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第百八十話 悲鳴と再会

ついに180話!

ついにレギュラーメンバー全員登場!!


 火山へ往く山道の途中、モンロープスの群れに襲われていたレイリスに追いつくことができた。

 ニール、ティアーヌの二人と来ていた俺は先行しレイリスと合流する。

 話したいことはいっぱある……聞きたいこともたくさんある……でも今は!!


「レイリス、色々あるけど話は後だ!!まずはこいつら片付けるぞ!!」

「……ッ!うん!」

 

 剣を抜き、レイリスと背中合わせとなる。

 フードを被っているせいで顔は見えないけど、声は俺の記憶にあるレイリスのままだ。

 今度は突然俺に剣を向けたりはしないみたいで安心するが、モンロープスに囲まれている上にいつギルニウスが俺を殺すよう指示を出すかわからない。

 最後まで気は抜けない!!


『キュルキュル!!』

「くっ!!」


 かと言って正面の敵からも目を反らせない。

 しかし相手はモンロープス。

 こっちの時代に来てから何度も戦った魔物だから動きは大体わかってる!

 俺をなぎ払おうと振るわれた右爪を盾で受け流す。

 左腕に僅かな衝撃を受けるが、盾の使い方にもだいぶ慣れてきたのか、吹き飛ばされたり体勢を崩すことがなくなってきた。

 爪攻撃を受け流し、すぐさま反撃に転じる。

 モンロープスの胸に向かって突きを繰り出す。

 無防備な胸元目掛け繰り出した突きは、遮るものも防ぐものもなく、その鋭い剣先で胸部を貫……かない!?

 確かに剣を胸に突き刺そうと力を込め踏み込んだはずなのに、刃が筋肉に通ってない!?

 それどころか、傷さえ付かない!

 まるで柔らかいゴム質の物を棒でつついた時のような感触を覚える。


『キュル!』

 「あっぶ!!」


 貫かれていないとは言え、自分の胸部に剣を押し当てられるのが不快なのか、先程振るった右腕を反対へともう一度振るう。

 咄嗟に身を屈めて避けるが、今度は俺を踏み潰そうと右脚を上げて、


「クロ、そのまま伏せてて!!」


 身を屈めたままにとレイリスが叫ぶ。

 その直後に背中に何かが乗り上がる。

 レイリスだ。

 俺を踏み台にして跳躍すると、破魔の剣でモンロープスの顔面を切り裂いた。

 一つ眼ごと剣の一撃を受け悶え苦しみ倒れるモンロープス。

 しかし、今度はまた別の個体が三体、背後から襲いかかってくる!

 

 「ッ!しつこい!」

「レイリス、俺がやる!」


  岩山を飛び跳ね近づいてくる三体を前にし、剣を握り締める。

 剣でモンロープスを貫けなかったのは多分斬れ味が落ちているせいだ。

 でも手入れは毎日欠かさずしてたはずだし、数時間前にワイバーンを相手にした時はちゃん使えた。

 何故急に斬れ味が落ちたのかは分からないが、剣が使えないのなら魔法で対処すればいい!!


「貫け氷柱(つらら)ァ!!」


 刀身にマナを帯びた剣を地面すれすれに下から上へと振るい上げる。

 地面を擦る程ギリギリの低さで振るった剣先からマナを放出させ、まるで地面から生えるかのように無数の氷柱を生成する。

 宙に跳ね接近していたモンロープス三体は、突如地面を覆い突き出される氷柱に串刺になり、その場から動けなくなる。

 氷柱のせいで身動きの取れないモンロープスに追い討ちをかけ、今度はマナ斬撃を放ち、一気に三体を仕留めた。

 だが今の連続使用でグローブに装填していた氷の魔石がマナ切れになり、雪のように白かった魔石が黒く濁り始める。


「くそっ!もう終わりかよ!?」

 「まだ来るよ!」


 仲間がやられても尚俺たちを殺そうとモンロープスたちは迫ってくる。

 次が来る前に急いで魔石を取り換えないと!

 グローブの魔石を交換しようとするが、レイリスは俺が新しい魔石をポーチから取り出すよりも先にモンロープスの群れに突っ込んでしまう。


「ぜええええい!!」


 破魔の剣を振るい一体、また一体とモンロープスを斬り伏せる。

 動き自体は俺とそう大差ないように見えるのに、一刀振ればまるで当然のように一体倒す。

 複数体相手でも問題なく立ち回っている。

 あれが勇者の力なのかと、魔石を新しい氷の魔石を装填し直しながら横目で見ていると、レイリスを倒すのは無理だと判断したのか、一体踵を返して俺へと向かってきた。


『キュルキュル……ギュ!?』


 突進を仕掛けてきたモンロープス右腕に矢が突き刺さる。

 当然俺じゃない、ニールの放った矢だ!


「クロノス君、レイリスを連れてこっちへ!!」


 片膝を着き弓矢を構えながらニールが叫ぶ。

 その背後でティアーヌが目を閉じ、杖を構えて何かを詠唱しているのを見て、俺は二人の意図を読み取る。


「レイリス逃げるぞ!!ついて来い!!」


 モンロープスを斬り払うレイリスに呼びかけ走る。

 レイリスもニールたちの意図に気づいたのか、それとも俺の言葉に従ったのか意外にもすぐ後に続いてくれた。

 しかし当然逃げる俺たちをモンロープスが飛び跳ねながら追いかけてくる。

 ティアーヌが範囲攻撃魔法でモンロープスたちを狙っているのなら、モンロープスたちと距離が離れてないと巻き添えを喰らってしまう!


