第百二十三話 モンロープス
最近最新話公開する以外特に活動してなかったんですけど、また宣伝活動始めてます
ツイッターの方はモンハンのことしか呟いてないですけどね!
盗賊団の頭ゲイル。
彼はクロノスが異世界に転生した際、奴隷として子供を誘拐し売り飛ばそうとしていた人物であり、クロノスが一番最初に戦った敵である。
根城である地下洞窟にて大蛇の魔物に飲み込まれるが、ジェイク率いる騎士団によって救助され、その後王都ライゼヌスの監獄に投獄されることとなる。
しかし、魔王ベルゼネウスが王都襲撃の際混乱に乗じて逃走。
以降生き残った者たちを束ね盗賊団の頭なり、村や難民を襲い食料を奪い生き残っていた。
そして遂に、自分を牢獄へと追いやる原因の一つとなった少年と再び巡り遭う。
そう、それこそがクロノス・バルメルドその人。
「フン、牢にぶち込まれたあの時、てめぇをすぐに殺さなかったことを後悔しなかった日はねぇ。ここであったが百年目ぇ!あの時の借りぃ、返させてもらうぜぇ!」
────────────────
クロノス視点
「──ぁ──ぇ!ぁ──ぃ、──ぅ──ぇ!」
モンロープスに跨るゲイルがこちらに何かを叫んでいる。
が、馬車の走行音のせいで全く聞こえない。
別に俺が聞くつもりがないからとかそんなんじゃなくて、猛回転する馬車の車輪のせいで聞こえづらいのだ。
いや本当、決して聞く耳持たないとかそんなつもりじゃなくて。
「え、今何か言ってました?」
「私には聞こえなかったけど?《土の精よ──》」
どうやらティアーヌにもゲイルの声は聞こえてなかったみたいなので、俺が難聴だったわけではない。
そのまま詠唱に入るティアーヌを横目に俺はゲイルに向かって、
「あのぉ!よく聞こえなかったんで、もう一度大きな声で言ってもらえますぅ!?」
「ここであったが百年目ぇ!!あの時の、って二回も言わすんじゃねぇ!!なんか恥ずかしいだろうが!!」
あぁ良かった。
今度はちゃんと聞こえた。
やっぱり単にゲイルの声量が小さかっただけだったみたい。
「あのクソガキ!今度こそぶっ殺して
「アースフォール!」
ゲイルが喋っている途中でティアーヌの詠唱が終わり土属性の魔法を発動させた。
馬車とゲイルたちの間に地面から巨大な岩山が出現し、進行を隔てる壁となる。
ゲイルたちの姿は見えなくなり、その間に馬車は岩山から離れていく。
「さすがティアーヌさん。詠唱が早い」
「マナの消費を抑える為に土属性を選んだの。これで時間稼ぎが出来ればいいのだけれど」
しかし、いくら魔物のモンロープスに乗っているとは言え、そんな簡単に追いついてきたりは……
「逃がすかぁ!」
と思ったら普通に岩山を飛び越えて追ってきやがった!
岩山の反対側からゲイルの怒声が聞こえたかと思うと、モンロープスが岩山を駆け登り、跳び上がるとまた俺たちを追いかけ地面を走り出す!
意外としつこいな!
「てめぇら、人が喋ってる途中で邪魔しやがって……!もういい!お前ら、全員殺して積荷を奪え!」
『おう!』
ゲイルの号令に同じくモンロープスに搭乗している四人の盗賊たちが頷く。
すると盗賊たちは二手に別れ、モンロープスを操り馬車を左右から挟み討ちにしようと動き出す。
「騎兵!全員で馬車を守って!」
『了解!』
フロウの指示で乗馬し馬車の側面で併走していた兵士たちが、モンロープスを操る盗賊団と交戦を開始する。
しかし残るゲイルは、
「白髪ぁぁぁぁ!!」
「なんでこっちに来るんだよ、あんたは!!」
思いっきり俺だけに狙いを定めている!
なんで真っ直ぐ俺たちの乗る馬車に向かって来るんだ!?
俺、ゲイルに恨まれるようなこと何かしたっけ!?
「バルメルド君、下がって!フレイムブラスト!」
荷台からゲイルに対してティアーヌが杖を突き出す。
先端から火炎風が放たれるが、ゲイルの乗るモンロープスの一つ目がそれを捉え、軽やかなステップで魔法を避けてしまう。
「避けた!?どんな動体視力してるんですかあの魔物!?」
「それより弓を出して!魔法だけじゃすぐにマナ切れになるわ!」
指示に従い、持ってきた荷物から弓と矢筒を取り出す。
まだ動く的に矢を命中させられたことはないけど、言ってる場合じゃない!
「ちょっと待て兄ちゃん!」
弓矢を持った瞬間、馬車を操っていた獣人族の人に止められる。
「そんな弓と矢じゃ当てても意味ないだろ!オモチャのじゃなくて、ちゃんとした品を使いな!」
「え、でもこれ一応、本職からの貰い物……」
俺が持ってる弓矢はニールから貰った物だ。
弓を覚えたいなら持って行けと、ショートボウと、鏃の無い先端が削られ尖った矢だ。
「そいつは練習用のだろう!?戦いじゃ役に立たないぞ!」
「え、そうなんですか!?」
これ実戦じゃ使えない物だったのか!?
