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第二百一話 勇者の来訪

みなさんGWはいかがお過ごしですかー!?

私は仕事デース!!(血涙)


「いよっしゃァァァァァァァァ!!」


 折れた剣を空へと掲げ勝利の雄叫びを上げる!

 フェリンに勝った!

 俺はリベンジを果たせたんだ!!


「うおおおお!!相棒ぅぅぅぅ!!」

「クロー!」

「やったなクロノス君!」


 俺がフェリンを倒したのを見届け、レイリスとニールが駆け寄ってくれる。

 影山とティアーヌも笑みをこぼしながら歩み寄り、祝福の言葉を──


「うむ!大変良き決闘であったぞ!」

「うおっ!?普通に起き上がってくるんじゃねーよフェリン!」


 背後で死んだと思っていたフェリンがむくりと起き上がり、賛辞を送られて驚く。

 というか、あれでもまだ致命傷にはならないのかよ!

 再び起き上がるフェリンの目にし、ニールは庇うようにしてレイリスを背後に回し、俺は折れた剣と盾を構えて二人の前に立つ。


「まぁ待て、我の敗北で決着は付いたのだ。もう闘うつもりはない。剣も折られてしまったしな」

「……俺も剣折られたんですけど?」

「オマエは我の一撃を防いだ。だが、我はオマエの攻撃を防げずに剣を折られ、一撃を浴びせられたのだ。我の負けだ」

「うーん、ごめんちょっとよくわかんない」

「察してやれ坊主。その悪魔の中で、剣士としての勝敗の基準があるんだ。そいつが自らの基準で決めたことなら、それを尊重してやれ」


 フェリンの決めた勝敗の基準……

 俺には剣士として、というのは分からないが、尊重するのならできる。

 それでフェリン納得しているのなら、闘った俺があれこれ言うのも野暮かと気づき、黙って頷いた。

フェリンは傷ついた身体でも平然と立ち上がる。


「しかし驚いたぞ。まさか一度見ただけで同じ技を使ってくるとは」

「やり方は何となく想像できたし、真似できるかなって……前回の戦闘の時は、俺の全力の斬撃でも負けた。別の技じゃなきゃ勝てないって思ったんだ。それで咄嗟に」

「であろうな。手元がかなりブレていたし、放った衝撃波のマナも乱雑で威力が安定していなかったからな。結果、我も死に至らなかったのだ」

「じゃあ、やっぱり俺の斬撃効いてなかったのかよ……」

「いいや、貫通して背中まで切れているところもあるぞ?こう見えて、死ぬ程痛い!」


 その割にはピンピンしているように見えるけど、やせ我慢しているのかもしれない。

 ともあれ、もうフェリンには闘う意思がないのは助かる。

 俺だって剣は折れてるし身体中痛いし、最後の衝撃波を撃つ為に暴れる剣を掴んでいた右手は、まだ感覚が鈍っているし震えてる。

 これ以上は俺だって戦えそうにない。

 フェリンは一歩下がり、


「我は悪魔界に帰る。傷の療養と修行の為直しだ。オマエたちと魔王様との決着が付くまでは戻っては来ないだろう」

「そのまま一生悪魔界に閉じこもってなさい!しっしっ!」

「ギルニウス神も、早く天界に帰れるとよいな。では諸君、また会おう!我が名はフェリュム=ゲーデ!地上最強を目指す戦士!さらばだ!」


 翼を広げフェリンは空へと飛び立つ。

 愉快そうに笑いながら暗雲を突き抜け姿を消し、次第にフェリンの笑い声が遠のき、やがて聞こえなくなる。

 それを最後に、俺の意識は途絶えた。


✴︎


 次に意識が戻った時、俺は振動で目覚めた。

 目を開けると馬車で寝かされており、道が悪いのか振動で揺れる度に頭が痛い。

 首を動かすと、すぐ側にニールとレイリスが並んで座っていた。

 レイリスは船を漕ぎながらニールに寄りかかっていた。

 俺が起きたのに最初に気付いたニールが、


「やぁ、目が覚めたかい?気分は?」

「あー……寝心地が最悪な点を除けば割と……」

「はは、そうかい。みんな、クロノス君が目を覚ました」


 その声にうたた寝しかけていたレイリスがハッと頭を起こし、相変わらず馬車隅に座っていたティアーヌが横目でこちらを見て、馬車を操縦していた影山は一瞥すると正面に向き直った。


「クロ!良かった、目が覚めたんだね」

「俺、どうなったんですか?」

「ああ、まだ起きない方がいい。フェリュム=ゲーデが去った直後に倒れたんだ。多分過労だね。昨日の夜から休みなく戦っていたから無理もないよ」

「クロは半日近く寝てたんだよ。兄さんとカゲヤマさんが交代で背負って山を降りたんだ」


 それは申し訳ないことをした。

 謝ろうかと思ったのだが、まだ頭がぼーっとしていて上手く考えがまとまらず言葉が出てこない。

 それに、何故か右腕がとてつもなく重い。

 頭を上げて確認すると、右腕全体が布でぐるぐる巻きにされて見えなくなっていた。

 動かそうと思っても、重くて持ち上がらない。


()した方がいいわ。フェリュム=ゲーデを真似て貴方が放ったあの技、あれが相当人体に負荷をかけたみたいで、袖を捲った時腕全体が腫れ上がっていたのよ。無理に動かさずに安静にしていた方がいいわ。見るのも止しておきなさい。かなりグロテスクだったから」