 「足元凍れ!」


 小さく振り返り左腕を地面に向かって振るう。

 氷の魔法を発動させて、俺たちが通り過ぎた地面を凍らせた。

狙い通り凍った地面の上に着地したモンロープスはバランスを崩し転倒すると、他のモンロープスも巻き添えになり転ぶ。

 だがそれを見て跳躍し飛び越える個体もいた。

 ところが、その飛び越えた個体は矢で撃ち落としてくれる。

 そのおかげで俺たちはモンロープスから十分な距離を稼げた。


「ティアーヌさん、今だ!」

「《ライトニングスピアー》!!」


 ニールの合図でティアーヌか杖を天に向かって振るう。

 火山の炎で赤く染まり暗雲立ち込める空が一瞬光る。

 刹那、一筋の稲妻が走った!

 耳をつんざくような轟音と共に閃光が視界を白く染め、俺たちの背後で地面に転がるモンロープスたちに直撃した。

 雷が落ちる瞬間悲鳴のような声が聞こえた気もするが、それが悲鳴だったのか雷が落ちる音だったのかはわからない。

 足を止め振り返ると、落雷の直撃を受け黒焦げとなった黒炭の山が見える。

 数秒前までモンロープスだったものだ。

 ちょうど範囲から外れ雷を受けなかったモンロープスも何体かいるが、雷を受け絶命した仲間を目撃し、さすがにヤバイ奴らの相手をしていると悟ったのか、踵を返すと一匹残らず岩山へと去っていた。


「はぁ……助かった」

「バルメルド君、勇者の貴女も大丈夫!?」

「ええ、どこも怪我はありません。な?」


 レイリスに同意を求めると小さく頷く。

 フードを被っているせいで表情はわからないけど。


「レイリス……」


 ニールが名前を呼びながら正面に立つ。

 名前を呼ばれビクッとレイリスの肩が強張るのがロープ越しでもわかる。

 何も言わずにじっとニールが見つめていると、レイリスは躊躇いながらも被っていたフードを脱いだ。

 昔と変わらぬ紅い瞳。

 昔とは変わってしまった鋭い目つき。

 伸ばしていたはずの紺の髪も切ったのか短く、髪留めで結われている。

 おそらく六年ぶりの兄妹の再会。

 しかしレイリスは居心地が悪そうにし、ニールと目を合わせようとはしない。

 それでもニールはずっと優しい表情でレイリスを見つめていた。


「久しぶりだな」

「……うん。久しぶり」

「元気だったか?」

「……うん」

「ちょっと痩せてないか?ちゃんとご飯は食べてたのか?」

「……うん。パン、とか」

「それだけじゃ栄養足りないだろ?もっとちゃんと食べなきゃ」

「ごめんなさい……ごめんなさい……」


 目を伏せたまま謝るレイリス。

 まるで叱られる子供のように。

 だけどニールは何も責めようとはせず、ただ笑って肩を叩く。


「お前が無事で元気だったのなら、それでいいよ」


 その言葉を聞き、初めてレイリスは顔を上げニールの目を見る。

 彼女の目尻にはわずかに涙が溢れるのが見えた。

 ニールはそれを指で優しく拭うと、レイリスを俺へと向き直らせ、「クロノス君にも言うことあるだろ?」と促した。

 レイリスとの、久々の対面。

 禁断の森の時とは違う。

 お互いに、剣をしまい武器を持っていない状態で。


「クロ、なの?本当に?クロノス・バルメルドなの?」

「ああ、そうだよ」

「幽霊、じゃなくて?」

「足ちゃんと生えるだろ?」

「魔物が化けているとか、別人じゃなくて?」

「正真正銘、生きてるクロノス・バルメルドだよ。久しぶり、レイリス」


 小さく笑ってみせると、またレイリスが目に涙を溜める。

 こんなに泣き虫じゃなかったろうに。


「ごめんクロ……ごめん……!ボク、クロに謝っても許されないことを……!剣を向けて、ごめんなさい!本当に……!」

「いいよ、気にしてない。俺が本物だってわかったら、お前すぐに剣を下げてくれたじゃないか」

「でも、ボクはあの時本当にクロを殺そうと!」

「だから許すって。誰の差し金か、見当はついてるしな」


 涙ぐむレイリスを笑って許す。

 そう、誰の差し金かはわかってる。

 さっきレイリスがフードを脱ぐ時にチラッと見えた、あいつの姿が。

 「ちょっとごめんな」と断りを入れてからレイリスのフードに右手を突っ込む。

 その瞬間、「ぎゃ!やめて、待って!待って!」と懇願の声が聞こえてきた。

 そいつ(・・・)を手で掴むとフードから引き上げる。

 俺が手で掴んでいたのはフェレットの尻尾。

 尻尾を捕まれ宙ぶらりんとなっているそいつは俺と目を合わせようとせず、だらんとしている。

 白い毛並みで可愛らしい見た目をしているが、中に入ってる全然可愛くない相手に俺は声をかけた。


「よっ!久しぶり?照れてないでこっち向けよ」

「あっ、あはははは……お、お久〜?げ、元気だったぁ?相棒!」

「おかげさまでなァ!!」


 白々しくも相棒と呼ぶフェレットの胴体を左手で鷲掴みにする。

 加減をしながら握り締めると、フェレットの中に入っているギルニウスが悲鳴をあげた。


「ぎゃああああ!!潰れる!潰れる!!僕潰れるぅぅぅぅ!!」

「潰れちまえ、このクソ神がァ!!」


 ギルニウスとレイリス、ずっと会いたかった二人との再会。

 未だ活発化している火山にギルニウスの悲鳴と俺の怒りの声が響き渡った。

今年も残すところ一週間ほどですが、来週もちゃんと投稿はあるのでよろしくお願いします!

次回投稿は日曜22時から!

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