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第百六十二話 最期の一撃

連続投稿三日目!

カーネの硬い皮膚をクロノスはどう突破するか?



 カーネの放った瘴気が爆発し周囲に黒煙が広がる。


「クロ君!!」

「下がって、巫女様!」


 黒煙で何も見えないけど、俺の身を案じたベルをティアーヌが制止しているようだ。

 巻き込まれたゲイルは、


「何すんだクソガキぃぃぃぃ!いくら雇い主でも許さんぞ!」

『お前こそなにボーッとしてたんだ!今のはチャンスだっただろ!』


 腕で黒煙を払いながらカーネに怒鳴っていた。

 今の攻撃で倒れる、なんて都合のいいことにはならなかったらみたいだ。

 一方俺はというと、


「ゲホッ、ゲホッ!あっぶねぇ!」

 

 身を屈めながら黒煙に紛れ、カーネとの距離を離すと煙の中から抜け出す。

 抜けた先には影山がおり、ブーツの魔石を入れ換えているところだった。


「坊主、無事だったか」

「ゲホッ……なんとか。でも、かなり苦戦中です」


 ゲイルとカーネはまだ言い争っており、こちらには気づいていない。

 魔物となったカーネはかなり厄介だ。

 皮膚が硬化しているから剣の刃が通らず、刀身にマナを込めて切れ味を増してもなお傷一つつかない。

 近づけば鋭い爪で反撃され、距離を離せば瘴気の塊による攻撃が来る。

 隙だらけなのに全く攻撃が効かないというのはかなり歯痒い。


「あの硬い皮膚に傷を付けられないんじゃ、勝ち目がないんですよ」

「手詰まりか?なら、魔石を換えてみろ。そろそろお前のも切れるぞ」


 指摘され右腕のスロットを確認する。

 確かに装填していた氷の魔石に濁りが見え始めていた。

 言われなきゃ多分気づかなかった。

 それほどカーネとの戦いに集中してしまっていたのか。


「本当だ……ありがとうございます」

「他の魔石も試せ。土と氷以外使ったことがないだろう」


 今度は土の魔石にしようと思っていたところ、別の魔石を使うよう促される。

 まだ使っていないのは、火と風に水、それに雷属性の魔石の四つだ。

 火は──論外。

 大樹の中で使ったら、火事になって大惨事になるは必至だ。

 水属性の魔石は使ったらどうなるか予想が付かないので遠慮する。

 そうなると残るは風か雷の魔石だが……風属性の魔石は三本、雷属性の魔石は一本しかない。

 一本しかない魔石より、余裕のある風の魔石を使った方がいいのでは……でも風属性であの硬い皮膚を斬れるのか?

 どっちにすれば……


『いいからお前は、帽子の男をやればいいんだよ!』

「んなぁことわかってる!その邪魔はするなって言ってんだよ!」


 言い争いが終わったのかゲイルとカーネが同時にこちらに向かって来る!

 まだ魔石を選んでないのに……ええい、これだ!

 魔石を取り出すと指先に電流が走る。

 選んだのは雷属性の魔石。

 右腕のスロットから氷の魔石を抜き捨て、新たに魔石を装填すると、頭からつま先までがまるで雷に打たれたみたいに電流が走った。


「坊主、強くイメージしろ!この世界の魔法効果は、使用者の想像力が反映されるらしいからな!」


 そう言い残し影山はゲイルへと駆け出す。

 振り下ろされた棍棒に対し、飛び蹴りで受け止めてみせた。

 影山の異常な脚力は、ブーツの魔法効果が付与されているからだと思ってたが、さっきの言葉を思い返すせば、きっとそれだけじゃない。

 影山本人が強く脚力を強化するイメージを持っている。

 だから蠍の甲殻やゲイルの振り回す棍棒を、防具で保護されていない足で受けても顔色一つ変えずに戦えるのか。

 なら、俺にもできるはず……!


『クロノスぅぅぅぅ!』


 影山には目もくれず、一直線にカーネは俺へと向かってくる。

 握った剣を更に強く握りしめ、頭の中でイメージする。

 あの硬い皮膚は一筋縄じゃ斬ることができない。

 雷の魔法を使う時のイメージってなんだ?

