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【本編完結済】帰ってきた元奴隷の男  作者: いろじすた
第10章

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臓器密売組織をぶっ潰せ!③

誤字脱字修正しました。ご指摘ありがとうございます!(21.4.30)

 ゾロゾロと現れる集団。その中で一際小柄な男が一歩前に出る。


「ねぇ、お兄さん。あんた何者? 何でここにいるんだ?」


 小柄な男は、ニヤつきながら俺達に近づき紗奈の事を舐めまわすように見る。

 あぁ……紗奈の表情が段々不機嫌なモノに……こいつ、死んだな。


「いいねぇ~君。実に旨そうだ」


 小柄な男は、イヒヒヒヒと下卑た笑みを浮かべ、紗奈の眼前で舌なめずりをする。

 なんか、段々イライラしてきた。よし、ぶっ飛ばそう!


「口が臭いですッ!」

「ぎゅひゃあ!?」


 俺が殴るまでもなかった。

 紗奈の裏拳が右頬にクリーンヒットした小柄な男は、弾丸の如く仲間の方へと吹き飛ぶ。


 いくらスピードタイプとはいえ、紗奈の攻撃を喰らったんだ、当分立てないだろうと思っていたら、小柄な男は仲間にぶつかる寸前、まるで身軽な猫の様にクルンと回転して地面に降り立つ。


 その様子に紗奈も若干の驚きを見せるが、そこは流石と言うべきかすぐに表情を正す。戦場ではいくら予想外の出来事が起きたとしても、それに対して驚いている暇などない。そんな事してたら命がいくらあっても足りないからな。


「イヒヒ。ただの嬢ちゃんだと思って油断しちまったぜ。てか、本当に何なんだあんたら?」


 小柄な男は変わらずニヤニヤしながら問うた。

 だから、俺は答える。極めて簡略に。


「正義の味方だよ」


 俺の問いに、小柄な男やその背後にいる奴の仲間らは一瞬拍子抜けした表情を浮かべたのちすぐさま大声でゲラゲラと笑い出す。


「ぶぁーか! なぁにが、正義の味方だよ!」

「バカだと!? ふざけんなッ! バカって言った方がバカなんだからなッ!?」

「サク……」

「咲太様……」


 あっ……しまった。いや、逆に締まらなかった……。

 悪意を込められてバカって言われるのなんて小学校ぶりだったから、ついつい童心に帰ってしまった。

 あぁ……紗奈とイドラさんの俺を哀れむ視線が痛い……。


「ごほん……とにもかくにも、お前らの所業は全て把握している! 残念だが、今日で店仕舞いだ」


 俺は某弁護士ゲームの主人公バリに、小柄な男に向けて指を指す!


「いひひひ。呆れて物も言えないなぁ」


 小柄な男は天を向き、自分の手の平を両目に被せわざとらしく声を張り上げ嗤う。


「何がそんなに可笑しいのですかッ!?」


 怒気が混ざった紗奈の問い掛けに小柄な男は、視線を定位置に戻し、俺達を睨み付ける。

 なんだ? こいつ、目が……。

 紅くなってる。

 充血とかそういうレベルの話じゃない。

 白目の所が、まるで真っ赤なペンキで塗りたくったように真っ赤だ。こいつだけじゃない……後ろにいる奴らも。


「たった三人で、俺達を潰せると思っているあんたらの頭の軽さに嗤えずにいられるかよ。ていうか、舐めすぎだろ」


 俺の物言いが癇に触ったのか、ここにきて初めて小柄な男を筆頭に、俺達は敵意を向けられる。


「咲太様……」


 イドラさんはいつもの様に神妙な面持ちだが、声色は若干の戸惑いを見せている。


「どうしたんですか?」

「あの方々は普通の人間ではありません」

「何となくそんな感じはしました」


 紗奈の攻撃を喰らってもケロっとしてるし、目が尋常でないくらい赤いし。


「それで、奴らが何かわかりますか?」

「あの方々には、魂が宿っておりません。つまり、死に体なのです」

「ッ!?」


 予想の斜め上を行く返しがきたため、言葉が詰まる。


「あの様な方々を私は一度だけ見た事がございます」

「…………」

「ヴァンパイア族の眷属、死食鬼グールです」


 待て待て待て! ここは日本だぞ?

 何だよヴァンパイア族って? 何だよグールって?


