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第一〇〇話 死んだはずの男(挿絵あり)

やったよぉぉぉぉ!ついに100話目投稿ですよぉぉぉぉ!

部数的にはもう102話なんですけど、無事に100話まで行けて嬉しいです!

いつも読んで下さっている読者の皆様に感謝感激です!

感無量だよ!


 旧ニケロース領村で魔物に追い回された俺とティアーヌは、村近くに存続していたエルフの集落へと逃げ込んだ。

 そこで出会ったのは、レイリスの兄・ニールだった。


「まずは長老の所に案内するよ。着いてきて」


 ニールに連れられ見慣れた集落を進む。

 だけど十年前の集落とは違う箇所をいくつか発見した。

 まず弓矢の訓練所なのか、あちこちに的が設置されている。

 今は夜だから練習をしている者はいないが、皆念入りに自分の弓を手入れしている。

 長老の家に着くまでの間、エルフ以外の人が珍しいのか観察するように住人たちにチラチラ見られていた。

 長老宅に着くと「ちょっと待ってて」とニールだけが家に入る。

 数分待った後中に案内されると、木造のテーブルを前に椅子に座ったエルフの長老の姿があった。

 シワだらけで気難しい顔は十年前と変わらないな。


「お久しぶりです長老様。クロノス・バルメルドです」


 長老に挨拶をすると、何故か睨まれて頭からつま先まで隈なく観察される。

 もしかしておじいちゃん、俺が誰か忘れてしまったのだろうか?

 いつまでも俺を睨む長老に「あの〜……」と声をかけると、あのいつもの鼻を鳴らす動作。


「フン!足があるから幽霊という訳ではなさそうだな」

「相変わらず元気そうでなりよりですよ。長老様」


 やっぱり十年経っても長老様は長老様だ。

 エルフは長寿で見た目も変わらないとは聞いていたけど、中身も同じだとやっぱり安心する。

 俺が生きてる人間だとわかると、今度はティアーヌに目を向ける。


「して、そこの娘は誰じゃ」

「初めましてエルフの長老様。私は魔女ティアーヌと申します」

「魔女ティアーヌ?」

 

 ティアーヌが名乗ると長老の元々険しい顔にシワが寄ることで更に険しくなる。

 彼女に何か心当たりでもあるのか、長老は俺とティアーヌを交互に見る。


「二人はアレか?恋仲なのか?」

「え?」

「長老様何言ってんの!?」


 このおじいちゃんどうしたの!?

 なんで俺とティアーヌが恋人だと思ったんだ!?

 それとも端から見たら俺たちそんな風に見えるの!?


「違いますよ長老様!?恋人じゃありませんよ!?」

「そうか違うのか……ならば小僧、お前この魔女の奴隷になったのか?」

「飛躍しスギィ!!」


 やっぱ十年経ってボケたんじゃないのかおじいちゃん!?

 ほらぁ、変なこと言うからティアーヌさんが凄く困った顔してるじゃん!!

 どう対応したらいいのか分からないくて顔しかめてるじゃん!!


