第百八話 衝突(クロノス編)
最近どう森のアプリが配信されましたね!
早速インストして知り合いとやってたんですが、いつの間にかトーマスのアプリゲーやってました。
「きゃああああ!!魔物!魔物よぉぉぉぉ!!」
弓の練習中にトリアが現れ、少女を家まで送り届けようとした矢先、村に悲鳴が響き渡る。
早朝ということもあり、悲鳴を聞きつけ家屋から住人たちが飛び出してくる。
俺も悲鳴を聞きつけトリアを連れて悲鳴の元へ急ぐと、村の中心部に腰が抜けたのか地面に尻餅を付いている女性の姿を見つける。
顔面蒼白で尻餅をついている女性の前には、薄青い鱗に覆われ、翼の腕を持つ蜥蜴の魔物が地面に倒れ呻いている。
体躯はあまり大きくなく、成人男性程だろう。
「なんだあの魔物……初めて見るぞ」
初見の魔物に動揺する。
だけどあの翼と蜥蜴の風貌、絵本や図鑑で見た翼竜のワイバーンと呼ばれている魔物かもしれない。
俺も挿絵で見たぐらいで実物を間近で目にするのは初めてだ。
でも一体どこからやってきたのだろう?
翼竜は空を飛ぶ魔物、認識阻害の魔法で保護されているこの村を見つけて飛び込んできた訳ではないだろう。
ワイバーンの前で腰を抜かしていた女性は他の村人に支えられながら立ち上がると興奮気味にワイバーンを指差す。
「そ、空から!空から降ってきたのよ!も、も、もういきなり目の前で!目の前に!」
なるほど、女性の話からしてワイバーンは空を飛んでいる時に何らかの理由で墜落した。
だから地面に倒れて呻き続けているのか。
「お兄ちゃん……」
隣でトリアが不安そうに俺の服の袖を掴む。
ワイバーンに恐怖を抱いている。
当然だろう。
この子を長くここに留めておくのは危険かもしれない。
「トリアちゃん。ここは危ないから、君はお家に帰ってお母さんにこの事を知らせてきて。もし何かあったら、他の大人の人に助けを求めるんだよ。いいね?」
トリアは大きく頷くと自分の家へと走り出す。
俺はどうするべきかと、呻くワイバーンを前に困惑し続ける村人たちを目にし考えていた。
俺はワイバーンの生態については図鑑で齧った程度の知識しか持ち合わせていない。
たぶんあのワイバーンはまだ幼体だろうが力は大人よりも強いはずだ。
暴れ出す前に何か手を打たないと被害が出る。
「バルメルド君!何があったの!?」
騒ぎを聞きつけティアーヌが現れる。
騒ぎの中心であるワイバーンを見るとティアーヌの表情が険しくなる。
「どうしてここにワイバーンの幼体が」
「空から落ちてきたらしいです。それで今、村の人たちが始末するかどうか話し合っているみたいで……ティアーヌさん?」
説明を終えるよりも先にティアーヌが話し合う村人たちの輪に向かって行く。
一体どうするつもりなんだ?
「お話し合いところすみません。あのワイバーンをどうするおつもりですか?」
「ん?あぁ、旅の人か。どうするって、あんなに弱ってんだ。さっさと始末しちまおうってことになってるが」
「それは駄目!あのワイバーンはまだ幼体です!きっと親が落ちた子供を探しているはず。下手に傷付けて親を呼ばれたら、この村に親竜が飛んで来るわ!」
親竜が飛んで来ると聞き村人たちがどよめき始める。
成体のワイバーンともなるとその大きさは計り知れないだろう。
ましてやこの村は戦争が嫌い戦火から逃れてきた人たちの集まり。
対峙した時にまともに戦える人間は殆どいないはずだ。
そんな状態で親竜のワイバーンが来たら壊滅は免れないだろう。
「な、なら、どうしろってんだ?」
「あの幼竜を外に運びます。荷車はありませんか?」
「あ、あるぞ!持ってくる!」
「幼竜を刺激しないよう、なるべく離れて。鳴き声を出さないようにさせたいので、何か食べ物を持ってきて与えて下さい」
「口を縛った方が早いんじゃないか?」
「その間に鳴かれたらどうしようもありません。上等なものでなくても構いません。とりあえず咀嚼さえさせれば親竜を呼ばれることはないので」
「なら、食料庫から適当なのを持ってくる!」
ティアーヌの指示で村人たちが慌ただしく動き回る。
旅慣れしているとはいえ、さすがに非常時の魔物に対する処理の仕方を熟知している。
俺一人だったら間違いなくワイバーンに止めを刺していただろう。
「バルメルド君!」
「あっ、はい!」
「ワイバーンを荷車で外に運ぶのは私たちでやるわよ。村からなるべく離れた場所に運んで、私たちはそのまま『イトナ村』を目指すわ」
「わっかりました!急いで荷物まとめて来ます!」
敬礼をし回れ右をすると仮屋へと走り出す。
荷物をまとめると言ってもそこまで時間がかかることはない。
剣と弓矢は既に装備してるし透明マントも羽織っている。
元々の荷物は皮袋一つだけだ。
ティアーヌの荷物は最初に出会った頃見せてくれた何でもしまえる魔法の革袋一つだけなので羨ましい。
あのなんでも入る革袋俺も欲しいなぁ。
などと羨ましがっていると、
「──ッ!」「────ッ!」
「ん?なんの声だ?」
泊まった部屋から荷物を持ち出そうとしていると屋外から声が届いてくる。
その声は怒号に近く、何やら言い争っている様子。
皮袋を背負い外に出るとワイバーンの前で言い争いしている二つの集団が見えた。
一つはティアーヌが先頭に立っているグループ、もう一つは斧や剣などの武器を手にしているグループ。
なんだか穏やかな雰囲気ではない。
さっさと戻って早くワイバーンを外に運びだした方が……
「構うな!殺せぇぇぇぇ!!」
武器を持ったグループから怒声の指示が響き、一同が武器を掲げ賛同の雄叫びがあがる!
