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第二百九話 人は変わるもの

GW終わってからいつも通りの投稿に戻りました!

5月になってすっかり暖かくなりましたね!

それなのに風邪引きました!喉が辛い!


「泥棒めぇぇぇぇ!!」

「ちょっと待ってェェェェ!!」


 鉄の棒を振り回しながらセシールが追いかけてくる!

 せっかく久々の再会なのに、と思ったが、よく考えたらセシールに会った時は俺は七歳の姿だった。

 成長したこの姿では俺だと気づいていないだけでは!?

 ならば!と逃げるのをやめ、セシールと正面から向き合う。


「落ち着いてくださいセシールさん!俺ですよ、クロノス・バルメルドです!ほら、あなたと同じ転生者で

「そんな名前のやつ、私の知り合いにはいないわ!!騙そうとしたってその手には乗らんぞぉ!!」

「なんでェ!?」


 また俺のこと忘れてるよこの人!

 どうして会う度に俺のことを忘れるんだよこの人は!!

 また追いかけ回され走り回る。

 十年前の時は俺のこと覚えたって言ってたのに!


「名前覚えたって言って忘れて……トリ頭過ぎるだろ!」

「トリだとぉ!?私はトリ肉よりラム肉の方が好きだぞ!!」

「知らねぇよそんなに情報!!」


 なんか既視感のあるやり取り!

 てか、いつまで逃げ回ればいいんだよこれ!?


「待った待った!セシールストップ!ステイ!」


 部屋を走り回って追いかけっこを続ける俺とセシールの間にギルニウスが割って入る。

 目の前に喋るフェレットが現れ、セシールも思わず足を止めた。


「ん!?なんだ、喋るフェレット?」

「僕だよ僕!ギルニウス!」

「あぁ、ギル公か!えらい久しぶりだな!二十年ぶりぐらいか?」

「十年前にも会ってるよ!んで、こっちの彼にも十年前に会ってるでしょ!」


 「あん?」とようやくセシールが俺の顔を落ち着いた状態で見てくれる。

 正直、また襲いかかられるんじゃないかとビクビクしてるけど。


「十年前に君が携帯電話を造っていた時、中継局のアイディアを出してくれたクロノス・バルメルドだよ。ほら、あのちっこくて生意気そうな子供」

「言い方!」

「……?あっ、思い出した!生意気そうな癖して豆腐メンタルなあのガキか!」

「言い方ァ!!」


 確かにあの時はインスマス教会戦の後だったから豆腐メンタルだったけども!!

 なんでその部分で思い出すかなぁ!?

 ようやく俺のことを思い出して鉄の棒を振り上げるのをやめてくれる。

 ここがセシールの工房ってことは、あの棒は絶対ただの棒じゃねぇ……触れたら絶対電流とか流されてたに違いない。


「なんだ、ちょっと見ない間に大きくなったな?前会った時は私ぐらいの大きさしかなかったのに」

「あなたは全然変わってませんね……それに前会ったのって十年以上前の話ですよね?」

「なに?十年?城の外ではもうそんなに時間が経ったのか」

「セシールさん、自分が何年この塔に取り残されてたか忘れてたんですか……」

「七日から先は数えるのをやめた!」


 あぁ、そうですか……と苦笑いし、清々しい顔で答えるセシールには呆れを通り越して感心していた。

 城が魔王軍に堕とされて五年以上は一人、塔の中で生活していたはずだ。

 だというのにこうして元気に生きていられて、人と会っても喜ぶどころか泥棒だと思い込んで追いかけ回してくるなんて、逞しいと言うかなんというか……俺だったらこんな狭い空間にずっと居たら、間違いなく発狂するぞ。


