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第百七十話 クロノスVSフェリュム=ゲーデ

もう10月も中旬で、今年の終わりが近づいてきましたね!

四章は今年で終わりそうにないですが!(なおラストまでの構想はもうできている模様)

できれば最後までお付き合いください!


 剣と剣がぶつかり合う度、暗く閉ざされた森の中に金属音が響き渡る。


「どうしたぁ!?」

「ぐうっ!?」


 フェリュム=ゲーデの一撃を受ける度、勢いに押し負けそうになる。

 戦闘を始めてから奴はずっと笑顔を絶やさず、戦いを楽しんでいる。

 一方俺に余裕は全くない。

 完全に負けてしまっている。

 剣技だけではなく、奴の放つ気迫そのものに。


「魔王を退けたと言うのは嘘かぁ!?オマエの実力はこの程度なのか!?」

「ぐっ……こんのォォォォ!!」


 全体重を乗せてフェリュム=ゲーデを押し返す。

 押し返され飛び退くフェリュム=ゲーデに魔法で追い討ちをかける!


「砲岩!氷柱!!」


 簡略化したイメージによる砲岩と氷柱の雨を撃ち出す。

 物量による攻めで一撃でも多くダメージを与えようとするが、


「ハッハッ!!いいぞ、そうこなくては!!」


 だがフェリュム=ゲーデは顔色一つ変えることなく、その全ての魔法を剣で叩き落として見せる。

 全ての魔法攻撃を落とされたが、奴は俺に驚く間も与えてはくれず、また突進による刺突を繰り出してくる!


「ハァッ!」

「ぐうっ!そう何度も吹き飛ばされは……」

「クロノス君、後ろだ!!」


 盾で刺突を防ぐと、盾に隠れてフェリュム=ゲーデの姿が見えなくなる。

 だがニールのおかげで、またフェリュム=ゲーデが背後に回ったのを察知すると、時計回りに剣を薙いで攻撃を


「遅いッ!」


 振るった剣は誰も捉えることなく空振る。

 背後に回ったと思われたフェリュム=ゲーデは、いつの間にかまた俺の正面に回り込んでおり、背中に蹴りを喰らわせられ地面に倒れてしまう。

 地面に倒れた俺を見下ろし、


「……期待外れだったかな?」


 フェリュム=ゲーデはガッカリとした顔を見せる。

 くそっ、駄目だ……!

 コイツの動きが速すぎて、今のままじゃ捉えられない……!!

 

「坊主のやつ、完全にあの悪魔に遊ばれている。実力差があり過ぎる!」

「それでは、クロ君はあの悪魔には勝てないのですか!?」

「……坊主!」


 フェリュム=ゲーデに見下され、どうすれば奴の速さに対抗できるか考えを巡らせていると影山に呼ばれる。

 観戦していた影山は自身のツールポーチから魔石を取り出し、


「魔石を変えろ!眼の能力も使え!!」

 

 緑の魔石を投げ渡してきた。

 急いで立ち上がると魔石を受け取り、フェリュム=ゲーデに向き直る。

 入れ換え中に攻撃されても対応できるようにと思っていたのだが、奴は攻撃を仕掛ける気配もなく、俺が次に何をするのかと行動を待っていた。


「ふざけやがって……!!」


 強者の余裕か、その態度が俺をイラつかせた。

 右手首のスロット部から土の魔石を引き抜き、風の魔石を装填。

 魔法効果の風が発生するのを確認すると、今度は両眼にマナを込めて能力を発動させる。

 視力を向上させたこの状態なら、奴の動きも逃さないはず!


「ほぅ!眼に特殊な効果が付与されているのか!光るとは面白い。では、もっと我を楽しませて……」


 俺の光る眼を物珍しげに見ている間に、フェリュム=ゲーデの眼前に飛び込む。

 風の魔石のおかげで、通常よりも瞬発力が増し、一瞬で距離を詰めることができた。


「なんとっ!?」

「でやああああ!!」


 突然目の前まで距離を詰められ、驚愕するフェリュム=ゲーデの頭部に刺突を繰り出す!

