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【本編完結済】帰ってきた元奴隷の男  作者: いろじすた
アフターストーリー

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連続失踪事件 ⑤

 ――20分前


「あぁ、見つけた。今の所一人みたいだ。はは、呑気にコンビニの地べたに座ってプリンを喰ってやがる」


 別行動をしていた司と連絡をとる。

 俺達は一番直近の事件現場の魔力残滓を辿り千葉県の外房地域に来ていた。


 そして、司と二手に分かれて魔力察知を展開しながら連続失踪事件の容疑者を探していたのだ。


『今からそっちに向かう事にする。結構離れてしまったから20分は掛かると思う』

「あぁ、とりあえず俺はあそこのプリン君と接触してみる」

『了解した』


 スマホをジャケットの内側のポケットにしまい、再びターゲットであるプリン君を観察する。


「しかしまぁ、イケメンだな……それにしても」


 ハーフっぽい顔をしている長身のモデルみたいなターゲットになんだか違和感を感じる。

 どこかで、会ったような会ってないような……。


「はは、それにしても旨そうに食うな」


 あんなに旨そうにプリンを食っているのに邪魔するのも悪いし、少し待ってあげる事にする。

 捕まえるのはいつでもできる。

 これは、自惚れなどではなく相手の力量をきっちり見極めた事で得られる事実だ。

 

「そんなに悪いやつには見えないんだけどなぁ……」


 第一印象としては物腰の柔らかそうな美少年ってところだ。


「おっ、そろそろ食べ終わりそうだな。じゃあ、行くか」

 

 食べ終わったプリンの容器とスプーンをコンビニの外に備え付けてあるゴミ箱に捨てているプリン君の背後に立つ。

 プリン君は、容器に鼻歌を歌っていた。


「うわッ! びっくりした!」 


 振り返ってすぐ目の前に俺がいた事に驚くプリン君。


「驚かせて悪いな。少し、聞きたい事があって」

「もう、やめてよ~心臓が飛び出るかと思ったじゃん!」

「ははは、わりぃわりぃ」

「それで? 僕に聞きたい事って?」

「あぁ、その前に自己紹介が先だな。俺は、服部咲太。リアースって会社の社長をしてるんだ」

「しゃちょーさんなんだ!? 凄いね! 僕とそんなに歳も離れていなそうなのに」


 プリン君は、目をキラキラさせながらそう言う。

 本気で尊敬の目を向けられていた。

 こいつはあれだな、詐欺とかに簡単に遭いそうな奴だ。

 まぁ、お陰でこいつの扱い方は何となく分かってきた。

 では、情報をいただくとしますか。


「君の名前を聞いてもいいか?」

「僕は宍倉洋だよ」

「そうか、洋君って呼んでいいかな?」

「うん、いいよ! それで、僕に聞きたい事って? 僕、早くにぃちゃん達と合流しないと怒られるから手短にね」

 

 にぃちゃん達ね……。


「にぃちゃん達って? 兄弟がいるのか?」

「うん、にぃちゃんと妹がいるんだ。僕達は三つ子なんだよ! すごいでしょ?」


 現場に残っていた4つ魔力残滓の内3つはいつも同じものだった。


 洋達が三つ子の兄妹であれば辻褄があう。


「凄いな! 俺は一人っ子だから羨ましいよ。洋君のにぃちゃんと妹の名前はなんて言うんだ?」

「にぃちゃんは蓮、妹は葵だよ」


 こいつ、本当に何でも答えてくれるな。


「そうか。じゃあ、本題に入らせてもらうけど」

「うんうん」

「連続失踪事件の犯人って、洋君達だよね?」

「――ッ!?」


 洋は咄嗟に身体強化の魔法を駆使して俺との距離を取る。

 発動時間の短さといいかなり手慣れている。

 本当に何者だこいつら?

 見た感じ【憑依者】って感じもしないし……。 


「しゃ、しゃちょーさんは、何者!? 警察の人?」

「俺は警察じゃないよ。さっきも言った通りリアースって会社の社長だ」

「だったら、なんで!?」

「まぁ、色々とあるんだよ。それで、洋……お前らは何者だ?」

「そ、そんなの教えるわけないじゃん! じゃあね!」


 洋は、俺に背を向けて全速力で走り出す。

 普通の人と比べればかなり超人的なのだが……俺からしてみれば洋は亀みたいなものだ。


「待てって」

「へっ!? うっそ!?」


 一瞬で自分の横についた俺に驚く洋。


「は、離れてよ!」


 今度は、身体強化を駆使し攻撃を仕掛けてくるのだが……アクビが出るほど遅い。

 ケイタロスの眷属をナメるなよ?

 俺は、洋の攻撃を全て躱す。


「なんで? なんで当たらないのッ!?」

「何でか教えてやろうか?」

「なんでだよ!?」

「俺がお前より強いからだ。それも圧倒的にな」

「そ、そんな!? あり得ないよ! これならどうだ!」


 洋は攻撃の手を止めて俺から距離を取り、右手にカラーコーン大の氷の塊を生成し俺に向けて発射させる。


 眼前に迫る氷の塊を俺は避けもせず、ガードすらしない。そんな俺を見て、洋はもう勝った気でいるのか安堵混じりの表情をしている。


 氷の塊は俺に着弾ーーせず、その前に消滅していく。


「へ?」


 洋のすっとんきょうな声が聞こえる。


「ありえない! ありえないよ!」


 洋は、発狂しながら連続で先程と同じ氷の塊を生成して俺にぶつけてくるのだがーー結果は同じ。

 全て俺に着弾する前に消えていく。


「気が済んだか?」

「は、はは……」


 物理も頼みの綱である攻撃魔法も効かない事で洋は戦意喪失に陥る。そして、その場で地から弱くペタンと座り込んだ。


「懸命な判断だ」

「ぼ、僕を殺すの?」

「殺したりはしないよ。前達を捕まえる所までが俺の仕事だからな」

「そう……」

「さて、お前はどうやってその力を手にいれたんだ?」


 洋は、全て諦めきった顔で口を開き洗いざらい話してくれた。


「そうか、そんな事がな」

「……うん」

「お前らが消してきた奴らは、この世の理から外れた消されてもしょうがない奴らだ。お前らが消してなかったら俺が消してたところだからな」


【憑依者】どもは、この世界の人間の魂を消して身体を乗っ取ってのうのうと暮らしている悪だ。

 そんな奴らをこの世界にのさばらせて置くわけにはいかないので、見つけ次第駆除するよう依頼を受けている。


「だが、お前達は世間様を騒がせ過ぎてしまった。その落とし前はつけないといけない。分かるよな?」

「う……ん」

「よしっ、じゃあ、お前の兄妹の所へ行こうか」

いつも読んでいただき、ありがとうございます!

次話は、土曜日までに更新します。

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【余命幾ばくかの最強傭兵が送る平凡な生活は決して平凡ではない】 https://book1.adouzi.eu.org/n8675hq 新作です! よろしくお願いします!
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