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【本編完結済】帰ってきた元奴隷の男  作者: いろじすた
第6章 戻ってきた男 

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永遠に枯れることのない想い②

「ふぅ~満腹だ~」


 お腹を擦りながら俺はドンとベッドに腰掛ける。

 あの後、追加の丸鳥を殆ど俺一人でペロッと平らげたところで宴会はお開きになった。丸鳥を一人で平らげる姿にカイテル達は驚き、ワタルは呆れていたのだが……俺は悪くない、旨い丸鳥がいけないんだ!


 食事の後、カイテル達の紹介でこの『赤虎亭』に泊まる事にした。カイテル達は今賃貸に住んでいるのだが、駆け出しの頃はこの赤虎亭で世話になっていたと言う。


 赤虎亭の主人は、元Aランクハンターで『赤い虎』と言う二つ名持ちらしいのだが、先程受付で会った時はそんな風には全然見えなかったので、カイテルにその事を聞いたときは驚いた。


 満腹感に幸せを感じつつ、そのままベッドに横になろうとしたその時、コンコンと俺の部屋をノックする音が耳に入る。


 「はい」と答えながら、ドアの方へと向かおうとすると「やぁ、僕だよ。少しいいかな?」とドア越しにワタルの声が聞こえてくる。


 余談だが、俺とワタルの部屋は別々だ。

 別にお金を節約しなくてはいけないと言う事もないからな。無くなったらまた魔石で稼げばいい。


 男同士で同じ部屋を使うには、俺とワタルは十分大人と言えるだろう。

 

 ドアを開けると、そこには先程と変わらない格好をしているワタルが立っていた。

 俺が軽く頷くと、ワタルは「お邪魔します」と若干他人行儀で、俺の部屋に足を踏み入れた。

 俺達は備え付けの二人かけの椅子に腰をおろす。


「どこから話せばいいかね……僕とシエラは……」


 ワタルはシエラさんの事、カルロスの事を簡略に説明してくれた。

 シエラさんはワタルと共に宮廷魔導士になったのだが、ワタルと結婚する為に寿退役をしたらしい。俺達との戦争の後に結婚式を挙げる予定だったとか……「なんか、すまねぇな……」とすべての原因のと言える一騎討ちを仕掛けた俺は、申し訳なく思ってしまった。


「咲太がそんなに謝る必要はないよ? 確かにシエラと一緒になれなかったのは心残りだけど、君との戦いは本当に楽しかったから……ただ、僕が気にしてるの相手がカルロスという事なのさ。彼には遺物で呪いをかけてるし、何よりシエラは彼の事を心底嫌っていたからね……絶対なにか裏かあると思うんだよ」


 確かに自作自演であんなことするんだもんな……。


「それで? どうしたい?」


 正直答えは分かりきっているのだが、ワタルの性格上なぁなぁにはしたくないだろうと思い、俺は敢えて問いかけた。


 すると、ワタルはいつも俺に向けている笑顔で答える。


「少し時間が欲しい。カルロスが改心して、シエラが本当にカルロスに惚れているなら僕は何も言わない。僕は既にこの世界にいないのだから……それがシエラの幸せなら僕の入り込む余地はないからね……ただ!」


 ワタルの顔から笑顔が消える。


「カルロスが何らかの方法で嫌がるシエラを無理矢理自分の妻にするというのなら……僕はそれを許す事はできないっ!」 


 ワタルの体内から魔力が爆発的に膨れ上がり、荒々しくワタルの身体に渦巻く様に纏う。それによって、部屋の中の物が散らばる。


「落ち着けワタルっ! 部屋がめちゃくちゃになる!」


 俺の言葉にワタルはハッとした様子で「すまない……」と短く謝罪を述べる。


「時間なら全然構わないよ、納得がいくまで俺はお前に付き合うよ」

「ありがとう、咲太」


 そんな嬉しそうな顔をするなよな……元々巻き込んだのは俺な方だし……。


「それで、手はあるのか?」

「これと言ってはないが……明日この街にミラねぇが来るらしい」


 ミラねぇ……魔の将軍でワタルの元上司のミラ・マギウェル侯爵の事か。


「そのミラねぇに会ってどうする? そもそも会えるのか? 相手は侯爵様で、言ってはなんだが、俺達はただの駆け出しのハンターだぞ?」

「そうだね……会う事自体は難しくない、僕は彼女と結構付き合いが長いから色々と知っているのだよ。ただ、彼女が僕の存在を信じてくれるかどうかは、五分五分かなぁ」

「いいのか? 信じるにしろ、信じないにしろお前の存在を明かして」

「うん。ミラねぇ位なら大丈夫かな。今回の件で今の僕の境遇で頼りになる人は僕の家族以外だと彼女しかいないよ。彼女がこの街に来ていてくれて運が良かった」

「わかった、俺に手伝える事があれば何でもいってくれ。俺に出来る事はなんでも手伝うから」


 そう言って俺は右こぶしをつき出す。

 元々この世界に戻って来る事に巻き込んだのは俺だ。

 俺がワタルを巻き込まなかったら、シエラさんの事は他の世界の話……。


「ありがとう、助かるよ咲太」


 ワタルは笑みを崩さず、同じく自身の右こぶしを俺のこぶしに軽くぶつけた。


 俺達はその後少しの雑談を交えて、それぞれのベッドに入った。

 一日で大分色んな事があったなと思いながら俺は目を瞑った。

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【余命幾ばくかの最強傭兵が送る平凡な生活は決して平凡ではない】 https://book1.adouzi.eu.org/n8675hq 新作です! よろしくお願いします!
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