 完全なる不意打ち。

 これを防ぐことはできない……そう思ったのだが、フェリュム=ゲーデは咄嗟に顔を右に逸らした上、長剣を自分の顔面まで引き寄せ、俺の刺突の軌道を逸らし躱したのだ。

 軌道が逸れたせいで刃はわずかにフェリュム=ゲーデの頰を掠めた程度の傷しか与えられない。

 刺突を防ぐと、驚愕していたフェリュム=ゲーデの表情に笑みが溢れる。


「……それでいい!!」


 その笑みに身の危険を感じ後ろに飛び退く。

 しかし今度はフェリュム=ゲーデに距離を詰められてしまい、目の前に迫られる!

 右脇腹を狙い振られる一閃を剣で受け止める。

 土属性の魔法効果が無いせいで、受けた止めた際に若干の腕の痺れを感じた。

 でも、視力と風属性の魔法効果のおかげで反応できた!

 俺が動きに反応できないと思っていたのか、フェリュム=ゲーデの顔に一瞬戸惑いが見える。

 そのまま斬り合いに発展し、互いの剣が高速で交じり、ぶつかり、火花を散らす。

 俺の速度でもちゃんとフェリュム=ゲーデの動きについて行ける!

 ちゃんと奴の動きを眼で追えている!

 これなら対等に戦える!


「アッハッハッ!面白いな、クロノス・バルメルド!!」


 高笑いを上げ、剣がぶつかり合い弾き返されるとフェリュム=ゲーデは走り出す。

 それを追いかけ俺も走り、並走しながら剣をかち合わせ続ける。


「先程よりも剣が軽い。その代わりに動きが速くなった……そうか、その腕につけている魔道具の効果か!面白い!今までにもそういった魔道具を使う戦士とは戦ったが、ここまで極端に変化する物を使う者は初めてだ!!」


 グローブの効果を見破られた!?

 だけど、効果は見破られても性能までは分かるはずない。

 土と風以外はまだ見せていない。

 付け入る隙があるとすれば……おそらく未使用の魔石だ!

 雷属性の魔石はもう手元にはない。

 火は森の中では使えないし、水と氷属性の二つで意表を突くしかないか!


「もっとだ、もっと我を楽しませてくれ!!」


 心の底からの喜びか、切り結ぶ度にフェリュム=ゲーデに笑顔が満ちていく。

 戦闘狂が、と心で思いながら繰り出された刺突を盾で受け流し、相手の左腕を斬り落とそうとするが、当然の如く硬い皮膚を持つ腕で受け止められてしまう。

 やっぱりカーネと同じ性質の皮膚!

 いや、カーネの皮膚よりも数段硬い。

 雷属性を付与した斬撃でないと破壊は無理だ。

 でももう雷の魔石は持っていないから……自前のマナでやるしかないか!


「どうした!?だんだん動きが鈍ってきたぞ!?」

「くっ……!時間切れ!?」


 装填されていた魔石の効力が切れかけ、フェリュム=ゲーデの剣に追いつけなくなってきた。

 魔石を切り替えないと駄目か!

 考えろ、どうする!?

 水と氷、どっちの魔石を使う!?


「…………よし、決めた!」

「ん?」


 脳内で攻撃を組み立て、どちらの魔石を使うべきか判断する。

 それによってフェリュム=ゲーデの意識が逸れたのか一瞬隙ができる。

 攻めるの手の緩んだフェリュム=ゲーデの長剣を上に弾き飛ばし、右足で腹に蹴りを喰らわせてやった。

 腹部を蹴られ上体を反らせている?、その間にグローブの魔石を別の魔石に差し替える。


「さぁ、来い!」

「今度は何を見せてくれるのかな!?」


 安い挑発に乗りフェリュム=ゲーデが迫る!

 予備動作はおそらく長剣による横薙ぎ、ならこのタイミングで!


「土よ!」

「なに!?」


 剣が振られる前に土魔法を発動させ、足元の地面を一気に削り、膝下が沈む程に掘り下げる。

 ただし削った地面は敵のではなく、俺自身の足場だ。

 身を屈め横薙ぎを避けると、突然身長が縮んだように見えたのかフェリュム=ゲーデが驚き意表を突けた。

 俺も剣を振るい相手の脇腹を狙うが、相手は恐るべき反射速度で長剣を引き戻し受け止められてしまう。


「面白い手だが、これしきでは……!」

「まだだ!」

 

 そう、まだここで終わりじゃない。

 本命はここから!

