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第百五話 名も無き村

前回のオッドアイズ・リ:ライフ!三つの出来事!


一つ、

エルフの集落を出たクロノスとティアーヌは難民キャンプに近い『イトナ村』へと向かうことにする!


二つ、

その途中で口裂け狼に襲われている少女を助け、少女が住む村まで送り届けることに!


そして三つ、

少女を村まで向かう途中、クロノスはティアーヌの旅の目的が、魔王を倒す『勇者』を探すことであるのを知るのであった!


 森で助けた少女に連れられ、少女の住む村まで辿り着く。

 村の規模は小さく、木で家もしっかりと造られた物ではなく、かろうじて家の形をしていると呼べるほどの造りだった。

 森を抜けて村に近づくと住人の大人たちが現れ少女の元に駆け寄ってくる。


「トリア!」「おい、トリアが帰ってきたぞ!」


 大人たちは一目散にトリアと呼ばれた少女を囲み、怪我をしていないか確認している。


「大丈夫かトリア!?どこも怪我していないか!?」

「大丈夫だよ。それよりほら、お薬になるお花いっぱい摘んできたの!」

「駄目じゃないか!一人で勝手に出て行ったら!皆がどれだけ心配したと……!」


 トリアを叱ろうと一人が声を荒げると、「まぁまぁ」と痩せこけた老人が止めに入る。


「無事に帰ってきたのならいいじゃろう」

「しかし村長……!」

「トリアや。どこも怪我しとらんか?」

「うん。このお兄ちゃんとお姉ちゃんが助けてくれたの」


 トリアが後ろで控えていた俺とティアーヌに目で示すと大人たちも同じように俺たちに注目する。

 この村の村長と思われる老人は一度頷くとトリアに話しかけた。


「じゃあ、私たちはこのお兄さんたちを案内しておくから、トリアはお母さんの所に戻りなさい。ずっと心配しておったよ」

「うん!お兄ちゃん、お姉ちゃん、またね!」

 

 トリアは笑顔を見せて両手に花を抱え走り去っていく。

 その後を数人の大人が付き添い、残った村長たちは俺たちに頭を下げた。


「あの子を救ってくれてありがとう。心より感謝いたします」

「いえ、助けれられて良かったです」

「トリアの母親は病気でして、症状を抑えるのに必要な薬を調合する為の素材が不足していたのです。その話しを聞いて、あの子自身居ても立っても居られなくなったのでしょう」


 だから一人で森の中にいたのか、母親の為とは言え無茶な子だ。


「見たところ、お二方は商人……には見えませんが」


 村長が俺たちの風貌と背負っている口裂け狼の死骸で判断する。


「私はこの村で村長をしております。ここで立ち話も何です。どうぞ、私の家においで下さい」


 歩きだす村長たちに従って村歩く。

 村自体の面積は広くはなく、乱雑に建てられた家が密集して村となっているようだ。

 出入り口は先ほど俺たちが通った場所のみで、周りは柵で囲われている。

 出入り口の反対側は背の高い崖となっおり、村を出る時は正面からのみのようだ。

 でも住人の数は多いのか、村の広場と思われる空間では子供たちがはしゃぎ回っていた。


「子供も大人も、随分といるのね」

「ええ。家の配置と形は変ですけど」


 ティアーヌと村中を見回して素直な感想を口にする。

 それを聞いた村長は大きく笑う。


「ハッハッハッ、可笑しな村でしょう?家を建てると決めたはいいが、建築の技術と知識を持った者がいなくての。見様見真似で建てたところ、このように不自然な並びになってしまったのです」

 

 だから変な形した家があるのか。

 ある意味芸術だな。


「ここは、魔王との戦争で親を亡くした子や戦争から逃れた者たちで作った村。故に名前はありませぬ」

「でも、こんな場所だと魔物に襲われたりはしないのかしら?」

「ここに村を作ると決めた時、護衛をしてくれていた魔法使い殿がいての。その方が認識阻害と魔除けの陣を仕込んでおいたと言っておりました。原理はよく分かりませぬが、そのおかげで我々は今日まで安全に暮らしております」

