第百五十二話 招かれざる客
今期アニメ続々始まりましたねぇ
半分でいいから全部観たいです。だいたい途中で視聴止まっちゃう時あるから……
とりあえず、今はアイカツフレンズを観ていたい
妖精族の里に来てから二日目の朝、相変わらず木々の上に設置された光属性の巨大魔石のおかげで里は明るい。
俺はティアーヌが監禁されている家の前にいた。
相変わらず扉越しでの会話しかできず、おまけに見張りにテルマがすぐ傍に立って警戒をしていた。
「──そういう訳で、まだティアーヌさんをそこから出すのは無理そうです」
「そう。できれば早めに出してくれると助かるわ。一日中この中にいるの結構暇なのよ。話し相手もいないし」
側に立っていた見張り二人がその言葉にそっぽ向く。
監視対象……と言うより、淫魔自体を警戒しているから声も聞きたくないのだろう。
淫魔って声色だけで相手を魅了させられるらしいし。
「まあいいわ、気長に待ってるから」
「なるべく急ぎますから、もう少し待っててください」
「私がお婆ちゃんになるまでに出してくると嬉しいわ」
「善処します」
冗談が言えるぐらいだから、まだ我慢はできるのだろう。
だけど、こんなボロ小屋にいつまでも閉じ込められてたらストレスになるだろうし、早く何とか族長を説得しないと。
「もういいのか?」と聞かれテルマに頷く。
今は別行動をしており、影山は族長と連日話し合いをし、ベルの同行と引き換えに何を報酬とするかの会談。
俺はティアーヌに現在の状況報告だ。
本当は俺も話し合いに参加したかったのだが影山に、
「お前は参加しなくていい。里観光でもしていろ」
と言われてしまった。
とことん俺は影山に未熟者扱いされてしまっている気がする。
ならば影山に同行してベルともう一度会いたかったのだが、彼女もまた神への礼拝があるので会えないらしい。
一人何もする訳にもいかないので、こうしてティアーヌに会いに来ていたのだ。
報告が終わった後、またすぐに仮家に戻ることになる。
テルマと武装した見張りのエルフ二人に囲まれてツリーハウスを繋ぐ桟橋を渡り歩く。
もちろん、三名とも武装しており俺は丸腰。
暴れられてもすぐに取り押さえられるように常に警戒されている。
俺の装備はどこに行ったのかと言うと、全部この里に来た時没収されてしまったらしい。
剣も盾も弓矢も、今は影山とティアーヌの道具袋と一緒に里のどこかで保管されているそうだ。
「これじゃ観光とか絶対できないって……」
「何か言ったか?」
「あ、いえ、里の中をちょっと見て回りたいなぁって」
「駄目だ。お前にはすぐに戻ってもらう」
「ですよねー……」
予想通りの返答に何も言えない。
そもそも俺は魔王の呪いで暴走することがあるって説明されているのに、そんな奴に里内部を歩かれたくなんてないんだろう。
ごめんなさい影山さん……観光とか絶対に無理です。
「隊長、あれは何でしょうか?」
俺の背後を歩いていた兵の一人が尋ねる。
テルマと同時に俺も振り返ると、彼は里の入り口に視線を向けていた。
俺も同じように里の入り口を見ると数人の兵が入り口前に集まっていたのだ。
この里の周りは湖で囲まれており、里から出るには『迷いの森』へと続く一本道のみが唯一の出入り口。
そこに彼らが屯している……それが意味することは、誰かが里から出ようとしているか、もしくは森から誰かが入ってくるということになる。
「なんだ……?」
ティアーヌが監禁されてた小屋は里の入り口から反対側にありもっとも遠い場所。
ここからでは人が集まっているのが見えるぐらいなのでテルマは目を細め不審がっている。
俺も細めで伺うけど、距離がありすぎて全然見えな──あ、左眼使えばいいじゃん。
意識を左眼に集中しマナを込める。
青い瞳が熱くなり、左眼のみがより遠くを見れる能力が発動させる。
集まっている兵の中心、あそこにいるのは……人か?
