第百二話 魔女の秘密
今更ながら話数を漢数字じゃなくて英数字に直そうかと思ってます。
100話近くになると結構見づらいことに気づきました。
PVが8万超えました!いつも読んでいただけて感謝感激です!
ティアーヌ視点
「長老様、こちらをお返しします。ありがとうございました」
エルフの長老を訪ね、私は昨夜お借りした『魔封じの芳香』を返却する。
『魔封じの芳香』は匂いを嗅いだ者のマナを抑制して魔法の効力を打ち消す物だ。
とても貴重な物で現物を見たのは私も初めてだったけど、その効力は噂通りだったのを身をもって実感する。
「芳香は役に立ったか?」
「お陰様で……お手間を取らせることにならずに安堵しております」
「ふむ……ならば、これはまだお主が持っておくといい」
長老の言葉に私は驚く。
こんな高価な物を受け取ることはできない。
「ですがこれは……」
「ワシが持っていても宝の持ち腐れじゃ。ワシよりもお主が持っておく方が重宝するじゃろう。あの小僧と旅を共にするのならば、尚更な」
私は何も言えず長老を見る。
この方は全て私のことを見通した上で言っているのだ。
「どうして、この集落の皆さんは初対面の私にそこまで……」
「お主の為ではない。あの小僧の為じゃ。小僧この集落に住んでいる者と昔から接点が多くてな。エルフではないが、家族と同じように接している者もおる。ワシは思っておらんがな」
フン!と長老は鼻を鳴らす。
この仕草の時は照れ隠しか誤魔化そうとしいる癖だとバルメルド君から聞いていた。
「すぐにここを立つのか?」
「はい。魔物の動きが緩慢な内にこの集落を出ようと思います。バルメルド君を難民キャンプまで連れて行く為にまずはヨモリ村を目指そうかと」
「ならば必要な物があれば持って行くがいい。ヨモリ村まで長旅になるだろうしの」
「長老様、ありがとうございます」
「フン!途中で何かあって死なれては目覚めが悪いからな!」
また鼻を鳴らして長老は棚の引き出しを開けると、皮袋を取り出し私に差し出す。
「『魔封じの芳香』の予備の材料が入っとる。いつまでも引き出しに入っとるのも邪魔じゃからお主が持っていけ」
「何から何まで、ありがとうございます。このご恩は忘れません」
「いい。忘れてしまえ」
私はクスッと笑うと有難く皮袋を受け取る。
後はバルメルド君と必要な物を揃えるだけだ。
長老との話が終わると四回ドアノックが聞こえバルメルド君が現れた。
「おはようございます。ここにティアーヌさんがいるって聞いたんですけど」
「おはようバルメルド君。荷物をまとめて、出発するわよ」
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クロノス視点
ティアーヌに荷をまとめるように言われ旅支度を整える。
と言っても、持っていたのは剣一本だけなのですぐに済む。
集落の入り口まで行くとニールを含めた二人のエルフが待っていた。
ニールから水や食料を詰めた皮革のリュックを受け取る。
「すいません。食料まで貰っちゃって」
「いいよ。何も持たせずに君を送り出したら、後でレイリスに怒られてしまうからね」
ニールと二人小さく笑う。
必要な物を揃えるように指示したのは長老らしい。
見送りに長老は来ていないが今度来た時はお礼を言っておこう。
「クロノス君。ついでにこれも持って行くといい」
そう言ってニールは弓と矢筒を俺に手渡す。
弓と矢筒は新品のようで傷一つない。
「いいんですか?こんなものまで頂いて?」
「構わないよ。それは元々、レイリスに持たせるはずだった物なんだ。でも本人がいないんじゃ埃被っちゃうからね。君が使っても誰も文句言わないよ」
「ありがとうございます」
「けれども、君はまだ魔物相手に弓を使えるほど上手くはないんだから、ちゃんと毎日練習はするんだよ?」
「わかってますって」
渡された矢筒と弓をリュックと一緒に背負う。
端から見たらきっと熟練の冒険者っぽく見えるだろうけど、俺が弓を扱える技量に至るのはまだ先だろうから、馬子にも衣装だろうな。
「バルメルド君、準備はいいかしら?」
「はい。いつでも行けます」
「村の外に出るまでは俺ともう一人で付き添うよ。蜘蛛たちが動き出す前に抜けるようにしよう」
ニールともう一人のエルフ青年が「任せてくれ」と弓を見せる。
何とも頼りになる護衛だ。
四人でなら蜘蛛の魔物に襲われても対処しきれるだろう。
「あ、それなら、村を出る前にちょっと寄り道してもいいですか?」
人数に余裕があるのならと、俺は手を挙げる。
もう一つ欲しい物があるのだ。
✳︎
エルフの集落を出た俺たちは蜘蛛に気づかれないように旧ニケロース領村を移動する。
昨日の夜に襲ってきたバッドアイは夜行性らしく、立ち並ぶ木を止まり木として身体を逆さにして寝ていた。
大きな音を出して起こさないように注意し、向かったのは旧バルメルド家である。
どうしてもここに一度寄りたかったのだ。
「バルメルド君、ここはもう……」
「すみません。すぐ済みますから」
別にセンチメンタルな気分になりに来た訳ではない。
ティアーヌに謝るとかつての自室に向かい衣装棚を開ける。
別に昔着てた服を取りに来たとかそんなんじゃないぞ?
