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【本編完結済】帰ってきた元奴隷の男  作者: いろじすた
第7章 保護する男

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ベルガンディ聖国の勇者達 ②

「ようこそ、異世界からの客人よ。妾は、カタルシア・ベルガンディ。このベルガンディ聖国の女王だ」

 

 自分の背丈を優に超す背もたれが特徴な豪華な玉座に腰かけたベルガンディ聖国の女王である、カタルシア・ベルガンディは、異世界から召喚した5人の少年達と対峙している。


「異世界? どういう事ですか?」

 

 未だに状況が呑み込めていない五人を代表して、長身のイケメンである片瀬右京がカタルシアに問い掛ける。


「貴様っ、不敬だぞ! いつ質問を許した!」


 今にでも襲い掛かって来そうな騎士に怯む事無く、右京は真っ直ぐタルシアを見据える。


「やめんか!」とカタルシアか騎士を制すと、騎士は「申し訳ございません」と頭を下げ自分の立ち位置に戻る。


「すまぬ、貴殿らは今置かれている状況にさぞ混乱していると思われる。一つ一つ掻い摘んで説明しよう」


 カタルシアの言葉に右京は目線を反らさず頷く。


「今から一年程前に我が国はオルフェン王国という国と戦争があった。いや、戦争というよりは一方的な侵略と言った方が正しいだろう」


 カタルシアの表情が見る見る強張っていく。


「オルフェン王国の軍勢一万五千に対して、我が軍はその倍の三万。更にオルフェン王国は我が国よりも国力が乏しかった。だから、皆我が国の勝利を疑わなかった……奴らが現れる前まではッ」


 カタルシアはギリッと歯を食いしばる。


「……奴らとは?」

「オルフェン王国軍 第四部隊所属戦闘奴隷—―」


 その名を口にした瞬間、その場にいた右京達を除く者達は悲痛な表情を浮かべる。


「戦闘奴隷?」

「そうだ。我が軍は、たった二十五人の戦闘奴隷によって全滅させられた! 三万の兵をたったの二十五人でッ!」


 カタルシアは、タン!と玉座のひじ掛けを拳で叩く。


「――ッ!?」

「すまぬ、取り乱してしまった」

「いえ……それで、その戦闘奴隷と俺達に何の関係が?」

「奴らは貴殿らと同じ世界から召喚された者達なのだ」

「えっ?」

 

 同じ世界から召喚されたという言葉に右京達は驚愕する。

 

「貴殿らにこの世界に来てもらったのは、戦闘奴隷から我が国を護ってもらうためだ」

「そんな! 俺達は戦争なんか経験した事のない学生なんですよ!?」

「ふざけんな! 俺達は何も関係ねぇだろ! 元の世界に帰せ!」


 右京に続いて今まで、黙っていた金髪ツンツン頭の少年が声を荒げる。

 少年の名前は、丸山豪。校内でも素行が悪い事で有名な、所謂不良だ。その丸山の言葉に騎士達が動き出そうとするのだが、それをカタルシアが制す。


 そして、カタルシアは玉座から立ち上がり、少年達に向けて深く頭を下げる。

 その様子にカタルシアに従う者達がざわざわと騒ぎ出す。


「その少年の言う通り、貴殿らには何の関係もない事だ。民を守りたいという妾のわがままで貴殿らを呼び出してしまった。そして、呼び出した貴殿らを元の世界に戻す術も今は持ち合わせておらぬ……」

「カタルシア様、それは言わない約束ですじゃ!」


 白いローブの老人が主に向けて声を荒げる。


「そんな……戻れないなんて……」

「うそだろ……?」


 カタルシアの言葉に右京達は真っ青な顔になり言葉を失う。


「婆や、妾は彼らに嘘は付きとうない。だが、約束しよう! 必ず貴殿らが元の世界に戻れる方法を見つけると!」

「女王様、それなら俺達はどうすればいいんですか? お伝えした通り、俺達は戦争に出るような戦闘力はありません」

「おい! お前受けいれるっていうのか!」


 丸山は右京の肩を引っ張り自分の方へと向かせる。


「しょうがないだろ! 帰る術がないなら俺達はそれが見つかるまでこの世界から抜け出す事はできないんだ! それならこっちで生き残る為にどうするかだろ!」

「うっ……」


 右京の勢いに丸山は怯み、右京の肩を掴んでいたその手を離す。


「失礼いたしました」

「気にするな、そこの少年言っている事に間違いはないからな」

「では、女王様。元の世界に戻れないのは一先ずおいて、俺達の今後の扱いはどうなるのでしょうか? こうして話をしている時点で敵国と同様、奴隷ってわけじゃないですよね?」


