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第百六話 少女トリア

アマプラ加入してるんで、昔の名作映画とかドラマいろいろ見てるんですけど、やっぱり人気高いものは本当に面白いですよねぇ

今は息抜きにDr.Xと仁見てます


 助けた少女トリアを送り届ける為、名前の無い村に立ち寄った俺たち。

 ティアーヌは別行動でトリアの家へ。

 俺は村の村長に案内され村長宅へと来ていた。

 村長に現在の村の外の状況を知りうる限り話す。

 もっとも、ほとんどがティアーヌから聞いた話しなのだが。


「そうですか……あなたの故郷も。御家族が無事だといいですね……」

「ええ、そう願ってます。村長さんたちは何故こんな森の奥に?」

「我々は戦火を逃れ、安全な地を求めて彷徨っていた。元は難民です。その時偶然にもこの地を見つけ、護衛をして頂いていた魔法使い殿に『認識阻害』の結界魔法を張っていただき、この地に腰を下ろしたのです」


 その日々を思い出しながら、村長は遠い目をし語る。


「あの頃はただただ生き延びるのに精一杯でした。魔物や野盗に襲われ、親しい友人が次々といなくなっていく。我々には安全な土地が必要、そんな時に見つけたのがこの地なのです。森の奥にあり魔物も住んでいる。しかし森にさえ入らなければ襲われることもなく、『認識阻害』のおかげで魔物がこの村に立ち入ることも無い。まさにここは天国のような場所です」

「でも、ここもいつまで安全か分かりません。突然魔物が襲ってくることだってあるかも……」

「それは大丈夫でしょう。五年近くこの地に住んでいますが、未だに魔物が村に侵入してきたことはありません。戦争が終わるまでの間、我々はここを離れるつもりはありませんよ。例え……人類が敗北しても」


 どうやら住人たちにはここを離れる意思はないようだ。

 戦争だって、いつ終わるのかすら分からないのに。


「もしよろしければ、あなた方もこの村に住んではいかがですか?同じ人族同士、歓迎いたします」

「申し訳ありませんが遠慮いたします。家族の無事を確認したいので」

「そうですか。それは残念です」

「ところで、どうしてそこまで亜人種を拒否するんですか?さっき、亜人種は敵だって言ってましたけど……」


 この村には人族しか住んでいない。

 村を案内されていた時、村に亜人種が一人もいないことに気づいて質問した際に村長はそう答えた。

 そこには亜人種に対する憎悪とも受け取れる感情が込められており、身を震わせてた。

 一体何がそこまで村長を駆り立てるのだろうか。


「私にも戦争が始まる前、亜人種の友人がいました。その者たちとは親しく、戦争が始まった時に一緒に戦争から遠ざかる為に逃げたのです。ですが──奴らは私たちを裏切った!!」


 突然村長がテーブルに拳を叩きつける。

 衝撃でカップが倒れてシヤの実のジュースが床に溢れる。


「共に逃げていた際、我々は魔王軍に襲われた!その時奴らは、魔王軍に寝がり私たちを襲ってきたのです!それまで友人だと思っていた者が、突然牙を剥いて人を殺し始めた!」

 

