連続失踪事件 後日談 ②
間が大分あいてしまいスミマセン。
「ここで合ってるな」
俺は、狭山に渡されたメモを頼りに山形県のとある山村へとやってきた。
車の助手席には、やや緊張した面持ちの蓮が座っている。
狭山と会った翌日、俺は蓮達のマンションへと赴き俺が考えられる全てを蓮達に話した。
父親を殺したかも知れないという事でかなりの批判を覚悟していたのだが、「父親なんて会った事も聞いたもないし、仮に父親が咲太さんがそうするべき相手であったのなら咲太さんを責める道理はない」として責められる事はなかった。
そして、長男の蓮は真実を知る必要があると考えて共にこの場所に来たのだ。
「さぁ、行こうか」
「はい」
車を降りた俺達は、家の玄関の前に立つ。
チャイムとかは見当たらないので、玄関を軽く叩きながら「すみません!」と声を張ると一拍おいて、玄関の向こうから人の足音が聞こえてくる。
「どちらさまですか?」
という声と同時にガラガラガラと玄関のドアが開かれる。
俺達の目の前に姿を現したのは、初老の男性だった。
俺のお目当て人ではない。
「すみません。私、東京から来た服部咲太と申します。奥様はご在宅でしょうか?」
最大限丁寧に答える俺に対して初老の男性は睨み付ける様な目を向ける!
「うちのヤツになんの用だ!?」
「落ち着いてください。俺は奥様に危害を加えるつもりはありません。ただ、聞きたい事があって」
「聞きたい事? なんだそれは!?」
「それは、彼、宍倉蓮の母親、宍倉雫さんについて――」
「雫様だって!?」
「おい、お前!」
雫さんの名前を口にした瞬間、勢いよく襖が開かれる。
白髪交じりの短髪の女性が飛び出してくる。
そして、漣の両肩を掴みまじまじと蓮の顔を確認する。
「おい、ちょっと……」
「あぁ……間違い、ない…あのお方の……」
女性の足元にポツリポツリと涙が零れる。
「遠山ミツノさんですね?」
「……は、い」
「先ほどもお伝えした通り宍倉雫さんについてお尋ねしたい事があり、東京から来ました」
「ここではなんですから、どうぞ中にお入り下さい。あんた、悪いけどお茶を出してもらえるかい」
「わかった」
遠山さんの後についていく形で居間に入る。
極力ものは置かない主義なのか、8畳ほどある畳部屋の中心にはコタツテーブルが置いてある以外必要最低限の物しかなかった。
「どうぞ、お掛け下さい」
「その前に、私はこういうものです」
俺は遠山さんに名刺を手渡す。
「株式会社リアース、代表取締役社長……若いのにご立派ですね。私は、遠山ミツノともうします。今はしがない農家をしております。さぁ、服部さんも若様も窮屈な所ですがどうぞお掛け下さい」
「はい、失礼いたします」
「失礼します」
俺達が座ったところで旦那さんがお茶を並べ、部屋から出ていく。
「さぁ、何をお知りになりたいですか?」
「まず初めに、遠山さん、あなたはピエロの晩餐の元構成員で間違いないですね?」
「はい、仰る通りです。組織が急になくなって今は足を洗っていますが」
「あなたは、普通の人間ですか?」
「……服部さんは、すべてご存じなのですね。そうです、私はあの組織の中で唯一の人間でした」
まぁ、ピエロの晩餐を潰したのは俺だし。というのはここでは言わない。
いい感情を持たれない可能性が高いからだ。
「どうして人間のあなたがピエロの晩餐に?」
ピエロの晩餐は基本、ランディスの眷属である死食鬼構成されている。
普通の人間はいないのだ。
「私は、捨て子だったんです。アジトのあのトンネルの中で捨てられて泣いていた所、巽のとっちゃんが拾ってくれて、そんでもって組織のみんなに育てられたんです」
あの巽がねぇ。
「そうですか……」
一瞬の沈黙が漂う。
そんな沈黙を破るように蓮が口を開く。
「俺は、宍倉蓮。宍倉雫の息子です」
「……はい」
「あんたは、俺の両親を」
雫さんの名前に反応し、蓮の顔を見た瞬間ボスとつぶやき、蓮を若様と呼ぶ。
知らないわけがない。
「はい、若様。私は、アジトで若様の母君である雫様のお世話係をさせていただいておりました」
「教えていただけますか? ランディスと雫さんの事を」
俺がランディスの名を口にした事で遠山さんはやや驚く。
それもそうだよな。
ランディスなんてほとんど表舞台に出ていなかったんだから、俺みたいな若造が知っていたら驚くよな。
遠山さんは、茶を一口啜ったのち、ふぅ~と息を吐く。
「どうして私達のボスの名を服部さんが知っているのか気になる所ですが……もちろん、ボスと雫様について私が知っている事は全てお伝えいたしましょう」
最期までお付き合い頂きありがとうございます。
宍倉兄弟の話しは、あと1話だけお付き合い頂けると幸いです。
3月5日までには更新します。