 奴隷として扱うのなら、そのまま拘束してしまえばいいだけの話。


「ふふふ、中々聡いな。そうだ、貴殿らを奴隷扱いする気は妾には毛頭ない。我が国を救うために来てもらった貴殿らは勇者といって良いだろう!」

「勇者きたーーっ!」とビン底メガネの小柄な少年が右手を頭上へと突き出す。


 少年の名前は、亀田太一。二次元大好きな存在感の薄いオタク少年だ。

 全員の視線が亀田に向いた事で、亀田は羞恥心からか顔を真っ赤にして小さくなる。


「ごほん、すみませんでした。俺達の扱いにつきましては理解しました。一番気になる事ですが、戦闘経験のない俺達がどの様にして彼ら、オルフェン王国の戦闘奴隷からこの国を守れるのでしょうか?」


 戦争……それは命のやり取り。平和な日本で生まれ育ったただの学生である右京達には想像もつかない。


「そこは問題ない。異世界からの来た者達は鍛えれば鍛える程この世界の人間の常識では考えられない程の力を得るという。オルフェン王国の戦闘奴隷も同じく数ヶ月の訓練を経て一騎当千の力を得ておる。それに奴らだけではない、過去に召喚された者達は皆同様だったと聞いておる」


「つまり俺達が訓練をすれば、オルフェン王国の戦闘奴隷と同等の力を得る事ができるという事ですね」


 右京の言葉にカタルシアは頷く。


「少し、彼らと話をさせていただけませんか?」

「うむ。好きにするが良い」


 右京は「みんな集まってもらえるか?」と他のメンバーに呼びかける。


「現状、俺達があっちの世界に戻る方法はない。女王様は、俺達が戻れる方法を見つけると言ってはいるけど、それを期待するにはリスクが大きすぎる」


 丸山としては右京が気に食わないが、右京のリーダーとしての判断力については一目置いているため、眉間に皺を寄せながらただ黙って皆と同じ様に耳を傾けている。


「戦争に出る、出ないはともかく、俺達は力をつける必要がある。すぐに俺達に切りかかろうとしている騎士を見る限り、この世界では人の命が軽いと考えた方が良いだろう。にわかに信じがたいが、俺達が訓練次第で常人では想像のつかない程の強さを得る事が出来るのなら、まずは力をつけるべきだと思う」


「俺は、それで構わねぇ。別に奴隷扱いされるってわけでもねぇし、強くなれるなら文句はねぇ」


 右京の提案に丸山が鋭い犬歯を見せながら口角を上げる。


「私はうっちゃんに任せるよぉ。うっちゃんが今まで間違った事言ったことないしぃ」と返すのは右京の幼馴染である柚木奈々。


「ぐふふ、まさにクラス転生物のテンプレですな! 僕も賛成です……早く魔法が使いたいですな!」


 ビン底メガネの亀田は興奮気味に鼻を膨らませる。


「何なのよこれぇ~訳わからないし勝手にすれば?」と気怠そうな反応を見せてるのは、すらっとしたモデル体型の菊池加恋だ。


 反応は様々だが、自分の提案を飲んでくれた事に口が綻ぶ右京は、カタルシアに向き直り、「俺達はこの国の勇者になります」とハッキリした物言いでカタルシアに進言した。



 ――右京達がこの世界に来てから半年


「ついにこの日がきたか……」


 右京は薄暗い天幕の中でこの世界に来てからの事を思い出す。

 これから右京達は対オルフェン王国用に結成された連合軍の一員としてオルフェン王国の戦闘奴隷と対峙する。


「だけど、マジで俺達強くなったよな? これならあの戦闘奴隷共も余裕だろ? あいつら三人しか残ってないんだよな? その三人の事【殺戮者】って呼んでるらしいぜ?」と丸山は鋭い犬歯を見せながらほくそ笑む。


「だけどぉ、その人達も元はといえば同じ私達と同じ世界の人達なんだよねぇ? なんかやだなぁ」と丸山とは正反対に表情が芳しくない奈々に向けて、菊池加恋は歯に衣着せぬ物言いで「あんたまだそんな事言ってるの? 奴らが今まで何万人殺したと思ってるの? 奴らが居なかったら、私達もこの世界に来る事はなかったのよ?」


 戦の前だからなのか興奮している菊池の横で「はぁ~結局魔法は使えず……」と亀田が深いため息をこぼす。


 右京達は、この半年でベルガンディ聖国最大の戦力となった。

 他国が第二の【殺戮者】になるのではないかと警戒するくらいほどに。

 それもあって、【殺戮者】と同じ世界から来た右京達に対する他国軍の風当たりは強い。

 

