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第十一話 初めての友達


 この世界に転生して、最初に起きた事件で一緒だったレイリスと再会した。

 次の日に一緒に遊ぶ事を約束したのだが、俺は非常に困っていた。


「この世界の子供って、何して遊ぶんだろう?」


 そう、この世界の子供は何をして遊ぶのか知らなかったのだ。

 前世はどこの国でも外でする遊びって言ったら鬼ごっことか、かくれんぼとかが共通遊戯だったんだが、ここではどうなんだろうか。

 んー、しかもレイリスは亜人種のエルフ族だからなぁ。

 人族とエルフ族で遊ぶ文化とか違うかもしれないし……うん!こう言う時は、人生の先輩に聞くのがいいな!


「と言う訳なので、お義父さんが子供の頃は何して遊んだのか教えてください」

「子供の頃の遊び?」


 食事の席で、一番身近な人生の先輩であるジェイクに聞いてみる事にする。

 彼はバルメルド家に婿として入る前は平民だったらしいので、この世界にはどんな遊びがあるか知っているはず。


「そうだね……私が子供の頃は、もっぱら剣を振り回していたよ」

「え……」

「子供の頃から剣士を目指していてな。いつかカッコいい剣士になるんだ!と周りに息巻いて、ずっと強くなる為に剣ばかり振り回していたんだ。だから子供の頃の遊びはちょっと分からないな。だがクロノス。何も遊ぶのが悪いとは言わない。しかし、君もバルメルド家の子として──」

「アッハイ」


 駄目だこりゃ。

 参考にする相手を間違えたらしい。

 うーむ、参ったなぁ。


「んふふふふ」


 ユリーネが不気味な笑みを浮かべている。

 これはあれだ。私にも聞いて!って意味の笑みだ。


「……お義母さんは子供の頃は何を?」


 まぁ一応聞いておく。

 でもどうせ、貴族の子供同士でおままごととかしてたに決まって、


「お父様やお友達と森に行って狩りをしていたわぁ。弓矢を使って、森に棲みついた魔物を退治したり!」

「思った以上にアグレッシブ!」


 森の動物ならまだ分かるけど、魔物を狩りとして楽しむとか意味ワカンねぇ!

 この世界の貴族って、みんなそんなことしてんのか!?

 頭のネジぶっ飛び過ぎだろ!

 つか、もうヤダァこの夫婦!

 揃って脳筋かよ!


「あー……ちなみに言っとくけど、子供の頃に魔物を狩りに行くなんてことするのはお母さんだけだからね?」

「デスヨネ!びっくりした」


 やっぱりユリーネが特別変だっただけらしい。

 しかし、全く参考にならないなこの二人。

 そうだ!我が家にはまだメイドが三人もいたんだった!

 いくら親二人が特別脳筋でも、メイドさんまで脳筋なんてことはないだろう。


「子供の頃からバルメルド家に仕えておりました故、坊っちゃまが望むような御遊戯は……申し訳ありません」

「私は戦争孤児だったので、そう言ったものには縁が無く」

「奴隷だったところを旦那様に助けていただき、以来召使として働いていたので」


 オーマイゴット。

 どうやらこの家には、幼少期に子供らしい遊びをした者は一人いないみたいだ。

 やべー本格的にどうしたらいいかわからねぇ。


「えーと……じゃあ、エルフ族がどういった遊びを好むか分かりませんか?」

「エルフ?どういうことだ?」

「それがねー、クロちゃん。今日村の市場で、あなたが助けたエルフの子供と会ったのよぉ。ほら、お迎えが来るまでずっとクロちゃんの傍にいた」

「あぁ、あのエルフの子か。そうか、山の集落の子だったのか」


 ドユコト?

 この二人はレイリスの事知ってるのか?

 でもよくよく考えたら、あの大蛇の棲む洞窟から抜け出して、俺の為にジェイクに助けを求めたのはレイリスだって話だし、面識はあるのか。

 じゃあ山の集落とは?


「この近くにエルフが住んでいる集落があるんですか?」

「あぁ、この村は森と山に囲まれているだろう?禁断の森の手前に、エルフの住む集落がある。彼らは森の入り口を守っているんだ」


 禁断の森とは、子供も大人も入ることが許されぬ立ち入り禁止の森のことである。

 俺もこの家に来た時、禁断の森だけは絶対に近づいてはいけないときつく教えられた。

 そうか、レイリスの家族はその付近に住んでるのか。

 で、彼らは禁断の森の入り口を守る役目があると、ふむふむ。

 禁断の森に何があるのか知らないが、入り口を監視しなければならない重要な何がそこにあるのだろう。

 まぁ怒られたくないから俺は絶対近寄らないけど。


「しかし、エルフか……」

「大丈夫よ。そのレイリスって子、可愛いし礼儀正しかったわ」


 なんだなんだ?

 エルフの子供と仲良くするのはいけないのだろうか。

 この世界では亜人に対し、少なからず排他的な思想を持つ人間が多いとは聞くが、バルメルド家はそんな家訓はないはず。

 そもそも信仰しているギルニウス教では『異種族皆隣人』と言う教えがあるぐらいだし、問題なんてないはずなんだが。


「お義父さん。エルフの子と仲良くするとは、何かいけないでしょうか?」

「あ、いや、そんなことはないぞ!ギルニウス様も『異種族は親しき隣人である』と教えを残している。ただ……なぁ?」

「はあ?ただ、なんでしょうか?」


 イマイチ彼が言いたいことがわからない。

 レイリスと仲良くするのはいいけど、何か別問題があるのだろうか。

 もういっそハッキリと言って欲しいんだけど。


「あなた。この子の初めての友達なのよ。いいじゃない別に」

「しかしユリーネ、この子が」

「何か言いたいことでも……?」

「いや、ないよ!うん!友達は大事だな!」


 ユリーネの圧のある一言でジェイクが折れた。

 ホント、この二人の関係ってどうなってんだ。

 しかしこれでレイリスとの交友関係にお許しが出たぞ。


「で、結局エルフの子供の遊びは?」

「ああ、そうだったね。エルフの子供は、森の中で遊ぶのが多いだそうだ。エルフは自然の中で生きる種族だからね。後は、魔法を使った遊びが好きだな」


 マホウ……魔法!?

 エルフは魔法が使えるのか!?

 魔法と言う単語に反応した俺を見て、ユリーネが何やら笑みを浮かべる。


「あら、クロちゃんは魔法に興味があるのかしら?」

「あります!私、気になります!」

「あらあらぁ〜、そうなの〜」


 魔法なんて、生前ではファンタジー世界だけのものだった。

 でもこの世界に魔法があると言うのなら、俺も使ってみたい。


「それじゃあ、レイリスちゃんと一緒に魔法のお勉強をしましょうか」


 ……ん?勉強?

 ニコニコと笑うユリーネに、ジェイクが可哀想な顔で肩を叩いてくる。

 どうやら俺は、地雷を踏んでしまったらしい。

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