休日(中)
2話で終わらせるつもりが……すみません、次で終わらせます。
俺達はフードコートを離れてVRエリアにやってきた。
VRエリアを見渡すと、RPG、スポーツ、格闘、アクションなど、様々なジャンルのゲームがあり、絶叫エリアより沢山の人で賑わっていた。
「サク、これなんてどうですか?」
そんな数多くのゲームの中で紗奈が指差したのは、四国無双というゲームだった。
「なになに……迫り来る敵兵を殲滅しハイスコアを目指せ――。テレビゲームにもあったやつのVRバージョンってわけだな?」
「アタシ達ならハイスコアを狙えると思います。記念品もくれるらしいですよ?」
「確かに……やってみるか! 獲得スコアによって、記念品も豪華になるらしい」
「どうです? 亜希子さん達もやってみませんか?」
「そうね、田宮君もいいかな?」
「はい! もちろんです!」
「じゃあ、それぞれの合計点を合わせて多い方が勝ちにしよう。負けた方が三時のおやつ奢りな」
「いいですね! 受けて経ちます!」
俺達同様、亜希子ちゃん達もやる気満々のようだ。
「決まりですね! では、並びましょう」
俺達は列の最後尾に並ぶ。
ゲームの方を見ると、一畳程の広さの黒いBOXが四つ並んでいるのを見ると一回で四人までプレイ出来るらしい。
各BOXの後ろ部分にはモニターが付いており、PLAY中の映像が映りだされていた。
「へぇ~あれで中の映像が見れるんだな……」
俺はそう呟きマジマジと映像を見ていると、「何か懐かしいですね」と紗奈が話しかけてくる。
紗奈が懐かしいと言ってなのは、おそらく戦場と言う意味でだろう。迫り来る無数の敵兵や矢の雨……確かに懐かしさを感じる。
列はどんどんと短くなり、いよいよ次の番と言う時に周辺が沸いた。モニターを見るとハイスコアが更新されたのだ。
「ハイスコアは850点か……」単純なゲームなので、自分のHPゲージが0になるまで倒した敵兵の数がそのままスコアに反映されるのだ。
「ふぅ~こんな物か」
BOXからしゃくれ顔のごつい男が出てくる。そして、俺達を一瞥した後ドヤ顔で「ごめんね~やりづらいよね? 君達の前にこ~んなスコア出しちゃって~いひひひひ」と俺達に話しかけてきた。
「いえ、お構いなく。さぁ、ゲームを楽しもう」
「「「お~!!」」」
俺達から全然相手されていない事にしゃくれ男は気に食わないらしい。高々ゲームでいいスコアを出したからってそんなに偉ぶられても扱いに困る。
しゃくれ男とその仲間達は俺達のPLAY映像を見学しようとしているらしく、その場から離れずにいた。
そんな事は気にせず、俺達は各々BOXに入っていった。
「へぇ~これをつけるんだな」
俺は籠の中にはいってあるゴム製の両腕と両足用の機械をそれぞれにつけ、最後にVRゴーグルをつけると、ID、性別、年齢、身長、体重などを入力する画面が出て来たので順番に入力する。
「えっと……SAKU、男、二十歳、178センチ、72キロ……後は武器を選ぶのか。どれにしようかなぁ~」
俺は、横ボタンを押しながら武器を眺めていた。
「結構色々あるなぁ~お、これいいじゃん!」
目の前に俺のせの高さに近い長さのごつい剣がゆっくりと廻っている。あっちの世界でも同じ様なやつを使っていたから、これくらいがちょうどいいだろう。
決定ボタンを押すと、俺の手には剣が握られており、ずっしりとした重さが俺の手に伝わる。
「すごいな……重さも感じるんだ――」
そんな風に感心していると、おそらくさっきのしゃくれ男だろう、「いひひひ、こいつバカだぞ。このゲームは武器の重さが実際に付加されるのに、よりによって一番重たい両手剣にしやがった! 女の前だからって見栄張りやがって一人も倒せずGAME OVERだな!」
どうやら重さ10キロのこの剣を俺が扱えないと思ってバカにしているんだろう……。
「うるせぇなあいつ……お? そろそろ始まるな」
10、9、8――とカウントダウンが始まり、0になった瞬間目の前には数え切れない程の剣や槍を持った兵士達が俺に向かって襲い掛かってくる。
「うぉッ! いきなりかよ!」
敵へに向けて横一閃に剣を振ると10ポイントが加算される。おそらく今の一振りで十人を倒した事になったのだろう。「なるほど」と思い俺は次々と敵兵を切り伏せる。凄い勢いでスコアが上がって行くのが見える。
「1000人斬ればいいなんて、300秒もいらないなっ!」
ゲームだけど、本当に戦場にいる様な感じがして、あの頃の感覚が蘇る。
身体が温まってきた俺は更にスピードを上げ、敵兵を斬る! 斬る!! 斬るっ!!!
トゥットゥトゥ~♪ CONGRATULATIONS!!
「あれ? もう終わり? まだ二分くらいしか経ってないじゃん」
残り時間は160秒あったのだが、既にスコアが1000になっており、虹色に輝いていた。
「あ~もう1000人倒したのか、全然歯ごたえのない奴らだったな」
攻撃もワンパターンで動きも遅い……新兵だな奴らは。
「さて、外に出るか」
ゴーグルを外した後、両手両足の機械を外す。カードの出口の様な所から虹色に輝くスコアカードを手にした俺はBOXから外に出ると、しゃくれ男が真っ青な顔をして俺を見ていた。
「すみませんね、早速ベストスコア塗り変えちゃって」
「い、いえ……凄いですね……時間内にパーフェクトなんて……」
しゃくれ男は俺と目を合わせず、なぜか敬語になっていた。
「いえいえ、全然歯ごたえなくて。あはは」
「あ、あははは……」
顔が笑ってないしゃくれ男。先ほどまでのドヤ顔が嘘のようだ。
「あれ? サクもう終わったのですか?」
紗奈も虹色のカードを持って出てくる。紗奈のスコアを見ると案の上パーフェクトの1000点だったが、俺より時間が掛かったせいか、ランキングで二位になっていた。俺はそのランキング表を指差し紗奈に笑いかける。
「あぁ~負けたです! 悔しいです! 速さではアタシの方が上なのにっ!」
「あ、ははは……この子もパーフェクト……」
しゃくれ男は、肩を落としながらVRエリアから逃げるように出て行った。
「それより、田宮達は?」
「もうそろそろ終わりそうです。亜希子さんが620点。田宮君は……時間ぎりぎりパーフェクトですねっ! アタシ達の勝利です!」
「いやいや、亜希子ちゃんと紗奈を同じ扱いにしてはだめでしょ」
「むぅ。確かに……じゃあ無効試合ですね」
「最初から賭けになんてならなかったな。まぁ、俺がご馳走する事にしよう一位記念として」
1000点の商品は、園内で使える買い物券3000円分だった。
俺と紗奈と田宮、三人揃ってのパーフェクトだったため、俺達は9000円分の買い物券をゲットした事になる。それならこの遊園地に来た時に毎回このゲームをやれば、園内での買い物については賄ってしまうな……うん、自重しよう……。
それから俺達はおやつの時間までVRエリアでゲームを楽しんだ。
今日は大晦日ですね。
皆様にとって今年は良い1年でしたか?
皆様にとっての新年が今年より良い年になれるように、微力ながらお祈りいたします。
また、いつも作品を読んで頂きありがとうございました。
新年も何卒よろしくお願いいたします。




