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第百八十八話 被りの中身

昨日は、雪降ってるやんけ!と思ってずっと自宅にいたのですが、積もならないやんけ!って夕方ぐらいから午前中に買い物いかなかった自分と天気を恨みました


 鉄仮面の中に潜んでいた被り魔(プービル)

 火の鳥の本体である鉄仮面を地面に引きずり下ろしたと思ったら、潜んでいたプービルに逃げられ、また火の鳥が復活してしまった。

 再び炎の身体を取り戻した火の鳥は、岩の塔に立つ俺たちの周囲を何度も旋回し、その周囲を炎で包み始める。

 まるで俺たちを鳥籠に閉じ込めるかのように。


「なんだ、なにをするつもりなんだ!?」

「今までを考えると、嫌な予感しかしないわね」


 周囲を包む炎に焦るニール。

 炎を見て、この先の展開に思い及び苦笑いするティアーヌ。

 レイリスも危険を察知しているのか、睨むように渦巻く炎を見る。

 やがて周囲を取り囲む炎の中から、ひらひらと炎の羽根が舞い落ちてくるようになる。

 十枚や二十枚……なんて規模ではない。

 数えるのが困難な程の無数の羽根が上から降ってきたのだ!


「い゛い゛っ!?最悪だ!」


 その光景に思わず変な声が出てしまう。

 頭上からは爆発する無数の羽根、しかも端に逃げようとしても炎の壁に阻まれ、近づけは焼け死ぬことは間違いない。

 つまり、俺たちには逃げ場がないのだ。

 爆発の範囲外に逃げることもできず、上空に逃げることもできない。

 完全に逃げ道を塞いだ上で、爆発によって俺たちを倒そう火の鳥は狙ってきたのだ。

 炎の羽根は斬撃や魔法と衝突すれば簡単に連鎖爆発を起こす。

 下手なことはできない!


「ティアーヌさん、どうしますかこれ!?」

「……ッ!全員で、氷魔法で氷の壁を作るわよ……!」


 ティアーヌの提案に全員が彼女に振り返る。

 だがティアーヌは俺たちを見ずに、懐からマナの小瓶を三つ取り出し、


「一人ずつ私たちの周囲に氷の壁を生成するの。外側をバルメルド君、二層目をニール君、三層目をレイリスさんが、一番内側は──私がやるわ!」


 氷の壁を作って、衝撃と熱を同時に防ぐってことなのか?

 でも今はそれ以外にいい考えが俺にも思い浮かばない。

 土魔法でドームを作ることも考えたが、絶対中で蒸し焼きになるだろうから、俺の案と比べたら全然マシな気がする!

 「わかりました!」「うん!」と俺とレイリスは返事はするが、ニールだけは少し狼狽えた様子で、


「ちょ、ちょっと待って!俺、氷属性の魔法は苦手って、前に言ったのですが!」


 そういや数時間前に親睦会やった時にそんなこと言ってたな。

 でも苦手ってことは発動自体はさせられるのだろう。

 ならばと俺は剣と盾を地面に置くと魔道具のグローブを脱ぎ、ニールに渡す。


「はい!じゃあニール兄さんはこれ使って!スロットにこの魔石を入れれば、グローブが発動補助してくれるから!!」

「いや、でもこれは君が使った方が効果が……!」

「自前のマナで魔道具以上の出力を出してみせますから!ニール兄さんはそれで頑張ってください!!」


 最後の一つである氷の魔石と一緒にグローブを渡す。

 これで四人全員で氷の壁を作れるはず!

