光を放ち始め、ベルの身体も黄色く淡い光を放ちだした。


「さぁ!今ここに、八つの属性の力を持つ八つの異なる種族の巫女が揃った!!火炎の巫女、大海の巫女、紫電の巫女、天空の巫女、白銀の巫女、日輪の巫女、月輪の巫女、そして──大地の巫女!!そして我、慈愛の神ギルニウス!我らの力を持ってして、破壊と暴虐の悪しき魔の王を封印する!!」

 

 人の頭の上で突然口上を述べ始めるギルニウス……てか、そろそろマナの限界がきそう!

 二人まとめてあの世に逝きそうなんだけども!!

 

「大丈夫……」


 突然背後から声が聞こえ肩をそっと叩かれる。

 振り返ると、後ろには一人の男が立っていた。

 白い羽衣一枚で身体を覆い、美しい金髪に凛々しくも優しげな面持ちの男。

 ただ身体は半透明で、まるでピントがズレたみたいに輪郭がぼやけて見える。


「もう、終わるから」


 男が呟き、フッと手を振る。

 すると、レイリスが放った光の斬撃を受け止めていたはずの俺は、突然身体が浮いたかと思うと床に尻餅を着いた。

 隣にはティアーヌがおり、破魔の剣から光の奔流を放ち続けるレイリスの姿を確認できた。

 どうやら瞬間移動させられたらしい、いやそれよりも、さっきの優男は──


「ギルニウス!!」


 先程まで一緒にいた憎たらしい神の名前を呼ぶ。

 頭の上にいたはずのソイツはおらず、光の中にもいない。

 レイリスが放っていた光の斬撃は勢いが弱まり始めると、中にいたギルニウスを逃さぬようにと球体となり縮小を始める。

 一回り、また一回りと縮小を繰り返し、その度にベルや巫女たちの影を映した七つの球体が、それぞれの対応した色を放ちどんどん輝き出す。

 魔王を包んだ光の球体から何度もベルゼネウスの叫び声が聞こえ暴れるのが見えるが、球体はビクともしない。

 その球体に、そっと一人の男が手をかけた。

 先程目視で確認した白い羽衣を着た優男……ギルニウスだ。

 フェレットの姿ではない。

 俺がよく知る、人間体の姿をしている時のギルニウスでだ。

  

「魔王ベルゼネウス!お前をもう一度、地獄の牢獄に繋ぎ直す!!」

 

 人間体のギルニウスが両手を掲げると、ベルゼネウスを包んでいた光が輝きを放ちながら巨大化していく。

 俺たちのいる最上階ごと……いや、城ごと包む勢いで巨大化し覆い尽くされる。

 その場にいる俺たちは光の球体に飲み込まれ、視界の全てが白く染まるのだった。




───────────────────




 魔王ベルゼネウスは一人、光の中を漂っている。

 慈愛の神ギルニウスと八人の巫女と勇者の子孫、そしてその仲間たち。

 彼らによって傷を負わされ、破魔の剣から放たれた高出力のマナの斬撃を受け、魔王は再び封印を施された。

 あの時と同じ、光の中に包まれて……

 千年──千年だ。

 千年もの永い時をこの|光(地獄)の中で過ごし、年々弱まる結界の隙間を潜り抜け、ようやく復活を果たしたのにも関わらず、また封印されてしまうのか。

 復活を悟られぬよう泥に塗れ、力を失い虫ケラ同然のような存在となる屈辱を味わい、手下を使い多種族たちを裏から操り戦争を引き起こし、世界を負の感情で満ちさせ、ようやく本来に近い力を取り戻しかけていたと言うのに……その全てを台無しにされた。

 十年近い時を、たった一瞬で無駄にされた。

 ベルゼネウスは光の向こう側に門を見つける。

 この|光(地獄)と世界を分け隔てる門。

 あれが閉じてしまえば、また自分は封印される。

 再び全てを失う。

 その受け入れがたい事実に抗う為、魔王は門へと必死に手を伸ばす。

 しかし動けば動く程身体は光の中に落ち続け、決してその手は門へと届くことはない。

 それでもと魔王は足掻く、抵抗し続ける。

 無駄だと頭では理解できていても、それを止めることはできない。

 足掻き続けたらこそ、一度は復活できたのだ。

 ならば今度も抗い続ける。

 次は何百年、何千年か先で復活できるかは知らない。

 だが、次も封印を破り地上を支配する!

 そして必ず神と勇者、巫女の子孫たちに復讐を果たす!

 胸の内渦巻く復讐心に身を燃やしながら魔王は落ちる、どこまでも深く、明るく、死ぬこともなく無限の苦しみをもたらす光の中へ。

 閉じかける門の向こうに人影が見えた。

 自分を封印した勇者と八人巫女たち。


「おのれ……勇者レイリス……!おのれ……忌まわしき巫女たち!」


 その姿に魔王は歯を食い縛り、呪詛のように呟く。

 次に見えたのは、それらを生み出し束ね、自分を封印した憎き神、


「おのれ……慈愛の神ギルニウス……!!」


 そして最後に見えたのは──突然現れ、全てを掻き回し、自分の背に剣を突き刺した……ギルニウスと共にいたただの人間、

 

「おのれ……ッ!!クロノス・バルメルドおおおおおおおおおお!!」


 ベルゼネウスの復讐の咆哮が響き渡る中、門が閉まる。

 門が閉まり、魔王ベルゼネウスの咆哮はもう世界中のどこにも響かず、どこにも届かず、誰の耳に聞かれることもなく、無限の光の中に溶けて消えるのだった。

ついに魔王戦も決着!でも封印できただけでとりあえず目先の問題が解決しただけなんですよね!

しかし、未来編の障害はこれでおしまい!

さぁ、帰ろう!現代へ!


次回投稿は来週日曜日22時間から!

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