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第二百話 バカ二人と決着

あー!!ついに200話だああああ!!

どこからこんなに続けられるヤル気が出てくるのか自分でもわかんねぇ!!

読んで下さっている皆さん本当にありがとうございます!!


「「ハッハァ!!」」


 俺とフェリンの笑い声と剣がぶつかり合う音が響き渡る。

 楽しい……楽しい……楽しい!!

 なんでか分からないけど、フェリンと剣をぶつけ合うのは本当に楽しい!!

 強敵と剣を交えるのがこんなに楽しいことだったなんて!

 フェリンの繰り出す高速剣。

 それを盾で受け流し、見極めて弾き返す。

 お互いに付け入る隙を見つけ一撃を与えるようとするが、どちらも躱し躱され決め手にはならない。

 でもその度に心が高揚する……楽しい!

 だけどこの感情に身を委ねるな、状況に流されるな。

 思考を巡らせ目を見張れ。

 それをやめたら死ぬぞ!!


「クロ、すごい……どうしてあんな動きについていけるんだろう……」

「相棒の使ってる魔道具のおかげだよ。でも、あんなに能力が向上するなんて」

「確かに凄いわ。だけど、あんな動きを続けてたら、バルメルド君の身体が持たないわよ」


 フェリンの振り下ろしを剣で受け止めた瞬間、左脚の力が抜けてバランスが崩れる。

 なんだ、魔石が切れたのか?


「好機!」

「土よ!突き出せ!!」


 マナを使って足元から土柱を生成しフェリンを後退させる。

 距離が離れた間にブーツの風の魔石を抜き捨て新しいのに挿し替えた。

 ついでにグローブの土の魔石も取り換えて


「クロ、正面から来てるよ!!」

 

 レイリスの警告が聴こえ、盾を正面に構えると壁代わりにしていた土柱が切断され、フェリンの放ったであろう斬撃が襲い来る!


「ぐうおぉぉぉ!?」


 斬撃が重い!!

 弾き返したくても高密度のマナで作られているのか、押し返すことができずに押されてしまっている。

 気を緩めれば盾を弾かれ真っ二つ、これじゃあ身動きが取れない!


「はっはっ!これも防ぐか!?やはりオマエとの戦いは面白い。久しく忘れていた、この情熱!思い出させてくれたことに感謝するぞ!」

「そりゃ……!ど、どう、も……おおおお!?」

「であればこそ!我の本気の一撃も、受け止めてみせろ!!」


 フェリンが初めて長剣の柄を両手で握り、空へと剣先が向けられた。

 刹那、途方も無い量のマナがフェリンの身体から発せられ長剣に収束されていく。

 刀身か燃え、水を纏い、風を巻き起こし、地面の岩山が割れ破片が宙に浮く。

 刀身に雷が帯び、冷気が周囲に立ち込める。

 どう見たってヤバいのが来るのがわかる!

 六つの属性を同時に発動させて何するつもりだ一体!?

 すぐに阻止したいが、未だに斬撃に押されており身動きが取れない!


「フフ……流石に判るか、ここまでの量のマナが集まると」

「お前、何を……!?」

「剣聖の真似事だ。話したであろう?剣聖は人族最強の戦士。勇者の血を引く一族だ。当然、代々初代勇者が使っていた技を継承している。我が戦った者もこの技を会得していた。だから我も覚えたのだ。剣聖との闘いの中で……!!」


 バラバラだった六つの属性全てが長剣を軸に一つに重なる。

 刀身が黄金に光り輝き、大気が震えて耳鳴りがする!


「え、ちょ……っ!?マズイマズイ!!あれはマズイって!!」

「ギルニウス様、どうしたんですか!?」

「あの悪魔が撃とうとしてるのは、昔僕が勇者に教えた技なんだよ!!破壊力がありすぎて、結界とかがない限りは使用を禁止したんだ!あんなもん全力でぶっ放されたら、クロノスは塵一つ残らず消し飛ぶし、周囲の山もまるごと吹き飛ぶかもしれない!ニール、影山!今すぐクロノスを連れて避難!絶対防げない技だから今すぐ避難!!」

「わかりました!クロノスく……っ!?」

「身体が動かない!?あの時と同じか!!」

「邪魔をしないでいただこう!これは、我とクロノスの決闘なのだ!!」


 フェリンのプレッシャーがより一層強力となり、影山たちは身動きが取れなくなってしまったようだ。

 前回戦った時と同じだ。

 部外者に闘いの場に踏み入れられるのを嫌っているのだ。


「さぁ、行くぞクロノス!この技を受けて無事ならそれで良し、死んでもそれで良し!我が今持てる全ての力を結集し放つ一撃!受け取れェ!!」


 フェリンが振り上げた長剣から膨大なマナが膨れ上がり、そして──


「デ・ラナ・ルミネェェェェ!!」


 振り下ろされた剣から光の衝撃波が放たれる。

 光は大地を抉り、扇状に広がりながら俺に襲いかかってきた!

