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第百二十九話 紫電の一撃

先日久々に秋葉原行ってDSとかPSPのソフト探しに中古屋行ったんですけど、どっちも欲しいのがもう売ってなかった……


 難民キャンプに突如として現れた魔王ベルゼネウスに魔法攻撃が嵐のように撃ち込まれ続ける。


「クロノス!こっちだ!」


 ジェイクの呼ぶ声が聞こえ振り返ると、扇状に広がりベルゼネウスに魔法攻撃を繰り出している兵士たちの中にその姿を見つけた。

 俺と影山は攻撃の邪魔にならないようにしながらジェイクと合流し下がる。


「父さん!良かった、まだ無事で」

「お前のことだから、避難せずにここに来ると思っていたよ。カゲヤマさんもご無事で」

「ああ……だが、警備をしていた奴らは全滅だ……」


 ベルゼネウスの足元に横たわる仲間にジェイクは下唇を噛んでいた。

 しかし感傷に浸る暇もなく、魔法を撃ち込まれ続けていたベルゼネウスが腕を払い黒い瘴気が衝撃波のように魔法を打ち消す。

 黒い瘴気によって魔法が消えたのを目にし、誰もが後ずさる。


「ふははは!まだこんなに獲物が残っていたとはな!狩りがいが、あるッ!!」


 ベルゼネウスが纏う黒い瘴気が更に勢いを増す。

 黒い瘴気は触手のようにうねりながら枝分かれして分裂し、扇状に広がっていた兵士数名を捕縛すると木や地面に叩きつける!


「対悪魔用緊急指令を発令する!全員プランBに移行せよ!」

 

 部隊の指揮を執っていた人族の兵士が何かを指示する。

 指示が下されると同時に魔王へ攻撃をしていた全員が──背中を向けて走り出す!

 ……ってこれ逃げてる?

 逃げてるよね!?

 対悪魔用緊急指令!?

 プランBって何!?


「クロノス、こっちだ!」

「さっさと行くぞ坊主!」


 影山に首根っこを掴まれ走り出す。


「逃すと思うか……?愚民共ォ!!」

 

 魔王が笑い、瘴気の触手が荒れ狂う。

 逃げる俺たちをベルゼネウスは歩いて追いかけてくる。

 到底追いつくはずのない歩幅だが、魔王の操る瘴気は違う。

 蛇のようにうねり、蜘蛛のように素早く身を滑らせ、逃げる兵士を掴むと振り回す。

 瘴気の触手に捕まった人たちの悲鳴が背後から聞こえ続ける。

 その声に目を逸らし、迫る瘴気から逃げつつジェイクと影山に尋ねる。


「あの二人とも……対悪魔用緊急指令ってなんなんですか!?」

「魔王軍の幹部以上が襲来した時の対応策みたいなものだ!私たち難民キャンプの者だけでは対処できない場合に備え、警備兵全員への共通命令だ!」

「ちなみに、プランBの内容って……?」

「生き残ることを最優先とする……要は、全力で逃げるってことだ坊主!!」


 答えながら突然影山が俺の頭を抑えつける。

 その上を瘴気の触手が通過し、木々を薙ぎ払いへし折る。

 幹が砕かれる音に混じり悲鳴も聞こえた気がしたが、確認する暇などなく走り続ける!


「逃げるって言ったって、この先はキャンプがあるんですよ!?このままだと魔王を避難中の人たちのいるところに誘い込むことになりますよ!?」

「わかってる!でも、何の策もなく逃げる訳じゃない」


 まだ策があるのか?

 なら、この逃走にも意味があるってことなのか?


「ハッハッハッ!!逃げろ逃げろ、もっと俺様を楽しませろ!!」


 逃げる俺たちを追いかけるのを楽しむ魔王の高笑いが背後から聞こえる。

 振り返れば、悍ましい笑み浮かべた魔王が歩いて追いかけて来る姿。

 それは圧倒的優位な立場である者が、逃げ惑う獲物を狩るのを楽しんでいるのと同じ笑みだ。

 だから魔王は決して走ろうとはしない。

 長く狩りを楽しむ為、逃げる俺たちを瘴気で捕まえて自分で止めを刺す為にわざと歩いているのだ。

 強者が弱者を一方的に痛めつけるその愉悦感を味わい続ける為に!

 性格悪すぎだろ……ッ!


