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【本編完結済】帰ってきた元奴隷の男  作者: いろじすた
第11章

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後日談 ⑤

すみません……終わりませんでした。。。

 学園祭での我がクラスの出し物だが、それは“縁日”というざっくりしたものだった。これについては、凛がお祭りの縁日みたいな事がやりたいと言って誰も反対することなく決まったらしい。

 昔から祭り好きだったからな、我が幼なじみは。

 

 ただ、教室内で出来ることは限られてくるため、比較的にスペースを取らず、他のクラスと被らない、金魚すくい、輪投げ、わたあめ、かき氷と、遊戯と食べ物を半々にした。それでも普通ならば、どれか一つをやるにしても結構な労力がかかる所なのだが、そこは、クラスのみんなが凛のわがままに付き合ってくれたというところだ。


 そんなこんなで、せかせかと準備をしていく内に、学園祭当日を迎えた。


 準備期間中に凛と酒井のお陰で、クラスのみんなとも大分打ち解ける事ができた。

 特に、なぜか私を目の敵にしていた男性陣との距離が縮まった事は良い事だと言えるだろう。


 さて、学園祭当日。私は、金魚すくいを担当する事になった。

 祭りの縁日らしく、クラスのみんなで男子は青の、女子はピンクの半被を纏い、生徒によっては仮面をかぶっていた。ちなみに、私はオーソドックスな狐の仮面で顔面を覆っている。


「どうだ、そこのカップル。この、せまい幼児用のプールに閉じ込められた哀れな金魚共をすくってみないか?」

「ぷっははは、なにそれ、チョーウケる! たっちゃん、すくってやんなよ」

「おうよ! 金魚どもは俺がすくってやんぜ! にぃちゃん、いくらだ」

「ポイ一つ二百円だ。もし、すくえなくても一匹はプレゼントしてるから、気負わずにすくうといい」

「すくえないなんて、ありえねぇべ!」


 そう言って、たっちゃん?は右手にポイ、左手に漆塗りのお椀を手に金魚たちに睨みを利かせてた。


「ここだあああああ!」


 たっちゃんが勢いよく、黒いデメキンにポイを向ける!

 うまい位に、ポイで黒いデメキンをすくったたっちゃんだったのだが――。

「あっ、だあああああ!」


 ポイに乗っかった黒いデメキンが、勢いよく跳ねた事でお椀に移す前にポイは中心から破れ、黒いデメキンはプールへと戻っていった。


「残念であったな。すくえなくとも一人に一匹はプレゼントしておる。さぁ、どれにするか選ぶとよい」

「ぷっ、たっちゃん、だっさー。てか、この狐の人、ちょいちょい上からなのがウケる~~~」


 私はどうやらウケるらしい。


「ばっきゃろおお! ぜってえええ、あの黒いデメキン野郎をすくってやる! ほら、もう一度だ!」

「きゃーーたっちゃん、がんばれ~~~」


 とポイのお代わりを要請するたっちゃんとそれを応援するけばけばしい女子高生……ふふふ、ハマったな……。実は、このプールに入っている金魚どもは、業者から受け取った際にかなり弱っていたので身体強化の魔法をかけてみた結果、かなり強化された金魚共になってしまったのだ。普通の縁日での金魚すくいのそれとは勢いが違うのだよ。っそれとは。


 そして、わざわざこの私が一番苦手とするバカップルに営業をしかけたのは、この種の男は、彼女に良い所をみせるため必ずと良いほど、すくえるまで挑戦するという事だ。この金魚すくいの落とし穴は、すくえなくとも一人に一匹はプレゼントするという事。つまり、いくら失敗しても一匹しかプレゼントしないのだ。案の定、たっちゃんは既に十個のポイを溝に捨てている。既に二千円という金をこの黒いデメキンに落としているのだ。


「くっそ! なんで、こんなにすくえねええんだよ!!」

「ちょ、たっちゃん、金魚とれないからってキレてんの? チョーウケんだけど」

「うっせええ、もうこんなクソゲーやってらんねええ! いくぞ、なな!」

「一匹プレゼントしますが?」

「うっせええ、いらねええよくそが!」

「毎度あり~~」


 ふふふ、金魚も減らす事なく二千円の儲け……実にちょろい。

 そんな私のほっぺを幼馴染の凜がつねってくる。


「つーくん、悪い顔してる~~~」

「いや~お金を稼ぐのは実に有意義だと思ってな」

「だめだよ? みんな楽しみにきてるんだから、ちゃんとお客さんにも楽しんでもらわないと。学園祭は、お金を稼ぐことが目的じゃないからね?」

 

 凛の言葉に、ハッとする。

 目的を完全に履き違えていた。


「そうだな。次からは気を付けることにしよう」

「うん! がんばってね! あと、休憩時間になったら凛と一緒に学園祭廻ろうね?」

「あぁ、わかった」


 凛の言葉によって、心を入れ替えた私は、たっちゃん以降のお客さんに楽しんでもらうために心を入れ替えた。



 あと、十分ほどで休憩時間を迎えという時に事件は起きた。


「おらぁ、てめぇどけ、ごらぁ」


 数名のガラの悪い男達が金魚すくいの前に現れたのだ。


「いらっしゃいませ」

 

 一応、客なのでそれなりの対応をする。


「いらっしゃいませじゃねーんだよ! クソガキがッ!」

 

 客に対していらっしゃいませと言ってキレられる……実に理不尽だ。


「客じゃなかったら、迷惑なのでご退出を」

「んだと!? てめぇええ、なめてんのか!?」


 こういう輩は、逆上するとなぜすぐになめてんのかというにだろう? 