 上から下に落ちる、相手を痺れさせる、目にも止まらぬ速さ、落ちた時の破壊力、剣を振るう時のような閃き……!

 走りながら瘴気の塊を生み出す同時に放ち、カーネは更に距離を詰めてくる。

 だが焦っちゃダメだ。

 集中を乱せば効果が薄まる。

 貫くイメージを、剣が稲妻のように走り、あの硬い皮膚を破壊し貫くイメージを!!


『喰らええええ!!』


 放たれた五発の瘴気を操りながらカーネがもう少しで剣先の届く範囲に入る。

 一発は盾で防げるが、残り四発はどうやって防ぐ!?

 雷を使いながら他の属性魔法も使えるけど、それだと雷魔法の威力が落ちて、もう一度やり直しになってしまう!

 こうなったら、一発を防いだ後残りは無理矢理突破して……!


「《ストーン・エッジ》!」


 突然地面が盛り上がり四つの岩壁が突き出す。

 突き出した岩壁に瘴気が激突し、岩壁を破壊すると消滅した。

 ティアーヌの援護かと思ったが、横目で見ると彼女自身も岩壁に驚いていた。

 とするとこれはティアーヌの出した物じゃない。

 一体誰がと疑問を抱くが、その答えはすぐにわかる。

 ティアーヌの背後に庇われていたベルが、両手を地面に押し付けこちらを見ていた。

 さっきの土魔法はベルが俺を瘴気から守る為に発動させれてくれたのだ。

 サンキュー、と心の中で呟く。

 残る瘴気の塊は一つ……なら、やるしかない!!

 瘴気を防がれても、なお接近してくるカーネを視界に捉える。

 まず迫ってきた瘴気を盾を斜めに構えて受け止め、左腕を振るい弾き飛ばす!

 そして突きの届く範囲に入ったカーネに対し、稲妻が走るように突きを繰り出す!


「はあァァァァ!!」

 

 瘴気を弾かれると思っていなかったのか、カーネが驚愕の表情を見せ一瞬動きが止まる。

 その隙を逃さずに繰り出した突きは、最初に突きを当てた左肩に接触し、その皮膚を──僅かに貫いた。

 

『……え?』


 皮膚を貫かれたことに対してなのか、痛みを感じたことのどちらかか、カーネの動きが止まり声を漏らしている。

 剣が左肩の皮膚を貫いたものの、それはほんの僅かなもの、剣先のほんの数センチしか突き刺せていない。

 失敗した、その言葉が俺の頭に浮かび、反撃が来る前に離れなければ!

 そう思った時だった。


『……たい』


 カーネの口から言葉が再び漏れる。

 一瞬なんと言っているのか聞き取れなかったのだが、


『痛い……痛い痛い痛い!痛いいいいいい!!』


 突然大声で悲鳴を上げて後ずさる。

 剣先が引き抜かれた左肩から滲み出る赤黒い血を目にすると、カーネは更に取り乱した。


『血ぃ!肩から血が、血がああああ!死ぬ、ぼく死んじゃうよおおおお!!』


 えぇ……肩の肉が少し切れて血が溢れただけでそんな大袈裟な……右腕と左脚斬り落とされた俺に比べれば全然擦り傷程度なのに。

 予想の八倍ぐらい取り乱すカーネを前に呆然としてしまう。

 周囲もオーバーリアクションのカーネの姿に動きが止まってしまっている。


「……っ!坊主、手を止めるな!相手が魔物なのを忘れるな!」


 影山の言葉にハッとする。

 そうだ、今のカーネは魔物……俺たちの敵だ。

  手を止めるな、戦え、倒せ!

 

「でやァァァァ!」

『うわぁ!?』


 剣を薙ぐと、驚いたカーネが腕で防ぐ。

 集中が途切れた所為でマナによる斬れ味が落ちてる!

 もう一度感覚を研ぎ澄ませ、より疾く、より鋭く、より強力に!!

 反撃の隙を与えないように連続で剣を振るい、突き出す。

 その度に硬い皮膚に弾かれてしまうが、振るう度、心の中で剣技のイメージを研ぎ澄ませ続けていくと、硬く傷を付けるのすら困難であったカーネの皮膚に切り傷が見え始める。

 このまま押し切れば!