「えぇ……」


 ティアーヌに右腕の状態を聞かされ若干引く。

 見るのも止められる程グロテスクって、どんな状況なんだよ俺の腕……


「クロ、何か欲しい物とかある?」

「熱い風呂に入りたい」

「あら、熱湯なら私が魔法で出してあげるわよ?」

「遠慮します」


 本当に熱湯出されて、今の状態で浴びせられたらたまったものじゃない。

 それがわかっていてティアーヌも冗談めかして言っているのだ。

 本気で断る俺に苦笑いするティアーヌだが、珍しく大きな欠伸をして目を擦っている。


「それじゃあ……バルメルド君も起きたし、今度は私が寝るわ……あと、頼むわね」

「はい。警戒は俺がするので、ゆっくり休んでください」

「ええ、おやすみ」


 そう言うとティアーヌは帽子で顔を隠すと眠りについた。

 こっそりレイリスが「クロが起きるまで待ってたんだよ」と教えてくれる。

 淫魔の能力で寝ている俺に淫夢を見せたらややこしいことになるから、と気を遣ってずっと起きていたそうだ。

 ティアーヌにも申し訳ない気持ちが湧いてくる。

 絶対ティアーヌが起きるまでは眠らないようにしよう。


「あれ、レイリスはティアーヌさんが悪魔だって知ってたっけ?」

「うん。クロが寝てる間に。クロと兄さんが信用しているのなら、ボクは特に何も言わないよ。ギルは……すごい反対してたけどね」

「だろうな」


 ギルニウスは極度の悪魔嫌いだから、そうなるだろうとは合流する時から思ってはいたけど。

 まぁ、あまりティアーヌに対して何か言うようなら投げ飛ばせばいい。


「で、そのギルニウスは?」

「今はカゲヤマさんと一緒。何か話してるみたいだよ」

「……?そうか?」


 ギルニウスが影山と?

 会話の内容が気になるけど、まだ怠さが抜けないので後にしよう。

 それから影山とニールが交代で馬車を操縦し、辺りが暗くなり始めた頃に馬車は新しい難民キャンプに到着した。

 その頃には俺も身体を動かせるぐらいには回復し、ぐるぐる巻きだった右腕の布も何枚か取り除かれる。

 代わりに首で布を結んでぶら下げ、そこに腕を通して固定しろと影山に言われた。

 なんか三角巾で骨折した腕を固定する時みたいな状況だ。

 荷物と一緒に馬車を降りると、坂田が出迎えてくれる。


「影山さん!クロノス君!二人とも無事で良かった!」

「坂田さん。色々心配かけて、すみませんでした」

「いやいや、無事ならそれで……クロノス君、何かあったのかい?顔つき、いや雰囲気が変わったね?」

「え、そうですか?」


 出会い頭にそんなことを言われてちょっと頰が緩む。

 勇気の試練、フェリン戦と経験してちょっとは成長したってことかな……


「うん。なんでだろう、子供の頃と同じに戻ってる」

「みんなが俺に抱いてる少年時代のイメージって何なんですかね!?」


 ギルニウスを煽った時にもニールに同じこと言われたよ!

 少なくとも褒めてないのは確かだな!

 大声で叫んでいると、人混みからフロウが姿を現した。

 相変わらずヒラヒラのドレスを身に纏っているが、逆にそれを見ると安心してしまうのはなんでだろう。


「クロくん、レイリスちゃん!!」


 俺たちの姿を見て一目散に駆け寄って来る。

 だが、レイリスはドレスを着た長身の男が駆け寄けるのを目にし恐怖で後ずさっていた。


「ひっ!?クロ、あれ誰!?」

「フロウだよ」

「フロウ……え、あれがフロウ!?」


 まぁそうなるよなぁ。

 懐かしき友人との再会なのだが、数年ぶりに見る旧友の姿があまりにも記憶と掛け離れているせいで、レイリスが引きつった笑みを浮かべている。

 そんなレイリスにも気付かず、フロウは両手を広げて抱きつこうとし、


「フ、フロウ?久しぶり……」

「レイリスぢゃああああん!!久じぶり゛いいいい!!」

「痛い痛い痛い!フロウ痛いよ!」


 ベアクローで抱き締められ悲鳴を上げるレイリス。

 そうだよなぁ、痛いよなぁあれ。

 泣きながらレイリスを抱きしめていたフロウだが、俺が放すよう促すと謝りながら手を離す。

 元気にしてたかとか、生きてて良かったとか、フロウは泣きながら何度も何度もレイリスに話しかけていた。

 レイリスも成長したフロウに若干面食らってはいたが、話をしているうちに徐々に強張っていた表情を柔らかくなっていくのだった。


「相棒、ちょっといいかな?」

「……再会に水を差さないでくれよ」

「ルディヴァが来てるんだ。一緒に来いってさ」


 ルディヴァが来てる?

 その言葉に訝しげな表情をするが、肩に乗?ギルニウスの声色がいつもと違い真剣なものだったので了承する。

 気付かれないようにそっとその場を離れ、キャンプ近くの森の中へとギルニウスに誘導されて進むことに。

 数分もしない内に少し開けた場所まで歩いてきた。

 そこに佇む、先端に宝石の付いた杖を持った青い髪の女性の後ろ姿を見つける。

 一瞬警戒し足を止めると、女性はこちらに振り返るとにこやかに手を振った。


「どうもー」

「ルディヴァ……様」


次回で第四章 最終回です!

イヤー ココマデ ナガカッタ デスネ!!

どういったラストになるかは、明日20時からの更新で!!(笑)

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