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第百八十六話 鉄仮炎翔

タイトルは鉄仮炎翔てっかえんしょうって読みます。

仕事終わりに酔った勢いでタイトルを決めたので特に反省はしていないけど後悔はしてる!

でもまぁええやろ!!このままでも!!


「飛び退くんだ!!」


燃え盛る翼を広げ飛翔し、炎の脚爪を広げ襲い来る火の鳥。

ニールの声が合図となり全員左右に散らばり、地面に飛び込みそれを避けた。

目標を失ったが、振るわれた火の鳥の脚爪は地面を抉り、焼け焦げた跡と爪痕を残し飛び去る。


「地面を抉った!?あの爪、伊達じゃないのかよ!?」


炎の爪が見せかけの物ではないことに驚き戸惑う。

あれを喰らえば傷だけではない、受けただけで身を焼かれてしまうのだ。

つまり一発でも喰らってはいけない。

一撃だけでも俺たちは死んでしまうかもしれない威力なのだ。

加えて溶岩の炎で生成されたあの身体、側を通過しただけでもとてつもない熱風に襲われた。

距離が離れていた為に熱風に晒されるだけで済んだが、ティアーヌが施してくれた冷却効果が無ければ、今ので焼け死んでいたかもしれない。

でもどうする!?

身体が炎でできているんじゃ、剣を使う俺とレイリスは接近戦を挑めない!!


「バルメルド君!氷の魔石はいくつ残ってるの!?」

「え?あ、えっと、五つです!」

「全員に一つずつ渡して!」


慌ててポーチから氷の魔石を四つ取り出す。

左手にまとめて持っている為、グローブを填めていても氷の塊に直接触れているみたいに手が凍える。

全員に一つずつ魔石を投げ渡すと、


「みんな、魔石を割って懐に入れて!割れた魔石からマナが溢れて、冷却効果が上がるはず……少なくとも焼け死ぬ心配はないわ!」


なるほど、そういう使い方もあるのか!

言われた通り全員が魔石を半分に割り懐に仕舞う。

そのおかげか先程よりも火山内に立ち込める熱気が抑えられた気がした。

これなら火の鳥の熱風もなんとか耐えられそうだ。

でもおかげで、魔道具(グローブ)に使える氷の魔石は残り一つになってしまった。

水の魔石三つ、氷の魔石一つ。

使い所を誤れば俺は一気に役立たずだ。


「魔物が旋回して戻ってくるよ!」


ニールが叫びながら矢筒に手を伸ばすも、矢を射るかどうか迷っている。

当然だ、相手は炎の身体でできた魔物。

鏃が付いているとはいえ木製の矢では燃え尽きてしまう。

しかもどこが致命傷かもわからない状態では無駄に矢を浪費するだけだ。

天井の火口付近を旋回しながら再び翼を広げ、火の鳥は覆いかぶさるように迫ってくる!


「ボクに任せて!!」

「レイリス!?なにをするんだ!?」


翼を広げ降下してくる火の鳥の真下にレイリスは移動し、破魔の剣にマナを流し込んでいる。

降下する火の鳥に向け、


「はああああぁぁぁぁ!!」


剣を振り切り斬撃を飛ばした。

斬撃の大きさは普段俺が撃つサイズよりも一回り大きい。

しかも速度も俺以上にある。

レイリスの放った斬撃を火の鳥は避けることができず、その左翼を付け根から切断する。

片翼を無くしコントロールを失った火の鳥が悲鳴のような鳴き声を発し、バランスを崩し左へと逸れた。

バランスを失った火の鳥は壁に激突すると、そのまま溶岩の中へと落ちるのだった。

切断された左翼は形を保てなくなったのか、散り散りになると羽根のような形状に変わり、頭上をひらひらと舞う。

火の鳥を撃ち落としたレイリスは、少し得意げな顔でこちらに振り返る。


「やったよ!撃ち落とせた!」

「無茶するなぁ」


魔物を倒したことを無邪気に喜ぶレイリスに呆れる。

レイリスは俺より十年分長く生きているのに時々子供の頃と変わらない表情を見せる時がある。

なんでだろう、旅をずっとしていたのだから今の俺より人生経験が豊富だろうに。

魔物を倒せてこれで一件落着……のはずなんだが、ティアーヌの表情は未だ険しく、何度も辺りを見回している。


「ティアーヌ、どうかしたんですか?」

「……変だと思わない?火山が活性化したのは、あの魔物のせいだと思っていたけれど、原因だった魔物を倒しても、まだ火山が鎮まる気配がないわ」

「そう言われると……そう、ですね」


彼女の言葉通り、下層の溶岩はまだグツグツと煮え滾る音が聞こえてくる気がする。

火山内の気温が低くなっている気もしない。


「もしかしたら、まだ……」


ティアーヌの不穏な発言に一抹の不安を覚える。

そんな俺たちとは別にレイリスは切断された羽根となった炎のかけらをまだ見上げていた。


「兄さん見て。この炎、羽根形だ」

「いいから早くこっちに来なさい。橋が無くなったから、どうやって下に戻るか相談するよ」

「うん」


兄の言うことを素直に聞いて、こちらに駆け寄るレイリス。

背後には舞い落ちてきた炎の羽根が煌びやかに光を放ち始めて……


「レイ!危ない!」

「バルメルド君!!」


いち早くその異常に気づいたニールが駆け出す!

