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第百五十三話 ゲイル盗賊団再び

ポイントが600を初めて超えました!!

いつもありがとうございます!!


 煙幕の中から現れたモンロープスに投げ飛ばされ宙を舞う。

 湖に落ちる直前、煙の中からモンロープスに跨るゲイルを見た。

 続けてもう一人、金品を身につけた小太りの男の姿も。


「ゲイル……!?」


 ゲイルに続き続々と魔物を引き連れ盗賊団が妖精族の里へと流れ込む。

それを最後に俺は湖に落ちた。

 どうして盗賊団がこの里に!?

 狙いは何だ、食料かそれとも別の何か!?

 今は手元に武器がない……影山と合流するか!?

 それとも先にティアーヌを監禁小屋から助けに行くか!?

 とにかくまずは、湖から上がらないと!

 水中で思考を巡らせながら泳いで水面を目指す。

 太陽が雲に覆われているせいでこの時代の平均気温は低い。

 長く浸かりすぎると低体温症になってしまう!

 必死に泳ぎ水面に顔を出す。

 酸素を求め大きく口開け呼吸を整え、濡れた顔を手で拭い、里に視線を移した。

 誰かが火を放ったのか、里に火の手が見え、怒号と悲鳴が入り混じり耳に痛いほど響く。


「くそッ!どうしてあいつらは!」


 馬車を襲われた時のことを思い出し悪態をつきながら、ひとまず陸を目指す。

 なんとか泳いで投げ飛ばされた里の入り口前まで戻って水面から上がるけど、寒い!

 早く暖まらないと体が縮こまって動きが鈍る!


「と、とにかく、魔法で火を……!」

 

 寒さに震えながら火の魔法を使って暖を取ろうと


「うおおおお!!」

「うわっ!?」


 突然盗賊団の男に襲われる!

 手にした棍棒を振り下ろされ、身を引いて避けるがこっちには武器がないので反撃ができない!

 振り回される棍棒を避け続けても埒が明かない。

 相手が棍棒を大振りしようと構えた瞬間を狙って魔法を撃つ。


「土、水!」


 右手から水を生成し相手の顔に冷水を浴びせる。

 そして怯んだ隙に地面から拳サイズの砲弾を棍棒を持つ右肘に撃ち込んだ。

 顔面に浴びた冷水と肘に与えた激痛で、相手は持っていた棍棒を手放す。

 俺はそれを左手で掴み取ると、両手に持ち替えて盗賊の頭を殴打し、殴られた盗賊は気を失って倒れた。

 だが、またすぐに背後から盗賊仲間が現れ、剣を振るい棍棒を真っ二つにされてしまう!


「しまっ……!」

「このガキィ!!」


 斬られる!

 そう思って両腕で顔を覆う直前、盗賊の脇腹を長槍の刃が深々と突き刺さる。

 「ふんっ!」と声に続き、長槍に刺された盗賊は地面に押し倒された。

 盗賊を突き刺したのはテルマだ。

 自分の身よりも高い長槍を細い腕で軽々と扱っている。

 押し倒した盗賊にトドメを刺すと、俺に駆け寄り胸倉を掴まれる。


「あの盗賊たちはお前たちの仲間か!?」

「ち、違います!」

「ならなぜ魔物を従えている!?悪魔族の女の配下か!?」

「それも違いますよ!盗賊団は、魔物を従える方法を知っているんです!」


 掴まれた胸倉を振り解きながら否定する。

 この勘違いは非常に良くない。

 俺たちが来訪した次の日に、人族の盗賊が魔物を引き連れて襲撃に現れるなんて、どう見たって俺たちが手引きしたと思われてしまう!


「俺たちは盗賊団の仲間じゃない!俺たちにとってもあいつらは敵なんだ!」

「それをどう信じろと……!?」


 テルマを説得しようと試みる間にも盗賊たちは里を襲っている。

 モンロープスに跨る盗賊がまた一人俺たちに向かって来る!


