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第百二十二話 眼帯の男

結局今期アニメ、まだポプテと小泉さんしか見てねぇ!


 占いをしてくれた老婆と別れ、イトナ村の村長であるフロウの元へと向かった。

 難民キャンプへと運ぶ物資の選別が済んだらしく、馬車に荷物を載せる作業の途中で俺たちは到着する。


「あら、ようやく来たのねクロくん」

「馬車に運ぶ荷物はあれで全部なのか?」

「ええ。交代で朝食を済ませて、荷が積み終わり次第出発よ。それでクロくんとティアーヌさんには八台ある馬車の四台目に同乗して欲しいの」

「わかった。ティアーヌさんもいいですよね?」

「異論ないわ」

「ありがとう。じゃあ、朝食を済ませたら荷物を持って集合してね」


 フロウの指示に了解し、先にティアーヌと他の兵と一緒に大聖堂で朝食を済ませる。

 荷物を持って馬車に戻ると、既に物資は載せ終わっており、二十人近い見知らぬ兵士が待っていた。

 あんな人たちいたっけ?と首を傾げているとフロウが出迎えてくれる。


「おかえりなさいクロくん」

「フロウ、あの人たちは?」

「難民キャンプの人たちよ。物資を運ぶ時は護衛として村まで来てくれるの。この村の警備を手薄にはできないからね。最近は盗賊も多いし」


 盗賊と聞いて村に運ばれてくる前に遭遇した、あの三人の盗賊のことを思い出す。

 ティアーヌが『チャーム』で幻惑状態にしたとは言ってたが、あれから既に三日経っている。

 あいつらがこの村の近くをまだ彷徨っているのなら、もしかしたら馬車を狙って来るかもしれない。


「なぁフロウ、俺も警護に回った方がいいか?」

「大丈夫よ。六年間眠ってたクロくんと違って、あっちは戦闘のエキスパートなんだから」

「そう……だな」


 そう言われてしまうと反論できない。

 六年眠ってた俺より、ずっとこの世界で生きて戦ってきた人たちの方が場慣れしているのは明らかではある。

 納得して大人しくしているしかないのかと考えていると、


「バルメルド君、ここは専門家に任せましょ?私たちは必要な時に手助けできるように待機しておきましょう」


 ティアーヌに馬車へと促される。

 「それも、そうですね」と頷くと大人しく馬車で待機しておくことにした。

 俺とティアーヌが乗るのは前から四台目の馬車。

 屋根付き馬車の中には木箱がいくつも積まれており、少しスペースは狭いが腰を下ろすことはできた。

 フロウは先頭馬車に乗るらしく、村の護衛役と話しながら歩いていく。


「留守の間をよろしくお願いしますわ。明日には戻ります」

「了解しました。ニケロ村長もお気をつけて」

「じゃあ、出発するわよ!」


 フロウの号令で「おおっ!」と声が上がる。

 馬車が動き出す。

 馬車の周囲を馬に乗馬した十人の兵士が囲う陣形で、村の出入り口から行列が行進を始めるのだった。


✳︎


 イトナ村を出てから一時間程経った頃、まだ俺たちはゼヌス平原を移動している。

 道中は平和そのもので、魔物や盗賊も今の所は現れていない。

 馬車に乗っている間は剣と弓の手入れをしてはいるが、こう何も起きずにただじっと馬車に揺られているというのも暇ではある。

 どれほどで着くのか馬車を操縦している同行者の獣人族の男性に尋ねる。


「なぁおじさん、キャンプまで後どのくらいかかるんですか?」

「そうさなぁ。何事も無ければ夕方ぐらいには着くだろうさ」

「何事もなければ、とは?」

「魔物が出たり、盗賊が現れて足止め喰らわなきゃってことさ。悪魔族以外の種族でも、食糧の為に村を襲ったりする輩は多いんだ。イトナ村の周辺でも最近、盗賊の姿を見かけることが多いから、道中仕掛けてくるかもしれないよ?ははっ」

「ははって、笑い事じゃないですよねそれ」


 軽快に笑う獣人族の男性に不安を感じる。

 一応馬車の周りは乗馬した兵士が十人いるとはいえ、本当に大丈夫なんだろうかこの馬車……

 一人不安を募らせていると、道具の整理をしていたティアーヌがシヤの実を差し出す。


「貴方一人が気を揉んでも仕方ないわ。護衛役の人たちを信じましょう。何も考え無しで行動はしないでしょうから」


 「そう、ですけど……」と答えながらシヤの実を受け取り口に放り込む。

 実を噛み砕くと、口の中に甘い味が広がる。


「その姉ちゃんの言う通りだぜ、兄ちゃん。大丈夫、ちゃんと魔物盗賊両対策はしてあっからよ」


 チラッとこちらに振り返りながら獣人族の男は笑ってみせる。

 安心させようと思っての言動なのだろうけど逆に不安だ。

 夕方には難民キャンプに着く予定らしいので、それまでこの不安を抱えたままいなければならないのか。

 気疲れしちまいそうだな……と、思った矢先、後続の馬車から馬の悲鳴が響く。


「な、なんだ!?」

「馬車の足よ!」


 荷台から身を乗り出すようにティアーヌの示す先に目を向ける。

 俺たちの後ろを付いてきた馬車の車輪が泥濘に沈んでいた。

 だがおかしい、俺たちの搭乗している馬車も同じ道を通ったのに、どうして後ろの馬車だけが泥濘にはまっているんだ!?