「その魔法使いは、まだこの村に?」

「いえ、村を作ると同時にいずこかへと去ってしまいました」


 魔法使いのワードにティアーヌさんが反応し尋ねるが、その答えに少し肩を落とした。

 もしかしたらその人は、ティアーヌの知り合いだったのかもしれない。


「以来我々は、戦争が終わるのをじっとこの森の奥深くで待っております。不便な事も多いですが、幸い食料は森で採れますからな」


 確かに、これだけ森が近ければ木の実などはよく採れそうだ。

 でも森に棲む魔物の脅威もあるだろうし、安全が約束されているという訳でもないだろう。

 しかしこの村、さっきからすれ違ったり見かけたりするのは人族ばかりだ。

 亜人種を一人たりとも見かけない。


「あの、村長さん。この村には人族しかいないんですか?」

「ええ、ここには人族しか住んでおりません。亜人種は……敵ですから」


 村長の声色が一瞬変わり背筋が凍る。

 その一言には明らかな敵意が含まれていた。

 まるで亜人種そのものに憎悪を抱いているかのようだ。

 今までの温厚な雰囲気を全く感じなられない。


「さぁ、着きましたよ。どうぞ上がって下さい」


 振り返った村長は柔らかな笑みを浮かべいた。

 先程感じた敵意も今は無く、温厚な村長に戻っており、俺たちはいつの間にか村長の家に着いていた。

 村長の家は他の家よりかは大きいは大きいが、やはり村長の家も設計ミスなのか微妙に屋根が傾いている。

 村長が扉を開け「どうぞお入りください」と招いてくれる。

 のだが──、


「私は、遠慮させていただきます」


 ティアーヌがそれを拒んだ。

 彼女は俺の半歩後ろへ下がると頭をさげる。


「せっかく御招き頂いたのにもかかわらず申し訳ありません」

「……そうですか。どこか具合でも?」

「いえ、先程のトリアという女の子のことが気になるのです」

「そうですか。では、まずはトリアの様子を見に行き、お話はその後にでも」

「いえ、お話は彼が聞きます」


 そう言ってティアーヌは俺の方を見る。

 あぁ、つまり俺一人で話しを聞けってことかええええ!?

 無理無理無理、俺まだこの世界の情勢を把握しきれていないのに話し相手になれだなんて無茶ですけど!?


「私は彼に連れられて旅をしているので、話しをするのなら彼の方が適切です」


 いやいやいや、俺が貴女に連れられて旅をしているんですが!?

 適切なのは俺じゃなくてティアーヌさんでしょどう考えても!?

 俺の返答を待たずに話しを進めるティアーヌに口を挟もうと


「バルメルド君、お願い……!」


 村長から隠れるかのように、俺の前に立ちまるで懇願するかのように頼んでくる。

 その姿に俺は開きかけた口を静かに閉じ、村長に向き直る。


「そういうことなので、彼女だけ女の子の家に行かせても大丈夫ですか?」

「えぇ、構いませんよ。トリアの家は村の西側にあります。案内が必要ならば

「大丈夫です。他の方に頼みます」


 村長の提案を遮りティアーヌはその場を去ろうとする。

 去り際に小声で「ごめんなさい。ありがとね」と囁く。

 残された俺はそんなに村長と話すのが嫌だったのだろうか、などと思いながらその背を見送る。

 「ではどうぞこちらへ」と村長に促され、俺は一人で話し合いに望むことになる。

 村長宅は外観の造りは酷かったが、中は普通の間取りの家だった。

 天井の傾き具合が凄まじいけど……


「では、剣と弓はそちらにどうぞ」

「え?」


 家に入るなり玄関横に武器を置くように示される。

 もしかして、体良く武装解除を促されている?


「話し合いにその様な危険な物は必要ないでしょう」


 村長はそう言って武器を置くようまた促す。

 無言の圧力を受け、仕方なく俺は剣と弓矢を指示された場所に置く。


「あぁ、マントもそちらにどうぞ」


 マントも脱がせるのかよ!

 俺大丈夫かな?!

 このまま身包み全部剥がれたりしないかな?!

 透明マントを脱いで武器と一緒に置くことにする。

 もしかしてティアーヌはこうなるのを予想してて来なかったんだろうか?

 いやまさか……そんな訳ない、よな?

 武器とマントを手放すとようやくテーブルに案内される。

 木のコップに飲み物を注ぎ村長は差し出す。


「シヤの実のジュースです。どうぞ」

「……どうも」

「自己紹介がまだでしたね。私は村長のアニシと申します」

「俺はクロノス・バルメルド。連れの女性は──」


 ティアーヌの名前を言おうとして一瞬固まる。

 あの人の名前を素直に教えていいのだろうか?

 村長との話し合いに参加するのを嫌っていたのは、ただの気まぐれなどではないだろう。

 でも本当にただの気まぐれとかかもしれないけど……ここは適当に誤魔化せばいいか。


「連れの女性は、ティさんです」

「ティさんですか。もしや、あの方は魔女では?」

「いえ、あの格好は単なるオシャレです」


 ごめんなさいティアーヌさん!

 オシャレではないだろうけど、ここは誤魔化しておいた方が良さそうなんだ!

 

「そうでしたか!」


 俺の答えに村長は少し安堵の表情を見せる。

 なんだろう、魔女に何か良い思い出でもないんだろうか。


「あぁ、すみません。ではバルメルドさん。あなたが知る外の世界の情勢を知っている範囲で教えていただけませんか?」

「……わかりました」


 シヤのジュースを飲みながら俺は外の状況を少しずつ話し始めるのだった。

今仮面ライダーオーズを見返してるんですけど、あらすじ良いなぁって思って、前回辺りから前書きに、本編の三つの出来事をあらすじとして書くことにしました!

まぁ試験的にですので、その内また世間話に変わるかもしれないですけど、あった方がいい!って言われたらこれからも前書きにあらすじ書くようにします。


そろそろストックが増えすぎてきたんで、来週は土日投稿しようと思います。

次回は土曜日22時です!

よろしくお願いします!

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