「ハッハッハッ!死にたい奴から前に出なぁ!」

「キュルキュルキュル!」


 両前脚を器用に使い突進してくるモンロープスにテルマと同時に身構える。

 モンロープスの相手は以前したから対処の仕方はわかってる!


「土よ!突き出ろ!」


 魔法で地面を柱の形に盛り上がらせ、走るモンロープスの腹部に直撃させる。

 突出した岩を受けモンロープスの体が大きく跳ね上がり、上に乗っていた盗賊が俺たちの頭上を飛び越え湖へと落ちて行った。

 腹部を打ち付けられ痙攣を起こし動かなくなったモンロープスの一つ目をテルマの槍が貫き絶滅した。


「本当に、自分たちは盗賊団と関係ないと言うのか」

「当たり前です。むしろ、協力させてください!ここにはベルだっているんだ。このまま見てるだけなんてできない!」


 ゲイルたちの目的はわからないが、このままだと被害が拡大してしまう。

 なんとしてでも盗賊団を追い返さないと!


「……いいだろう。ついて来い」


 テルマは俺の気持ちを理解してくれたのか、同行を了承してくれる。

 彼を先頭に火の手の上がる里へと走り出す。


「どこに行くんですか?!」

「味方に指示を出し、敵を倒しながら武器庫を目指す!そこにお前たちから没収した道具が保管されている」

「俺の剣と盾もそこに!?」

 

 まず目指すは妖精族の武器庫のようだ。

 そこに行けば、俺だけじゃなくて影山とティアーヌの道具もあるらしい。


「いたぞ!妖精族だ!」

「捕まえろぉ!」


 また別の盗賊団二人が立ち塞がるが、律儀に相手してやる暇なんてない!


「雷よ!蜘蛛となって疾れ!」


 蜘蛛の姿を模した雷の魔法を二人に放つ。

 雷の蜘蛛は地面を疾り、盗賊団に飛びつき感電させた。

 電撃を受けて動けない相手の脇を通り過ぎ、他のツリーハウスと違う、唯一地面の上に建てられた家屋が見えてくる。

 しかし、その周囲ではエルフやドリアードたちが盗賊団が刃を向けて交わしており乱戦と化していた。


「あれが武器庫だ!お前だけで行け!」

「テルマさんは!?」

「俺は仲間の態勢を整えさせる!お前たちの武器は一番奥のはずだ!行け!」


 並走していたテルマが一気に駆け出し味方エルフと交戦していた盗賊の一人を槍で突き刺した投げ飛ばす。


「全員固まれ!個々で応戦せずに常に二人一組となって相手をしろ!」

『了解!』


 テルマの指示にエルフが一斉に動きを変え、今まで一対一での立ち回りから、二対一へと変化した。

 その脇を通り抜け、俺は単身武器庫へと飛び込む。


「武器!俺の武器は!?」


  武器庫の中は窓がないので暗く、灯りは照明代わりに光る魔石が天井に吊るされていた。

 俺たちの道具は一番奥に仕舞われるって言ってたけど……見つけた!

 隅に置かれた木箱の中に乱雑に押し込まれてる!

 剣と盾と、弓矢もちゃんとある!

 誰も手に取って確認してないのか、少し埃被ってるけど他人に弄られてないのは嬉しい。

 影山とティアーヌの道具袋もある。

 後はこれを二人に渡せば──


「ぐわああああ!!」


 倉庫の外から突然悲鳴が響き耳に届く。

 しかも、悲鳴は一つじゃない。

 最初のに続いて二人、三人と次々と悲鳴が連続する。

 嫌な予感を感じ、急いで武器を全て装着して、影山とティアーヌ二人の武器を道具袋に詰め込み外へと駆け出す。

 嫌な予感は的中した。

 倉庫の外で戦っていたテルマたちはモンロープス五体と盗賊団六人に取り囲まれていたのだ。

 既にテルマの仲間は何人か倒され、地面に倒れ血を流している。

 それでもテルマたちの方が数では有利、まだ十人近くのは残ってはいるが……全員ジリジリと後ろ下がって来ている。


「テルマさん!」


 背負っていた道具袋を放り投げテルマへと駆け寄る。

 剣を引き抜こうと腰に手を伸ばし、


──殺セッ!


