第百二十六話 難民キャンプ
連続投稿二日目です
今日は仮面ライダーとプリキュアの日なので仕事終わったら見なきゃ…
「あぁ、良かったクロくん!無事で!」
「なんとかな……でも次から作戦は俺にも教えておいてくれ」
ゲイルたち盗賊団が退却しフロウと合流するや否や、安堵した表情を浮かべ抱きつかれる。
親友とはいえ、ドレス着込んだ男に抱きつかれてなんとも言えない感情が湧き上がる。
「カゲヤマさん、ありがとうございました」
「仕事だ。礼はいい……が、護衛の被害も相当だ。話は後にして、積荷を運ぶのがいいんじゃないか?」
「そうですね。皆さん、負傷者を連れてキャンプに向かいましょう」
フロウの指示で待機していた人たちが動き始める。
イトナ村を出る時に二十人近くいた護衛は半分近くまで減っていた。
それは盗賊側も同じだったらしく、ゲイルたちに襲われた場所に戻ると数十名近くの死者が出ていたことが判明する。
盗賊であっても弔うべきだと、彼らを馬車に乗せて移動する。
途中で待っていたティアーヌと合流すると、フロウのように「馬車から落ちたけど大丈夫なの!?」と心配された。
何ともないと答え安心させ、ようやく馬車は難民キャンプへと到着するのだった。
「着いたぞ坊主。荷を降ろすのを手伝ってくれ」
影山や護衛の人たちと馬車から物資を降ろす手伝いをする。
木箱を両手に抱え運び、ついに俺は難民キャンプを目にした。
「ここが……難民キャンプ……」
そこは森の中にひっそりと存在する集落のような場所。
いくつものテントがあり、どれもが擦り切れたり変色している箇所が見られ、どれだけ長い間使用されているのかが伺える。
キャンプには子供や老人は一切いない。
見かけるのは青年から中年ほどの男女のみだ。
子供や老人はイトナ村に避難しているとフロウが言っていたのを思い出した。
フロウに「こっちに運んで」と指示され後ろをついていく。
運んだ先はキャンプ地を進んだずっと奥。
他のよりも二回り大きいテントだった。
入り口には二人兵士が立っており、重要な場所だと理解する。
「イトナ村のニケロです。食料と武器の納品に来ました」
「お疲れ様です。皆さん中でお待ちですよ」
フロウが挨拶をするとすんなりと通して貰える。
木箱を抱えたままテントに入ると、中は作戦室のようだった。
中央のテーブルに地図が敷かれており、幾つもバツ印が描かれている。
テーブルの周りには何人かの男が囲んでいた。
「ニケロ、イトナ村から食料と装備品を届けに参りました」
「おお、よく来てくれた。いつもご苦労様」
俺たちの来訪に気づいた人が声をかけてくれる。
どうやら会議中だったらしく、他の人もこちらを見向きはするが地図に視線を戻す。
じゃあここに、とフロウに指示された場所に木箱を下ろす。
そのまま踵を返し、次の荷物を運びに……
「クロノス……君?」
名前を呼ばれ足を止める。
声の主は、丸眼鏡を掛けた少しばかり皺が目立つ顔立ちをした男。
苦労が絶えないのか、頬がやや痩け、黒い髪には白髪が見え隠れしている。
「やっぱりその眼……クロノス君、だよね?」
「坂田……さん?」
「やっぱりそうだ!クロノス君じゃないか!!」
ガッと肩を掴まれる。
俺の目の前にいるのはあの坂田だった!
✳︎
「そうか……それは災難だったな」
再会した坂田とキャンプ地の外れに移動し、これまでの経緯を包み隠さず全てを話す。
時の女神ルディヴァのことも含め全てをだ。
「十年前から時代を超えて来た」なんて荒唐無稽な話でも、同じ異世界から転移してきた坂田はすんなりと俺の話を信じてくれた。
「君が死んだとご両親からは聞かされていたんだ。そんな君が私の前に現れ、本当は生きていたのだと喜んだのだが……やはり、私が知っているクロノス・バルメルドは……死んでしまったんだね」
遠い眼をする坂田。
それ程までにこの時間軸の俺と坂田は仲が良かったのだろう。
十年前のクロノスと、六年前に死んだクロノス。
死を迎えるまで、そこには四年の差がある。
その間に俺と坂田の間にも何かがあったのだろう。
「なんか、がっかりさせちゃってすいません」
「君は悪くないよ。君だってクロノス・バルメルドであることには違いない。旧友に出会えたことは素直に喜ばしいことだ。……特にこんな時代ではな」
離れた位置に見えるキャンプ場に眼を細める坂田。
難民キャンプには疲れた顔や暗い顔をした人が多い。
彼らの中には笑顔を浮かべる人物は一人もいない。
「それで、元の時代に帰るアテはあるのかい?」
「今のところは……神様、ギルニウスにでも会えれば解決策が見つかるかもしれないんですけど、この時代に来てからは一度も会ってないんです」
「まぁ、会うのは無理だろうな。私もインスマス事件以来一度もお会いしていない。そもそもギルニウス教自体、今は廃れて信仰している者も少数になってしまった。あの方が今でもかつてと同じ力を持っているのか、そもそも存在しているのかどうかすら怪しい」
廃れた?大陸に広く信徒を持つあのギルニウス教が?