「微かだけどマナを感じる……誰かが馬車が通る道に魔法を掛けたんだわ」

「でも一体誰が……」

「おい、東の森から来るぞ!」


 誰かが注意を促す。

 その声につられて東へと目を向けると、森の中からぞろぞろと人影が飛び出してくる!

 もしかして盗賊か!?


「やっぱり来やがった……二人とも何かにしがみついとけ!飛ばずぞ!」

「うぉ!?」


 こちらの返事を待たずに獣人は手綱を振るい馬を走らせる。

 突然揺れた馬車にバランスを崩し、積荷の木箱に背中を打ってしまう。

 先頭を走る馬車に追従し、俺たちが載っている馬車を含め四台と乗馬していた兵士十人が森から現れた盗賊たちの包囲される前に逃げ出す。

 しかし、泥濘にはまって動けない後続の四台は直様盗賊に囲まれてしまう。


「ちょっと、後ろの馬車が付いてこれてない!あのまま見捨てるんですか!?」

「大丈夫、あっちは囮だ!」

「囮……?」


 後続を置いたまま走り出し、馬車を操る獣人に呼びかけると彼は振り返らず答える。

 すると盗賊に取り囲まれた馬車の荷台から、鎧纏い武装した兵士が次々と飛び出し盗賊に襲いかかっている!


「囮って……もしかして後続四台全部!?」

「そうだよ!後続を足止めさせて混乱させるのが奴らの常套手段。だから後ろには兵士しか乗ってない!」


 後続の馬車の中で控えていたらしい兵士たちは、次々と盗賊たちと斬り合いを始めている。

 その間にも俺たちを乗せた馬車は離れて行き、後続の馬車が豆粒程の大きさになっていく。

 遠のいていく盗賊と兵士たちを目にしながらティアーヌは俺に話しかけてくる。


「最初から、こうなることが分かっていてニケロ村長は私たちを四台目に乗せたのね」

「え、何でそんなことを?」

「さっき獣人族の人が言っていたでしょう?あの盗賊は後続の馬車を足止めして、こちらが混乱してから襲ってくるのが常套手段だって。もし私たちの乗る馬車が足止めを受けて前の馬車が列を切り離しても、私たちは兵士が隠れていた馬車と一緒だから安全は確保できるって考えだったのよ。きっと」

「なら、もしこの馬車が足止めを受けなかったら……」

「自分たちと一緒に脱出できるから、どちらに転んでも貴方と私の安全は確保できる。そういう算段だったのでしょうね」


 じゃあフロウは、最初から俺たちの安全の為に自分が乗る場所とは、別の馬車に俺たちを乗せたのか。

 自分たちが狙われるのがわかっていたから……


「フロウのやつ……」

「彼なりの優しさなんでしょう。でも、今回はそれが裏目に出たからもしれないわね」


 ティアーヌがこちらを一切見ずに何かを察する。

 何が裏目に出たのか聞き返すよりも早く、どういう意味なのかを俺は理解した。


「最悪だ……」


 俺たちが走り去った場所、つまり後方から獣のような何かが追いかけてくる。

 獣のようなと比喩したのは、その姿があまりにも異様だったからだ。

 鉤爪の付いた長い前脚、それに対し後ろ脚は短い。

 成人男性よりも一回り大きい全身は茶色い体毛で覆われており、長い前脚を使い酷く猫背な姿勢を支え走っている。

 一番異様だと思えるのはその顔だった。

 大きく開いた口元から涎を撒き散らし、一つの大きな目を忙しなく動き、頭から垂れる大きな耳を振り回しながら追いかけて来るのだ。

 一見猿にも見える『ソレ』は五匹の集団となり凄まじい速度で逃げる俺たちを追いかけてくる!


「な、なんですかあれ!?魔物!?」

「一つ目に大きな耳と茶の体毛……あれはモンロープス!?山にしか生息していない魔物がどうして平地に!?」


 モンロープスと呼ばれる魔物を見てティアーヌが困惑している。

 どうやらあの魔物が平地にいるのは異常らしい。

 どんどん近づいてくる五匹のモンロープス。

 だが更に異常なことに、猫背であるその背には誰かが跨っている。

 一匹だけにではない、五匹全てにだ。


「あれ、誰か乗ってませんか?」


 目を細めながら迫るモンロープスの群れを注視する。

 やっぱり誰かが背に乗っている。

 全員スキンヘッドで肩パッドを装着し、革の鎧を身に着けた五人組だ。

 先頭を走るモンロープスに跨っている人族の男だけ、右眼に眼帯をつけて……あれ?

 あの男の風貌、すごい見覚えがあるような?

 先頭のモンロープスに載っていたスキンヘッドの男と目が合い、男は手綱を放すと腕を組み高笑いする。


「ガァーハッハッハッ!俺たちの裏をかき、後続の馬車を囮に使ったのは褒めてやろう!だがしかし、俺たちゲイル盗賊団から逃げられると思うな……よ……?」


 盗賊の頭らしい眼帯の男はゲイルと──ゲイル?

 

「「あーっ!?あん時の!?」」


 向こうも俺を思い出したらしく、俺を指差し驚いている。

 そうだよ思い出した!

 あいつは俺がこの世界に転生した時に俺やレイリス、大勢の子供を奴隷として売り飛ばそうとした盗賊団の頭!

 眼帯ハゲのゲイルだ!

ゆゆゆ2期まで全部見終えたんですけど、思ってた以上にどハマりしてたみたいで、最終回観終わってからすごい虚無感を覚えました……こりゃBD揃えるしかねぇ!

今はブラックラグーン観てます。レヴィ素敵カッコイイ


次回投稿は来週日曜日22時です!

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