「何でそんなモノが……?」

「それは……分かりません」

「グールはどうやって生まれるんですか?」

「高位のヴァンパイア族によって産み出されます。その方法は、禁忌に値するもので、残念ながら私にも分かりかねます」

「そうですか……」

「ただ、私が以前見た事があるグールは、前王座を争っていた際にゲムレッド・ドゥオ・ルートリンゲンという、魔王様の分家の前当主が禁忌を犯して産み出した物でした……それも、前魔王様がゲムレッド様諸共消しさってしまったので、詳細は分かりかねますが……その者達もあの方々の様に意思をしっかりと持っておりました」


 ゲムレッド……名を聞いた限りレウィを陥れたギムレットの肉親だろう……親子揃ってろくでもない。


「な、なんで、俺達の正体を……?」


 この世界の人間では知りえない自分達の正体を明かされ、小柄な男をはじめとする敵さん達に緊張がはしる。


「その反応、ビンゴだな?」

「ちっ、何者かわからんが、俺達の正体が分かったからって、お前らの結末は変わらない! 男は殺して良い、女は素材にするから上手く処理しろ!」


 小柄な男の一声で、野次馬の如く俺達を囲むグール達。

 どいつもこいつも、もう勝った気でいるのか、舐め腐った態度を俺達に向けている。


「紗奈、どっちがいい?」

「サクはイドラさんをお願いします。アタシ、最近運動不足なので少し身体を動かしてきます」

「オッケーじゃあ任せたッ」

「紗奈様。あの方々は謂わば生きた屍。この世に存在してはならない者達です……」

「分かりました、アタシが終わらせます! あの人達の弱点、分かりますか?」

「以前、私が遭遇したグールは、頭を落とした事で消滅しました。グールは痛覚を伴わないため、それしか方法がないと聞いております」


 だから、紗奈の攻撃をくらってもピンピンしてたのか。


「そうですか……分かりました」


 コクリと頷いた紗奈は、ベルトに備え付けられている革製の鞘から二対の黒いアーミーナイフを取り出す。チタン製のそれらは、全長四十センチほどあり、紗奈があっちの世界で使っていた物と何の遜色もない。つまり、紗奈が最も得意とする得物だ。


「おいおい、舐めすぎだろ!? そんなお嬢ちゃん一人で俺達を相手しようとしているのか!?」


 小柄な男は大袈裟に両手を広げる。


「あなた達なんて、アタシ一人で十分ですッ!」


 紗奈の身体がブレると同時に一体のグールの頭が飛ぶ!


「相変わらず馬鹿げたスピードだな。集中してみないと目で追えない」


 紗奈の戦闘を見慣れている俺は、紗奈の動きが追える。それは、俺の動体視力と紗奈の動きを熟知している経験によるものが大きい。初見であれば、ポンポンと勝手にグール達の首が飛んでいるように見えているだろう。イドラさんは特殊な目の持ち主だから紗奈の動きが追えるのだろう「すごい……」とその動きに感嘆の意を洩らしていた。


 首を飛ばされたグール達は、断末魔を上げる事もなく。灰になって消えていく。自分達が何をされたかも分からず消えて行っているのだ。


「な、なんだ!? ど、ど、どうなってる!? なんで、首が勝手に!?」


 あれが普通の反応だ。

 ものの数十秒で、仲間の首が飛び、その存在を消滅させられた小柄な男はパニック状態になっていた。

 自分達は痛みを感じる事がない、永遠の時を生きる選ばれし者とでも思っていたのだろう。


「貴方で最後です」

「ひぃいいいいいいいい!」


 急に目の前に現れた紗奈に小柄な男は情けない声で悲鳴を上げる。その顔には先程までの余裕はとうになくなっていた。


「紗奈、待ってくれ!」


 俺の呼び掛けに紗奈のナイフが小柄な男の首にめり込む前にぴたっと止まる。

 そして、紗奈は、その場でナイフを鞘に納める。

 どうやら、俺の意図を分かってくれたらしい。


「お疲れ様」と紗奈を労い、俺は小柄な男に近づく。

「さぁ、お前のボスの所に案内しろ、いるんだろ? ヴァンパイアが」

「わ、わかった! ボスの所に案内する! 案内するから! 殺さないでくれッ」と小柄な男は、尻餅をつき懇願してくる。


 殺すも何も、お前はもう死んでいるんだよ……とは言わず俺は「少しでも下手な動きをしたら、お前の頭を握り潰すからな?」とたっぷり殺気を込めて脅すと小柄な男は高速で首を縦に振る。


「よし、じゃあすぐに案内しろ」


 ヨロヨロと力なく立ち上がった小柄な男を先頭に、この組織のボスがいる場所へと移動した。 

いつも読んで頂き、ありがとうございます。

明後日までには次の話を更新する予定です。


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【余命幾ばくかの最強傭兵が送る平凡な生活は決して平凡ではない】 https://book1.adouzi.eu.org/n8675hq 新作です! よろしくお願いします!
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