「覚えているだろ?アレの教えは『人族も亜人も皆家族』、悪魔族に加担する亜人種が多い今の時代に、侵略者を家族として受け入れることなんてできるはずがない。廃れても当然だ」
そうか……だから『名も無き村』には教会も何もなかったのか。
イトナ村の大聖堂では崇められていたが、村長のフロウがギルニウス教信者ってのもあるだろう。
俺もここ最近は、日課であった祈りを捧げるのを忘れてしまっている。
もしバレたら「この背教者め!」と言われることだろう。
「今この場にいない方の話しをしてもしょうがない。君のご両親に会いに行こう。違う時代の人間だとしても、君が生きていると知ればきっと喜ぶ」
坂田にジェイクとユリーネの元まで連れて行ってもらえることとなる。
ようやく、この時代の家族に会える。
「ところで坂田さん。セシールさんとベルは?ここにはいないんですか?」
「あぁ、セシールなら……まだ旧ライゼヌス城にいるよ」
「え……それってまさか」
「現魔王城──ベルゼネウス率いる魔王軍の棲家だ」
思いっきり敵のど真ん中じゃないか!?
なんでそんなところにいるんだあの人!?
「もしかして寝返ったとか!?」
「いや、単に脱出できないだけだと思うよ。旧王城が襲撃された時、私を含めた多くの者が城の兵士によって救出された。私も城から逃げた時はてっきり他の者と一緒に彼女は脱出したと思っていたんだが……後になって、彼女が脱出できずに城に取り残されていることを知った」
「助けに行かなかったんですか?」
「もちろん、王城を奪還しようと戦争が始まった時に何度も助けようとはしたさ。でも彼女のいる研究棟はおろか、城内に入ることすら叶わなかった」
「それじゃあ、セシールさんは数年間ずっと魔王軍の群れの中を一人で?」
「魔王軍の様子を伺う偵察隊の話では、研究棟の窓に人影を見たと報告があるしまだ生きてはいるのだとは思う。もっとも、研究のできる場所なら彼女はどこでも構わないだろうけどね」
確かにセシールならば「研究ができるなら魔物のど真ん中でも構わん!」とか言いそう。
研究ができない難民キャンプの方がストレスになりそうだ。
「ティンカーベル王女についても大丈夫だよ。所在までは言えないが、あの方も無事だ」
「魔王に追われてるって聞いてるんですけど、身を隠しているんですか?」
「ああ。優秀な護衛と、彼女だけは絶対に魔王からは見つからない場所にいるから心配はない」
そんな場所がまだこの時代にあるのか。
でもこれでレイリス以外の安否は確認することができた。
実際に会うまでは安心したとは言えないけれど。
「さ、ここだよ」と目的地に着いたのか坂田は足を止める。
連れてこられたのはキャンプを見下ろせる小高い丘の上。
そこからジェイクとユリーネの姿を探す。
人族や鳥人族、獣人族や妖精族と多種多様な人々が集まり生活している密集キャンプ地には数百人程が暮らしていた。
でも、両親の姿はすぐに見つけられる。
身なりは少しばかり悪いが、顔つきはほとんど変わっていない。
紐で縛った薪を一緒に持ち上げているジェイクとユリーネがそこにはいた!
「父さん、母さん!」
二人の姿を見つけすぐさま丘から飛び降りる。
人混みをすり抜け両親の元へと向かうと、こちらの声に気がついてくれたのか振り返る二人の顔が見えた!
どちらも駆け寄る俺の姿を見て、持ち上げた薪を足元に落とし、信じられないといった顔をしている。
そんな二人に飛びつこうと両手を広げる。
「この声、まさか……」
「クロ、ちゃん?」
「良かった!やっと会え
が、俺を迎えてくれたのは抱擁ではなく──鋭い剣先である。
飛びつくよりも早く、ジェイクが腰に差していた剣を左腕で引き抜いて俺に向けていたのだ。
よく見たらジェイクには右腕の下から先が無かった。
「……ふぁ?」
眼前に剣先を向けられ一瞬思考が止まり変な声が出る。
え、なんで俺剣を向けられてるの?
どうしてユリーネは今にも泣きそうな顔しながら顔青くしてるの?
なぜジェイクはそんなに怒りを露わにした表情で俺を睨んでいるの!?
「えーと?」
「化物め!息子の姿をし私たちの前に現れるとは!!なんと恐ろしいことを……この外道が!!」
「ええええええええええ!?」
感動の再会かと思いきや化物認定されてしまった!
俺が「いやいや本物だよ!」と弁明するよりも早く、ジェイクの鋭い一撃が繰り出されるのだった。
三連休だから外出かける人多いですね。
私も三連休したいですわ…
明日もあります連続投稿!
22時公開です!