 村長は血走った目で俺を見つめ声を荒げる。

 亜人種に対する確かな憎しみを膨張させ憤怒している。


「奴らは敵です!友人などでも、隣人などでもない!我々人族の敵なのです!」


 人族の敵、村長は何度も繰り返して亜人種は敵だと叫ぶ。

 この人の中ではもう、亜人種は侵略者にしか見えないのかもしれない。

 村長だけじゃない、きっとこの村に住んでいる人たちも……

 興奮しすぎて肩で息をする村長。

 一呼吸置くと興奮が静まったのか、元の温厚な口調に戻る。


「申し訳ない。少し感情的になりすぎました」

「いえ……」


 あまりこの村には長居しない方がいいかもしれないと、村長の態度を見て少し危機感を覚える。

 俺は人族だから危害を加えたりはしないだろうけど、亜人種の友人がいるのが村中に知れたら何をされるか分からない。


「それじゃあ、飲み物ご馳走様でした。俺たちはすぐに出発しますので」

「あぁお待ちになってください!もうすぐ夜が来る。そうすれば森の中は魔物で溢れかえり、二人だけでは危険ですよ!」


 村長の言葉で家の外を確認すると、もう日が沈んだのか外は火の明かりがないと見えない程までに暗くなっていた。

 この時代はいつも空は暗雲に覆われているせいで時間の感覚が狂ってしまう。


「もし今夜この村にお泊りになるのなら、空き家を一軒お貸しいたします。トリアを救っていただいた御礼です」

「わかり、ました。ありがとうございます」


 ありがたい村長の申し出に渋々御礼を言う。

 本当はすぐにでもこの村を出たいのだが、村長の言うように夜の森の中で魔物に襲われたらひとたまりもないので今日は止めておいた方が良さそうだ。

 ここにティアーヌがいたとしても同じように止めるだろう。

 俺は空き家の場所を聞くと村長宅を後にし、ティアーヌが向かったトリアという少女の家へと赴くこととした。

 村長宅を離れ村の中を歩く。

 外はもう暗いので村のあちこちに松明の火が灯され闇を照らしている。

 トリアの家は村の西側にあり、家に近づくと中からトリアとティアーヌの声が聞こえてきた。


「そうなんだぁ、色んなところを旅しててお姉ちゃんってすごいね!」

「いいことばかりじゃないわよ。大変なことだってあるんだから」


 何やら話しに花が咲いているようだ。

 玄関ドアをノックし中に入ると、簡素な室内で床に座るティアーヌとトリア。


「お邪魔しまーす」

「あ、お兄ちゃん!」


 ドアを開けるとトリアに歓迎される。

 床に座っている二人の前にはベットに横たわる女性の姿。

 おそらく横たわっている女性がトリアの母親だろう。

 彼女は気怠そうな顔で俺を見つめる。


「お母さん、このお兄ちゃんも私を助けてくれた人なんだよ」

「そうでしたか……トリアを助けていただいて本当にありがとうございます」

「いいんですよ。放ってはおけませんでしたから」


 首を振って答えるとティアーヌに目配せをする。

 外で話したいという意図が伝わり、ティアーヌと俺は家を出て少し離れた場所に移動する。

 俺はティアーヌに村長との話し合いで聞いたこと全てを話す。

 この村に人族しかいない理由、そして亜人種に裏切られたこと、村長が亜人種に対して極度の憎悪を抱いていることを。


「そんな経緯があったのね。だから亜人種を敵と」

「俺、エルフ族とアラウネ族に友人がいるんですけど──これってもし村長たちにバレたら……」

「確実に魔王軍の密偵と思われるでしょうね。その後どうなるかなんて、容易に想像ができるわ」


 俺も想像できてしまうのが怖い。

 きっと囲んで棒で叩かれてしまうだろう。

 冗談はさて置き、どっちみちこの村に留まるのはあまり得策ではない。


「今日はもう暗いですし、明日すぐに出発しませんか?」

「そうね。私もあまり、この村には長居したくないわ」


 意見が一致し明日目覚めと共に出発することが決定する。

 寝泊まりは空き家を貸してくれるらしいので、久々に屋根のある場所で眠れるので見張りをする必要がないから少し嬉しい。


「それじゃあ、今夜はもう寝るとしましょ

「お兄ちゃんたち村に泊まるの!?」


 明日の出発を考え就寝を提案しようとすると家の窓から身を乗り出すトリアの姿が。

 トリアは俺たちが村に泊まると聞いて目を輝かせている。


「じゃあじゃあ!外のお話し聞かせて!私村から出たことないから、お兄ちゃんたちのお話しもっと聞きたいの!」


 すごい目を輝かせてお願いされる。

 いや、でも明日も早いし、あまり夜更かしは……


「あら、私はこの子に外の話しをしてあげたわよ。バルメルド君もお話ししてあげればいいじゃない?」

「ええ!?なんでちょっと楽しそうなんですかティアーヌさん!?」

「こういう時間は大事よ。たまには息抜きしないと、長旅では堪えるわよ」


 耳元で囁かれ抵抗心が弱くなる。

 つまりトリアの話しをして息抜きをしろというのだ。


「ねぇねぇ、お話し聞かせてよ!早く早く!」

「ほらバルメルド君。諦めて相手してあげなさい」

「本当はティアーヌさん、もうトリアちゃんの相手したくないから俺に押し付けてるだけでしょう!?そんなんでしょう!?」

「なんのことか分からないわね!」


 背中をぐいぐい押されトリアの家に押し込まれる。

 その日はトリアが眠りに落ちるまで村の外の話しをすることとなる。

 エルフの集落を出てから久方ぶりに過ごす、穏やかな時間だった。

今週は連続投稿日なので明日も22時に投稿されます!

ストック溜まりすぎたから連続投稿するってことだったんですけど、2週分のストック使ったはずなのにまた2週分のストックが増えている不思議

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