「ハッハッハッ……ん?」


 俺たちを追いかけていたベルゼネウスの足が一瞬止まる。

 視線は足元に向けられており、俺たちを襲っていた瘴気の触手も縮小を始め勢いが無くなっていく。

 何事かとベルゼネウスの足元に目を向けると、奴が踏んでいる地面から光が溢れ出していた。


「成る程、そういうことか……ヌゥッ!」


 突然魔王が体勢を崩し、地面に片膝を着く。

 それと同時にベルゼネウスの踏んでいた地面から光が広がり、それは大きな魔法陣を地面となって大地に浮かび上がった。


「やったぞ!魔王が魔法陣を踏んだ!」


 誰かの声に逃げに転じていた人たちが振り返り、地面に片膝を着く魔王の姿に歓喜する。

 最初からこれが狙いだったのか。

 背中を見せて深追いさせ、魔法陣の罠が張られている場所まで誘き寄せるために。

 魔法陣には動きを封じる効果があるのか、ベルゼネウスは何とか効力を振り切ろうともがき、瘴気の触手も縮こまりこちらを襲ってこない。

 誰もがこの状況を好機と見る。

 逃げるのを止め、再びマナを練り始めた。


「魔王が動けない、チャンスだぞお前たち!この数年間、貯蔵していたマナを全て叩き込め!!」


 指揮を取っていた人物の言葉を合図に兵士たちが一斉に魔法を放つ。

 爆炎や岩弾、雷に氷柱等様々な魔法攻撃が動きを封じられたベルゼネウスに被弾する。


「ええい、小賢しい小蝿共が……!ふざけた真似ォ!!」


 無防備なベルゼネウスだが、黒い瘴気を盾のようして魔法攻撃を防いでいる。 

 しかしこちらの方が現状圧倒的に有利。

 さすがの魔王でも多方向からの同時攻撃は応えるのか、壁のように身を守っていた黒い瘴気が散り散りになり始めている。


「いいぞ!そのまま畳み掛けろ!ジェイク殿ぉ!」

「心得た!!」


 左腕で腰に差した剣を引き抜くジェイク。

 僅かに刀身がマナを帯び始めるのを感じ、次に何をすべきか察する。


「クロノス、やれるか!?」

「やれなくてもやりますよ!」


 答えながら剣を抜きマナを込め構える。

 モンロープス戦で殆どマナ使ってしまったが、一撃お見舞いするぐらいの威力は出せるはずだ!

 マナを十分に込め、ジェイクが振るのに合わせてマナの斬撃を同時に放つ!


「覚えてないけど、あん時の借りだ!受け取れェェェェ!!」


 剣から放たれた斬撃が他の魔法攻撃の合間をすり抜け、黒い瘴気とぶつかると勢いよく瘴壁を吹き飛ばした。

 守るものがなくなり、ついに魔法の雨がベルゼネウスに直撃し苦痛の声が聞こえる。


「ぐっうぅ……ッ!おのれぇ!小蝿共ぉ!」


 片膝を着いていたベルゼネウスがついに両膝を着く。

 しかしこちら側もマナ切れを起こす者が増え、魔法による攻撃の手が緩みつつあった。

 そうなれば必然的に残る手は一つ。


「他の者は魔法を撃ち込み続けろ!マナが切れた者は武器を取れ!もはや瘴壁はない、魔王を討ち取れぇぇぇぇ!」

『おおォォォォ!!』


 マナが切れた者たちが一斉に武器を手にし、雄叫びと共に魔王目掛け走り出す!

 もちろん俺もだ。

 武器持ってるんだからいなきゃダメでしょ!

 その中でも一番行動が速かったのは影山だ。

 指示がなされるよりも速く走り出し、右足のブーツのスロットに前見た時とは違う紫の石を差し込むと駆け出していた。

 紫の石を差し込まれた右足のブーツにが電流が光る。

 飛び出した影山が真っ先に魔王の眼前まで迫ると、ベルゼネウスに回し蹴りを繰り出した!


「はぁぁぁぁ!!」


 体を捻らせ回転の勢いで威力を増した右足の蹴りによる紫電の一撃。

 その威力は想像していたよりも鋭く、重く、ベルゼネウスの側頭部に直撃する。

 頭部に蹴りを叩き込まれベルゼネウスの体が大きく仰け反る。

 あれをまともに喰らったら流石の魔王でも無事ではないだろう。

 ならば尚更、全員で斬りかかるチャンス──


「……いい蹴りだ」


 蹴りを叩き込まれ仰け反るベルゼネウスから声が聞こえる。

 耳を澄ませていないと、周囲の雄叫びに掻き消されてしまうほど小さい。

 だが俺の耳にはハッキリとそれが聞こえた。

 仰け反っていたベルゼネウスの頭が僅かに動く。

 その口元が、僅かに笑みを浮かべ──


「が、温いなッ!」

「……ッ!全員下がれ!これは


 影山が俺たちに伝え終わる直前、ベルゼネウスの体から再び大量の黒い瘴気が溢れ出す。

 剣を持って迫っていた俺たちは、何が起きたのか理解する間もなく瘴気に飲み込まれた。


いつか後書きで書こうと思っていたんですが、現在クロノス君の強さは全レギュラーキャラの中でぶっちぎりの最下位です


次回投稿は来週日曜日の22時です……でも過激な描写が多いかも?

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