『こんのぉ!』


 両腕で剣を防いでいたカーネが突然、尻尾を振るい反撃して来る。

 カーネにも尾が生えていたことを忘れていた俺は、その反撃をもろに左脇腹に喰らいよろめいてしまう。

 よろめいた俺から距離を離そうと今度はカーネが翼を広げ飛び退く。

 そして何十という瘴気の塊を生成した。


『いい加減、死ねよお前ええええ!!』


 地面に降りながらカーネが瘴気を放つ!

 脇腹に受けた痛みに歯を食いしばりながらもカーネを見据える。

 間合いを離されたけど、瘴気を躱しながら駆け寄れば、まだ届く!

 イメージを途切れさせるな……集中し続けろ!

 瘴気の雨に向かって走り出す。

 立ち止まれば喰らって死ぬ、足を止めるな!

 攻撃が防がれれば反撃を喰らって死ぬ、手を緩めるな!

 降り注ぐ瘴気の中を縫うように躱しながら進む。

 もっと、もっと速く……雷のように疾く、雷のように鋭く、雷のように強く!!

 雷のように──!


「貫けェェェェ!!」


 咆哮を上げながら走ると視界が白く染まる。

 まるで色のないキャンパスみたいに。

 それでも相手の姿だけはしっかりと見え、カーネに向かって突きを繰り出した。

 耳に届く音は遠く、手に伝わる感触は遅く、眼に映る物は一瞬で過ぎ去って行く。

 カーネに向かって剣を突き出していたはずの俺の身体は、いつの間にかその背後に立っていた。

 姿勢は剣を突き出した時のまま。

 時が止まったかのように俺もカーネもその場を動かず、全てを置き去りにしたかのように、五感が遅れて全身を駆け巡ってきた。

 肉を斬り裂いた──感触と共に。


『っ……ぐっ、ああああああああああ!?』


 背後でカーネの絶叫が響き渡る。

 その近くでドサリと何が落ちる音が聞こえた。

 振り返ると、今までどんなに攻撃しても歯が立たなかった皮膚に初めて攻撃が通っていたのだ。

 その証拠に、カーネの右肘から下が斬り落とされ、地面に落ちていた。

 まぎれもなく、その一撃を与えたのは俺だ。

 右手から伝わる、切断した際の感触がそれを物語っている。

 腕を斬り落とされ、溢れ出る赤黒い血と痛みにカーネは苦しみ悶え、ずっと叫び続けている。


『う、腕……!ぼくの腕がぁ!痛い、痛いいいいい!よくも、よくもおおおお!!』


 俺に右腕を斬り落とされ、怒りの叫び声を上げるカーネ。

 このまま有無を言わさず無力化を……


「坊主、行ったぞ!」

「うおおおお!!」


 もう一度カーネに一撃を加えようとした矢先、今まで影山の相手をしていたはずのゲイルが突然こちらに向かって来る!

 影山の警告とゲイルの雄叫びで気づき、薙ぎ払われる棍棒を屈んで避ける。

 しかし屈んで避けると今度は足蹴りが繰り出され、避けることができない俺は盾で受け止めるが、体勢が安定していなかった為に蹴られた衝撃で後ろに転んでしまう。


「ゲイル、こっちだ!」


 尻餅ついて倒れた俺から意識を逸らそうと影山はゲイルの注意を引く。

 振り返り振るわれた棍棒を右足で蹴り返そうとする影山だが、逆に振り上げた足を棍棒で叩き落とされてしまった!


「ぐっ……!」


 あれだけ棍棒を足で受け止めも平気な顔をしていたはずの影山が苦痛で顔を僅かに歪める。

 もしかしてブーツに装填していた魔石の効力が切れかけてるのか!?

 叩き落とされた右足のスロット部分、黄土色の魔石に濁りが見える。

 やっぱり時間切れで魔道具の効力が発揮しきれていないのか!

 動きの鈍った影山にゲイルが再び棍棒を振り下ろそうとしている。

 魔石を差し換えても間に合わない!


