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【本編完結済】帰ってきた元奴隷の男  作者: いろじすた
第10章

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師弟、交わる鉄拳

眠気眼で書いたので、誤字脱字多いかもです。

誤字脱字は、ご指摘があった際、または気づいたときに修正します。

オニールの呼称を隊長に統一しました。(21.3.18)

「何だ貴様もそれでやる気か?」

「この不器用さも隊長ゆずりなもので」

「がっはははは、良く言いよるわい!」


 さて、久々に隊長に稽古をつけてもらうのだが、俺の手には何も握られていない。いや、握られているのは二つの拳だ。戦場では、一応剣を振っていた。俺の背丈位ありそうな、分厚い、人を斬るというよりは人を薙ぎ倒すのに特化したものだ。武器を振り回す、実に煩わしい。この二つの拳と二本の脚、付け加えてこの脳みそのつまっていない頭。これだけあれば十分だ。


 だけど、これは隊長の受け売りだ。

 鉄拳のオニール。これが、隊長の二つ名だ。


 どんな戦場でも己の身体一つで、敵を圧倒していた傑物。

 俺はというと身分は奴隷であっても、剣と魔法の世界に来たんだ。魔法は使えないとしても剣は振りたかった。だが、他のメンバーが各々の武器を振るっていた頃、俺は隊長の拳を喰らっていた。そんな訳で俺は他のメンバーと比べて武器の扱いが拙い。


 だから、俺に与えられた武器は、武骨な切れ味の悪いデカいバスタードソードだった。これは、技術もクソも関係ない。ただ力任せに振っていれば、自然と複数の敵兵の身体をねじ切る事が出来たのだから、万の敵を前に戦う効率重視の戦では重宝された。


 だけど、俺の十八番はこっちだ。

 俺はそう言って、両拳をぶつける。


「こんな脳筋になったのも、隊長のせいですからねッ!」


 俺の踏み込みによって地面が陥没する。

 このオッサンは強い! だから、最初から全力でいかせてもらう!


「ほぅ、最後に稽古した時と比べて段違いの速さだのぅ!!」

「稽古というよりは、一方的に隊長に淘汰されてただけですけどねッ!」


 俺の拳は、隊長の鼻元に向かって一直線に伸びる。


「がっははは、貴様も先程言っておったじゃろうに! ワシが不器用だという事をのぅッ!」


 俺の拳が隊長の鼻元に辿り着く直前に隊長の姿がぶれ、逆に俺の横っ面に衝撃が走る! 久しぶり感じるこの衝撃、間違いない隊長の拳だ。今となっては痛みは我慢できるが、俺の頭蓋骨に響く隊長の拳の衝撃は、まるで生身の身体で自動車と衝突した錯覚に陥る(衝突したことはないが……)が、俺は衝撃に抗い隊長を捉えて負けじと拳を振り抜くが……当たらねぇ!! 

 

 今の俺なら分かる、いや感じると言うべきか、このオッサン、こっそり身体強化の魔法を使いやがってる。


「ちょっと隊長、身体強化魔法を使うんなんて少し大人気ないんじゃないんすか?」

「ほぅ、貴様魔力探知までできるか!」

「そりゃ、九つの戦場で色んな魔法を喰らいまくりましたからねッ!」


 拳ばかり繰り出していた俺だが、不意を使って回し蹴りを使うのだが、それも難なく躱される。


「そうか、貴様九の戦場を生き抜いたのだな……強くなったのぅ、ワシに魔法まで使わせるとは……」


「ちょ、こんな一撃必殺みたいな攻撃を繰り出しながら、何しんみりしてんすか!」


 常人であれば喰らっただけであの世行きであろう破壊力を持つ攻撃をお互い繰り出しながら、傍から見たら漫才でもやっているかのようにボケとツッコミが行き交う。


「貴様の成長は誠に楽しみじゃったからのぅ、嬉しいのじゃ」

「そんな事言ってると、弟子(おれ)に後れを取る事になりますよ?」


 俺は更に攻撃のスピードを上げる。限界との挑戦だ。

 だが、このオッサン全部躱しやがる。クマみたいな図体して、俊敏さはかなりのものだ。

 正直、魔法を使っている隊長とこれだけ攻防を繰り返しているにも関わらず俺はぴんぴんしている。もう昔のおれじゃねええええええ!