「俺はティアーヌさんの恋人でも奴隷でもありません!この人は俺の命の恩人なんですよ!」

「命の恩人?それで何故一緒にいる?」

「実はですね……少し事情がありまして」


 俺は二人にこれまでの経緯を話す。

 目覚めたら棺桶の中にいたこと、魔王ベルゼネウスに襲われたことと、村が滅んだのを確認する為に戻ってきたこと全てを。

 もちろん俺が十年前から来たかもしれない話しと女神ルディヴァのことは伏せておく。

 まだ俺が本当に十年前から飛ばされたのか確証がないからだ。


「ふむ……事情はわかった。しかし小僧、お前の話だと、小僧が死んだとワシらが聞いてから六年近く棺桶で眠っていたことになる。何故今更目覚めたのだ?」

「いや、そんなこと聞かれても……」


 なんで俺が今この時代にいるのかなんて俺が知りたい。

 飛ばしたであろう張本人の女神ルディヴァはギルニウスのように俺の前に姿を全く見せない。

 この時代に来てからルディヴァと会ったのは、魔王ベルゼネウスに襲われて意識を失った時だけだ。

 あれから一度も現れていない。

 それ以前に、俺はこの時代だと死んだことになってるのか。

 棺桶から出てきた時や屋敷の自室のベッドに剣が置かれているのを見てそんな予感はしていたが。


「俺……その時のことをよく知らないんですけど、どうして俺は死んだんですか?」

「俺もその場にいた訳じゃない。君が死んだと言う話しはレイリスとフロウちゃんから聞いたんだ」


 ニールがレイとフロウから聞いたってことは、あの二人は俺の死に際に居合わせていたのか。


「その日、君の誘いでレイリスとフロウちゃんは王都ライゼヌスに遊びに行っていたんだ。でもその道中で魔物の群れに襲われて、君は二人を庇って命を落としたと聞いてる」


 二人を庇って……確かに俺ならやりそうだ。

 でも王都に向かっていたってことは、ジェイクやユリーネ、他にも王都に向かう馬車の護衛も同行していたはすだ。

 それでもなおレイリスとフロウに危険が及んだのならば、とてつもなく凶悪な魔物に襲われたのかもしれない。


「じゃあ、俺を棺桶に入れて埋葬したのって……」

「いや、違うと思うよ。ジェイクさんたちは生き残りだけを連れて村に引き返して来たんだ。亡くなった人たちをその場に残してしまったとかなり悔いていたよ。その後村の騎士団を連れてジェイクさんは遺体の回収に向かったけど、その時にはもう遺体はなかったそうだ。だから魔物に喰われたんじゃないかって思ってたらしいけど」


 どういうことだ?

 ニールの話しじゃ、俺の死に際に立合ったのはレイリスとフロウたちだけど、俺を棺桶に入れたのは別の人物ってことになる。

 しかし一体誰が……?


「あの、少しいいかしら?」


 今まで話しを聞いているだけだったティアーヌが手を挙げた。


「バルメルド君が埋葬されていた棺桶に何か特殊な魔法が施されていた可能性があるわ。例えば入った者に治癒を施す効果とか、死そのものをなかったことにする禁術とか……」

「なんでそんな物を俺に」

「そこまでは仕掛けた本人じゃないから分からないわ。バルメルド君に特別な思い入れがあったか、はたまた別の意図があったのか……どっちにしても、今考えても分からないことだわ」


 俺に思い入れ……と言われてると、真っ先に思い浮かぶのは神様のギルニウスだ。

 ルディヴァが言っていた、神様が俺を特別扱いしていると──それには理由があると。

 もしあの言葉が本当なら……いや、何を考えているんだ。

 あの女神の言葉をそのまま鵜呑みにはできない。


「どちらにしても、バルメルド君を埋葬した人が何者なのかは気にしなくてもいいと思うわ。埋葬された本人はこうして生きているのだし。家族や友人が聞いたら、きっと喜ぶわ」


 ティアーヌの言う通りだ。

 レイリスやフロウ、それにジェイクたちも俺が死んで魔物に喰われたと思っているはずだ。

 俺が生きてると知れば──


「あの、ところで俺の家族は?村は魔物の棲家になっていたけど、まさか……」

「村の人たちなら、今は難民キャンプにいるはずだよ。君のご両親もそこに移住しているはずだよ」

「ワシらは住み慣れたこの土地を守る義務がある。故に彼らには同行しなかった」


 その言葉に俺はようやく安堵する。

 そうか、村を離れて別の場所にいるのか。

 難民キャンプなら、やっぱりティアーヌと旅をして途中で寄れば会えるはず。

 フロウのことも、旅をしながら捜せばきっと……


「そういえばニール兄さん。レイリスはどこにいるんだ?」


 今まで気にしてなかったけど、長老の家に長い時間居るがレイが一向に現れない。

 俺が来たって聞いたら、すぐにでもスッ飛んで来そうなのに。

 しかしニールは視線を落とし、質問に答えない。


「レイリスは……」

「あの子は今、行方が知れぬ」

 「……え?」


 ニールに変わって村長が答えてくれる。

 だがそれは耳を疑う返答だった。

 レイが、行方不明?


「ちょっ、ちょっと待ってください!フロウもレイリスも行方不明って、一体どういうことなんですか!?」

「領主の息子か。あれは村の者が離れる前に行方不明となったな。ニールの妹が姿を消したのもそのすぐ後だった。ある日忽然と姿を消したのだ」

「姿を消したって、なんで……」

「それはワシにもニールにも分からん。だがな、いつの間にか姿を消していたのだ。何故誰にも告げず集落を出たのか、何が目的なのかは誰も知らんのだ」


 目を伏せる長老とニールに俺の頭は困惑する。

 レイが誰にも告げずに集落を出るだなんて信じられない。

 一体俺が死んだ時代で、レイとフロウに何があったって言うんだ。

挿絵(By みてみん)

Mary Sueテストって診断テストがツイッターで回ってきたんですが、その診断、小説の主人公にどれだけ自己陶酔が反映されているのかを確認する為の診断テストらしいんですよ。

ちなみに僕は18点で自己陶酔度最低ランクでした。

興味のある方は是非やってみてはいかがでしょうか?

設問内容結構面白かったですよ。


次回投稿は来週の日曜22時になります!

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