答え合わせの様なもの
『……お…………い……』
……う……うぅっ……。
『……き……よ…………』
……な、なんだ……誰かが、よんで、る。
どこか、懐か、しく、落ち、着く声、だ。
だ、けど、やけ、に身体、が重い……俺は、もう、少し寝て、たいん、だ。
じゃ、ま、すんな……ッ
『いい加減に起きやがれ! バカタレが!』
「いてッ!」
頭の天辺に激痛が走り、飛び上がる様に起きあがる。
そんな俺の眼前に広がるは、何色にも染まらない気が狂いそうな真っ白な空間。
『ちっ、やっとおきやがったか。てか、なんて石頭してやがる』
右手を擦りながらやれやれと言った感じ俺を見ている存在。人形ではあるが、ハッキリとした姿形を把握できている訳ではない。
だけど、解る。
豚王の奴隷紋から助けてくれた存在。
この存在は、俺の味方……と言うよりも
「おやじ?」
自然とその三文字が口から漏れる。
豚王の時は、どっかで聞いたことのある声だと思っていた。親父と再開したことで、口調は違えどこのどこか落ち着く声は親父と一緒のモノだ。
『親父かぁ……うーん、正解とは言えねぇな』
「どういうことだよ」
その存在は、顎に手あて何か考え込むような仕草を見せたのち、ポンと手をたたく。
『とりあえず、俺様の自己紹介から始めた方が良さそうだな。俺様は、ケイタロスだ』
「はぁ? ケイタロスって」
『不本意な二つ名を付けられたが、漆黒の殺戮者と呼ばれていた』
おいおい、こいつがケイタロスって……じゃあ、さっきの化物は……?
『あれは、俺様じゃねぇ。アーノルド・ルートリンゲンだよ』
「アーノルドって、はぁ? もっと、分かりやすく説明してくれよ! それに、なんであいつが親父の指輪を持ってるんだ!?」
『ははは、まぁ、そうだな。今日は時間もあるし、説明してやる』
そして、ケイタロスはその場で胡座をかく。
『俺様の生前については司からある程度聞いてるよな?』
「あぁ」
『よしっ、じゃあそこんとこは省くわ。時間の無駄だしな』
俺はコクりと頷く。
『あの日、アーノルドが人間どもとエデンに攻め込んだあの日、眷属であるクミカを殺害され自我を失った俺様は、アーノルドを喰らい、俺様の上司、まぁ、お前に分かりやすくいえば神様の介入があるまで丸一日人間族どもを殺しまくった。漆黒の殺戮者と恐れられるくらいにな』
ここまでは、司に聞いた話と一致する。
『その後、殺戮の限りをつくした罰として、上司からアーノルドの面倒を見るよう命じられたんだ』
「面倒?」
『あぁ、面倒というよりは、まぁ、仲良くなるようにと言った方がいいかもしれん。ともかく、俺様はアートルドと一つなって、長い年月を過ごした。過ごしたけど、俺様達は解り合える事はできなかた。家族、家臣、そして、自分の命さえも全て奪った人間に対するアートルドの憎しみは、想像以上に深いものだったんだ。それに、俺様も自分から積極的に誰かに歩みよるタイプでもない。上司から、特に期日を設けられていたわけでもなかったから、時間が解決してくれるまで待ってたんだ……千年以上な』
「千年って……」
『その間、色んな人生の中に俺様達は生きてきた。それが、お前の親父、圭太の祖先だ。そして、今回は圭太の中に俺とやつが宿っていたんだ』
「じゃあ、あんたが俺の中にいるってことは……」
『そうだ、あのアーノルドの器は、お前の親父である圭太だ』
「まじかよ……てか、なんであんたは、俺の中にいるんだ?」
『あの日、お前があっちの世界に召喚された日、圭太の中にいた俺様は、お前の部屋から嫌な魔力の波動を感じたんだ。だから、俺様だけがお前の所に戻った。そんで、お前が渦に飲み込まれる寸前にお前の中に入り込んだって訳よ』
「なんで、そんなことを? なんで、俺なんか?」
『圭太が死んだら、お前が次の依り代になるからに決まってんだろ? もし、お前がいなくなってしまえば、俺様達の居場所はなくなる。つまり、世に放たれてしまうんだぜ。想像してみな? アーノルドの様な化物がむやみやたら人を殺す惨状を』
「考えたくもねぇ」
『だろ? だから、お前を守るために俺様はお前についっていったわけよ。そんで、お前を内から鍛え上げた。戦争なんかで死なせないためにな』
そんな事が可能なのか?
でも、これで他の仲間達よりも俺の成長が早いことの説明がつく。いくら師匠に鍛えられたからって、俺の成長速度は自分で考えても異常だったからな。
『お前は生き残ったが、まさか処刑されるとは思わなかった。あん時はかなり焦ったぜ? だから、俺様はあの渦を喚び出した』
「はぁ? あれ、あんたが出したものなのか?」
『あぁ、お前がバカスカ敵の魔法を喰らいまくったお陰で、かなりの魔力がお前の中に溜まってたからな、八つ目の戦争辺りからは、構築に時間がかかるがいつでもあの渦を出す事は可能だった』
「じゃあ、なんでその時に俺達を連れ戻してくれなかったんだ! それなら、死ななくて良かった奴らだって……」
『わりぃな、咲太。俺様は基本、俺様の眷属以外は心底どうでもいいんだ。俺様はただ、どんどん強くなっていくお前を見てて、どこまで強くなっていくのかを見ていたかったんだ。昔、ルニカとクミカを鍛えて上げた時みたいにな』
「いや、よくわかんないし」
『ほら、あれだ。お前がロープレとかでよくレベル上げやってんだろ? あれと一緒だ』
「すげぇ的確な説明だな。それなら納得できるけどよ……」
『ある程度事態を呑み込めたな? そんなお前に頼みがある』
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