「《ウォーターボール》!」


 ゲイルの顔面に拳サイズの水の球体が衝突する。

 ティアーヌが放った水魔法だ。

 顔面で破裂した水を被りゲイルがたじろぐ。

 その一瞬の隙に、尻餅をついていた俺はツールポーチから緑色の魔石を取り出す。


「影山さん!」


 地面に座り込んだままで魔石を投げ飛ばす。

 俺の手元を離れた魔石は風に後押しされるかのように加速し、顔から水を被り慌てるゲイルの脇をすり抜けて影山の元へ。

 右手でスロットの魔石を引き抜きながら左手で魔石を掴み取ると、影山は顔を拭い再び棍棒を振り下ろすゲイルの持ち手を靴底で受け止めた。


「歯を食いしばれよ。死ぬ程痛いぞ」

「なにを……!?」


 警告をしてから影山は左手に持った魔石を、右足のブーツのスロットに投げ入れた。

 その瞬間、ゲイルの右手が弾かれたように後ろへ吹き飛ぶ。

 反動で握られていた棍棒が手を離れ宙に舞う。

 武器を失ったゲイルだが、そのことに気づく間も無く影山の左足による足払いを受けバランスを崩す。

 だがそのだけでは終わらず、足払いで倒れかけるゲイルの身体を影山は右足で蹴り上げた。


「ふッ!」

「ぐおおおお!!」


 まるで台風にでも巻き上げられたみたいにゲイルの身体は大きく空に打ち上げられた。

 地上から数十メートル打ち上げられたゲイルを追い、影山が地面を蹴り突風と共に空へ飛ぶ。


「はあああァッ!!」


 一瞬でゲイルの真上に飛び上がると、無防備なゲイルの腹部に踵落としを叩き込んだ!

 腹部に蹴りを受けたゲイルは空気弾を受けたみたいに高速で落下し地面に叩きつけられた。

 遅れて影山が地面に着地し、その足元には地面に落ち、ピクリとも動かないゲイルの姿が。


「し、死んだんですか?」

「まさか、これぐらいで死ぬほど柔な男じゃない。まぁ、どこか骨は折れてるかもされないがな」

 

 そりゃ折れるだろう……あんな宙を舞って地面に叩きつけられる蹴りなんか喰らったら……

 あまりの怒涛の攻撃に「絶対に喰らいたくねぇ……」と小さく呟く。

 兎にも角にも、ゲイルは気絶したようで起き上がる気配はない。

 残るはカーネだけ……


「クロ君!魔物の彼が逃げます!」


 ベルが指差す先、さっきまで腕を斬られ泣き喚いていたカーネが、斬られた箇所を左手で抑えながら隠し通路へ戻ろうとしている!


「坊主、あいつを逃すな!」

「カーネ、待て!」


 隠し通路に戻るカーネを追いかける。

 走りながら右腕の魔石に目をやり、まだ効力が残っているのを確認しておく。

 通路を抜け族長宅に戻ってくる。

 族長の寝室を出ると、床に落ちた血を辿りカーネを追いかける。

 血を辿り三階へと螺旋階段を登りきると、先日ベルとお茶をしたテラスへと躍り出た。


「カーネ!」


 俺の呼び声に一瞬振り返るが、背中の黒い翼を広げると手すりに乗り、空を飛んで逃げようとしている!

 階段から手すりまでは距離があり、剣技では飛び上がるのを阻止できない。

 斬撃は避けられるかもしれないし、外せば周囲の木々を薙ぎ倒し兼ねない。

 こうなったら……!

 剣を腰の鞘に納め、背負っていたショートボウに持ち替え、矢筒から矢を一本引き抜く。

 俺まだ弓を正確に相手に当てることはできないけど、外した時の被害が一番低い攻撃手段はこれしかない!

 武器を弓矢に切り替えるが、構えるよりも先にカーネが手すりから飛び降り、黒い翼を羽ばたかせ飛び去ってしまう。

 逃すまいと手すりに駆け寄り、空へと逃げたカーネに対し弓を構える。

 まだ翼による飛行に慣れないのか、空を広げ飛ぶカーネの動きはかなりぎこちないしスピードもない。

 だがそれが逆に狙うには好都合!