 ニールがグローブを装着するのを手伝う間、ティアーヌはマナの小瓶の蓋を開け飲み干し、レイリスは破魔の剣にマナを込め続けている。

 ヒラヒラと舞う羽根が、間もなくその爆発範囲に俺たちを捉える。


「全員準備はいい!?」

「いいよ!」「オッケーです!」「は、はい!」


 四人で密集し背中合わせとなりながら返答する。

 ニールだけは若干まだ不安があるようだが、魔道具で何とかしてもらうしかない。


「いい?ただ壁を造るのじゃ頭上の爆発を防げない。だから半球体で、私たちの頭上と周囲をすっぽりと囲むような壁を造って!」


 半球体、半球体……と何度もティアーヌに指示された内容を頭の中で復唱する。

 イメージせずに造るのと、イメージを固めてから造るのでは強度や精度がかなり変わってくる。

 強固で爆発に耐えられ、内部を瞬時に冷却するドーム型の氷を何度も頭の中で想像し、


「やるわよ!!せーのっ!!」


 ティアーヌの合図で全員同時に魔法を発動させる。

 ティアーヌは手にしていた杖を、レイリスは破魔の剣を地面に突き立て、俺とニールは地面に手をついて魔法発動のトリガーとする。

 俺たち四人の足元から頭のてっぺんまでを覆う形で四枚の氷の層が生成された。

 外側が俺、二枚目がニールで三枚目がレイリス、一番内側の最後の砦となる氷の壁がティアーヌが生成した物だ。

 俺たち三人が造った氷よりも何倍も厚い層となっている。

 これが破壊されてしまえば、俺たちは全員爆発に飲まれてしまう。

 四層の氷の壁を生成し終えた直後、炎の羽根の一枚が地面に接触し爆発した。

 爆発そのものの規模は小さい。

 が、一枚目の羽根の爆発範囲を待っていた別の羽根が連鎖して爆発、その爆発に巻き込まれまた別の羽根が、続けてまた別の羽根が──と誘爆を繰り返し、氷内部から僅かに見えていた景色全てが爆発によって埋め尽くされた!

 一つ一つの規模は小さくとも、いくつも舞う羽根が連続で爆発し続ければ、それはかなりの威力となる。

 それを証明するように、俺が張った氷の層は粉々に砕け散り、ニールの造った氷の壁も続けて破壊されてしまう。

 三層目のレイリスの氷は多少耐えたが、連続の爆発に耐えれず、亀裂が入るとやがて壊れてしまう。

 ティアーヌの氷の壁が残りの一枚となってしまう。

 俺たちのよりも厚く造られた氷の壁は、爆発で振動しながらも爆発に耐え続けている。

 しかし氷の壁を維持するのが辛いのか、ティアーヌの口から僅かに苦悶の声が漏れている。


「ティアーヌさん!俺ももう一度壁を」

「いいから……!爆発が終わった時に、備えて!」


 もう一度壁を造り負担を減らそうとするが拒まれてしまう。

 それよりも反撃の準備をしろと言うのだ。

 数秒その言葉に迷うが、頷くとニールからグローブを返して貰い、盾と剣を装備し直す。

 残っている魔石は水属性が二つだけ。

 この二つで決着を付けなければ、もう勝ち目はない!

 氷の外側で永遠に続いているのではないかと思える程の爆発の連鎖が、ついに終わりを迎える。

 結局最後まで氷の壁に亀裂が入ることはなく、見事にティアーヌは爆発を防ぎきってみせてくれたのだった。

 氷の壁を維持する為にずっと杖にマナを込め続けていたティアーヌだったが、爆発が終わったのを確認すると氷維持を止め膝を着く。

 何度も肩で息をしながら地面に手をついた。


「ハァ……ハァ……」

 「ティアーヌさん!」

「いいから、あの魔物を……!」


 自分に構うなとティアーヌは声を張り上げる。

 それに応えようと、爆発により発生した煙の中から火の鳥の姿を探し、


「クロ、兄さん!あそこだ!!」


 レイリスが一番にその姿を確認する。

 火の鳥は俺たちを上空から見下ろし、爆発で死んだかどうかを確認し、鉄仮面に潜んでいるプービルが目を出して確認していた!

 奴はまだこちらには気づいていない!