 先に受けていたフェリンの斬撃が消し飛ばされ、今までに受けたことのない衝撃が全身を襲う。

 盾で受け止めても勢いが全く衰えず、身体が震えて筋肉が泣き喚く……!

 髪の毛一本、全身の筋一本足りとも力を抜けない。

 そうすれば、一瞬で俺の存在が消える!

 だけど、もう既に左腕が震えてて腕がもがれそうだ!

 このままだと……死ぬ?

 死ぬのか、俺は?

 死んで、コノママ消エテ……?


「死なない!!」


 頭を振りかぶって恐怖に支配されそうな心と脳を切り替える。

 危ねぇ、気が抜けかけてまた暴走するところだった!

 そうだ、俺はまだ死なない──死ねない!

 ようやく俺はこの世界での生き方を見つけたんだ。

 こんなに早く死ねない。

 まだやりたいことも、童貞だって卒業できてすらいない!

 変わると決めたんだ。

 全ての現実を受け入れて生きると決めたんだ!

 だから勝つ、勝たなきゃいけない。

 フェリンに勝って、俺は、俺は……!!


「勝って俺は、変わるんだああああァァァァ!!」


 刹那、装着していた盾が左右に展開し、閉じられていた中央の目が開き赤い宝石が露わになった。

 え、ちょっと待って、何このギミック!?

 突然知り得ない盾の機能が出現して困惑していると、赤い宝石が煌めき始めて光の衝撃波を僅かに弾き飛ばした!

 いや、弾いたというより無力化してる。

 盾に触れるギリギリの距離まで衝撃波を打ち消してる!

 

『ワタシには使いこなせなかったけど、きっとクロくんなら、本当の使い方が分かるかも』


 脳裏にフロウから盾を渡された時の言葉を思い出す。

 もしかしてフロウの言ってた本当の使い方って、これのことなのか!?

 凄い!確かに凄いのだけど……これすごくマナの燃費が激しい!!

 おそらくこれは相手の魔法を打ち消す効果を持っているのだろうけど、その発動を維持する為に俺のマナを吸ってやがる!

 それも速いペースで!

 このままだとマナ切れでぶっ倒れるって……あ、ヤバいだんだん意識が──


「駄目だ駄目だ!!」


 もう一度頭を振って何度も深い呼吸を繰り返す。

 息を吸う度に意識がはっきりし、吐く間にマナを盾に吸われて朦朧とする。

 だが倒れる訳にはいかない。

 何度も何度も呼吸をしてはマナを吸われてが続く。

 しかし、何度も行なっている内に光の衝撃波が途切れた。

 ついに盾で防ぐ必要がなくなると展開していた盾が閉じられ、元の形に戻る。

 するとマナを吸い上げられるのも止まり、ようやく意識が途切れそうになるのもなくなった。

 なんなんだこの盾、かなり燃費悪いぞ!?

 フェリンの一撃で死にはしなかったけど、この盾に吸い殺されるかと思ったわ!!

 でも、なんとか生きてる!

 あの強烈な一撃で俺の周囲の地面は抉れ削り取られている。

 俺が立って防いでいた範囲だけが無事だった。

 それだけで先ほどの一撃がどれだけ脅威だったのか、直撃すればどうなっていたのかは想像に難くない。

 光の衝撃波の一撃に戦慄しているとフェリンが笑いながら斬りかかってくる!


「ハハハ!これも防ぐか!?いいぞ、それでこそ!!」


 長剣の一振りをこちらは剣で受け止める。

 それを押し返すと再びフェリンの連撃を盾で防ぎ、振り下ろしの一撃を弾き返そうと、俺は左下から右上へと剣を振り上げた。

 互いの刀身が衝突し、金属が衝突する甲高い音が耳に響くのと同時に刀身が空へと飛んでいく。

 回転しながら宙を舞い、地面に突き刺さる刀身。

 剣同士が激突した際に耐えられず折れたのだ──俺の剣が……え、俺の剣が?


「折れたァァァァーッ!?」


 ちょ、これ、俺の剣がァァァァ!?

 真ん中からポッキリィィィィ!!

 イトナ村でワイバーンと戦った辺りから、切れ味悪いなとはずっと思ってたけども!

 なんでよりによってこのタイミングで折れるんだよ!!


「隙あり!!」

「うおわぁ!?」


 剣が折れたことに驚き戸惑っていると、フェリンが長剣を振り上げる。

 刀身の折れた状態では弾くことができず、逆に俺の剣が宙に弾き飛ばれてしまう。

 しまった!と思い剣を見上げる。

 弾き飛ばされ宙で回転した剣をキャッチしようと、落下地点を予測して……あれ、前にもなかったっけ、こういうの?

 既視感のある光景と行動に思考が止まる。

 いつだったっけ?

 最近、どこかで絶対に同じことがあったはずだ。

 そう、確か……火山の噴火が起きる前に影山にお願いして訓練に付き合ってもらった時だ。

 あの時も剣を弾かれて、見上げて、腹蹴られて……その時に言われたんだ。


「クロノス!!」


 影山の叫ぶ声が聞こえる。

 それが引き金となり、あの時の一連の会話が思い出される!


