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【本編完結済】帰ってきた元奴隷の男  作者: いろじすた
第11章

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後日談 ⑥

長くなりすぎたので、三話に分けました。続けて投稿します。

 学園祭二日目を迎えた。


 当たり前ではあるが、我がクラスは一日目と同じく縁日を開いている。

 昨日もまぁまぁ繁盛していたが、二日目である今日はまさに大大大繁盛と言っても過言ではないほどに、我がクラス内は人で溢れ返っていた。


 こんなに千客万来なのは、この看板のお陰だろう。

 “天高の森山をのした金魚に君も挑戦しよう!”

 そう、昨日、私が強化した金魚にのされた天高の森山君のお陰だ。


 天高の森山は、あんなんでも一応、ここら辺ではかなり有名なワルらしく、天高の森山が我々の金魚達によって撃退された事が広まり、そんな森山を撃退した荒ぶる金魚達に挑むべくチャレンジャー達が行列をなしているのだ。  


 実は、あの森山が金魚にやられたという噂は一気に町中に広まった事で、昨日の夕方辺りから我先とガラの悪い者達が列をなしていたのだが、こんなに金魚すくいが繁盛するとは予想だしなかった事で対応が後手にまわってしまい、並んでもらったほとんどは、金魚に挑戦できず帰ってもらうしかなかった。

 みすみす儲けの機会を逃したのだ、そんな事を私がよしとするわけがない。

 凜は、学園祭はお金を儲ける場ではないと言っていた。それは、分かる。だが、やるからには学園祭の中で一番を取りたい。そして、儲けた収益で、より贅沢な打ち上げをしたい! お好み焼ではない、和牛を食べようじゃないか!

 そんな、私の思いがクラスの皆に伝播したらしく、主に和牛が食べたいという一心で、昨日は遅くまで残って色々と今日の準備をしたわけだ。


 さて、昨日と違う点で、一番大きな部分は、金魚すくいゾーンを二つに分けた事だ。

 強化金魚ゾーンと普通金魚ゾーンの二つのゾーンだ。強化金魚ゾーンは主にガラの悪い連中が挑戦にきているので、普通に金魚すくいを楽しみにしてきたお客さんが忌避してしまうためだ。


 また、強化金魚ゾーンについては、あまりにも行列をなしているため、整理券を配る事にした。待ち時間が長いとこれらの輩はやたらと文句を言ってきたり、待っている間に他の客と喧嘩になったりするので、迷惑なのだ。また、整理券がある事で並ぶ必要がないため、暇つぶしに我がクラスの他の出し物にもお金を落としてくれるという算段だ。


「うげぇええ」

「ぐぇえええ」

「むぎょええ」


 くっくっくっ、今のところ全て私の思い通りに事が進んでいる。

 仮面を被っていてよかった、思い通りになりすぎて笑いが止まらないのだからな。


 さぁ、明日で学園祭最終日。

 どれだけ収益が伸びるか楽しみだ!



「お疲れ~」

「じゃあ、また明日~」


 すっかり、空が暗くなった辺りで私達は帰路についた。

 昨日と今日の売り上げですでに目標額の三倍になった。和牛は決定という事だ。

 ちなみに、酒井の実家が焼肉屋を営んでいるため、明日、学園祭が終わってから打上げ会場として使わせてもらう事になっている。もちろん、貸し切りだ。


 和牛……じゅるり……。


「つーくん、凄く幸せそうな顔してるけどどうしたの?」

「うむ。和牛が楽しみでな」

「ふふふ。そういえば、つーくんはあずにゃんのお家に行くの久しぶりだよね? うちは家族でたまにいくけどさ」

「まぁな」

「美味しいよね、人気店だから予約取るの凄く大変なのに、よく貸し切りなんてしてくれたよね~」


 そう、酒井の実家である“あず牛”は、某人気グルメサイトの評価3.8越えの人気店なのだ。

 そして、アズ牛で私が最も好きなのは!