「……っ!」


──体ヲ、返セッ!


 また頭の中にもう一つの魂の声が強く響く。

 その度に、脳裏に司教の、トリアの、ジェイクの最期の姿が蘇り手が震える。

 あの黒いミミズが見える。

 駄目だ……また、剣を抜けない……!


「何をしてる!お前は早く仲間のところへ行け!」

「だけど、このままだとテルマさんたちが

「あれあれあれ〜?」


 突如、奇妙な声が聞こえる。

 この場に不釣り合いな程軽快な声の人物は目の前にいる盗賊団からではなく、モンロープスから降ってきた。

 全員の視線がそちらへ向き、声の主を確認する。

 もちろんそれはモンロープスから発せられたものではない。

 その上に跨る、小太りで金品を身につけた歪んだ笑みを浮かべる男のものであった。


「どっかで見たことある顔だなぁ?」


 小太りの男はモンロープスからずり落ちるように地面に着地し、


「とっても懐かしい。いや、よく見たらムカッ腹の立つ嫌な奴の顔だぁ。久しぶりだなぁ、クロノス・バルメルドぉぉぉぉ!!」


 俺たちの前に、俺を正面にし踏ん反り返り憎悪に満ちた声で俺の名を呼んだ。

 いや、ちょっと待って、こいつ……誰だ?


「その顔だとぼくのことを覚えてないなぁ?だろうなぁ、ぼくのことなんて……こっちはお前のせいで、領地から追い出されたのになぁ!!」


  俺のせいで領地から追い出された?

 領地、追い出されるって──こいつまさか!?


「カー……ネ?お前、カーネ・モーチィか!?」

「そうだよそおだよ!やっと思い出してくれたかぁ!」


 思い出したのがそんなに嬉しいのか、ニタニタと笑うカーネ。

 俺とカーネの関係を知らないテルマさんが小さく尋ねてくる。


「知り合いか?」

「俺の故郷にいた悪ガキです。でも立ち入り禁止の森に無断侵入して、領地の息子を置き去りにした罪で領地から追い出されたんです」

「確かにそれは追い出されても文句は言えないな。普通なら死罪だ」


 カーネ・モーチィ──俺がフロウ・ニケロースと出会うきっかけとなった人間。

 俺がバルメルド家に引き取られ、レイリスと村で遊んでいた時、三人組がフロウを虐めていた場面に遭遇した。

 その時のリーダーがカーネだった。

 虐めていたのは男の子のフロウが女の子の格好をしているのを理由だ。

 俺とレイリスが割って入り、何度もフロウを虐めようとするのを阻止していたが、ある日カーネは度胸試しと称して、大人たちに立ち入ってはいけないと言われていた『禁断の森』にフロウを連れて行き、そのまま置いて逃げ帰ってきたのだ。

 何とかフロウは無事に連れ帰れたが、領地の息子を危機に晒し無断で森に踏み込んだとして、モーチィ一家はニケロース領を追放され、俺たちがその後彼らの話を聞くことは一切なかった。

 でも、そのカーネが今目の前にいる。

 十年後の人物とはいえ、もう二度と会うことはないだろうと思っていただけに驚いてしまう。


「ちょっと待て、どうしてお前が盗賊たちと一緒にいるんだ!?」

「それは、ぼくがこいつらの雇い主だからさ」

「雇い主!?」

「ちょうどいい。どこにいるか教えてもらおうか。大地の巫女ティンカーベル・ゼヌスがどこにいるか」


 ベルの居場所!?

 もしかして……こいつら、ベルを探しにこの里を襲いに来たのか!?

カーネ君第二章以来久々の登場です。

一度出したキャラは死亡退場しない限りは何度も出すつもりなので、これからも他キャラ出てくるかも?

次回投稿は来週日曜日22時からです!


8月中はまた連続投稿するつもりではいます。

いつ頃やるかは未定ですが

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