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【本編完結済】帰ってきた元奴隷の男  作者: いろじすた
第9章

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VS レレ

誤字修正いたしました。ご指摘ありがとうございます!(20.11.18)

 立会人のポンクロスの開始の号令が切れるや否や、俺はレレに向かって駆け出す。力を込めてで踏み込んだせいか、さっきまで俺が立っていた場所は無数の地割れとクレーターが発生していた。


 戦いの必勝法、それは先手必勝!

 

 だが、そう思ったのは俺だけじゃないらしく、レレも既に俺の方へ駆け出していた。

 口元が緩む。これもまた俺だけじゃないらしい。

 嬉しそうな顔しやがって!


 ついさっきまでポンクロスが立っていた地点へ俺達は同じタイミングで到着、そして、同時に振り抜いた右拳が互いの左頬に直撃する。


 ドゴーッ!


 顔を殴った音にしては、あり得ない轟音が響き渡り、吹き飛んだ俺達はスタート時点まで押し戻される。

 だが、倒れる事はない。

 吹き飛んでいる間に体勢を戻し、クレーターに着地したと同時に右足を踏み込む。さっきよりも更に力強く踏み込んだせいか、クレーターは更に深く、広がる。


 レレの攻撃力は何となく分かった。


 今度は吹っ飛ばされないように、いきなり殴り掛かることはせず、一度地に両足を踏み込む。レレの攻撃は警戒しない。


 何故なら、レレも俺と全く同じ事を考えているだろうからだ。


 だがらなのか、瞬間時間の流れが止まる。

 時間にしてコンマ数秒だが、体感ではそれより遥かに長い時間に思える。

 そのせいか、先程までギャーギャー五月蝿かった外野が静まり返っている事さえ鮮明に感じられる。


 一瞬、それらに気をとられていると、俺の眼前に拳が迫ってきていた。


「余所見するなんて余裕ではないかっ!」

 

 俺は紙一重で、レレのパンチを避ける。


「余裕なんてねーよ! むさ苦しい外野が静かになったから気になっただけだっ!」


 そして、カウンターと言わんばかりの右フックをレレのアゴ目掛けて放つと、レレは俺のカウンターを予想していたのか、フリーの左手で俺の拳を叩き軌道を変え攻撃を回避する。


 俺達は、地に足を着けたままだ。


 一歩たりとも動く事なく、己の拳だけで攻撃をしかけるのだが、一発としてマトモに入らない。

 一発喰らえば、結構なダメージを与える事ができる俺達の攻撃は互いの徹底したディフェンスによって紙一重に空を切っているのだ。


「やるではないかサクタ! 俺の拳がこれ程役にたたなかった事なんて、父上を置いて初めてだっ! うはははは!」


 上機嫌に嗤うレレに向けて、自然と舌打ちが出る。


「そんな事言って、俺の攻撃も全然きかねーじゃねぇか!」

「うはははは! それはそうだ! そんな痛そうな攻撃、叶うなら喰らいたくないのが心情!」 


 目にも止まらない俺達の攻防に、外野は固唾を飲む事しかできないが、

「スゴいべ……誰もあの人族に賭けねぇがらなーんも期待しねぇで面白半分で賭げてみだけど、あの隊長と互角にやりあうなんて、もしかするどもしかするべぇ!」


 テムテムのぶっちゃけに、少しダメージを喰らう。


 面白半分って……。

 くそ、見返してやるうううう!

 

 俺の心に火がつく!


「うおりゃあああああ!」

「はやっ! ぐっ!」


 ボルテージが上げ上げになった俺の攻撃に更なる速さと鋭さが増し、予想に反した俺の攻撃に反応が遅れたレレは、まともに俺の攻撃を喰らう事となる。クリティカルヒットといっても過言ではない程の手応えが、俺の右拳に伝わる。


 ドッカーン!


 レレは勢いそのまま無人の観客席に突き刺さり、辺りに砂埃が舞う。


「うおっしゃあああああ!」


 久々に気持ちの良い手応えだったので、ついつい調子にのってシャウトしてしまった……アドレナリンは、時に人を狂わせる。


「すげぇぞあの人族……」

「あぁ、あのレレディオ隊長を吹き飛ばしやがった……」

「あんな隊長は初めてみるぜ……」

「すげぇべ! すげぇべ!」


 外野の様々な反応が、辺りを支配し始める。

 てか、テムテムだけやけにテンションが高い……が、そんなことよりも……。


「レレ! 終わりか? そんな訳ねーよなッ!?」


 こんなんで終わったらつまらねぇ!


 砂埃を手で払いながら、レレは立ち上がる。 


「うははははは! 強いなサクタ!」

「いいから、早く戻ってこい!」


 レレは立ち上がり、何度が首をポキポキと鳴らし「そうだな!」と俺の方へと近付いてくる。そして、俺に向けて頭を下げてくる。


「お、ちょ、何で頭を下げてるんだよ!」


 一国の王子に頭を下げられる、何の罰ゲームだ!


「オニ母上から、サクタが魔法を使えない事を聞いていたのだ! だがら、同じ土俵でやっても問題ないと思っていた!」

「それは俺を舐めすぎだな」


 レレに悪気がなかった事は分かっているのだか、舐められた事に若干腹が立つ。


「全く持ってその通りだ! オニ母上がサクタは強いと言っていたが、それはあくまで人族の中での事だと勝手思ってしまった! すまなかったサクタ! お前は種族を超越した強者だっ! だから、俺も本気でヤらせてもらう!」


 レレに褒められた事で溜飲が下がる。俺、単純すぎじゃねぇ?

 いや、それよりもレレの性格のせいかも知れないな。


「おう! 掛かってこい!」


 第二ラウンド開始だっ!

いつも読んでいただき、ありがとうございます!


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【余命幾ばくかの最強傭兵が送る平凡な生活は決して平凡ではない】 https://book1.adouzi.eu.org/n8675hq 新作です! よろしくお願いします!
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