武器を手にしたグループがティアーヌ率いるグループに突撃し始めた!
「は!?なんで!?」
グループ同士の衝突!?
俺が離れてる間に何が起きたんだ!?
村人同士で乱闘が始まる。
武器を持つ者を止めようとする者、邪魔する者に武器を振るい威嚇する者、両者が意見を主張しながら争っているがこのままだと死人が出かねない。
乱闘を止める為に俺は走り出す。
揉み合いをしていた二人の間に割って入ろうとすると、非武装の男が押し倒され、手斧を持った男が相手の上に馬乗りになる。
「貴様らは悪魔族の手先だな!?死ねぇぇぇぇ!」
「ひぃぃぃぃ!!」
意味の分からないことを言いながら、手斧を振り上げ殺意を吐き出し相手を殺そうとしている!
「待て!やめろ!」
手斧が振り下ろされるすんで相手の腕を掴む!
腕を掴まれた相手は振り返ると鬼の形相で俺を睨んできた。
「何やってんだよあんたら!?」
「お前もあの女の味方か!?魔物を見逃すのか!?」
「いやホント何言ってんの!?」
もしかしてこの人たちはティアーヌの指示に反対する側なのだろうか?
でもだからって、こんな武器まで持ち出して乱闘する程か!?
掴んでいた手を振りほどかれ、今度は俺に対して手斧が振り上げられる。
「魔王の手先めぇ!」
「んな訳あるか!」
振り下ろされる手斧を右に避け、腰のベルトに固定した剣を鞘に収めたまま取り外し相手の脇腹に叩きつける。
相手は腹部に受けた痛みに耐え兼ね手斧を手放し地面に崩れ落ちた。
相手を無力化したのを確認すると俺は押し倒された男性を助け起こす。
「あ、ありがとう。助かったよ」
「いえ、それよりも何が
「うわああああ!!」
状況を聞くよりも先に近くで悲鳴が聞こえる。
今度は何かと視線を移すと、農作業用の刃が三つの備中鍬を振り回す別の男を見つける。
切りつけられたのか数人が腕や足から血を流していた、
「あぁもう!どうしてこんなことに!!」
悪態をつき、鞘から剣を引き抜くと鍬を振り回す男に駆け寄る。
かなり興奮しているらしく目が血走っていた。
「おいあんた!こっちだこっち!」
「ッ!うらああああ!」
俺を見るなり相手が鍬を振り回してくる!
話す余地も無しかよ!
振られた鍬を剣で弾き返す。
鍬の重さに引っ張られ、相手の体が大きく傾いた。
その瞬間を見逃さず、俺は右足で相手を足払いし地面に転ばした。
「今だ!抑えろ!」
転んだのを合図に非武装の大人たちが鍬を持った相手に一斉に飛びかかり取り押えるのだった。
数人がかりに飛び乗られ相手はすぐ拘束される。
それを見て俺は鍬で切りつけられた人たちに声をかけた。
「大丈夫ですか!?」
「あ、あぁ、擦り傷だ」
「一体何がどうなってるんですか!?」
「暴れているのは、ワイバーンの幼体を始末しようと考えている者たちだ」
「どうしてそんな、村の外に運ぶって話だったのに。……ティアーヌさん、ティアーヌさんはどこに!?」
「か、彼女は──」
傷ついている男性からティアーヌの居場所を聞こうとした瞬間、
『ギュイイイイイイイイイイ!!』
甲高い悲鳴の様な鳴き声が響き渡る。
あまりの声に誰もが耳を塞ぎ動きを止める。
悲鳴のおかげで全員争うのを止める。
しかし、
「……おい、なんか聞こえないか?」
誰が呟く。
その言葉に誰もが、もちろん俺も耳に意識を集中させる。
確かに何かの音がどこか遠くから聞こえ始めた。
何か大きな者が風を切る音が……
その音が空から聞こえてくるものだと理解した瞬間、巨大な何かの影に俺たちは覆われた。
ずっと前にrt企画で他の方の作品を読ませていただいているのですが、応募作品数多くてまだ消化しきれてないです……話数多いと読み終わるの時間かかっちゃって、
でも面白いから全部読むんですけどね!
次回投稿は12月2日土曜日です!
月初だし今年最後の月ですから、なるべく投稿回数増やすつもりです!
だって、冬休みですからね!
僕も仕事休みなんてないですけど!




