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第百四十七話 妖精族の里②

なんでかわかんないけど、最近前ぶりもなくプリキュア熱が再燃しました

あー!キュアアンジュかわいい!


 湖の中心に聳える大樹。

 そこを基盤とし生活する妖精族。

 未来に来て初めて光降り注ぐ場所を訪れた。

 妖精族の里はツリーハウスを主な居住とし、家々は吊り橋で繋がっており、耳長のエルフや身体に蔦を纏うドリアードが行き来している。

 もちろん地上にも下半身が花に覆われたアラウネや小人のフェアリーの姿もあった。

 妖精族だけが住む里──他の種族は一切いない、妖精族の為だけの空間。

 他種族が一切いないこの場に置いて、人族である俺と影山の存在の異物感が強く感じる。

 実際場違い、ではあるだろう。


「連れが目覚めたか」

「ああ、おかげさまでな」


 里を観察するのに夢中になっていると、いつの間にかエルフの男が側に立っていた。

 それも金髪て高身長、鎧を装着しており、手練れの戦士なのは見た目からも分かる。

 金髪のエルフに影山は返すと、


「この男はテルマ。里の警備隊長であり、王女殿下の護衛騎士でもある」

「初めまして……クロノス・バルメルドです」


 初対面のテルマに挨拶をする。

 しかし、返事が返って来ることはない。

 テルマは挨拶する俺を警戒し、敵対心を露わにしていた。

 こちらを睨んでいるのだ。

 態度でわかる。

 俺、何かマズイことしたか?と若干不安を抱いていると、テルマは鼻を鳴らし、


「本来なら他種族の、それも魔王の呪いを受けた危険分子を里に入れるのは大変遺憾なのだが……ティンカーベル様のご友人、無碍にも扱えず、致し方なく滞在が許されている。が、問題を起こせば容赦無く追放するぞ。肝に命じておけ」


 物凄く嫌味ったらしい口調で釘を刺された。

 魔王の呪いって何の話だ?

 俺が口を開く余地もなく、「ついて来い」とテルマは桟橋へ向かう。

 その後ろを影山と共に歩き出すと小声で耳打ちされる。


「彼はお前を森で探す際に共に捜索をしてくれたが、お前が暴走する直前の姿を目撃していた。だから警戒しているのさ。本当はお前が、人の皮を被った魔王軍の手先ではないかとな」


 あの姿を見られたのか……なら、警戒してて当然か……

 もう一つの魂に体を乗っ取られた時の姿は、誰が見ても化け物にしか見えない。

 そんな人間を里に迎えていれば怪しまれても仕方ないだろう。


「ちなみに、お前のあの姿は魔王によって刻まれた呪いの一種で、マナの暴走により肉体に変化が生じる、と説明してある。いいな」


 影山の耳打ちに頷き返す。

 あまり目立った行動して追い出されたくはない。

 テルマはこのまま俺たちをベルの所へ案内してくれるみたいだが、その前に、


「テルマさん。一度ティアーヌさんに会いに行ってもいいでしょうか?」


 俺の申し出に彼は一瞬眉を顰める。

 が、顎に手を当てしばし考えると、


「いいだろう。ではまずそちらから済ませよう」


 と意外にもあっさりと了承してくれる。

 何を考えているのかは分からないが、ティアーヌに会わせてくれるのならありがたい。

 行き先が変更となり、今まで里の中央に向かっていたのだが、テルマは反対方向の桟橋へ歩き出す。

 連れてこられたのは里の隅、湖に面したツリーハウス。

 普段は手入れがされていないのか、他の家に比べ木材に色褪せやヒビ割れか見られる。

 玄関前には見張りとしてドリアードとエルフの女性が立っていた。

 淫魔(サキュバス)対策だろう。

 テルマが見張り二人に話をすると、扉から少しだけ離れた。


「クロノス・バルメルド。扉の近くへ」

 「中には入れてくれないんですか?」

「この家屋には術式で囲まれている為、扉を開けての面会は許可されない。話がしたいのなら扉越しにしろ」


 扉越しって……まぁ仕方ないか。

 反抗する程のことではないから素直に従い扉まで歩み寄る。


「ティアーヌさん?俺です。クロノスです」


 なるべく顔を近づけ、中にいるであろうティアーヌに聞こえるように呼びかける。

 声に気づいたのか、ゆっくりと足音が聞こえると、


「バルメルド君?目が覚めたのね。体調は?」

「おかげ様で……また、助けてもらってありがとうございます」

「いいわよ。おかげで《エナジードレイン》のいい練習になったわ」


 ティアーヌの軽口に苦笑いする。

 良かった、監禁されていると聞いていたけど本人は何ともないみたいだ。


「でも、俺のせいで閉じ込められて……」

「発覚するのが早まっただけ。どのみちいつかはバレてここに押し込まれてたわよ。でもそうね、それを心苦しいと思うのなら、早めにティンカーベル王女との話し合いを終わらせてここから出してくれると助かるわ。窓から湖を眺めているだけじゃ、すぐに飽きちゃうから」


 思ったより元気そうで良かった。

 「わかりました。じゃあまた」と答え、テルマにもう十分だと頷く。

 予想していたよりやり取りが短いことに驚いているのか、テルマは少し呆気に取られていた。


「なんだ、もういいのか?」

「……?ええ、お礼はもう言えましたから」


 もしや、テルマは俺たちがここで暴れ出すことにでも期待してたのか?