「うぉ! まだ早くなるかよ!」


 拳を突き刺す、躱される

 拳を突き刺す、躱される

 拳を突き刺す、躱される

 拳を突き刺す、躱される

 拳を突き刺す、躱される

 拳を突き刺す、躱される

 拳を突き刺す、躱される

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

 拳を突き刺す、隊長の右頬に掠る

 拳を突き刺す、隊長の左頬に掠る


 拳を振り上げる、隊長の顎にクリーンヒットする!


 やっと通じた! 俺の拳がものの見事に顎にヒットした隊長は、重力を失ったマネキンの様に低い放物線を描き吹っ飛んでいく。


「よっしゃああああああああ、一発入れたぜええええええッ!」


 ついに念願が叶った俺は、右手を天に突き上げテンションをマックスまで上げる。

 隊長は、地面に落ちる前に猫の様な身軽さを発揮し、くるんと一回りして、着地する。


「まじかよ……くるんできるくらい余裕あるんかい!」

「まさかこのワシに一発入れるとは、本当に強くなった」と好々爺の様な優しい笑みを浮かべた隊長の両手に何かが集まっている様な感じがする。


 このオッサン、俺に油断させておきながら、何かするつもりだ。


「隊長の右手、えらいことになってるんですけど……」

「がっははは、気にするなら。ただ、ワシの最強の魔法を放つだけよ」


 このオッサン、頭沸いてんのか? 最強の魔法って、放ったらやばいやつでしょうに、なに俺これから線香花火するんだぁってくらいのフレンドリーさで言っちゃってくれてんの?


「では、喰らうがよい」


 隊長の右手に灯った、魔力の球体がまるで槍の様に細長くなり、その周りを放電している様にぱちぱちと音を立てていた。

 雷魔法だ。


「断罪の雷槍!」


 すげぇ名前だ。かっこいい。だけど、俺を断罪するのはどうかと思うのだが……。

 迫りくる雷を纏った槍を俺は難なく避ける。こんなの朝飯まえだと思ったら胸に鈍い痛みと、身体全体にびりびりが走る。

「あぱぱぱぱぱぱぱぱ、いってえええ!」

「ワシの最高の魔法を喰らってもピンピンしてるかよ!」

「くっそじじいいいい!」


 さっきから良い様にやられていると感じ俺は悔しさのあまり声を荒げる。

 そして、体中の魔力を循環させる。

 俺が欲しいのは、隊長が反応できない程のスピード、そして隊長の両足を挫く様なパワー!

 なら、やる事は一つ。やった事はないが……両手両足に魔法を纏う!

 俺は、腹の底から搾れるだけ声を搾る。


「うおおおおおおおおおおおおおおおおお!」


 熱を感じる俺の両拳が黒く染まり、また、両足にも同じような熱を感じているという事は、無事魔法を発動できたのだろう。


「なんじゃ? ぐははは、そうか、貴様が魔法をな!」

「うおおりゃあああああああああ!」

「ぐぉ!」


 俺の拳が見事に隊長に突き刺さる。先程とは比べられない衝撃が身体に走っているのだろう。

 隊長は若干、“く”の状態で嗚咽にたえている。

 だからと言って、手を弛める訳にはいけない、そして、「とどめです!」と言わんばかりに放たれた俺の拳により、隊長は壁際まで吹き飛んだ。


 隊長は満足そうな顔で一言「見事なり」と口にし、その場に倒れ込んだ。

 


いつも読んでいただき、ありがとうございます。

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【余命幾ばくかの最強傭兵が送る平凡な生活は決して平凡ではない】 https://book1.adouzi.eu.org/n8675hq 新作です! よろしくお願いします!
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