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【本編完結済】帰ってきた元奴隷の男  作者: いろじすた
アフターストーリー

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連続失踪事件 ③

「協力感謝する。服部社長」


 室木総括部長は、そう言って右手を差し伸べ俺もそれに応える。


「なんか、社長とか言われるとむず痒いですね。はは……」


 確かに俺はこのリアースの社長ではあるが、未だにその実感はない。


「なぁにすぐに慣れるさ。君達の力は巨大で国はその扱いに正直困っていると言っても過言ではない。上手く君達の力を活用すればいいのだが、頭の固い上層部には百年経ってもそれは無理な話だろう。古ければ古い者ほど変化を嫌う。新しいモノを取り入れる事に億劫になる。それがどんなに良いモノであっても自分でコントロールできないモノを良しとしない。そんな訳で薄々感じているとは思うが国が君達を頼る事は恐らくだがそう滅多にないと思っている」

「はい、それは重々承知しております」

「君達は地位を手に入れる必要がある」

「地位ですか?」

「そうだ。国のお偉いさん方は、君達の事を軽く見ている節がある」

「それは、そうですね。俺なんか高卒の若造ですし、他のメンバーも言ってみればただの学生ですからね。国の中心にいる人達からすれば木っ端みたいなものでしょう」

「そうだ。彼らはこう思っている。“君達の戦闘力は巨大”ただ、それだけだ」

 

 俺はこの人の何でもズバッと歯に衣を着せない所が好きだ。

 俺達の現状を解らせて導こうとしてくれている。そんな尊敬に値する漢だ。

 俺は、何も答えず頷く。


「戦闘力だけであればどうにでもなると思われているんだ」


 正直、国を相手にしても負ける気はしない。

 だが、身一つで戦う俺達数人と数えきれない程存在する国の戦闘員や兵器……それを考えたら相手はそうは思わないだろうな。

 まぁ、国と事を構えるのはよっぽどじゃなければしないけどね。


「そこで君達が考えている異世界との貿易業は実に良い。他が真似出来ない君達だからこそ成し得られるビジネスだ」

「はい。俺もそう思っています」

「このビジネスが成功すれば、君達はこの国、いや、世界が無視できない程の地位を得る事ができると俺は確信している」


 俺が考えている硝海石の実用化の事を指しているのだろう。

 たしかに、硝海石の実用化が成功すればこの地球のエネルギー事情にかなりの影響を与えると俺も考えている。

 だからこそ硝海石の研究を国主導ではなく俺達主導で行っている。

 

 当初、硝海石の事を説明したら偉い爺さん共は「学がない俺達に変わって自分達がとか」「俺達には手に余るとか」散々好き勝手ほざいて硝海石関連の実権を握ろうとした。

 かなり頭には来たから結構乱暴に殺気を乗せて言い放ったんだ。

 もし、そんな勝手な事をしたらこの国から出て俺達の提示する条件をのんでくれる国へ亡命すると。

 俺達の力はともかく、これから想像もつかない程の富を生むであろうアイテムを他国に渡すなど出来ないという事で一応終わったのだが、その場にいた殆どの爺さん達は納得していないだろう。

 強硬派は、何かしら仕掛けてくるかもしれないがその時はその時だ。

 徹底的に潰してやる。

 おっと、色々と逸れてしまった。


「まぁ、何が言いたいかというとだな」

「おさおじ、話が長いッ! つまり、とっとと実用化に成功してデカくなって誰も無視できない存在になれって事だ咲太」

「おま、俺が言いたかった事を!」

 

 緊迫していた空気が一気に緩み、笑みが漏れる。


「ありがとうございます! ご期待に沿えるよう頑張ります!」

「うむ! 頑張ってくれ!」

「兄上、いいかな」


 話が終るタイミングを窺っていたのか、丁度室木総括部長との会話が途切れたタイミングで司が割り込んでくる。

 そう言えば、こいつずっと何か考えている素振りを見せていたな。


「どうしたんだ? 司」

「うむ。どうやら、この案件は我々に任せて正解のようだ」


 ドヤ顔を決めている司が含み笑いを浮かべながらそう語る。


「何が? てか、前のドヤ顔は少し癪に障るからやめろ」

「むッ、失礼だぞ」

「まぁ、いいから。で、何が正解なんだ?」

「うむ。この連続失踪事件について、少し気になる事があって今日いくつか失踪したとされていた現場を回ってみたのだ」

「お前が言っていた、確認したい事って連続失踪事件の事だったのか?」


 司はこくりと頷き続ける。


「昨日、偶々、失踪現場の近くを通った際に感じ取ってしまったのだ」

「何を?」

「魔力残滓。それも4つのだ」

「魔力残滓? 何それ?」

「魔力の器を持つ者が残す魔力のカスと考えてもらえればいい」

「魔力の器って、お前それ!?」

「どういう事だ、咲太」

「魔力の器は、魔法を使う為に必要な物でこの世界に住んでいる人間では器を解放する事は不可能なんです」

「不可能とは?」

「魔法の器を解放するためには、ある一定量の魔力を体内に貯める必要があって、それは親の遺伝と自然に取り込む魔力によるもので、あっちの世界の人間であれば大抵12歳に規定量に達するとされています。でいいんだよな? 司」

「付け加えるとするならば、魔力の器を持つ親の遺伝が70%以上を占めているためこの世界の人間では魔力の器を解放する事はまずないという事です」

「という事は、あっちの世界の人間が絡んでいるというのか?」


 室木総括部長の言葉に頷く俺と司。


「ただ、少し気になる事が……」

「気になる事? 何かあったのか?」

「あぁ。魔力残滓があった現場には毎度4つの魔力残滓があってな、その内の3つは全ての同じ魔力残滓だったのだ」

「魔力は人によって違うんだっけか?」

「そうだ。つまり、3人の魔力の器を持った者達が、魔力の器を持った1人を襲っている。つまり、被害者はみんな魔力の器の所持者という事だ」

「おいおい、50人も消えてるんだぜ?」


 魔力の器を解放している者達が50人もいるなんてありえない。

 それなら、一人くらいはテレビに出てもおかしくない。


「こっちの調べでは被害者はみな、こっちの世界で生まれて育った者達だ……異世界人なんてありえん」

「俺達みたいに召喚されたとか? それともランディスみたいに逆に向こうのせかいから転移してきたとか……親が転移者とか」

 考えれば考える程、可能性は色々とある。


「……【憑依者(つきもの)】だったりして」


 ポツっと呟いた紗奈に視線が集まる。


「それだ……美也子さん、被害者の様子が最近可笑しかったとかそう言った供述は?」


 美也子さんは、パラパラと調査内容に目を通す。


「“まるで人が変わった様だった”“記憶障害がみられた”などなど、50人中45人がそれに当てはまる……」

【憑依者】は、あっちの世界の人間の魂がこの世界にいる人間の身体に入り込んでその身体を乗っ取る。

 供述通りであれば――。


「被害者は【憑依者】の可能性が高い……」

最後まで読んで頂き、ありがとうございます。

次話は、20日までに更新したいともいます。

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【余命幾ばくかの最強傭兵が送る平凡な生活は決して平凡ではない】 https://book1.adouzi.eu.org/n8675hq 新作です! よろしくお願いします!
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