ティアーヌに名を呼ばれ魔石を取り出そうとするが……装填していたら間に合わない!!

体内のマナを脚から足裏まで流し、脳内に正確な魔法をイメージしてから地面を踏みつける!


「土よ!」

「《土の精よ》!!」


ほぼ同時に地面へ杖の先端を突くティアーヌ。

お互いに土属性の魔法を発動させ、未だに危険に気づいていないレイリスを守ろうと防護壁を生成した。

俺が作ったのはドーム型の壁、ティアーヌはカーブ状の壁、どちらも二人の頭上を守る為の形をしている。

ニールがレイリスの元に駆け寄り頭を隠すように抱き寄せ伏せた瞬間、宙を舞っていた羽根の一枚が爆発した!

爆発の規模自体は然程大きくはない。

だが一枚が爆発すると、側を舞っていた羽根が一枚、また一枚と連鎖爆発を繰り返す。

何枚羽根が舞い落ち、何度爆発を繰り返したかさえ数えきれない回数の爆発が起きる。

全ての羽根が爆発し、煙が火口から空へと逃げて行く。

「レイリス!ニール兄さん!!」と名前を呼ぶと、爆発を防ぎ所々崩れた防護壁の下に、地面に伏せた二人の姿が。

どちらも目立った外傷はなく、崩れた防護壁の欠片を被っている。


「だ、大丈夫。俺もレイも無事だよ」

「あ、ありがとう……お兄ちゃん」


二人が無事なのを確認しホッと胸を撫で下ろす。

でも、斬り落とされた翼が羽根となって爆発したってことは当然……


「また来るわよ!!」


背後で火柱が上がり、ティアーヌの注意で振り返る。

火柱を振り払い、中からまた火の鳥が姿を現した。

やっぱりそうだよな!と内心悪態を吐きながら、レイリスの斬撃で斬られたはずの左翼が元に戻っているのが確認できる。


「あいつ、左の翼が元通りになってますよ!!」

「本体じゃないってことよ。炎で形成された見せかけの物、炎を鳥の姿として操っているのよ!本体が別にいるはずよ!!」


本体は別にいる……だとしたら、それは!

翼を広げ再び火の鳥が滑空し脚爪で襲いくる!

全員が左右に分かれ、俺は地面に飛び込み転がり避ける。

その際、視界に火の鳥の頭部、顔を覆う為に装着されている鉄仮面を目にした。

ほんの一瞬だったが、仮面には彫刻が施されており、それは何かの文字に見える。

全員避けることに成功すると火の鳥が通過し、またしても剣の届かない高さまで上昇されてしまった。

だけど、本体の予想はつけられた!


「ティアーヌさん、もしかしてアイツの本体って、あの鉄仮面ですか!?なんか文字みたいなのが刻まれてましたけど!」

「おそらくね!あの仮面を破壊すれば、あの鳥が消え、火山の噴火も起こらなくなるはずよ!!」


やっぱりそうか、だったら話は早い!

狙う目標が明確になり、ポーチから残り少ない魔石を取り出しグローブに装填する。

取り出したのは水の魔石。

これで残り二つとなってしまうが、今はきにする必要はない!

装填した水の魔石のマナをグローブ、剣の刀身へと流れ込ませ、


「仮面だけ降りてこいやァァァァ!!」


渾身の力で剣を振り抜く。

水属性が付与された斬撃、上空からこちらを見下ろしている火の鳥に向け放つ!

水の斬撃で胴体まるごと鎮火してしまえば、鉄仮面だけ落下してきて破壊することができる!

そう考えての攻撃だったのだが……火の鳥は回避動作には入らず、炎の両翼で身を守るようにして身体を覆う。

翼で防ぐつもりかと思われたが、身を包んでいた両翼を勢いよく広げてみせた。

その際に先程と同じ炎の羽根が舞い散る。

水の斬撃が羽根に触れる瞬間、舞い散った羽根が爆発し残りの羽根も誘爆を起こす。

連続する爆発によって起きる爆風と燃焼が斬撃を阻み、俺の放った斬撃は跡形も無く打ち消されてしまった!


「斬撃を爆発で防いだ!?」

「ボクの斬撃を一度受けただけで、対策してきたってこと!?」


にしても学習が早すぎる!

この魔物、俺が戦ってきた魔物の中でも一番厄介な相手かもしれない!

斬撃を防がれたことに愕然としていると、火の鳥が空に向かって咆え、下層から火柱がうねりを伴って集まってくる。

何か、大技を仕掛けてくるつもりか……!!

前回疲れからか気分が沈んでましたが、執筆始めたら筆が進んだので今週も私は元気でした。


次回投稿はいつも通りです!!

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