 フェリュム=ゲーデは今俺の剣を防ぐ為に両手で長剣を持ち抑えている。

 逆に言えば、両手を今使えない!

 盾を持つ左腕の肘を曲げて腰まで引き戻し、手を強く握り締める。

 持ち手の革で手のひらが痛くなる程に。

 その状態で左腕全体に魔法を発動させ纏わせる。

 使うのは水魔法!

 それと、土魔法!


「うおりゃァァァァ!!」


 削っていた足場を今度は周囲の地面を削って勢い良く突出させる。

 バネのように地面が飛び上がり、その勢いに身を委ねたまま、盾を持つ左手を下から突き上げるようにアッパーカットを繰り出す!

 しかもただの拳による攻撃ではない。

 左腕に装備した盾の面積が広い為、当たるのは拳ではなく盾側面の金属部だ。

 俺の剣を受け止めたままのフェリュム=ゲーデは、勢い良く繰り出されるアッパーを止める術がなく、盾側面の金属部が顎に直撃する。

 盾で顎を打ち抜かれ、大きく仰け反りフェリュム=ゲーデが宙に浮く。

 アッパーカットをする為に振り上げていた腕を下ろしフェリュム=ゲーデに向ける。

 左手を開き、溜め込んでいたマナを全て魔法攻撃に変換させる!


「水よ!大蛇となって敵を呑み込め!!」


 手のひらに溜め込まれていたマナ、その全てを水に生成する。

 放たれた水の大蛇がフェリュム=ゲーデの全身を呑み込み、割れて焼け焦げた大樹に叩きつけた。


「ぐうぉっ!? ぷはっ!」

「まだまだまだぁ!!」


 攻撃の手は緩めない!

 今のマナは魔石のではなく、自前のマナ。

 装填した魔石は水ではない。

 右手に握ると剣の刀身が冷気を帯び始める。

 未だに俺の身体は宙に浮いたまま、水が引き大樹にもたれかかるフェリュム=ゲーデに追撃を仕掛ける!


「全部、くれてやらァァァァ!!」


 氷の魔石に蓄積されているマナ全てを刀身に帯びさせ、空中で一回転するかのように逆袈裟斬りによる氷属性の斬撃を放つ。

 氷の斬撃は体勢を崩したままのフェリュム=ゲーデに一直線に迫る。


「くっ!なんのぉ!!」


 立ち上がり斬撃に対してフェリュム=ゲーデは長剣を振るい対抗する。

 俺の斬撃を消すつもりだったのかもしれないが、長剣に斬撃が触れた瞬間、氷の斬撃は結晶のよう飛び散り、全身を水で濡らしたフェリュム=ゲーデの肉体の半分を氷塊に閉じ込めた。


「なっ、身体が凍った!?」

「よしっ!上手くいった!!」


 左上半身と首から上を残し、フェリュム=ゲーデは氷塊で動きを封じる。

 自前のマナで浴びせた水と、氷の魔石による氷漬け作戦は上手くいった!

 悪魔は反射神経が恐ろしく速い。

 しかもフェリュム=ゲーデは今まで戦った悪魔の中でもっとも動きが俊敏だ。

 確実に倒すには、動きを封じて大技で仕留めるしかないと判断したのだ。

 今まで戦ってきた経験は無駄じゃなかった!

 本当は全身を凍らせて完全に動きを封じるつもりだったのだけど、足と長剣を持つ右手を封じれば避ける手段はもうない!


「次で決めるッ!」


 着地して左ポケットから、旅を始めてからずっと毎日欠かさずにマナを貯めていた小瓶を三つ取り出す。

 蓋を開け全てを飲み干すと、もう一度剣にマナを込め、剣に装着された魔石に蓄積させていた分のマナも全て刀身に注ぎ、トドメの一撃にする!!


「これでッ!!終わりだァァァァァァァァ!!」


 身体を一回転させ遠心力を利用し、全力で剣を振り上げる。

 無属性の斬撃は地面を這い、抉りながらフェリュム=ゲーデに迫る最後の一撃が放たれた。

 

次回投稿は来週日曜日22時となります!

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