「でもセシール、君はよく数年間一人だけで魔王軍の根城で生き残れたね?襲われたりしなかったの?」

「ん?あぁ、初めの頃は魔物がこの部屋に入ろうと騒がしかったが、ネズミ対策のトラップで追い返してたら静かになったぞ」

「悪魔たちにとっては、城は堕とせたし塔の引きこもりは害が無ければ放っておこうってなったのかもね」


 トラップってあれか、俺が受けた塔から池に落ちるのとか、電流受けるのとかの類の──あれは喰らうと結構キツイからなぁ。


「……あ?ちょっと待て、魔王軍ってなんだ?この城は魔物に物量で攻められて陥落したんじゃなかったのか?」

「それも知らなかったんですか!?」

「自由だなぁ〜ホント」


 眉を顰めるセシールにライゼヌスの状況を一から説明する。

 説明を聞き終えて何度も彼女は頷く。


「はぁ〜なるほどな?どうりで変な魔物が城の中ウロついてると思った」

「よく今まで無事でしたね。食事とかどうしてたんですか?」

「さっきお前が使った魔法陣があっただろ。あれは城全体に設置されていて、そこから城のどこへでも転移できるようになっている。ただし転移は一日に往復で一回だけ。何より、転移する先の光景を強く頭に思い描くことだ。つまり、転移する場所の風景(・・・・・・・・・)を知っていないとここには来れない。お前、陣を踏む時この部屋のこと考えていただろ?」

「ええ。だからここに来たのか」


 あの時はセシールの無事を確かめる為に塔にも寄らないとと思い、確かにこの工房のことを思い出していた。

 それに反応してここに転移したってことか。


「魔物に占拠される数年前に仕込んでおいたのさ。サカタが部屋から出ろだの食事は自分で取りに来いだのうるさかったからな」

「理屈はわかりましたけど、よく悪魔たちに魔法陣のことが今までバレませんでしたね」

「そりゃ、使わない時は陣は見えないからな。起動にはマナが流れている魔道具が陣と接地するのが条件だ。私の場合は靴に魔石を仕込んでいる」

「あぁ、相棒の魔石を靴に嵌め込むタイプの魔道具だもんね。それで起動しちゃったんだね。きっと」

「魔物はそんな上等な物を持っていないから魔法陣を使えない。だから食料庫に設置してある魔法陣で行き来して、食料を調達したってワケだ。一度使えば次の日まで魔法陣は使えないからな!再使用のサイクルを把握しておけばバレる心配もないってことだ!」

「なるほどー!それなら確かにバレることはないですね!」


 大笑いするセシールに合わせて俺とギルニウスも大笑いする。

 とにかくセシールの無事が確認できたのは良かった。

 これで坂田にいい報告ができそうだ。


「あっはっはっはっはっ!ところでなぁ、クロノスぅ?」

「あっはっはっ……はい?」

「この魔法陣はな〜?往復一回しか使えないんだ〜。つまり──お前が片道分使ったから、もう一回転移使ったら明日までこの部屋に戻って来れないってことだバカヤロウ!!」

「ぐええええ!!す゛み゛ま゛せ゛ん゛!!」

 

