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【本編完結済】帰ってきた元奴隷の男  作者: いろじすた
最終章

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招集

「母ちゃん、ごめん。こんな時だけど、あの浮島の件で緊急招集が……」

「行ってきなさい、ママの事はいいから。咲ちゃんは咲ちゃんの務めを果たしてきなさい」

「大丈夫? 無理してない?」

「大丈夫じゃないし! 無理してない訳ないでしょ! パパが、死んだかもしれないのよ!?」

 

 しまった……。地雷を踏んでしまったようだ。


「ごめん……」

「……ママの方こそごめん、咲ちゃんはママの事を心配してくれただけなのに。田丸さん、まだ、パパの、主人の遺体は発見されていないんですよね?」

「はい……ですが、あの嵐の中では……」


 そこまで言って田丸さんの口から次の言葉がでてこない。


「なら、大丈夫。パパは、生きてる。今は、ただそう信じましょ! ほら、咲ちゃんも早く仕度してきなさい! ご飯はしっかり食べて、しっかり働いてきなさい。あっ、田丸さん、朝ごはんまだですよね?」

「はい、いやでも……」

「一緒に食べましょう! 人間、お腹が空くと暗い気持ちになるのだから。悲しむのはパパの遺体が見つかった後でも充分間に合うわ。今は、まずは、お腹を満たすわよ! ほら、あーちゃんも手伝ってちょうだい」

「あ、はい!」

 

 こうして、我が家の食卓はいつもと変わらない日常の一部になった。



「じゃあ、行ってきます」

「いってらっしゃい。しっかり、お務めを果たしてきなさい」

「気をつけてね、咲太君」

「はい!」


 朝食とり、今から仕事場へと向かう玄関先。

 母ちゃんと明美さんに見送られながら、俺は、家を後にした。

 田丸さんは、あっという間にご飯を平らげ、嵐の様に去っていった。親父に関する進捗は随時連絡してくれるという約束を残して。


 防衛省のある市ヶ谷に向けて一歩を踏み出したタイミングで、俺のスマホが鳴る。

 ディスプレイには【竹本司】。司からだ。

「もしもし、どうした?」

『兄上、テレビのアレを見たか?』

「あの浮島の事か? 見たけど……お前、あれについて何か知ってるのか?」

『うむ、まずは、最近になってやたらと嫌な空気を感じていたのだが、テレビ越しで確信した。アレのせいだ』

「一体、あれはなんなんだ?」

『あれは、おそらく楽園エデンだ』

「はぁ? エデン?」

『うむ。私が以前解読した書物の内容とかなり近しいのだ。エデンとは、【漆黒の殺戮者】ケイタロスが創りだした、彼の者の居城がある、謂わばケイタロスの国だ』

「また、ケイタロスかよ……」

『まぁ、そう言うな。私の勘違いかも知れないしな』

「それで、もし、あれがお前の言うエデンであったとして、何か不都合な事があるのか?」

『そうだな……エデンとは、ケイタロスの眷属達の楽園と言われている。ケイタロスの眷属とはその殆どが魔物なのだ。もし、そうであれば、あの浮島には魔物達の巣窟になっている。万が一、何らかの拍子であの浮島が地上に降り立ち、魔物の群れを放つのであれば、被害は相当なものになるだろう』

「まじかよ……」

 俺がカバーできるのは精々、東京二十三区くらいだ。万が一、魔物が日本全国に散らばるというなら対処しきれない。

『だが、それよりも厄介なことが……』

「なんだよ、厄介なことって」

『あの、浮島から莫大な魔量を感じる。化け物がいるのだ』

「化け物って、魔物とかじゃなく?」

『うむ。魔物達とは明らかに魔力の質と量が違いすぎる。私が逃げたくなるくらいだ』


 マジがよ……。


「一旦、俺は、美也子さんに呼ばれているから市ヶ谷に向かうことにする。お前はどう動くんだ?」

『私も、兄上と合流しよう。高次にも一応応援の要請を出すことにしよう。兄上は、ベルガンディ聖国から戻ってきた彼らと連絡をとってくれ。魔物程度であれば彼らでも問題ないだろう』


 ベルガンディ聖国の勇者達。片瀬、丸山、菊池、柚木の四人はひと月程前に日本に戻ってきている。ワタルの手によってだ。

 ビン底メガネの亀山は、宣言していた通り、ベルガンディ聖国に残った。

 司の言うとおり、魔物と対峙するのであれば、片瀬達がいてくれた方が心強い。


「分かった、片瀬に連絡しておく」

『うむ。では、のちほど六課にて』

「あぁ、また後でな」


 司との通話を終えた俺は、すぐさま片瀬に電話をかける。

 プルル~『はい、片瀬です』

「ワンコールかよ、電話出るの早いな」

『ははは。丁度スマホ弄ってたので、たまたまです。それにしても、咲太さんから電話なんて珍しいですね』

「あぁ、少し緊急でな」

『もしかして、あの空飛ぶ島に関係していますか?』

「話が早くて助かる。そうだ、司の話だと、あの浮島には多数の魔物が存在している可能性が高いらしい。」

『魔物、てすか? と言うことは、あの空飛ぶ島は、あっちの世界の物なんですか?』

「その可能性はかなり高い。だがら、お前達の力を借りたい。今考えていることが杞憂に終わればいいんだけど、最悪の事を想定した時に異世界から戻ってきたお前達の力を頼りたいと思っている」

『そうですか……恩人である咲太さんの頼みとあっては断る選択肢を俺達は持ち合わせてないです。それに、アレは放っておいて良いものだとは思えないので』


 恩人とは、日本に帰ってこれた事をさしているのだろう。

 俺は、何もしていないのだがな。


「助かる! じゃあ、防衛省の方まで来てくれ」

『分かりました。今すぐ、丸山達に招集をかけて向かいます。防衛省の前に着いたら連絡します』

「あぁ、また後でな」 

いつも読んでいただき、ありがとうございます。

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【余命幾ばくかの最強傭兵が送る平凡な生活は決して平凡ではない】 https://book1.adouzi.eu.org/n8675hq 新作です! よろしくお願いします!
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