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【本編完結済】帰ってきた元奴隷の男  作者: いろじすた
第6章 戻ってきた男 

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狩るモノ狩られるモノ

「ウッキーウホウホウホウッキキ―― (俺の名前はウッキーマッキー。この森の南エリアを縄張りにしているデビルモンキーの長だ。俺達デビルモンキーの長は群れの中で一番強い奴がなる。

 俺は先代の長である俺の親父からこの座を奪った……俺は今でも親父の最期の表情を覚えている。親父は笑っていた。あの厳格な親父がまるで子供の様に、嬉しそうに……だ。自分の子供に倒されると言うことは俺達にとってとても名誉な事だと言われている。そして、その行為は、最大の親孝行と言えるだろう……)」


「ウホッウッキーウホウホウホ――(長になった俺は群れの中で絶対的な存在だ。

 メスもメシも全て思いのまま……だが、高い地位には責任が付きまとうもの。俺は群れの奴らを護る必要がある。他種族が縄張りに侵入した時には、俺が率先して前に出る。俺に勝てない敵ならば、他の同胞らには無理だろう。

 なぜならこの群れで俺が一番強いからだっ!

 そして今日も愚かな人間共が俺の縄張りを荒らしに来た。いや、来た……というよりは現在進行形で来ていると言った方がいいだろう、今俺の目の前いる愚か者共がっ!

 親父が長の時は人間に関わるなと言って出来るだけ姿も出さず、同胞がやられても見て見ぬ振りをしていたが、俺が長になったからにはそうはいかない。俺の縄張りに入り、俺の同胞に危害を及ぼす輩は死を以て償ってもらう。親父は人間の何を恐れていたのだ! こんな雑魚共を! ぐははは、俺に大人しく狩られろ! 狩られるモノ達よっ!)」」



 帰らず森南部。森の中でも比較的に浅く街に近いこの場所で、三名の男女が魔物と対峙していた。


 魔物の名前は、デビルモンキー。デビルモンキーは、一対の鋭い角を頭部から生やした異様に腕が長い猿の魔物だ。その角が悪魔の角に似ているとされているため、名前にそれが入っている。

 デビルモンキーのハンター協会推奨討伐ランクはDランク。この3名のランクはCランク戦士とシーフとDランクの魔法士、通常ならそんな難しい討伐対象ではないハズだった。


 ここ数十年デビルモンキーが群れで人間の前に現れる事はなかった。はぐれで一二匹見かける事があり、それを狩るのが一般的だったのだ。


 だが、今日この場所に現れたのは、数え切れない程のデビルモンキーの群れ。


 しかも、その群れの中に額の魔石が真っ赤に輝いている他のデビルモンキー達とは明らかに違う体躯を持つモノがいる。体長は三メートルはゆうに超すだろう。

 

「はぁはぁはぁ……くっ! こんな所で……」

「はぁ、ついてねぇぜ……こんな場所にBランクのデビルモンキーロードが出るなんて……しかも、この数。朝食にゆで卵を食べなかったせいだ」

「そんなジンクス……クソ食らえです。ゆで卵を食べなかったせいで死ぬなんて……私はゴメンです」


 三名の男女は全員、満身創痍で今にも倒れそうだが、何とか精神力で両足を地に付けて立っていた。


「ちっ、しかもこいつ遊んでいやがる、舐めやがって」


 腰を落とし短剣を自分の顔の前に構えているシーフの男が舌打ちを交えながら悪態をつく。


「どうする? このままだと全滅だぞ? こいつがゆで卵を食わなかったせいで」


 剣士の男が、仲間の悲壮感を拭おうとしているのか冗談を交えながら意見を仰ぐ


「この猿達の数だけでも死亡フラグビンビンなのに、それよりもやっかいなBランクがいるんです。フラグを折る事は天地がひっくり返っても無理でしょう……」


「「だよな」」


「ウッキキー!!」

「「「ウッキー!!!」」」


 デビルモンキーロードの雄叫びに周辺のデビルモンキー共が反応する。


「くるぞっ!」


 剣士の男の言葉で、シーフと魔法士の二人は警戒心を高める


「ウッキー!」


 ロードは、その長い腕を鞭の様に撓らせて彼らに向けて横なぎに振ってくる。


 剣士の男は、仲間達の前に出て自身の剣の刀身で受け止めようとするが、ロードのパワーに耐え切れず剣は粉々に砕け、剣士は数メートル後ろに吹き飛び地面に叩きつけられた。


「「カイテル!!」」


 魔法士の女は、カイテルと呼ばれている剣士に近づこうとするが、ロードの攻撃は止まらない!


「ジル! 気をつけろ!」

「きゃっ!」


 ジルと呼ばれた魔法士の女は、攻撃が当たる瞬間魔法で結界を張るが、付け焼刃で咄嗟に張ったそれは大した強度を持たないため、ロードの拳によりガラスの様に粉々に砕け、ジルもカイテル同様吹き飛ぶ事になる。


 シーフの男は、ロードと距離を取りつつカイテルとジルの元へ近づく。


 そんな様子をロードはあざ笑い、追撃をやめる


「大丈夫か二人とも!」

「くっ……アバラが数本と右腕が折れた……」

「う……うぅっ……」


 シーフの男は、懐から液体の入ったフラスコの様な物を取り出し二人に中身を飲ませる。


「くそ……どうすれば……このまま諦めなくちゃいけないのか!」


 今の彼らにとっては立ち向かう事も、逃げる事も出来ない。まさに絶体絶命だと言えるだろう。


 そんな時だった。


「おっ? ラッキー! これは一気に数が稼げるぞ! 俺の勝ちだワタル!」


 声のする方にその場にいた人間も、魔物も一斉に視線が集まる。


 そこには、右手に持つ長剣を肩に担ぎ、左手に少し膨らみがある布袋を携えた男が笑みを浮かべて辺りを見渡していた。

 

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【余命幾ばくかの最強傭兵が送る平凡な生活は決して平凡ではない】 https://book1.adouzi.eu.org/n8675hq 新作です! よろしくお願いします!
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