本当にただの練習用だったのかよ!
「左の木箱に納品する予定だった弓矢一式が入ってる!そっちを使え!」
獣人族の人に言われ、積まれた木箱の一つを確認すると、確かに弓と矢が放り込まれていた。
しかも矢に関してはちゃんと鏃が付けられている物だ。
俺の持つショートボウよりも、納品される予定の弓の方が素材がいいのか強度がある。
持ち手である弓束を掴み、俺の持ってた矢筒の中身を鏃付きのと入れ替える。
その間にもティアーヌは接近してくるゲイルに魔法を撃ち続けて近づけないようにしているが、どれもモンロープスに軽々と避けられている。
「バルメルド君、まだなの!?」
「待ってください……よし!ティアーヌさん頭下げて!」
矢筒の中身を入れ替え終わると立ち上がり弓を構える。
矢筈を弦に合わせると思い切り弦を引っ張り、照準をモンロープスに乗るゲイルに合わせる。
「チッ、弓が使えるのか、あのガキ!」
「これで、どうだッ!!」
限界まで引き絞った弦から指を放す。
反発で弦に押し出された矢が俺の手元を離れ、風を切りゲイルのいる方向へと直進する。
そして……大きく左に逸れた。
「……あれ?」
左に逸れた矢を見て首を傾げる。
矢はゲイルにもモンロープスにも、刺さるどころか擦りもせずに地面に転がり見えなくなってしまった。
的外れな方向へと消えていく矢を見てゲイルが、
「下手くそ」
小馬鹿にした顔で呟くのがすごい腹立つ!
くそっ、もう一回!
矢筒から矢を取り出し、もう一度矢を射る。
が、またしても矢は目標より大きく左に逸れて見えなくなってしまった。
なんで矢が左に逸れるんだ!?
この弓不良品じゃないの!?
「どうしたどうした!?どこ狙ってんだぁ!?」
俺が弓を外す間にもゲイルはどんどん近づいてくる。
もはや避ける必要がないのだから、真っ直ぐ走ってくる分追いつかれるもの早い。
荷台に追いつかれると、ゲイルの乗っていたモンロープスが右腕を振り上げ、鳴き声を上げながら馬車の後部を殴りつけ破壊した!
『キュル、キュル!』
「白髪ぁ!」
ゲイルの声に反応したのか、半壊した馬車内部にモンロープスの腕が伸びてくる。
体毛で覆われた手が俺の胴体をガッチリと握りしめ拘束されてしまった!
「しまっ……!」
「引きずり降ろせ!」
「うわぁ!?」
ゲイルの命令により、俺を掴んだモンロープスが腕を振り上げ、俺の体を空高く放り投げる!
「バルメルド君!?」
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
馬車から放り出された!?
悲鳴を上げ放物線を描きながら宙を舞う俺の体は、重力に従い地面に落下し始める!!
「か、風よぉ!!」
落下しながら地面に向かって風魔法を発動させる。
強風を発生させ、それがクッション代わりとなり、落下する速度を減速させながら俺は地面に転がり落ちた。
しかし勢いを殺しきれず、叩きつけられるように地面に落ち背中に痛みを覚える。
「くっ……痛っ!?」
痛みに耐えながら顔を上げると、ティアーヌが乗る馬車は遥か遠くへと走り去ってしまっている。
「ティアーヌさん!!」
「バルメル……
馬車が遠ざかるにつれ、ティアーヌの声が小さくなり耳に届かない。
立ち上がり追いかけようとするが、ゲイルがモンロープスを引き返させると俺目掛けて直進してくる!
「やれ、殺せ!」
『キュルキュルキュル!』
突進してくるモンロープスがまたしても腕を振り上げる!
接近してくると振り上げた腕の鉤爪が光り、地面をなぎ払おうとするよりも早く、俺は左側へとギリギリで前転し回避する。
モンロープスの鉤爪により地面が抉れ土埃が舞い、生身で喰らえばどうなるかは想像に難くない。
「冗談じゃない、あんなのまともに正面からやり合えるのか!?」
今俺の持ってる武器は弓だけだ。
荷物は馬車の荷台に置かれたままだから、剣はティアーヌと一緒に走り去ってしまっている。
つまり、俺は戦い慣れていない武器でこの魔物を相手にしなきゃいけないのか!!
状況を再認識すると頭が痛くなってくる。
しかし敵は待ってくれない。
攻撃を避け全速力で走り距離を取り、もう一度弓を構える!
獲物を逃したモンロープスが走り出した!
「さぁ、せいぜいその下手くそな弓で踊って見せろよ!!」
モンロープスを操るゲイルに対し、矢を向け引き絞る。
再びモンロープスの鉤爪が、鈍く輝き振り下ろされた。
最近ブラックラグーンも見終えて、今はゆるキャンとデスマ次郎見てます!
ゆるキャン今期のダークホースですやん……
次回投稿は来週日曜日22時です