 そんな事を考えながら、その時を待つ五人の前に一人の兵士が大慌てでやって来る。

 

「勇者様方、伝令に参りました!」

「どうしました? そんなに慌てて」

「【殺戮者】が投降しました! それによってオルフェン王国が全面降伏!」

「なっ!」


 その知らせは、右京達の戦の終わりを告げるものだった。


 ――それから数日後


 右京達はとある街へ訪れていた。

 その街の広場でこれから【殺戮者】の処刑されるという。

 自分達がこの世界に来る原因となった【殺戮者】、もといオルフェン王国の戦闘奴隷を一目見るため、右京達は国へ帰還せず寄り道をしていた。


 右京達は処刑台の正面にある建物のバルコニーからその様子を眺めていた。


 そして、時間になり処刑執行人に連れらた彼らに、右京達は思わず息を呑む。

 痩せ細った身体に、生気の抜けたカサカサの顔。

 

 ベルガンディ聖国で自分達はVIP待遇を受けている。

 もし、自分達がオルフェン王国に召喚されていたら……と思うとゾッとする。

 

 そして、次々と首を落とされる【殺戮者】達。


「何なのよあいつら……あんなの恨みも言えないじゃない!」


 菊池の言うとおり、彼らが処刑される様子を素直に喜ぶ事は出来なかった。


「行こう……もう見てられない……」


 そう言って右京が踵を返したその時――。


「おいおい、何だよあれ!」

「あれって、あの時の!」


 丸山達の声に、右京の身体は再び処刑台に向く。


「あぁ……あの時の……」


 処刑執行寸前の【殺戮者】の最後の一人の前に自分達をこの世界に引き込んだあの黒い禍々しい渦が現れていた!


 そして、次の瞬間、【殺戮者】の最後の一人は渦の中に引っ張られる様に吸い込まれ、オーディエンスが呆気に取られている間に渦はその場から消えてなくなった。


 ――それからしばらくして


「すまない……みんな」


 カタルシアは、右京達に申し訳なさそうな顔を向ける。


「そんな顔しないでください、俺達にも悪い話でもないですし」

 

 右京達は、魔大陸に赴く事になった。


 右京達が第二の【殺戮者】になりかねないと警戒していた他国の首脳陣達が取って付けた様な理屈を押し付け、右京達は魔王退治へと赴く事になった。


 だが、それはあくまでも表向きであって、実際はこの世界で一番魔法に長けている魔王に元の世界に戻れる方法を聞くためだ。

 

 それに世界最強と言われる魔王に挑んで負けたと言っても誰も文句は言わないだろう。


 そして、魔大陸に赴くための船に乗るために右京達はハーヴェストに訪れていた。


「えっ? 誘拐ですか?」


 右京達の宿にこの地の領主である、ガレイス・レッドタイド子爵が尋ねてきた。


「はいっ。友人から身寄りのない娘を預かる予定でしたが、この街に向かう途中攫われてしまって……」

「それはゆるせねぇな!」と丸山が指をポキポキと鳴らしながら息巻く。

「相手はDランク冒険者と言うのですが、中々腕が立つようでして……勇者様方が我が街へいらしたのも神様のお導き……どうかお力添えを!」

「おい、片瀬。もちろんやるよな?」

「あぁ。それで人攫いの人相などは?」


 ガレイスは破顔しながら「おい!」と付き人を呼ぶと、付き人はA3サイズの紙を右京達に手渡す。

 そこには、二人の男の似顔絵と情報が書いていった。


「へぇ~こっちは結構美少年じゃん? ワタル? 日本人みたいな名前だね」と菊池がひょいっと顔を出して割り込む。

「こっちは、サクタか……本当に日本人みたいな名前だ。彼らはこちらに向かっているんですよね?」


 一通り情報を確認した、右京はガレイスに確認する。


「はい、明日には到着するかと。門番に知らせているので、奴らがこの街に到着したら勇者様方へ連絡をする様に言っております」

「Dランク冒険者の雑魚が、俺達がこの街にいた事が運の尽きだな!」と丸山は今度は両手の拳をガツガツとぶつける。


「では、勇者様方よろしくお願いいたします。ぐふふ」


 ガレイスは揉み手をしながらその場を後にした。

 

「明日には、我輩の元へ新たなコレクションが――ぐふふ」と口にしたのは誰の耳にも届かない……。

いつも読んでいただき、ありがとうございます!


次話「衝突」は、4.15(水)23時に更新します。


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