 反攻すれば追い出す口実にできると──いや、まさかな。


「ティンカーベル王女に会わせて下さい」

「……わかった。では族長の家へと行くぞ」


 ティアーヌが監禁されている家を後にし、再び桟橋を渡り里を移動する。

 途中すれ違った妖精族にジロジロと見られる。

 一人や二人ではなく、出会った妖精族全てにだ。

 そんなに他種族が珍しいのか、それとも警戒しているのか……里の中央に向かうにつれて視線は増えていき、正直居心地が悪い。

 「ここが族長の家だ」とようやく目的地に着く。

 三階建てでさすがに族長の家だけあって他の家屋よりも大きいし高い位置に建てられている。

 何かの儀式に使うのだろうか、外壁には華やかな装飾が施された剣や槍がいくつも飾られている。

 族長宅にも番兵がおり、ルクレオと一言交わすと玄関扉を開けてくれる。

 でもやっぱり歓迎はされていないようで、入る際にかなり高圧的な目で見られていた。

 家に入ると長いテーブルといくつも椅子が置かれた一室に足を踏み入れた。

 どうやら一階は完全に来客用の部屋のみらしい。


「族長様と王女様をお呼びする。ここで待っていろ」


 ルクレオはそう告げると、テーブルの一番奥の上階へと続く階段を上がって行き、俺と影山だけが残される。

 もっとも、外の番兵には中に居ても分かるぐらい警戒されているが……

 影山はすぐに椅子に座ると腕を組み待機している。

 俺もその隣に座り部屋を見渡す。

 壁に掛けられた肖像画に目が止まる。

 歴代の族長なのだろうか?

 エルフやドリアード、フェアリーとそれぞれ違う種族の人物が描かれていた。

 その中の一枚に──何故か目が止まる。

 優しい顔立ちをし微笑んでいる女性の肖像画。

 頭に花が描かれているから、おそらくアラウネの女性だろう。

 何故それに目が止まったのかと聞かれると、何となくそれが懐かしい者に見えたからだ。

 そう、どことなく似ている気がしたのだ。

 彼女に──


「大変、お待たせいたしました」


 階段を降りる音と共に老婆の声がする。

 そちらへ顔を向けると、ルクレオが手を引きながら一人の年老いたエルフがゆっくりと降りて来た。

 どれだけ長い時を生きているのだろう。

 その顔は皺だらけで瞼は殆ど開いておらず、酷く猫背で、ルクレオの手と杖を使い歩くのがやっとと言った具合だ。

 階段を降り切ると老婆は椅子に座り、俺と影山を細目で眺めてくる。


「フォッフォッフォッ……この里に人族が訪れるのなんて、何年ぶりじゃろうか。」


 族長は優しい声色で笑う。

 彼女からは俺たち二人に対して敵意を全く感じない。

 かと言って友好的……という訳でもない。

 一歩引いた所から観察されているみたいだ。

 でも里の人たちのような好奇の視線とは違うので不快感もあまり感じはしない。


「クロノス・バルメルド殿と……カゲヤマ殿でしたかな?本日は、ようこそ我らが妖精族の里へ。特にクロノス・バルメルド殿は巫女様の御友人だそうで、私共一同心より歓迎致します」


 定例文のような対応。

 やっぱり歓迎されてはいないらしい。


「もちろん、カゲヤマ殿も御友人様同様、誠心誠意お持て成し致します」

「そうか。その御好意には感謝の言葉では言い表せないな」


 お互いに失笑する族長と影山。

 今のやり取りにどんな意味が込められているのか想像すると笑みが不気味だ。

 さっさと本題に入らせてもらうおう。


「あの、ティンカーベル王女はどちらに?」

「支度をしておりますが、すぐに参られますよ。……ほら、準備ができたようです」


 族長が振り返ると階段の軋む音が聞こえてくる。

 複数人が上階から降りてくる。

 人数は三人、二人は白装束に身を包み、木彫りの仮面で顔を隠している。

 先頭を歩いていたのは、煌びやかな花飾りの白いドレスで着飾った少女であった。

 その姿を見て、俺は口を開けて目を見開く。

 若葉のように初々しい緑色をした長髪、側頭部に咲く桃色の花。

 大人びた表情で華奢な身体をした少女は、花のドレスを揺らしながら階段を降り、族長の隣に立つと礼儀正しく頭を下げた。

 

「お久しぶりでございます。クロノス・バルメルドさん」

「え、あ……ベ、ベル……?」

「はい。妖精族の姫にして、大地の巫女──ティンカーベル・ゼヌスでございます」


 顔を上げにこやかな笑顔を見せるのは、かつて王都で友達となったティンカーベルであった。

 昔と変わらぬその面影で見せる笑顔は、どこか苦しげな、切なげなものを感じさせる……そんな笑顔だった。

最近なんでかわかんないけど、ゲーセンのソウルリバースってゲームにハマりました。

はぁー!新規で始まるゲームだと全く勝てなくて顔真っ赤!


次回投稿は来週日曜日22時からです!

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