「ニール兄さん!今なら!」

「ああッ!」


 俺が言葉にするよりも早くニールは弓を構えていた。

 返事をすると同時に引き絞っていた弦を離し、弦に押し出され矢が勢い良く放たれる。

 空を切る音と共に矢は煙の中を潜り抜け、火の鳥の鉄仮面、目が剥き出しとなっている箇所へと直進していく。

 命中する!そう全員が思った。

 だがプービルは、自身の目に迫る矢を目視すると、素早く目を閉じて鉄仮面の中に引っ込んでしまった。

 開閉部が閉じられ、鏃は仮面に届きはするものの、鉄に弾かれ溶岩へと落ちていってしまう。


「くっ……また駄目か!防ぎもしないなんて……!!」


 矢が外れたことよりも、矢を脅威と認識されず防がれなかったことにニールは憤りを感じている。

 どうする、どうすればいい!?

 俺とレイリスの斬撃は防がれるし、さっきの時間差攻撃もおそらく通用しなくなる。

 氷の魔石はなく、水の魔石の二つだけ。

 ティアーヌさんは連続爆発を防ぐ為にマナを使い過ぎたのか疲労困憊。

 ニールの弓矢は本体に飛来する前に燃え尽きるか、無視されるだけ。

 他の攻撃手段となると、炎で出来た身体に通用するかどうか……

 何かないのか!?

 警戒心の強いあの魔物に、完全な不意打ちでもう一度仮面を落とす方法は!?

 別の方法を模索する間にレイリスがもう一度斬撃を放つ。

 しかし、火の鳥は炎の残量がないのか誘爆による阻止ではなく、身を翻し避けると下層の溶岩へ飛び込んでしまった。


「また溶岩に潜られた!クロ、何か他の案はない!?」

「あったら実行してる!」

「ああ、もう!こういう時はいつもギルが助言してくれてたから、ボクの頭じゃパッと思いつかないよ!ギルはまだ起きないの!?」

「相変わらずのびたまんまだよ」


 腰に紐で結んでぶら下がったままのギルニウスを見る。

 フェレットの姿なので萎びたネギみたいな姿勢だ。

 しかし全く起きないなコイツ!

 こんだけ騒がしくしてれば目を覚ましてもおかしくないはずなのに!


「炎の身体じゃ近づけないし、空飛んでるから斬撃も見てから対処されちゃうし……もう!空から大雨でも降ってくれればいいのに!!」

「いや、それぐらいじゃあの炎は消せないと思うぞ?」


 フラストレーションが溜まっているのか、レイリスが子供っぽいことを言い始める。

 火の鳥の炎を消すほどの雨量となると火口内にいる俺たちが足場から流されるかもしれないし、そんな都合雨がよく降るはずもない。

 いくら魔法を使ってもそんな大規模な大雨を降らせることなんて……


「……空にいる敵に雨を降らす?」


 レイリスの言葉が頭の中でひっかかる。

 空中に水自体を発生させるのは魔法なら可能ではある。

 でもいきなり空中から火の鳥の身体全てを包む量のマナなんて、今の俺にはない。

 マナの小瓶は一応持ってはいるが数は三つだ。

 これじゃあ半身を包む程度しかできない。

 そもそも俺は遠距離に魔法を生成するのが苦手だ。

 自分が中心の場所から遠方に飛ばすのはできるが、離れた場所の何もない空中からいきなり魔法を発動させるのは上手くコントロールができない。

 ティアーヌはまだ回復してないし、どうやって実行したらいい?

 

 「くそっ、矢はまだこんなにあるのに……!!」


 背負った矢筒に残る矢を取り出しながらニールが唇を噛み締める。

 それが、考えていた手段の最後のピースを埋めてくれた!


「なんで忘れてたんだ……俺は馬鹿か!ニール兄さん、もう一度矢を射って下さい!!」

「え、でも矢は奴には……」

「大丈夫、上手く行きます!!あの鳥、一泡吹かせてやれますよ!!」


 興奮気味にニールに自分の考えを伝える。

 おそらく次が俺の考えられる最後の攻撃になる。

 絶対に、次で終わらせる!

一昨日ようやくキンハ3をクリアしました!いやー、ずっと続編待ってた甲斐がありましたね!

神ゲーでした!ようやく救われたんやなって……


次回投稿は来週の日曜……ではなく、先週宣言した通り明日の22時から。連続投稿になります!


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