 一回しか往復に使えない魔法陣を勝手に使ってしまい、小さな両手で首を絞められる。

 それでも喉を圧迫するのには十分過ぎる握力で、謝りながら何度もセシールの腕を叩く。

 謝ったからか、はたまた首を絞めるのに疲れたのか、すぐにセシールは解放してくれた。


「あの……バッタの燻り焼きならあり、ます、よ?」

「いるかそんなもん!仕方ない。今日の晩飯は肉だな」

「「ひえっ」」

「冗談だ。しかし、おかげで食料庫に行けないから晩飯は抜きだな。というか、お前たちは何しにこの城に来たんだ?私が生きてるか確認する為だけに来たワケじゃないだろ」

「あ……そうだレイリスたち!俺、魔王を倒す為に勇者と一緒だったんです!早く戻らないと!」

「待て待て!魔王を倒す?え、お前も一緒に?無謀もいいとこすぎるだろ……」

「言わないで下さい!自分でも重々承知してるんですから!」

「……仕方ないな。ちょっと待ってろ」


 急いで戻りたいのに引き止められてしまう。

 彼女は床に散らかったガラクタを漁り始めた。


「おっかしいなぁー?ここら辺にあったはずなんだが……」

「あの、何をして……」

「いいからそこで待ってろ。くっそぉ、こいつもバラしておけばよかった」

「ねぇセシール?ここにあるガラク……発明品って、全部君が作ったものなのかい?」

「ああ、そうだぞ。暇だったから造っては解体して造っては解体しての繰り返しだ。おかげで部屋が散らかる一方でな。片付けるヤツがいないから」


 片付けるヤツ……って、坂田さんのことだよな多分。

 本人が聞いたら怒りそう。

 でもこの部屋に部品が抜けてたりと未完成品が多いのは、一度造って解体したからなのか。


「でもよくこんなに部品が揃ったね?どこから持ってきたの?」

「食料庫の食い物を時々こっちに貯め込んでから城の中を探索することがあったんだが、月三ぐらいで魔道具が放置されていることがあってな。私の為に用意してくれるなんて親切なヤツもいるものだなー、と感謝しながら持ち帰っていたのだが……そうか、思い返すと、あれは悪魔たちが集めたものだったのかもしれんな」

「それってたぶん、魔王への献上品だったんじゃないかな……?食料庫が尽きなかったのも、魔王への貢物を悪魔たちが保管していたんじゃ……」

「本当……よく今まで無事でしたね。セシールさん」


 悪魔たちが持ち帰った物を自室に持ち帰るのもすごいが、そのことに今更気づいても平然としているのがすごい。

 バレたら間違いなく塔ごと消されていただろう。

 持ち帰る時にも見つからなかったのだろうから、運が強いというかなんなんだよマジこの人。

 セシールの強運に呆れていると「お、あったあった!」とガラクタの山から何かを引っ張り出し、俺に差し出した。

 彼女の手に乗っていたのは手の平サイズの四角い物体。

 6六面全てに穴が空いており、穴を覗くと物体の中央には無色透明の魔石の球体が組み込まれていた。


「なんですかこれ?」

「私にもわからん。持ち帰った魔道具に組み込まれていたんだが、急激なマナの変化を感知すると球体の魔石が光って、マナの流れが乱れて扱い辛くなる。使い道がないからやる。魔王と戦うなら役には立つだろ」

「ありがとうございます」


 貰った道具を軽鎧の内側に仕舞っておく。

 未知の道具だけど、貰えるものは貰っておこう。

 魔法陣の上に立つと、陣が淡い光を帯びていく。


「えーと、これって知ってる風景を頭に思い描けばそこに行けるんですよね?」

「ああ、より鮮明な程その場所に行き易い。イメージが中途半端だと、身体が壁の中とか床に嵌った状態になるから気をつけろよ」

「え、やだ何それ怖い」

「いやいや、よっぽど変なイメージ持ってなければそんなこと起きないから大丈夫だよ」


 説明を聞いて戦慄するのをギルニウスが否定する。

 魔法陣の光が徐々に強くなる。

 そろそろ転移が始まるようだ。

 とりあえず、飛ばされる前にいた庭園に戻ろう。

 そこからレイリスたちを追いかければ魔王と戦う前には合流できるはず。


「じゃあセシール。全部終わったら坂田と迎えに来るよ。その時はラム肉も用意しとく」

「頼むぞ。お前らも魔王?との戦い頑張れよ」

「ああ!僕は何もできないけど頑張るよ!」

「いやなんかしろよ」

「無理だよフェレットなんだから!でもまぁ、玉座に踏ん反り返って座ってるだろう、魔王のケツを蹴り上げるぐらいはしてやりたい……あっ」


 なんか嫌な「あっ」という声がしたが、俺も心の中であっまずい、と呟く。

 しかしもはや遅い。

 俺たちのイメージした場所に転移させようと魔法陣が起動、浮遊感に包まれ視界が光に包まれる。

 俺たちは転移してしまう。

 玉座のある場所へ──

次回投稿はいつも通りです!

よろしくお願いしま!

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