古ぼけたローブで顔が分からないけど、地面にへたり込んで何度も頭を垂れていた。
「テルマさん、あそこに集まっている人たちは部外者を囲んでいるみたいですよ」
「何?お前、この距離から見えるのか?適当言っているんじゃないだろうな?」
「言う意味ないじゃないですか……あ、兵士の足に抱きついてます。何かを懇願しているみたいですけど」
助けを求めるかのような行為をするローブの人物。
しかし兵士に振り払われいた。
俺の説明にテルマは一つ唸ると「仕方ない。駆け足だ、この男も連れて行く」と指示する。
森を抜けて何者かが里に入り込んだのを無視する訳にもいかず、俺も一緒に連れていかれることとなった。
もし妖精族以外だったら寝床の仮家に連れて行くつもりなのだろう。
ツリーハウスの橋を何度か渡り、階段から地面に降りると人混みの出来つつある里入り口へと急ぐ。
「ここでこいつを見張ってろ」とテルマは後ろの二人に指示し俺たちは少し離れた場所に、彼は訪問者を囲む兵士たちへと駆け寄って行く。
「どういう状況から報告しろ」
「隊長!丁度良いところへ……実はこの者、単身で迷いの森を抜けここに辿り着いたらしいのですが」
「あの森を一人でか?」
ここからでも十分に会話が聞こえるが、明らかにテルマも妖精族の兵士たちも困惑の声色だ。
だが説明をしていた兵士は更に困った表情で、
「ですがこの者、先程から何を聞いても助けてくれ、里の中に匿ってくれと懇願するばかりで要領を得ないのです」
なるほど、それでさっき遠くから見た時に足にすがりついていたのか。
訪問者は下を向いて何度も手を擦り合わせ何か呟いている。
ここに来るまでに恐ろしい目にでもあったのだろうか?
テルマはへたり込むローブの人物に声をかけた。
「旅の者、お前は何者だ?ここを妖精族の里と知って来たのか?」
「た、助けてくだせぇ……!オラ、外で魔物に襲われて、逃げようと森に入り込んでここまで来ちまったんげすぅ……!」
げすって、変な語尾だな、
声が震えているが多分男の人だろう。
震えている男はテルマに擦り寄ろうとするが、彼はそれを剣を向け阻止した。
「ここは『妖精族の里』だ。妖精族以外は里に立ち入ることは許されない」
「そ、そんなぁ……!オ、オラ、命からがらここまで逃げてきたでげすよ!助けてくだせぇ!」
「ええい擦り寄るな!まずはフードを取って顔を見せろ!」
声を荒げるテルマに男はビクッ!とし、恐る恐る両手でフードを取り顔を晒す。
スキンヘッドで顔にいくつか小さな切り傷を持つ、気弱そうな顔をした三十代ぐらいの──あれ?
俺、この人どっかで見たことあるぞ?
どこでだったっけ?
最近……いや、かなり前だ。
胸の内に引っかかる何か、思い出せずにもどかしさを感じている間にも周囲は人族の出現に騒めく。
「人族か……森に入ったのはかも貴様一人か?」
「わ、わかんねぇでげす。お願いだ!ゲェスを助けてくれでげす!」
手を合わせ懇願するスキンヘッドの男は自らをゲェスと……ゲェス?
何かが、何かが喉元まで出かかっている。
絶対その名前をどっかで聞いたことあるぞ、どこでだ?
どこで聞いたんだっけ!?
記憶の棚から聞き覚えのある単語を探すがなかなか見つからない。
一人頭を捻らせ忘却と格闘していると、テルマはゲェスという男を立たせようとしていた。
「ともかく!妖精族でない者はここに立ち入ることは許されていない!即刻出て行け!」
「そ、そんなの酷いでげす!せっかく、せっかくここまで来たのに!そんな──それならぁ〜!」
ニタァと不気味な笑みを浮かべるゲェス。
凄く既視感のあり、スキンヘッドのせいかゲイルの顔が……そうだ思い出した!
「駄目だテルマさん!そいつを今すぐ取り抑さえて!」
離れた場所で様子を見ていた俺は声を上げるとゲェスを除く全員の視線が俺に集まる。
そうだよ、なんですぐに思い出せなかったんだ!
俺は一度あの男に会ってるじゃないか!
この世界に初めて来た時、奴隷として引き渡される前の地下洞窟で大蛇の魔物に追われた時に一緒にいた!
あの男は大蛇に喰われた!
「そいつはゲイル盗賊って一味の盗賊だ!!」
「ッ!全員、そいつを拘束し
「もう遅いですげすよ!!」
テルマたちが動くよりも先にゲェスがローブの下に仕込んでいた布で巻かれた球体を地面に叩きつける。
落下の衝撃で球体が破裂すると白い煙が周囲一帯を覆ってしまった。
「げほっ、げほっ!煙幕!?」
視界が煙に包まれて何も見えない!
これじゃあ俺の眼も役に立たない!
ともかく、一度煙の中から抜け出さないと……
「キュルキュルキュル」
煙から逃れようと歩き出すと聞き覚えのある鳴き声が聞こえる。
それにいくつもの足音も。
「これって……まさか!?」
身の危険を感じ走りだそうとした時には、もう遅かった。
目の前に突然毛むくじゃらの獣が姿を現し俺は吹き飛ばされる。
何が起きたか理解する間も無く、宙を舞いう中、モンロープスに跨るゲイルと、小太りで小綺麗な男の姿を見る。
それを最後に俺は湖へと落下するのだった。
皆さんは熱中症などにお気をつけてお過ごし下さい
次回投稿は来週日曜日22時となります!




