誰やねん!
更新が遅くなりました……すみません!
「片瀬、後は任せていいか?」
後片付けまで首を突っ込むと確実に明後日の船に乗れない、当事者ではあるが、この国の問題はこの国で解決してもらおう。
「任せて下さい。亀田頼めるか?」
亀田は「うん」と短い返事を残し階段を駆け上る。
「あいつはどこに行ったんだ?」
「カタルシア様に早馬を出しに詰所にいきました。俺達は特別な権限を持っている訳ではないので」
「そうか」
一旦片瀬との話を切り、未だに起きないレウィの傍へと近づき拘束具を力任せに引きちぎる。
「おい、レウィ。起きろ、終わったぞ」
レウィを起こすため肩を揺すると、その反動で女性らしい柔らかい二つの膨らみが……。断じて邪な感情を持っているわけではないが、自然と俺の視線はレウィの胸元へ向かうのだがこれではあっかーん! と思い必死に視線を反らしながらレウィを揺する俺の手は段々荒々しくなる。
「あっ、さ、くた、さん。おき、ま、したから」
「ちょっと、咲太! レウィ、起きてるから! 揺らしすぎだから!」
「えっ?」とレウィの方を見ると高速に揺らされているレウィがそこにいた。
「あ、ごめん!」
俺は慌ててレウィから手を離すと、ワタルの叱咤が飛ぶ。
「君は何をしているんだい! 君の馬鹿力でそんなに揺らしたら……あぁ~」
「うげぇぇ……」
レウィは真っ青な顔をして、 顔を反らし床に向かってキラキラしたものを吐いていた。
「はぁ~君というやつは……」
呆れた様子のワタルはレウィに近づき、状態異常回復魔法『リフレッシュ』を掛けて上げると、楽になったのかレウィの顔は段々と赤みを帯び始める。
「ありがとうございます、凄く楽になりました」
「大丈夫か? ごめんなレウィ!」
「うふふ。大丈夫ですよ。こちらこそすみません、私はいつの間にか眠っていたようですね」 とレウィは笑みをこぼしながら、寝かされていた無機質なベッドから起き上がり、地面に足をついて天井に向けて背伸びをする。これは、説教もなにもなくなったな。
「さて、そろそろ出ようか? 夜も遅いし早く宿に戻って休もう」
「そうだな。レウィ、行けるか?」
「はい!」
俺達が地下室の扉をくぐると同時に「んじゃ~こりゃ~!?」と背後から聞いた事のない甲高い叫び声が響き渡る。
一瞬で振り向き戦闘態勢になる俺とワタルは声のする方へと目を向けると、俺に殴り飛ばされたガレイスが気絶している。
そこには人が一人がスッポリ入るくらいの木箱がが置いてあり、ガレイスがぶつかった事でボロボロに壊れていた。
「このいかにも悪そうなおっさんは誰? なんでミーはこんな所に?」
声の主はボロボロに壊された木箱の中から、ひょこっと顔を出してキョロキョロと辺りを確認する。
そして、「よいっしょ」とガレイスを押しのけ立ち上がり俺達の前に近づいてくる。
「あ、どうも。ミーは猫耳族のララ。見ての通り商人を生業としている美少女だ!」
右手を挙げて勝手に自己紹介を始めたララという少女。
決して高くない上背、左右長さバラバラなクリーム色のやや癖のある髪の上にはチョコンと猫の様な耳がピンと立っている。目尻がつりあがった金色の瞳がキツさを感じないのは、彼女が終始人懐っこい笑顔を向けているからだろう。
首元が少し開いた白いブラウスの上には、ブラウンベージュの皮のベストとおそらくセットであろう皮のミニスカートを着こなしており、足元はウエスタンブーツ。
全然商人には見えないのだが……。
「おや~ノリが悪いね~」
「お前は誰だ? 何でここに居る?」
俺は未だに警戒を解かず、含み笑いをしている少女に問いかける。
「さっき自己紹介をしたはずだよ~ミーはララ。ここになぜ居るのかは……」
「いるのかは……?」
「良くわからん!」
盛大にずっこけてしまった
「分からんってなんだよ!」
「本当に分からないんだもん! えっと、商談が上手くいって、部下達と宴会をして、ミーがいると部下達が楽しめないと思って先に一人で宿にもど――あっ! そうだ、宿に戻る道中に二人組の男達に捕まって布みたいのを鼻に当てられたら急に眠くなって! 気づいたら今ここだよ!」
「つまり、お前は攫われてここにいるという事か」
見たところこいつも魔族な訳で、ガレイスのコレクションの一つにしようとしていたのだろう。
クソ野郎、どっちが人攫いだよ! うん? ララがほっぺを膨らませて不機嫌そうな顔で俺を見ている。
「なんだよ?」
「お前って何よ! ちゃんと自己紹介したよね? ミーの名前はララ!」
「あぁ、ごめん。俺は咲太だ。とりあえず、ここにずっといるのもあれだから場所を移そう」
「そうだね! 丸一日何も口にしてないからお腹がペコペコだよ!」
ララは大袈裟にお腹をさする。
「よし! 片瀬悪いけど先にいくな! 俺達の宿はさっき伝えた通りだから何かあったらそこに来てくれ」
「はい、分かりました。ただ、その人は残してもらえないでしょうか?」
まぁ、言ってみれば重要参考人みたいなものだしな……できれば色々聞きたいよな。
「って言ってるど?」
「勘弁してよ~さっき話した通りだし、部下達に早く身の安全を伝えないといけないし!」
ララの話が本当ならば、こいつは被害者であり部下達もこいつの事を心配して市中を駆け回っているかもしれない。う~~~~~~~~~ん。あっそうだ!
「ワタル、指輪もう一回だけ使っていいか?」
「ふふふ、どうぞ。君の好きな様にすればいいよ」
俺は【尋問の指輪】をワタルから再び受け取る。
指輪に嵌め込められた水色の宝石は後五つ、つまり後五回真実を聞き取る事が出来る。
俺は、指輪を右手の人差し指に嵌め、その指をララに向ける。
「ララ、お前は商人であり、攫われてこの場所にいる。間違いないか?」
指輪にはめ込まれた宝石が一つ砕ける
室内の全員の視線がララに集まる。
「そう言ってるじゃん! しつこいぞぉ?」
どうやら白らしい。
「片瀬、こいつは大丈夫だ。ただの被害者だ」
「分かりました。その指輪の効果は先程確認済みですので、彼女は服部さん達に任せます」
「あぁ。じゃあ、今度は本当に行くな!」
「はい、お疲れ様でした!」
俺達は軽く挨拶を交わし、ガレイスの屋敷を後にした。
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