 こんな汚らわしい輩を舐めたいと本気でおもっているのだろうか? そうであれば、ぜひ、知り合いの精神科医を紹介したいものだ。まぁ、知り合いの精神科医などいないのだが……。


「いや、汚いので舐めたくはないのだが」

「なんだとごらぁ! なめんてんのか!」

 百点満点の答えだろうと思ったのだが、男達は気に喰わなかったらしくヒートアップする、が、相変わらず語彙力が非常に乏しい。舐めたくないというのに。


「てめぇら、こんなとこでやめやがれ」

「す、すんまんせん! 森山さん!」


 ブレイズヘアの男が一歩前に出ると、男共は、ブレイズヘアの男にへこへこする。どうやらこの男が、この群れのリーダーなのだろう。しかし、この男、どこかで……森山って、あっ!?

 天高の頭の森山だ。

 私が、あっちに召喚される少し前に凛に近寄って私に返り打ちにあったロリコンだ。

 私といえば狐の仮面を被っているため、向こうは気づいていないだろう。


「よぉ、にいちゃん。ポイ一個くれや」

「はい、二百円です」

「てめぇ! 森山さんから金をとろうってのかッ!?」


 正規の料金を告げたところで、森山の取り巻きにキレらる。

 こいつら、頭のねじが数本飛んでいるのではないのか? 

 そんな、取り巻きを森山は右手で制する。


「馬鹿野郎が、いきりたってんじゃねぇよ。ほら、にいちゃん、二百円だ」

「おぉ! さすが森山さん! なんて、懐がふてぇええ」

「馬鹿野郎が、そんなおだてんじゃねぇえよ」


 と誇らしげに茶番劇を繰り広げているのだが。お金を払うのは当たり前の事なのだが……。

 まぁ、金ももらった事だし。()()客として扱ってやろう。


「どうぞ」

「どりゃあああああ」


 森山は、ポイを受け取った瞬間ひどい掛け声ともに金魚を狙うのだが……ものの見事にポイは破ける。


「もう一度だ」

「はい、二百円です」

「…もう一度だ」

「はい、二百円です」

「……もう一度だ」

「はい、二百円です」

「………もう一度だ」

「はい、二百円です」

「…………もう一度だ」

「はい、二百円です」

「でええええいいいい、ポイ十個もってこおおい!」

「はい、二千円です」


 森山は、ものの見事に全滅していた。

 この男、どれだけ不器用なのだろうか。

 すでに金魚共にかかっていた身体強化魔法は解除しているというのに……まぁ、アホな上客なのでよしとしよう。


「くっそがあああああ! てめぇ! 金魚になんかしてんじゃねええええだろうなあああ?」

「いや、逆に何かしてますと言いたい所ですが……」

「くっそがあああ! なめやがってええええ」


 あぁ……語彙力……。


「てめぇ、このクソ金魚どもぶっ殺してやる!」


 と、森山は懐からジッポのオイル缶を取り出し、オイルを金魚の入っている幼児用プールに撒こうとするのだが、それをこの私が許す訳もないので、金魚どもにありったけの身体強化の魔法と狂戦士化の魔法をかけると、身の危険を察した金魚たちがまるでミサイルの様に森山に突っ込んでいく!


「ぐはああ、な、なんで、金魚が!? いってえええ、うそだろおおお!?」


 と森山を含め、森山の取り巻きも強化金魚の逆襲に耐える事ができず頭をかかえ蹲る。

 金魚に圧倒されている森山たちは良い笑い者になっていたそんなタイミングで、空気の読めない男が乱入してくる。


「貴様ら! 何をしているんだ! 安心してくれ、神谷! 先生がくればこんなチンピラども……へ?」


 原田だ。原田が、いかにもヒーローじみた感じで教室に入ってきたのだが、森山たちが金魚たちにやられてる事にあっけにとられてたすぐさま、顔を真っ赤にして「てめぇ! 拓! なに、あそんでんだああ!?」と森山に向かって、怒鳴りつける。


「いて、いて、す、すんません、原田さん、この金魚がやたらとやっかいで」

「くそがッ! 予定が全部くるったじゃねええかあ!」

「いて、いて、すんません! いて」


 どうやら、原田と森山は知古の関係のようだ。


「原田さん、この輩と知り合い何ですか? 予定とはなんですか?」


 私は、気になった事をそのまま原田にぶつける。

 ちなみに、私は原田の事は先生とは呼ばない。何故かって? それは、原田が尊敬に値しない人間だからだ。


「な、なにを、こんな奴ら知ってるわけ――」


 と言いかけた原田は、教室内の生徒達が冷ややかな視線を向けられ言葉を詰まらせる。


「こ、こんな奴らはし、し、しらん!」と原田は、教室を後にし「ま、まってくださいよおお、原田さあああん」と、森山達は原田の背中を追って教室から退室した。


「何だっただろうね」と苦笑いを浮かべる凛に「さぁな」と答えるしかない私。


 森山と原田は知古な関係のようで、しかも原田の口から予定という言葉がでてきた。

 それぞれのワードから推測するに、今回、森山が私達のクラスにきていちゃもんをつけているのは、原田の指示によるものである可能性が高いだろう。


 しかし、なんのためにそんなめんどくさい事を……。

 良く分からないまま、学園祭の一日目が過ぎていった。

いつも読んでいただき、ありがとうございます。

次こそ後日談を終わらせます!

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