「どんな時でも……」

「どんな時でも!」

「「敵から目を離すなッ!」」


 空を見上げていた顔を急いで下げ、目の前のフェリンに注目し直す!

 剣を弾かれ隙の出来た俺に刺突が繰り出され、心臓目掛けて剣先が迫ってくる!

 盾じゃ、間に合わない……

 俺は──俺の身体は、俺のいう事を聞いてくれる。

 頭から足の指先まで、今俺の筋肉は、どんな無茶な要求でも必ず応える!


「でぇぇぇぇい!!」

「ぐっ、ぬぅッ!!」


 心臓まで剣先が数センチ。

 そのわずか数センチまで迫る刺突を避けようと重心を右に傾ける。

 身体はバランスを崩し、右側へと倒れそうになる。

 そのおかげで胸部を狙った刺突を避けることはできたが、左腕に剣先が掠め鋭い痛みが走る。

 でもそれを痛がる暇はない。

 歯を食いしばって声を押し殺す。

 地面に倒れそうになりながらも右手を地面に着き阻止する。

 姿勢を低くしたままフェリンの右脇を駆け抜け、その間際に透明マントを投げつけ視界を塞いだ。

 脇を駆け抜け、跳躍し振り返ろうとするフェリンの背を風属性を付与したブーツで蹴り飛ばす。

 フェリンは大きく体勢を崩して小さな悲鳴が耳に聞こえ、俺は蹴り飛ばした反動を利用して反対側の岩山に飛び乗った。

 飛び乗った時に右足の親指の爪が剥がれ、じんわりとした痛みと熱を感じるが、それも歯を食いしばり耐える。

 もう一度風魔法で跳躍し、回転しながら宙を舞う剣の元まで高く飛び上がり、右手で刀身の折れた剣を掴むと重力に従って落下が始まった。


「その折れた剣でどうするつもりなのだ!?」

「こうするんだよッ!」


 落下する俺を待ち構えるフェリンに剣を振り上げながら応える。

 まだ一回しか見てないけど、多分俺にもさっき(・・・)のはできるはず!


「火と、水と、風と……!」

「まさか──ッ!?」


 落下しながらマナを魔法に変換して刀身に纏わせる。

 炎と水と風、三つを込めた段階で既に剣が震え始めて手から放しそうになってしまう。

 それをぐっと堪え、残りの属性も全て上乗せさせる!


「土と、氷と……雷!」


 六つの属性を全て込めた瞬間、右手に掴んだ剣から途方も無い力が溢れて全身を貫くような痛みに襲われる。

 魔法のコントロールができなくて剣が激しく震えて手に激痛が走る!

 でも、絶対に放さない!

 もっと、もっとマナを込めないとフェリンに一撃は与えられない!


「もっと……もっと……もっとォ!」


 マナを込める程に剣が熱くなるが、刀身が光を帯びて大気が震えているのがわかる。

 それに反比例し、光が強くなればなるほど俺を貫く痛みがより一層強烈になる!


「アッハッハッハッ!一度見ただけで我と同じ技を使えるのか!?いいぞ、オマエは本当に面白いな!!」

「行く、ぞッ!フェリン!!」

「来い!クロノスぅぅぅぅ!!」


 長剣を構えるフェリンへと真っ直ぐに落下していく。

 手にした剣はもうこれ以上マナを蓄積できず、暴れ回って制御するのも限界だ。

 でも、これが今の俺の最大級の攻撃!

 全部を込めた一撃を!


「俺のマナ全部、持ってけェェェェェェェェェェ!!」


 咆哮と共に剣を振り下ろす。

 それに合わせフェリンも長剣を振り上げた。

 お互いの剣が触れた瞬間──今度はフェリンの長剣が砕け始めた。

 俺の剣から放たれ光の衝撃波に触れたところから消滅する。

 折れた剣を振り抜くと小さな斬撃となってフェリンの左肩から右脇腹を貫く。


「……見事ッ」


 その一言を呟いた直後、フェリンの身体がゴム毬のように大きく弾む。

 斬撃に貫かれた箇所から血を流しながら地面に倒れ、動かなくなった。

 長剣が折れ、上半身に斬撃を受け、倒れたまま動かないフェリン。

 肩で大きく息をしながら、俺はその姿を見下ろす。

 勝った……?

 動かなくなったフェリンを前に、勝利という言葉が脳裏に浮かんだ瞬間、全身が痺れる。

 そして──


「……ッ!!いよっしゃァァァァァァァァ!!」


 勝利の雄叫びを上げ折れた剣を空へと掲げる!

 二回目の戦いで、今度は俺がフェリンを倒せたんだ!!

ついに200話!フェリュム=ゲーデとも決着!

以前も書きましたが、フェリンは一番お気に入りで凄く動かし易いキャラなので、決着のつけかたが割とすんなり決められました


GWに突入したので今日から連続投稿が始まります。

ですがGW中は投稿時間が22時ではなく20時となっております。

また明日もよろしくお願いします!

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