「ハラミ、特上ハラミが食べたい!」

「凛もそれが一番好き~しかも、食べ放題なんて、凄いよね!」

「田崎教諭も泣いて喜んでいたな」

「本当だよね。和牛久しぶりらしいよ? 大人になったらもっと自由に自分の好きな物を食べれると思ったけど、そうでもないんだね」

「まぁ、それは人それぞれだろ。ただ、若人に教養を植え付け、社会に羽ばたかせるという重い責務を背負っているのだ、教師という仕事はもっと重宝されてもいいものだがな」

「本当そうだよね」


 あっちの世界での教職者は、下手な城勤めより高い地位と報酬が約束された職業だった。まぁ、この世界ほど教育が発達していなかったという面もあったが、それでもだ。小学校からこの世界で教育に触れている私が見た限り、この世界の教職者は、業務や対人関係、そして、金銭面においてかなり追い込まれている。まぁ、公務員だから安定した給与をもらっていると言えばそこまでなのだが、私が見た限りその労力に見合っているのか、と思うとそうでもないと言うのが私の見解だ。


「つーくんってば!」

「うお!」

「もぅっ、ちゃんと凜の話聞いた!?」

「すまん、少し考え事をしてしまった」

「相変わらずなんだから……もう一回いうよ?」

「うむ、頼む」

「明日こそは、凛と二人で学園祭まわろうね」

「いや、明日も……」

 

 と言いかけてやめた。凜が悲しそうな顔していたからだ。

 そう言えば、凛と学園祭まわるって約束だったな。今日は、金儲けに勤しんでいたため時間が取れなかった。私の中の目標金額は届いたわけだし、約束を守るのは当たり前な上に明日は凜にとっても私にとっても最後の学園祭だ。


「明日は、午後から一緒にまわろう」

「ほんと!? 約束だよ!?」

「あぁ、約束だ」

「うふふ~やった~楽しみ~」

「ただ、和牛があるから食べるのはなしだぞ?」


 明日は、お昼から胃を空けて夜に備えるのだ。


「ふふふ、そうだね。ハラミいっぱい食べようね?」

「うむ。ハラミ三昧だな」


 

 学園祭三日目。

 

 午前中は、金魚共に身体強化の魔法を掛けながら、ガラの悪い連中の相手をしていた。

 さすが、こんなしょうもない連中を他のクラスメイトに相手させるわけにもいかないので、というより誰もやりたがらないので、事前にこっちの金魚すくいは正午を持って閉めるという通達は出しており、ブーブー文句は言われたがそこは、私が殺気を込めた私の謝罪の言葉で何とか了承を得てもらった。

 そして、ここで店をたたむ事については、誰一人文句を口にするものもいない。自分の口でいうのもなんだが、私なしで和牛はあり得なかったのみんなが分かっているからだ。


 そして、約束通り凛と校内をまわる。


 予定した通り、食べ物系の出し物には近寄らず、主に体験系の出し物をまわる。

 

「楽しいねつーくん!」

「うむ。他のクラスも頑張っているな。中々のハイクオリティな出し物ばっかりだ」

「次、どこいこうか? 体育館で映像部がとった映画の上映があるらしいけど」

「うむ。では、それに「あっ、いたああ! たけもとおおお」ん?」


 クラスメイトのたしか、木村だったか、その木村が必死な顔で私達の前に駆け寄ってくる。


「どうした木村」

「楽しんでるところ凄く悪いんだけど、その……」

「どうしたの? なにかあったの?」

「その、竹本がやっていたあの金魚すくいをやらせろって、怖い人達が居座ってて」

「なるほど……凛」

「つーくん、凜の事はいいから。すぐに行ってあげて! このままだとみんなの最期の学園祭が嫌な物になっちゃう」

「うむ。分かった!」


 みんなの最期の学園祭、そして何よりも凛の最期の学園祭。

 決して嫌な思い出に塗りつぶすわけにはいかない!

 そう強く思い、私は急いで教室戻った。

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【余命幾ばくかの最強傭兵が送る平凡な生活は決して平凡ではない】 https://book1.adouzi.eu.org/n8675hq 新作です! よろしくお願いします!
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