 矢を指で挟み、指の第一関節で弦を引き絞り狙いを定める。

目標をのろのろと飛行するカーネに定め、矢を放つと左に逸れる癖を思い出して、右寄りに照準を合わせる。

 加えて、硬い皮膚に矢を貫通される為に鏃にマナを込める。

 腕に装着した魔道具の雷属性の魔法と合わせ、ありったけのマナを込めながら弦を引き絞り続け、矢が電流を帯びた瞬間、


「逃すか……ッ!」


 弦から指を放し、引き絞られた弦が反動で押し上げられた矢が電撃と共に放たれた。

 矢は左に軌道をずらしながら、けれども目標まで真っ直ぐに飛来し、カーネの左翼を貫いた。


『ぎゃああああああ!痛いいいい!!』


 矢を左翼に受け、空中で身悶えしながらカーネは地面に落下する。

 地上で戦っていた妖精族も盗賊たちも、突然空から落ちてきた新たな魔物に驚き戸惑っていた。


「な、なんだ、悪魔!?魔物か?!」「なんで空から!?」「こんなのがいるなんて(かしら)から聞いてねえぞ!」


 戸惑いの視線を浴びながらもカーネは立ち上がり、歩いて里の外に逃げようとよろよろと歩き始める。

 だが、それをみすみす見逃すはずがない!

 弓を手放すと剣を再び手に取り鞘から引き抜く。

 わざわざ階段を使って地上に降りるのも面倒になり、飛び降りようと手すりに飛び乗った。


「風よ……吹き荒べ!」


 風の魔法を発動させ両足に強風を纏う。

 狙いは地上に落ちて歩き出すカーネ。

 手すりを蹴り上げ、カーネに向かって急降下する!

 瞳が焼けるように熱くなると視界が白く染まり、全身が電流を帯びたかのように痺れを感じる。

 だが目的だけはしっかりはっきりと理解している。

 ただ振り下ろす、落下の速度を乗せて、手に握った剣を──ただ、振り下ろせ!


「カァァァァネェェェェ!!」


 腕を振り切る直前、カーネの小さな悲鳴が上がった気がした。

 だがそれは俺の耳には届いておらず、剣を振り抜くと同時に地面に着地していた。

 数秒遅れ、高所から急降下し着地した足の痛みと、周囲の喧騒と、白く染まっていた視界が色を取り戻していく。

 そして、剣を手にした腕から伝わる……誰かの肉を斬り裂く感触も。

 ドサリと背後でカーネだった(・・・)身体が倒れる音が聞こえる。

 遅れて切断された悪魔の頭部が空から落ちてきた。

 驚愕に染まり怯えた瞳が、今にも吐きそうになっている顔面蒼白の俺を見つめている。

 それを目にし実感する。

 自分がまた人を手にかけ……殺したのを。

 脳が痺れ、心臓が痛いぐらいに脈を打ち、視界がぐらつく。

 胸の奥から込み上げた嘔吐感で全てを吐き出しそうになって、全部堪えて、全部を飲み込み顔を上げて前を見た。


「聞け!盗賊たち!!」


 影山の声が聞こえ振り返る。

 族長宅のあるツリーハウスに縄で拘束されたゲイルを連れた影山にティアーヌ、族長の姿がある。


「お前たちの首領ゲイルは拘束され、雇い主のカーネという男も討ち死にした!全員武器を捨てて降伏しろ!」


 影山の言葉に盗賊たちがざわつき始める。

 縄で拘束されぐったりとしたゲイルの姿を見て、一部の盗賊たちは武器を捨てていく。

 しかし一部の盗賊たちはアイコンタクトをし、武器を捨てずにモンロープスたちを引き連れて里の外へと走り出した。

 それを追う者は誰もおらず、全員がただ黙ってその背を見送る。

 盗賊とモンロープスの群れが全て『迷いの森』へと姿を消すと、妖精族が一斉に歓喜の声を上げ始めた。

 その声に、燃え滾っていた瞳が急速に冷えていく。

 ようやく……妖精族の里を舞台とした戦いが終わったのだった。

雷属性の魔石は一個しかなかったので、以降補給しなければ魔道具による雷属性の恩恵を受けられなくなります。

魔石の数はなるべく本編中でちょくちょく確認します。


連続投稿は本日にて終了です!

三日で切りよくカーネ戦を終わらせることができて、割とスッキリしてます。

次回投稿はいつも通り、日曜日22時からとなります!


面白いと感じていただけたら、ブクマ評価をお願いします!

いただけたら狂喜乱舞します!

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