だいたい今の俺は青年の姿まで成長しているんだから、少年時代の服なんね着れるはずがない。
俺が欲しかったのは少年時代の服ではなくて、
「良かった!まだあった!」
衣装棚の奥に隠すように終われた木箱を引っ張り出す。
部屋がそのままだったからこれも動かしてないだろうと思ってたけど、見つかってよかった。
俺が引っ張り出した木箱を見てニールが覗き込んでくる。
「何だいこれ?君のオモチャ箱?」
「違いますよ。宝箱です」
木箱の蓋を開けると中にはぬいぐるみやどんぐりが入っている。
「この木箱の中は、全部レイリスとフロウから貰った物が入っているんです。だから俺の宝箱」
「それで、バルメルド君はわざわざ子供の頃の宝物を取りに来たの?」
「どうしても必要なのがありまして」
宝箱の中身を掻き分け、底に敷かれた布を引きずり出して広げて見せる。
広げたのは白い無地で、人一人ぐらいならば簡単に包める程の大きさだ。
そう、これは以前王都に行った際に神様に貰った透明マントである。
使わない時は宝箱の底に敷いてしまっていたんだ。
俺が広げた白い布を見てニールたちは「あっ……」と呟く。
「気づきましたか?そう、実はこの布は!」
「クロノス君、それ穴空いてるよ」
「そうッ!このマントは……嘘っ!?穴!?」
マントに穴が空いてるってどこに!?
慌てて広げた透明マントを確認すると、マントのあちこちに丸い大小様々な穴が空いている!
「虫食いね」
「虫食いですね」
「そんなぁ〜!直せるのかこれ?」
穴からティアーヌたちを覗き落胆する。
これって他の布を縫い足せば直るのか?
いやでも、透明マントってぐらいだから普通の布だけ足しても、足した部分たけ透明にならない可能性も……
「用事が済んだのなら早く出ましょ。また昨日みたいに魔物に追いかけられるのは避けたいの」
「あっハイ。もう大丈夫です」
透明マントを回収したらもう用はない。
木箱を衣装棚に戻して屋敷を後にする。
まだ動きの鈍い蜘蛛の群れを避ける為、大きく村の外を迂回しながらゼヌス平原へと出た。
ここまで来ればもう蜘蛛もバッドアイも追っては来ない。
「それじゃあニール兄さん。お世話になりました」
「道中気をつけて。もしレイリスに会えたら、たまには帰ってこいって伝えておいてくれるかい?」
「わかりました。必ず伝えます」
「もちろん。君たちもいつでも立ち寄っていいから」
ニールと握手を交わし頷く。
護衛に来てくれたもう一人のエルフとも握手して別れを惜しむ。
「ティアーヌさんもお元気で、クロノス君のことよろしくお願いします」
「ええ。長老様によろしくと伝えておいて」
手を振りながら旧ニケロース領から離れる。
まだ時刻は早朝、だと言うのに空は曇り空で太陽は見えない。
しかし平原には魔物の姿もあまりなく、移動するにはまさに打ってつけの時間だった。
「ティアーヌさん。これからどこに向かうんですか?」
「まずは北東を目指しましょう。目的地は『イトナ村』よ」
彼女が杖で示す方角には聳え立つ山々が見える。
その方角に向かって俺たち進むのだった。
秋アニメ始まりましたね!
私はまだドクターXのドラマしか見てなくて何も見てないです!
アイカツスターズだけは見てますけど
双葉アリアちゃん可愛い
次回投稿は来週22時を予定してます!




